作成:足立将之(07/02/15)
修正:野瀬光弘(07/05/02)
最終処分場は、土壌汚染の問題など周辺環境に悪影響を及ぼすリスクを抱えている。環境へのリスクを低減し、安全性を高めていくことは必要なことである。また、周辺住民は最終処分場に対し安全性・信頼性への不安などを少なからず抱いており、新規の処分場建設に対する住民との合意形成は困難な状況にある。そこで既存の最終処分場を延命化させる技術が開発されてきている。以下ではその技術内容を紹介する。
最終処分場の再生技術には目的による分類がある。この場合、①最終処分場の延命化に役立つ技術、②最終処分場の機能回復と埋立廃棄物の安定化に役立つ技術の2つの分類できる。溶融固化技術などのように、二分類の両者に重複して属するような技術もある。
一方、対策の実施方法としての技術分類という方法もあり、この場合は①埋立廃棄物の処理技術、②浸出水の漏洩防止技術と分けることができ、この分類では両者に重複することもない。よって以下で、この分類方法を元に、それぞれの技術を紹介する。
埋立廃棄物自体に処理を施し、浸出水の汚濁濃度の増加を防止を目的とし、廃棄物の無害化・減容化を行う技術である。さらにOn-site処理技術(除去処理技術)とIn-situ処理技術(原位置処理技術)に分けられる。前者は埋立地から廃棄物を掘削し、処理を施し埋立容量の確保を行う技術に対して、後者は埋立物を移動させずに埋め立てた状態で減容化を行う技術である。
廃棄物を掘削し処理を施すことで、安定化・減容化その両方の効果を得ることを目的とする技術である。また処理を施された廃棄物は、元の処分場もしくは別の処分場に埋め戻されることになるが、安定化による環境汚染の防止と、減容化による最終処分場の延命化を図ることが可能となる。以下で代表的な技術の概要を述べる。
焼却により、廃棄物の減容化を図り最終処分場の延命化を行うものである。また廃棄物中の有機物を焼却分解することにより、埋め戻し後に発生する浸出水の有機汚泥成分を低減化、有機物分解によるガスの発生抑制や地盤沈下の防止ができる
しかし焼却処理を行う中間施設が必要なことや、無機塩類や重金属の濃度は増加する可能性がある。
廃棄物処理の中で最も減容化・安定化に効果がある方法とされている。一般廃棄物[野範囲であれば、その種類を問わず処理が可能であり、生成物である溶融スラグは非常に安定しており重金属などの溶出はほとんどなく安定化にも役立ち、路盤材、骨材などの土木資材としても利用でき資源化技術でもある。
しかし溶融には多くのエネルギーが必要である。また高温処理を行うため重金属の飛散防止のため、排ガス処理や溶融肥培の問題が発生する。
RDF化が可能な廃棄物は主に厨芥、紙類など限られた廃棄物に限定されており、導入できる処分場が限られている。しかし選別が容易に行える場合には、減容化に非常な有効な手段となる。
コンポスト化に適した廃棄物の種類が限定されており、選別が必要となる。
焼却残渣などを原料としセメントと再利用し最終処分場の延命化を行う技術である。エコセメントは通常のセメントに比べ、塩素イオンを多く含むため、エコセメント内の鉄筋は腐食しやすいので無筋コンクリート、土壌固化剤、地盤安定剤などへの適応が提案されている。
エコセメント製造時に、重金属が濃縮したエコセメント飛灰が発生するため、飛灰処理が別途必要となる。また埋立廃棄物のエコセメント化には、セメント化が可能な物質を選別するなどの手間が必要となる。また、場合によって、埋立廃棄物を焼却処理した後、エコセメント化する方法も考えられている。
破砕・選別により廃棄物中に含まれる金属類を回収する以外にも、焼却残渣などに含まれる金属類を回収する技術が提案されている。
焼却残渣である焼却灰と飛灰では、含まれている金属が異なっている。焼却灰はFe、Cu、Mn(高沸点金属)などを多く含有し、飛灰はZn、Pb、Cd(低沸点金属)とCa、Cl、Naなどの成分が多く含有している。
比較的低温で加熱分解を行う安定化技術であるため、揮発性有機塩素化合物に汚染された土壌の修復技術として利用されることが多い。飛灰のダイオキシン対策としての利用も考えられる。
また、溶融固化技術に比較して、維持管理が容易であり、運転費用が安価であるという長所がある。
無機物もしくは有機物の重金属類固定剤、凝集剤などの薬剤を添加し、廃棄物の含まれている重金属類などを安定化し溶出防止を図る技術である。
埋立物にセメントと水を混ぜ固化することにより、溶出防止を図る安定技術である。比較的安価であるため、焼却飛灰の安定化に多様されているが、経年によるセメントの劣化や酸性雨による固化能力の低下など、長期安定化を行うためには問題も多い。
