週刊循環経済新聞(2007年2月26日)
木材情報263 難しくなる処理料維持


 これまで、チップ業者は、局地的なダンピングの発生などのトラブルに対し、当事者間で話し合いを持って解消するパターンが多く、体力勝負の消耗戦にまで至るケースは比較的少なかった。しかし、このところ様々な思惑を持った業者の参入により、当事者間の協議も難しくなりつつある。
 古材チップの集荷を手掛ける業者は、従来のチップ業者(月間生産量は、おおむね1000トン以上)以外に、①解体業者の兼業による新規参入②産廃業者の新規参入③製紙用のバージンチップ生産業者④全く異業種からの新規参入-などがあり、渾然とした状態となっている。
 ①は、従来のチップ業者にとって施設の利用者。処理コスト削減+チップ販売益の獲得を皮算用しての参入だが、ランニングコストや出荷に当たっての運賃がどれだけかさむかなどは、考慮されていないケースが多い。解体の同業他社からも警戒されるので集荷が思うに任せず、ダンピングに走る例がある。
 ②は、建廃の中間処理工程の1つとして組み入れるのが一般的。他の建廃と込みで受託する場合は影響も少ないが、設備を大型化し、器に見合った集荷に動くと、ダンピングを行う可能性が出てくる。
 ③は、柱材などの買い付けをし、バージンチップにブレンドする手法をとる。
 ④は、建設資材の生産業者などの参入で、独自路線に進むと、ダンピングに走る例が多い。
 業界全体として、一定レベルの処理料金を維持できるか否かは、各業者の経営体質の強弱をも左右する可能性をはらんでいる。


※ダンピングというと、適正な水準以下にまで価格を落としているイメージがありますが、競争によって妥当な価格に至る場合もあります。木材チップのみならず、情報の非対称性が続く限りは類似の現象が起こってしまいます。



週刊循環経済新聞(2007年2月19日)
木材情報262 付加価値魅力の切削チップ


 古材については、需要過多・原料不足が常態化するなか、相変わらず業界ではダンピング情報が飛び交っている。
 ダンピングをする業者の多くは新規参入組の業者で、目算違いで集荷がままならず、設備投資分の返済にも四苦八苦するといった事例が見受けられる。ダンピングを仕掛けられた一定規模以上の既存チップ業者は、体力勝負で値下げの対抗策に出て、事態は泥沼化していく。結局は、仕掛けた方が引きさがらずを得ない状況に追い込まれる(引用注…原文のまま)。そのような構図で、ここ1年の間にも西日本では複数の業者が撤退している。
 古材を原料に生産するチップのなかで、製紙用の切削チップは釘を手作業で除去しなければならない等の手間がかかり、柱材のみを一定量集めなければならず、誰もが簡単に取り扱えるものでもない。
 板材など雑多な木質古材が混合した物は、1キログラム当たり10円~20円の処理料金が平均的。ところが柱材となると、ぐっと処理単価は下がり、1キログラム当たり3円~4円程度で、中には物量欲しさから無料で集める業者もおり、値崩れしやすい状況にある。
 旧来から柱材の切削チップを取り扱う業者は、製紙会社との取引上、ある程度の供給責任を負っている。その信頼関係を維持するため、物量確保は優先課題となり、ダンピングを誘発する要因となっている。
 しかし、燃料チップは需要過多の環境下であっても買値は大きく上昇しておらず、処理料金で下支えしている状況に変わりはない。対して、製紙用切削チップは、中国への古紙流出や原油高騰によるコストアップなどを背景に、燃料チップとは需要の質が異なっている。製紙会社にとって原料用古材チップの確保は、本体業務の生産活動に直接関わっており、自ずと買値も格段に良くなる。生産の手間暇、処理料金の安さを差し引いても、その買値に魅力を見出す業者は少なくないようだ。


