編集:足立将之(07/02/15)、野瀬光弘(07/05/10)
豊中市を含む全国各地で市民参加が試みられているが、参加する市民が少なく一部の人の動きに終わっている、継続的な取り組みは難しいなどの声もあり、どのような効果をもたらしたのかについての検証は不十分といえる。価値観の多様化が進み、廃棄物は無数にある市民の関心領域のひとつに過ぎないという前提のもとで、市民参加のあり方や進め方を検討する必要が出てきている。ここからは豊中市の事例を紹介する。
市民参加にあたり、多様な関心を持っている場合に、行政あるいは市民同士の関わり方にも様々なスタイルがあると考えられる。そこで、市民参加の段階を9つに分け、各段階における好意と市民・行政との関係を表に整理する。
市民参加は究極的には「9.仕切る」やさらに進んだ市民自治の実現が目標となるが、「協働とパートナーシップ」の考え方からすると、「8.支える」が当面の目標となる。現在は「3.要求する」から「6.加わる② 討議」の間を行ったり来たりしているのが実情といえる。
1.聞く・知る |
・自治体の動きに関心を持ち、広報誌・ちらしを読む、市役所に問い合わせる、個人・グループで見学するなどして情報収集する段階。 ・市民が得る情報は、行政主導で提供されたものを取捨選択する場合が多い。 |
2.考える・個人的実践 |
・得られた情報を基に自分なりの点検や評価・比較をし、一個人として可能な範囲で行動を実践する自己完結した動きの段階。 ・行政や他者へのはたらきかけはない。 |
3.要求する |
・公聴会への参加、意見書の提出、ごみ処理の苦情、公用料金の引下げ要望や提言・提案などを行って、市民から行政へ何らかの意思表示をする段階。 ・一個人として声をあげることが可能であり、その声は必ずしも他の市民と共有されているわけではない。また、要求に対する応答は行政の裁量に委ねられているため、一方通行に終わる場合も多い。 |
4.普及活動・意見交換 |
・市民間で情報発信したり話し合ったりして、市民の間に様々な考えや意見があることを理解・共有する段階。 ・やりとりは市民同士で行われ、行政にアクセスはない。 |
5.加わる① 審議 |
・行政が着手したことについて、行政と市民で決定を行う段階。 ・協議会や集会などの行政が設定した場に参加し、行政から出された政策案に意見を述べ、議論する。意見を述べる市民は市民代表としての性格を持つ場合が多く、行政も積極的に市民の意見を政策や施策に反映することを主眼としている。 |
6.加わる② 討議 |
・市民があるテーマについて主体的に着手し、市民相互に議論を交わす段階。 ・市民型買いに意見を述べ、相違を認めて尊重しながらも、つっこんだ議論をして考えを深めていく。政策・施策の案の作成までは至らない。 |
7.加わる③ 市民立案 |
・市民があるテーマについて主体的に着手し、相互に議論をかわしたうえで相違を超えて自ら案を作り、行政に提示する段階。 |
8.支える |
・行政と市民とのパートナーシップにより、市民が主体的に着手した事柄について行政とともに決定し、政策の実現や事業の推進を図る段階。 |
9.仕切る |
・市民主導の活動に行政を巻き込む段階。 ・あるテーマについて、市民が自らの手で運営し、管理を行っていくことになる。NPOが企画・運営するサービスへの資金提供などがこれに該当する。 |
資料:地域メディア研究所「212の21世紀~マチは変われるか 第3部・情報編」をもとに作成。
「1.聞く・知る」から「5.加わる①討議」の段階までは、市は何らかの体制・制度をつくっているが、それより上の段階に対応する体制・制度は今のところない。さらなる段階にステップアップすることが困難な理由と問題点としては以下の3点があげられている。
希薄な近所付き合いや他人に無関心といった点から、市民の間で地域における日常的なコミュニケーションが乏しく、具体的な問題意識を共有する基盤が整っていない。また、行政が「5.加わる①」を意図して市民委員を公募しても、委員を務める市民の意識が「3.要求する」の段階に留まっており、実態として会議が公聴会的なものに終わってしまう場合がある。
計画策定ではできあがった時点で参加の場が終わり、一過性のイベント的なものになってしまうことが多い。計画を実行する上での責任が行政側のみにあると市民が錯覚に陥ることがある。
市民が参加しても、述べた意見がどのように反映されるかが最初から設計されておらず、評価基準が不明確である。市民の意見が実行段階でどのように反映されたかが目に見えるかたちで市民にフィードバックされることは非常に少ない。
市民参加の段階 |
市民の行動 |
豊中市の体制・制度 |
0.参加の不在 |
無関心・行政依存 |
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1.聞く・知る |
情報収集・照会・見学 |
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・広報誌を読む ・市役所に照会 ・グループ見学など |
・広報記事掲載 ・ちらし配布 ・電話・窓口応対 ・施設見学受け入れ ・市民講座・出前講座実施 |
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2.考える・個人的実践 |
点検・比較・評価 |
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・得られた情報を基に点検や評価・比較 |
・回収ルート整備 ・情報提供 |
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3.要求する |
苦情・注文・提言・提案 |
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・公聴会への参加 ・意見書の提出 ・苦情、要望など |