廃棄物を水と接触させることにより、溶出可能な物質を洗い出し安定化させる技術である。水との接触方法には、機械攪拌による方法や、槽に廃棄物を充填し散水させる方法がある。洗浄後の廃棄物は再び埋め戻し、溶出した汚水は水処理施設で処理を行う必要がある。
表1 On-site処理技術の特徴
技術名称 |
適応埋立廃棄物 |
得られる効果 |
減容化率 |
留意点 |
焼却処理 |
可燃ごみ、プラスチックなど |
安定化 減容化 |
中 |
焼却残渣対策が必要 |
溶融固化 |
可燃ごみ、焼却残渣など |
安定化 減容化 資源化 |
大 |
コストが高い |
RDF化 |
厨芥、紙類、木材、プラスチックなど可燃ごみ |
資源化 |
小 |
・可燃ごみに有効 ・焼却残渣対策が必要 |
コンポスト化 |
厨芥、し尿処理汚泥、浄化槽汚泥 |
資源化 |
小 |
厨芥、汚泥のみに有効 |
エコセメント化 |
焼却残渣など |
資源化 |
小 |
焼却残渣もしくは焼却処理後に適用 |
金属類回収 |
金属類を含む廃棄物、焼却残渣など |
資源化 |
小 |
回収物に適合する方法の選択が必要 |
低温加熱処理 |
焼却残渣など |
安定化 |
- |
有機塩素化合物などの特定の物質に有効 |
セメント固化 |
焼却残渣など |
安定化 |
- |
長期安定性に難あり |
不溶化 |
焼却残渣など |
安定化 |
- |
不溶化の目標物質に適合する薬剤選定が必要 |
水洗浄法 |
焼却残渣など |
安定化 |
- |
洗浄汚水の処理が必要 |
埋立物を移動することなく廃棄物を埋め立てたままで安定化・減容化を図り、地下水の汚染防止や埋立地の延命化、跡地利用の促進を目的とした技術である。掘削により廃棄物を乱すことがないことから、汚染の拡散の危険性が少ない。また掘削の手間が要らないことから、早期に対策を行うことができ緊急・応急的な対策としての効果が高い。しかし、元位置での安定化は、効果の確認が困難であり確実性に欠ける問題がある。
軟弱地盤を、圧密沈下させ地盤強度を増す工法である。処分場の廃棄物地盤で行うことにより埋立物の減容化うぃおはかることが可能である。廃棄物層の上に盛土をし、その重みで圧密沈下させるプレロード工法や、占め固めた砂杭を廃棄物層に打設し圧密沈下させるサンドコンパクションパイル工法などがある。
廃棄物層に重錘(5~25t)を高所(10~30m)から繰り返し落下させ、その衝撃力により安定化を図るものである。重錘の重量や落下の高さにより変化はあるが、ある廃棄物地盤での施工例では、圧縮率は約20%であった。
埋立物中に電極を差し込み通電し熱を発生させ、溶融、ガラス固化する技術である。有機成分と重金属類などの有害物質の安定化に高い効果を発揮し、無害化の点では効果が高い。しかし溶融可能な深さが約6mと適用が限定される。また固化装置、電源供給設備、オフガス処理施設、制御設備など多くの設備が必要となる。
原位置において汚濁物質の溶出防止に効果がある薬剤を注入し安定化を図る方法である。安定化の対象物により注入する薬剤の種類が異なる。また注入薬剤による地下水の汚染を防止するために、廃棄物層の範囲や地下水の流向、水量などを事前調査する必要がある。
原位置において、微生物を使い廃棄物層を浄化する技術である。汚染現場に栄養源や酸素を供給し地中内の微生物の働きを活性化させる方法や、外部から分解に有用な菌を投入する方法が提案されている。
最近では、硝酸イオン添加による廃棄物層内での窒素除去や、白色腐朽菌によるダイオキシン類の分解などが研究されており、最終処分場の早期安定化、無害化による跡地利用などに貢献する技術である。
表2 In-situ処理技術の特徴
技術名称 |
技術の特徴 |
得られる効果 |
留意点 |
反密促進技術 |
圧密沈下工法により、地盤を圧縮させる |
減容化 |
遮水工を損なわないように留意する |
動圧密技術 |
重錘を高所から地表面に落下させ、衝撃力により地盤を圧縮させる |
減容化 |
遮水工を損なわないように留意する |
原位置ガラス固化(ISV) |
廃棄物を原位置で溶融、ガラス固化する |
安定化 (減容化) |
・溶融深さが限られる ・ガラス固化自体の処理が必要 |
不溶化薬剤注入技術 |
薬剤を注入することにより、廃棄物の安定化を図る |
安定化 |
不溶化の目的物質に適合する薬剤選定が必要。薬剤による地下水汚染に留意 |
バイオレメディエーション |
