週刊循環経済新聞(2007年3月26日)
木材情報267 総会シーズン、業界発展の一手は?


 有識者の多くが予測していたことだが、昨秋から、西日本に端を発した木質チップ需給状況の激変がいよいよ東日本にも波及しつつある。それに伴うチップ業界の動きなどを取り上げる前に、ちょうど3月はチップ業界団体の総会が立て続けに開催されているので、激変期において業界団体に何が求められているかをまとめてみる。
 木材資源の需要拡大の影響か、もともと老舗業者のサロン的意味合いが強かった業界団体が、ここ数年で様相を一変させ、広く会員会社を募ったりNPO法人格を取得し普及啓発事業に力を入れたり、組織力の強化がすすんでいる。取り扱う話題も同業者間での情報交換に加え、大口需要対策や未利用材の活用、法制度や商習慣など業界が抱える課題に対する議論などまで広がっている。
 昨年あたりから、全国連合会・地方協会ともにチップ業界団体と大口需要家が公式に顔を合わせることが増えてきた。チップ業者が「団体」として需要家の責任者とひざを突き合わせることで、チップ需給にかかわるさまざまな課題が少しずつだが整理されつつある印象を受けた。
 これに加えて、国など行政機関への働きかけを強めることで、法律や制度を動かし業界の環境整備に結びつけていくことが、業界団体に課せられた使命だろう。ただし、国とわたり合うためにはある程度の理論武装が必要。団体を構成する個々のチップ業者はバックデータ収集に積極的に協力していく必要がある。

 

※同じ業界団体に所属していても利害が一致しないことはよくあります。一般廃棄物と産業廃棄物の区分だけとってみても賛否両論が出てきており、適正な処理と利用に向けた地ならしはまだこれからでしょう。


週刊循環経済新聞(2007年3月19日)
木材情報266 市況が見え辛い廃棄物由来の燃料


 全国各地でバイオマスボイラがオープンし、木質燃料チップは「需要過多」、「売り手市場」の時代に入ったとの認識が一般化しているが、ここにきて一概にそうともいえない動きも出始めている。
 木質燃料チップの生産業者は、需要家の製紙工場などの担当者と、昨年後半あたりから遠隔地の運賃分上乗せなど、買い取りの値上げ交渉に入り、一定の成果を得てきた。しかし、木質燃料チップの利用割合を増やすことで、ボイラのトラブルに見舞われることが多くなるにつれ、需要家もやや慎重になりつつある。
 トラブルの原因は、異物の混入と考えられ、当初は右から左に受け入れてきた需要家も、量と合わせて質を重視する傾向が強くなっている。
 また、業界筋によると、買値の交渉は個別の業者ごとに行われるようになり、それぞれ条件に応じた異なる設定をされているようだ。好条件と思われる買値をつけてもらった業者は、同業他社に数字を漏らすことはないので、業界内で疑心暗鬼を生む要因となっている。
 一方、木質燃料チップの集荷が頭打ちになりつつある中、ライバルとなるのが同じ廃棄物由来のRPFとタイヤチップ。いずれもプラスチック素材または混合しているのでカロリーが高く、需要家にとっては魅力が高い。だが、RPFは廃プラ不足、使用済みタイヤは集荷ルートが確立されていないなど、ウィークポイントを抱えている。その上、買値は木質燃料チップと同じく、個別の生産業者との間で差がある模様で、市況の視界は良好な環境にない。
 廃棄物由来の燃料が、古紙や金属くずのような「資源」としての地位を確立するには、市況の見え易さがポイントとなる。個々の需給者の都合により完結している今の状況は、あまり健全とは言い難い。

 

※産廃情報ネットで検索できる処理業者でも「見積もりします」としか書いていない場合が大部分です。「木材チップ市場」でも創設されない限りは個別の取引後との価格差は小さくならないと思います。


