編集:足立将之(07/02/16)
青森・岩手県境不法投棄事件のような事件が二度と起こらないように、悪質な業者が淘汰され、優良な業者が育成される仕組みが求められている。処理を委託した産業廃棄物が悪質な業者によって不適正に処分され、撤去が必要となった場合は、排出業者が措置命令の対象となることもあり、安心して処理委託できる優良な処理業者を選択できた方が望ましい。また、不法投棄された産業廃棄物を撤去して原状回復させる費用は、基本的に不適正処理を行った者が負担することになっているが、倒産などによって費用が負担できない場合には行政による代執行を回避するために、処理業者の自己責任で廃棄物の撤去を行う仕組みが重要となる。
県が認可した一定の基準に基づいて、産業産業廃棄物処理業者育成センター(以下では育成センターとする)が産業廃棄物処理業の岩手県知事許可を有する処理業者のうち一定の基準に適合した者を認定(格付け)し、県民に公表する。格付けの審査基準には、「遵法状況(過去2年間に環境法令違反の有無など)」、「財務状況(債務超過の有無など)」、「管理体制(責任の所在の明確性など)」といった項目があり、産業廃棄物の処理を委託しようとする排出事業者が優良な処理業者を選定するための情報となる。
①対象者
岩手県知事の産業廃棄物処理業の許可取得者で業務実績が1年以上ある者
②認定基準
・育成センター業務規程に規定する自己評価表のマネジメント機能、施設・設備機能の必須項目をすべて満たしていること
・自己評価表の評価項目の合計点数が40点以上であること
③認定の有効期間
認定の日から2年
ランク付けの区分は三つ星が80点以上でかつ、育成センターに保証金を預託していること及び環境省評価制度に対応する項目を満たしていること、二つ星が60点以上、一つ星が40点以上となっている。
産業廃棄物処理業者が倒産や不適正処理などの事故に備えて、あらかじめ育成センターに一定の保証金を預託する。保証金を預託した産業廃棄物処理業者は、事故などにより緊急に産業廃棄物の撤去等が必要な場合には、育成センターから保証金の返還を受けて措置を講ずることができる。産業廃棄物処理業者の処理の安心度を高めるとともに、産業廃棄物の撤去において岩手県による代執行をなくすようにする。
①対象者
岩手県知事の産業廃棄物処理業の許可取得者
②保証金(預かり金)
1社につき100万円だが、(社)岩手県産業廃棄物協会会員は50万円
環境省の制度と比べると、すべての項目で岩手県の方がやや基準が緩やかになっている(表1)。しかし、岩手県の制度は格付けがあるので排出業者は情報公開の内容などから比較的自由に判断できる。
表1 環境省との相違点
項目 |
環境省 |
岩手県 |
対象者 |
業務実績5年以上 新規参入者を対象としない |
業務実績1年以上 |
遵法性 |
過去5年間不利益処分を受けていない |
過去2年間処分を受けていない |
情報公開 |
情報公開する内容及び方法が厳しい 会社情報など項目をすべてインターネットで公開 |
施設及び処理、組織体制は詳細な基準を設定 経営財務内容の公表まで求めていない |
環境保全 |
ISOなどの認証は必須項目 |
ISOなどの認証は加点項目 |
資料:いわての環境ホームページ
格付けは2004、2005年度は一定点数以上の者は基準適合(1段階評価)とし、基準適合であるか否かの認定としていたが、2006年度からは収集運搬、中間処理、最終処分ごとに3段階評価で認定している。格付はこれまで4回の認定により119社、保証金は80社が承諾を受けた。3段階評価で認定した業者数は三つ星が5、二つ星が39、一つ星が18事業者であった。格付けを受けた業者のリストはホームページに掲載されており、育成センターにリンクがある業者は下記の情報が公開されている(表2)。細目をみると、産廃情報ネットと内容はほとんど同じなことが確認できる。
すべての業者が情報を公開しているわけではなく、2006年度に認定を受けた62社のうち一つ星の7社は開示していない。33社は自社のホームページにリンクが設定してあるが、業者ごとに公開している情報のバラツキがあり、統一性が認められない。2004年、2005年度に認定を受けた業者に関しては、自社でホームページを運用している以外はまったく確かめる手段がない。しかし、一定の基準によって業者が格付けされれば、排出業者は選択の余地が与えられるので、制度としてはより柔軟性があると考えられる。
表2 基準適合業者の情報公開内容
大項目 |
細目 |
会社情報 |
会社名、代表者氏名、住所、電話番号、URL、E-mail、会社PR、リサイクルしているもの |
許可情報 |
許可の内容、取り扱う産業廃棄物の種類 |
公開情報 |
許可証の記載事項、施設及び処理の状況、財務諸表(法人の場合)、料金、社内組織体制、地域融和、自由記載 |
資料:育成センターのホームページ