編集:足立将之(07/02/16)


住民や事業所が排出した廃棄物は、どこに運ばれ、どのように処理されているかの全体像は一般には示されていない。そこで、地方公共団体と委託処理先の廃棄物処理・リサイクル業者を対象にヒアリング調査を行っている。

(1)フロー調査調査の結果(中間報告)

 現在、大阪市、豊中市・伊丹市クリーンランド、京都市、城南衛生管理組合の4団体を対象に調査を行っている。把握されているフローの概要を以下に示す。

 調査は、対象となる団体の発行する清掃事業概要などをベースとしながら、各団体に処理フローの概要を確認し、廃棄物処理の区分別の当該年度における処理量と、依託処理先の業者名・所在地などを問い合わせるところから始まり、廃棄物の流れに沿って処理業者などを対象にヒアリングを行った。

1)大阪市

 大阪市では、一般廃棄物を家庭系、事業系の他に環境系に分けており、合計1609,000トンで、最も多い事業系が987,000トン、家庭系598,000トン、環境系24,000トンと続いている(図1)。家庭系のうち、普通ごみと粗大ごみは焼却・破砕され、関連施設で中間処理などを経て、焼却灰は北港や大阪湾フェニックスセンター(最終処分地)へ、金属類は再生業者へ持ち込まれる。焼却灰は大阪北港と神戸沖にほぼ同量ずつ埋立てされ、合わせると焼却ごみの20.5%を占める。

 資源ごみは鶴見リサイクル選別センター(大阪市鶴見区)、あるいは5か所の中継施設を経て委託選別業者3社を通じて処理される。このうち鶴見リサイクル選別センターの再資源先は以下のとおりとなっている。なお、ガラス(その他の色)とペットボトルの再商品化事業者の情報は日本容器包装リサイクル協会のホームページに掲載されている。収集された資源ごみのうち31.0%は焼却されている。

・アルミ・スチール上半期:大阪リサイクル事業協同組合

・アルミ・スチール下半期:協同組合大阪再生資源業界近代化協議会

・ガラス(無色・茶色)上半期:株式会社タカハシ(東大阪市)

・ガラス(無色・茶色)下半期:株式会社長谷川商店(大阪市)

・ガラス(その他の色):藤野興業株式会社(富田林市:指定法人)

・ペットボトル:根来産業株式会社(貝塚市:指定法人)

 容器包装プラスチックは、5か所の中継施設から委託選別業者4社を通じて容器包装リサイクル協会の指定する再商品化事業者(指定法人)に送られている。協会のホームページによると、プラスチックはJFEスチールの福山原料化工場で高炉還元剤として利用されている。

2)豊中市・伊丹市クリーンランド

 豊中市と伊丹市ではごみ焼却場の設置と管理を目的に一部事務組合を設立し、収集した廃棄物を両市合同で処理している。図2に示してあるように、豊中市と伊丹市では分別排出項目にやや違いはあるものの、おおむね可燃ごみは焼却かリサイクル、不燃ごみ、粗大ごみ、危険ごみは埋立かリサイクルが大部分を占め、一部は焼却処分されている。不燃ごみなどは粗大ごみ施設で破砕・選別してから鉄やアルミニウムは再生、可燃物は焼却、不燃物・プラスチック減容固化物は神戸沖に埋立てられる。

 可燃ごみの中で古布・古紙はクリーンランドのリサイクルボックス、豊中市のみの紙・布はストックヤードに集められ、再資源業者に搬入される。びんやペットボトルはストックヤード、プラスチック製容器包装は選別・減容施設にいったん集められ、各業者に委託される。プラスチック製容器包装のうち、その他プラは2社、発泡スチロールは1社に処理を委託している。