・公聴会 ・電話・窓口での苦情対応 ・投書、意見書受理(市民の声) ・市政モニター |
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4.普及活動・意見交換 |
市民間での意見共有 |
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・市民の間に様々な考え・意見があることを理解・共有する
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・市民活動情報サロン ・くらしかん登録グループ ・廃棄物減量等推進員制度 ・アジェンダ21推進協議会 |
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5.加わる① 審議 |
行政案への意見 |
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・協議会、集会に参加し、事務局から出された政策案に意見を述べ、議論する |
・ごみ基本計画策定に向けた市民委員会 ・廃棄物減量等推進審議会市民委員 ・ごみ処理施設構想策定に向けた会議市民委員 ・ごみ減量計画策定に向けた会議市民委員 |
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6.加わる② 討議 |
市民相互での議論 |
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・互いに意見を述べ、相違を認めて尊重しながらも、突っ込んだ議論をする |
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7.加わる③ 市民立案 |
市民自らによる立案 |
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・相違を超えて自ら案を作成 |
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8.支える |
事業推進のパートナー |
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・政策の実現や事業の推進 |
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9.仕切る |
自主運営、管理、NPO |
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・自らの手で運営、実行 |
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豊中市でのごみの減量・リサイクルをこれからどのように進めていくかについて、それぞれの地域から市民の視点で考え、提案活動を行っており、活動内容は市のホームページで照会されている。具体的には、推進員会議・研修会等への参加、ごみステーションの調査や啓発チラシの作成、ガレージセールの開催、マイバッグキャンペーンなどを行っている。
2005年12月には「粗大ごみの適正な費用負担の導入に関する計画について」を市長に提出した。審議会の委員20人のうち3人は公募市民となっており、議事録はホームページで公開されている。粗大ごみの排出抑制について、拡大生産者責任の確立や市民のライフスタイル見直しといった基本的な考え方を提示している。
2005年4月に開設され、ごみ減量・リサイクルに関する情報発信事業、リサイクル教室の開催といった実践事業、ごみ減量・リサイクルに関する講演会、リサイクル工作品の展示、リサイクルサポーター制度の運用などを行っている。また、ホームページでも見ることができる「不用品交換コミュニティボード」では不用品を譲りたい人、譲ってほしい人の情報が掲示される仕組みとなっている。
長野県の最南端下伊那郡のほぼ中央に位置しており、人口約4,200人(2003年)と小さな村ではあるが、近年の若者定住施策により出生率が1.97と全国平均を大きく上回っている。1999年の合併特例法の改正を経ても、効率的な行財政運営と住民参加の成果に鑑みて単独村としての存続を決定し、2004年には下條村自立(律)宣言を行った。
下條村の自立(律)にあたって提示された地区懇談会資料には、現況として以下の4点があげられている。
「村民が村の活力源」との考え方から、若者向村営住宅や分譲住宅地によって人口増加を図り、1990年の3,859人から2003年の4,163人へ増えた。入居者には地域コミュニティにうまくとけ込めるように、入居条件として消防団をはじめ集落の中の役割を果たし行事に参加することを求めており、契約書にその旨記入されている。
②豊かさを直に実感できる生活環境の整備
・資材供給による「道なおし」毎年盛んに実施され、全村民参加による村づくりが定着
住民から工事の要望があれば、自治会長などが意見をまとめて村に申請する。受益戸数が3戸以上であれば、村がコンクリートなどの資材を供給し、村民が自らの手で施工しており、今では毎年約100件の施工実績がある。
・合併浄化槽の全村導入により、初期投資や運営費の大幅コストダウンに成功
下水道ではランニングコストが村にかかるが、合併浄化槽は住民の持ち物となって村には負担する必要がない。使い方次第でコストが安くなることから、下水処理に対する住民の自己責任の意識を育むことができる。
村負担の少ない「有利な起債」を活用し、道の駅、あしたむらんど下條(図書館、アートギャラリー、会議室などを備えた多目的施設)、いきいきらんど下條コスモホール(公営結婚式場・披露宴会場を併設)、村営住宅などを建設し、多様化した村民ニーズに対応している。
・官と民の役割分担の明確化により、効率よい福祉医療サービスの提供を実現
・中学生までの医療費無料化
・保健予防、介護・痴呆予防活動により男性の平均寿命が80.1歳と県下1位