週刊循環経済新聞(2007年3月12日)
木材情報265 「生木」も積極利用の動き


 木質燃料チップや木質ボードの原料は従来、家屋解体系の発生物が多数を占めてきた。それは現状でも変わりないのだが、昨今の原料不足により、木質チップ業界では解体系の取り込みだけでなく、「生木」へも目を向ける動きが出ている。
 一般廃棄物系の生木は、間伐材や剪定枝が代表格。間伐材は、林業振興政策の在り方にも関っており、山林からいかに効率良く伐採、搬出するかが課題となる。日本の人工林は、1000万haと言われており、間伐材の「埋蔵量」も相当な量になることは間違いない。かつては、建設現場の足場材などに多く使われていたが、他の素材への転換が進むにつれ需要が減少、利用率も下がってきた。チップ業界の中でも、利用を検討する動きが数年前からあったものの、コスト高などの壁に阻まれ、大きな利用拡大には至っていない。
 一般系木質材の内、せん定枝については、徐々に再生利用の取り組みが広がりつつある。せん定枝は、道路や公園など公共施設の管理で発生するウエイトが高い。時期的には7~10月、集中して発生するという特徴がある。公共事業関連なので、量的な予測は立ち易い。
 産廃系は、山林の開発に伴って発生する「伐開材」で、大型サイズの抜根など、処理困難な物以外は比較的利用は容易だ。
 既存のチップ業者が生木を扱う場合、作業時間を生木と解体系木くずの処理に区切り、1本の破砕ラインで対応するのが一般的。また造園など異業種から、取扱物を生木に特化した業者の参入も見受けられる。生木の受け入れを拡大する業者は、せん定枝など一廃の取扱が絡んでくるので、地元の市町村長からの一廃処分業許可、または廃棄物処理法の施行規則に定められた一般廃棄物再生利用業の指定を受けている。
 生木系木質材の用途は、燃料のほか木質ボード原料にも広がりつつある。ボードメーカーは、原料確保難が続く昨今、異物の除去など一定の基準さえ満たされているならば、積極的に生木チップも受け入れる姿勢を示しているようだ。

 

※一般廃棄物系の生木として間伐材があげられているのはちょっと驚きましたが、伐り捨てで林地に放置されていれば法的にそう解釈できる可能性があります。有償で林地残材を運び出す場合は一般廃棄物の収集・運搬に関する許可が必要かもしれません。



週刊循環経済新聞(2007年3月5日)
木材情報264 先細るマテリアルRの原料調達


 バイオマス利用の拡大とともに、マテリアルリサイクルルートの原料確保の動きが、供給及び需要の両サイドで激しくなっている。
 解体系の柱材については、製紙原料用切削チップを生産する業者が、生産拠点の近隣だけでは集荷がままならず、他地域まで足を伸ばし、無料引き取り、もしくは買い取りに併走する状況が生じている。
 そのような中、国内ルートだけでなく、廃プラスチックと同様、中国への柱材などの輸出を事業化する業者も現れ、ますます市場は混沌とした状況となりつつある。中国では、マンションや一般住宅の建築ラッシュが続いており、床材など内装に使用する木質材の需要が急速に高まっている。ただし、中国は木材資源がアジアの中でも少なく、日本の解体材や間伐材に視線が向けられることになる。
 前処理として、異物及び釘などの除去などの作業は必要だが、切削チップ生産と比べれば格段に低い労力で済む。港近くの集荷基地まで運搬すれば、パーティクルボード原料用のチップなどより数段高値で引き取ってもらえる。
 ただし、このところの柱材不足は、買値が良ければ材を確保できるという次元を超えており、好条件の引き取り手が現れても、直ちに材が集中するような事態は生じないようだ。
 製紙工場に旧来から切削チップを納めてきた業者は、ある程度の供給責任を負っており、そのため定量集荷を第一義としている。また、柱材活用について、高値買い取りの輸出など、他の選択肢を需要家との交渉(チップの売値など)の材料に使うことも可能になる。
 国内の木質材マテリアルリサイクルの内、一方の大口需要家であるパーティクルボード工場。こちらは、燃料需要の急速な伸張の波をもろに被っており、集荷不足は深刻となっている。
 ボード工場の原料チップの買値は、10年前と比べ5分の1以下に下落している。燃料チップ需要家の買値と大差がない、もしくは下回るような状況で、チップ生産業者の関心をひく材料に乏しい。今後ボードメーカーは、低い製品の販売価格を改善し、原料チップの買値に上乗せするなどの思い切った対策を講じなければ、原料仕入れ量の先細りに歯止めをかけることは難しい。

 

※中国は人口が大きい割に森林面積・蓄積が小さいので、木材需要が高まると輸入を増やす必要が出てきます。もし日本からの輸出がさらに増えることになれば、ますます木質バイオマスの需給バランスが悪化してしまいます。

最終更新:2007年03月30日 11:14