3)城南衛生管理組合

 他の団体とは異なり、一般廃棄物は可燃ごみと不燃ごみに加えて、自己搬入ごみ、容器包装廃棄物、剪定枝などの細かい区分ごとにフローが示されている(図3)。可燃ごみと自己搬入ごみの大部分は折居清掃工場で焼却され、大阪湾フェニックスセンターの堺基地に運ばれる。また、区分は「不燃ごみ」だが、奥山リユースセンター(粗大ごみ処理施設)で破砕されるごみの一部は「可燃」として焼却に振り向けられる。

 破砕ごみのうち、可燃・不燃の埋立ごみとプラスチック埋立ごみは、三郷山埋立処分地と宇治廃棄物処理公社の最終処分場へ運ばれるほか、容器包装廃棄物の選別残渣、小動物死体の焼却灰も同様の扱いを受ける。容器包装廃棄物と剪定枝は、エコポート長谷山の資源化工場で中間処理され、それぞれ再生業者に委託する。他にも、破砕不燃物に含まれる鉄やアルミニウム、家庭系廃乾電池、事業系魚腸骨は業者に再生委託される。

4)京都市

 京都市の一般廃棄物は収集形態によって、市、業者、持ち込み3つに分かれており、市による収集以外の方が量的には多い(図4)。市収集の定期ごみは直接、大型ごみ・一時多量ごみは破砕後の残渣が焼却処分される。缶・ビン、ペットボトルなどの資源ごみはいったん京都市南部資源リサイクルセンター運ばれてから、保管・選別され、それぞれ再生業者に処理が委託される。紙パックと使用済み乾電池は京都市内に設置された保管場所に回収され、再生業者へ運ばれる。廃食用油に関しては、南部クリーンセンターの東側に位置する京都市廃食用油燃料化施設でバイオディーゼル燃料に加工され、ごみ収集車や市バスの一部で使われている。

(2)調査上の課題

 調査では、自治体などにヒアリングして依託処理先を質問する必要があるが、以下のような課題があり、回答を得るのに時間がかかる場合が多い。

①調査意図の伝達が難しい

 自治体などの問合せ先担当者に調査の意図が伝わりにくいため、前もって知りたい項目を空欄にした処理フロー図をファクシミリで送付するなどといった工夫が必要となる。

②自治体内にまとまった資料がない

 たとえ調査意図が伝わったとしても、廃棄物の行く末に関する資料が各部署に分散していることが多く、集約・回答してもらうのに時間がかかる。選別施設ごとに個別に委託処理業者と契約している、契約した依託処理業者の一覧がないといったこともある。

③委託処理先を自治体で把握していない、あるいは公表できない場合がある

 容器包装リサイクル協会ルートでリサイクルを行うとき、前述のように2004年度以前の委託先は公開されていないので、自治体でも把握していない場合がある。実際には、どの処理業者に行っているのか把握していても公表できない可能性がある。

 また、大阪市のように、選別の一部を民間依託している場合、有価物の売却は選別を委託された業者と売却先の業者との契約となるため、選別後の依託処理先までは把握できていない例もある。

このような背景としては、以下の3項目が考えられる。

①自治体内にフローの追跡把握という考え方が浸透していない

 一般廃棄物処理の法的な責任範囲は、自治体と委託業者、容器包装リサイクル協会といったように、主体ごとに定められているが、廃棄物はこれらの主体を超えて移動するため、管理上は追跡調査の必要が生じる。自治体などでは、このような管理の意識・考え方が浸透しておらず、市民が廃棄物の行方を知ることの重要性の理解や、市民に伝えることで協力を深めようという意識が薄いと考えられる。

②売却した再生資源は、廃棄物として捉えられておらず、管理の意識が薄い

 売却した再生資源については、廃棄物処理法上、自治体が責任を負って管理する範囲としては考えられていないため、特に実態を把握しようとする動機付けが薄いと考えられる。

③情報公開を前提とした契約になっていない

 委託先との契約上、情報公開を前提とすることが定められておらず、従来情報公開してこなかった慣行、処理業者とのトラブル回避などから積極的に公開したくない心理が働いている可能性が考えられる。


最終更新:2007年02月16日 11:07