週刊循環経済新聞(2007年5月28日)
木材情報274 古材不足が招く“勝者無き争い”
マテリアル及びサーマルを問わず、古材由来の木質チップの需要が拡大する中、専門チップ業界では旧来型の企業間バランスの維持が難しくなりつつある。
専門チップ業者はこれまで、A社で品不足になると、在庫を抱えるB社が融通するなどし、互助することも可能であった。しかし、急速な需要の増加で、業者規模の大小に関わらず、原料確保が難しい状況に。会社方針としては処理料金のダンピングを禁じていても、数字を問われる現場の営業マンがフライングしてしまう例も。加えて、チップ施設のユーザーである解体業者は、原料不足を盾にとり「C社では、こんな安いのに、お宅は高いので値引きしてほしい」といった言い回しで、天秤にかけるケースが多くなっている。
この場合、料金表など確かな証拠を確認しないと、曖昧な数字が一人歩きしチップ業者間の不信につながる。解体業者にとっては、木くず等、現場発生物の処理に要するコストは極力抑え、実入りを多くしたところ。当面、チップ業者との駆け引きは、避けられない状況だ。専門チップ業者だけならば、処理料金の水準が地盤沈下しないよう、話し合いの上、共同戦線を張ることも可能だが、人脈のない新規参入組のチップ業者がダンピングを始めると、時に事態は泥沼化する。
原料の取り込み合戦は、体力のある業者が対抗策として際限なく料金を下げてゆき、最終的に力負けした規模の小さな業者が“我慢比べ”に敗れ、退場していくことになる。
会社規模の大きな業者は、これでシェアが広がり安泰かというと、その逆だ。取扱量が甥ほど処理料金の値下げがもたらす売上に対する影響は大きくなる。月間3,000トンの取扱量で、処理料金が1キログラム当たり3円下がると、90万円の収入減となってしまう。まさに「勝ち組」のない争いがダンピングだ。
ただし、一方で柱材のように明らかに有価物化へ向かう木質材については、それも織り込んだ戦略が必要となってくる。
※ペットボトルもかつての有償から有価物へ変化した経緯があり、木質チップも過渡期の可能性があります。経営体力のある業者への原料集中はある程度仕方のない側面が多いと感じます。
週刊循環経済新聞(2007年5月21日)
木材情報273 ボード原料用古材チップ価格の見極め
木くず由来の木質材のマテリアルリサイクルルートのうち、木質ボードの原料需要家は、木質燃料チップ需要の拡大とともに、その調達が困難な状況となりつつある。
ボードメーカーは、業界内の競合により、製品販売価格が低迷。加えて、原油高・ナフサの高騰を背景に、接着剤の値上げが続き、輸送コストも嵩む傾向に。製品販売価格はそのまま転嫁すれば良いことなのだが、メーカー間競争を考慮すれば、一概に数字を上乗せするのは難しい環境にあった。
それらの余波を直接的にかぶる形となったのが原料購入単価だ。
かつて、二度にわたるオイルショック時(1974年及び1978年)には、石油価格の急速な高騰により、重油焚きボイラ設備を持つ施設は、国内で調達できる木質燃料チップに注目。一時は1キログラム当たり6~7円の値がついた。ただし、そのころは専門チップ業者も中間処理業許可を取得していないケースが多かった。製品チップの売値が高く、製造・加工コストも吸収、中間処理料収入を当てにせずとも、採算がとれていたためだ。
木質ボードチップも、かつては1キログラム当たり10円前後で取引きされていたが、現状はほとんど燃料チップと大差ないレベル(1キログラム当たり1円前後)に落ち込んでいる。
専門チップ業者としては、燃料チップと比べ異物の除去などに手間がかかる上、売値も大差ないのであれば、木質ボード原料用チップを作る意欲がそがれてしまう。
2007年に入り、チップ業者とボードメーカーの個別交渉が行われ、1キログラム当たり50銭(生=水分を含む状態)~80銭(絶乾=水分を含まない状態)の幅で値上げが成立した(業界筋)という。それでも、最盛期に比べれば遠く及ばない価格であり、専門チップ業者は、どの段階で供給割合の最終判断(他の供給先との)をするのか、決断を迫られることになりそうだ。
※このまま木質ボード用のチップ価格が安いままだと、燃料チップとの競争に負けて海外からの輸入にシフトする可能性があります。すでに国内メーカーはマレーシアなどに進出しており、高品質のボードを供給する体制はおおむね整備されています。
※製紙用チップは一時期に比べてだいぶ価格が上がってきており、条件が良ければ人工林から伐採・搬出しても採算の合う水準に近づいています。製紙用チップの供給をベースにした森林施業方式を考案する必要がありそうです。