微生物により廃棄物層の浄化を行う。比較的安価である |
安定化 |
微生物分解が可能な物のみが浄化対象となる |
遮水工の修復・設置や浸出水処理施設の設置など、最終処分場の構造へ何らかの対策を施す技術である。また遮水工による浸出水漏洩防止だけでなく、近年は処分上に屋根を設置することで、場内への雨水の流入を遮断することにより浸出水を低減させるクローズドシステム最終処分場(CS処分場)も普及してきている。CS処分場は屋根による効果は浸出水低減だけに止まらず、埋立廃棄物の飛散防止によって周辺環境の悪化防止や、降雪時にも最終処分場の稼動を可能にでき、幅広い利点を備えたものとして注目を浴びている。
表面遮水工が設置されている最終処分場において、埋立物を掘削し遮水工が損傷した箇所を直接補修する方法である。
埋立物を一度掘削しなくてはいけない点や、漏水見地システム等が設置されていない場合は損傷箇所を特定できないため埋立物すべてを屈折しなくてはいけないなど課題は多い。
表面遮水工が設置されている最終処分場において、損傷箇所が特定されている場合に適用が可能な方法である。補修が必要な部分に、ボーリングなどによりストロー上の筒を差込、直接止水効果があるグラウト材を注入する方法である。前記の補修方法と比べ、埋立物の掘削などの手間が必要ではなく有用な方法ではあるが、ほとんど施工実績がなく今後の技術開発が待たれるところである。
遮水工の損傷などによる浸出水の漏洩を防止するために遮断壁などの遮断工を施すための技術であり、地盤条件などにより様々な工法から選定される。
最終処分場の周辺に揚水井戸を設置することにより、廃棄物に接触したり、廃棄物の湧出水により汚染された地下水を強制的に揚水することにより汚染の拡散を防止する方法である。地下水量が少ない場合、応急的な処置として効果的であると考えられるが、揚水する量が多い場合や廃棄物の安定化に長期間かかる場合などは、水処理が必要なため、水処理施設の新設や、既存施設の見直しなどが必要になる。
最終処分場の遮水機能の回復ではなく、最終処分場の上部を遮水シートや不透水材による覆土などにより、雨水等が処分場内に流入するのを抑制し、浸出水事態の発生をなくすことにより汚染の拡散を防止する方法である。
この技術を適応した処分場はクローズドシステム最終処分場(CS最終処分場)と呼ばれている。CS最終処分場は、屋根などの被覆構造や遮水工により、外部環境と遮断することにより、安全性と安定化促進を確保する機能(コントロール:技術システムの側面)及び、地域社会との融和を図る機能(コミュニティー:社会システムの側面)を持つ。
このような機能を併せ持つことから、近年CS処分場の建設が進んでおり、、平成10年に「山形村一般廃棄物最終処分場:サンクスBB」(長野県)、「南魚沼郡広域事務組合枡形最終処分場」(新潟県)が完成したのを皮切りに現在、建設中のものも含めて30件以上(表3)の実績がある。以下でCS最終処分場の利点と課題を簡単に示す。
・外部から最終処分場のイメージが薄く、クリーンなイメージの施設である。
・閉鎖空間の埋立地であるため廃棄物の飛散、臭気の拡散などを防ぐことができる。
・発生する浸出水の量は降水(降雨、降雪)などの自然現象に左右されない。内部で散水を行うが、浸出水発生量が少なく、またその制御が容易にであるため、万が一遮水工が破損した場合でも地下水への影響を最小限に制御できる。
・埋立作業が天候に左右されない。豪雪地帯でも冬季の埋立が可能である。
・最終処分場のほか、資源の保管・貯蔵施設としても利用できる。
・人工地盤等で覆蓋した場合は、埋立中も上部地盤の有効活用ができる。
以上のような特徴を備えているため、従来の最終処分場と比べ、住民同意が比較的得やすく、大都市圏等の最終処分場に困窮している地区での導入も比較的しやすいと考えられる。また都市部で導入された場合、従来の最終処分場の山間部で建設されていたケースに比べ、廃棄物の運搬距離の短縮が可能であり、埋立後の跡地の利便性が優れているなど副次的利点も見られる。
屋根等の被覆施設を設ける必要があることから、建設コストは割高となる。被覆構造のため閉鎖的空間であるため、処分場内での場内環境の問題が大きい。その結果CS最終処分場は、内部環境や作業環境の保全対策のため換気設備や防塵設備が必要となる。また作業環境によっては人力での作業が困難とである場合もでてくる可能性もあり、その場合は、搬入・埋立システムの自動化、遠隔化の検討も必要となってくる。
<参考資料>
最終処分所技術システム研究会報告書(平成11年)