※一時期に比べて製紙用チップの価格はだいぶ上がったようで、シイタケや薪炭用原木などと競合するようになっています。本来は柱材をリユースする方が望ましいと思いますが、まだ仕組みが整っていません。



週刊循環経済新聞(2007年2月12日)
木材情報261 排出側の二極化に対応する受け皿は

 日本国民の生活レベルが「一億総中流」から富める者と貧しき者との二極化傾向に変化し、「格差社会」という言葉が一般化しつつある。話が少し脱線してしまったが、言葉の流行に合わせたかのように、廃木材を排出する側の意識も二極化がすすんでいるという。
 ゼネコンなど企業の社会的責任を強く求められる大手事業者では、ある程度のコスト高は覚悟のうえで、適正処理と安定した再資源化が確実に担保できる業者を選ぶようになってきた。その一方で、中小零細業者は処理料金だけで業者選びをしているところが多い。また、とくに中小解体業者は独自の「口コミ」ネットワークを持っており、処理料金の変動などの情報はまたたく間に広まるそうだ。
 最近、新たにチップ業界に参入する事業者が増えたことで、同業者間の競争が激しくなっていることから、廃木材のチップ化処理料金は長期下落傾向が続いている。チップ業者も処理料金や受入基準を緩和し広く浅く顧客を確保するか、再生品の品質などを最優先に大口顧客をつなぎとめるものを提案するか、排出側の二極化にあわせた受け皿を整備していく必要があるだろう。
 ここにきて価格競争を避け、製品品質や、安定した搬出先を売りにしたチップ工場も少なからず出てきた。これらの工場では高品質のチップをつくるために異物の選別除去に力を入れている。とくに破砕機投入前の選別に人手を惜しんでいないところが共通した特徴だ。
 ベストは、チップ業者の経営が安定することを大前提に、安い処理料金で高品質なチップを生産できる環境だ。そのためにはチップ買取料金の引き上げも必要で、需要家の動きも重要になってくる。


※定規格品を生産するわけではないので、品質管理が難しいのはよくわかりますが、むしろ品質に合った価格設定の方が大事です。取り引き関係がもう少しガラス張りになると価格が適正になってきます。


週刊循環経済新聞(2007年2月5日)
木材情報260 大需要時代の新たなリスク

 燃料チップを大量に使用するボイラが定期的なオーバーホールで施設を休止するときは、需給とともに年間スケジュールに入れてあることもあり、双方である程度チップをストックするなどの対策を講じて需給バランスを調整する取組が進めやすい。しかし、ボイラのトラブルなど不足の事態が発生したときの対応まではできていないのが現状だ。
 バイオマスボイラで起こりうるトラブルも、そもそもボイラ自体の問題だったり、燃料チップに混入した異物が原因だったりさまざま。トラブルの程度にもよるが、ボイラを修理する場合、たいていはいったんストップさせてから作業をする必要に迫られる。フル稼働状態に戻すには、少なくとも1ヶ月以上はかかるといわれる。
 東日本では昨年末、大口需要施設の一部が止まった影響で燃料チップの行き先が狭まってしまい、廃材量が落ち込む時期に入っているにもかかわらず、工場によっては受け入れ制限をしたところもあったという。取り扱うチップの量が大きな分、需要家が止まった場合のリスクも大きくなることは以前から指摘されていたが、実際多くのチップ業者が影響を受けた。
 燃料チップは若干質の落ちる廃材、とくに建物解体系の廃木材のリサイクル用途として大いに期待できるが、その製造過程まで質を落とす必要はまったくない。チップに混入した異物もボイラで使用する際のトラブルの一因であることから、出口を自らで狭めないためにも、チップ製造現場では異物、特に金属類の混入にいっそう注意を払っていかなければならない。


※これまで何度も指摘されていることの繰り返しです。廃棄物データシートを契約時にきちんと交わして、問題が起こらないようにするなど前もって何らかの対策を講じる必要があります。

最終更新:2007年03月23日 14:48