編集:足立将之(07/02/15)、野瀬光弘(07/05/10)
これまで大部分の自治体では廃棄物への対応が対症療法的であり、積極的な取組は一部に限定されていた。この背景には、自治体と住民との意識差が大きいことがあげられ、市民が計画策定に関与することはほとんどなく、良好な協力関係を築く状況にはなかった。実際に、NIMBY問題(自分たちの地域には建設してほしくないとする住民意識)は廃棄物関連施設の新規建設や改築に伴って数多く発生している。
住民の環境意識は一部で高まってきつつあるものの、市民自らが廃棄物減量化やリサイクル、有料化制度の導入などにどのように関わったらいいのかはよくわかっていないことが多い。こうした状況下では、まず住民に対して参加の場があることを広報した上で、廃棄物計画の策定にあたる必要がある。ここでは、住民の視点に立ち、適切な情報をわかりやすく伝達し、その要望・考え方を適切に理解し、それらを話し合い・行動に反映していくプロセスにおける計画策定の流れを示すことにする。
廃棄物計画の策定プロセスは、「構想計画→基本計画→整備計画→実施計画」の順序で構成されている。各計画段階においては、設置した市民参加の委員会を計画のチェック機構として位置づけており、合意形成が段階的に図れる。廃棄物計画の目的・対象が公衆衛生や廃棄物の適正処理のレベルだけではなく、生活環境全般まで多様化、広範化している。そのため、廃棄物計画は自治体の総合計画などの中で位置づける必要があり、計画ごとに市民との合意形成を図ることとなる。
廃棄物計画の策定に関しては、経費負担をする自治体にとって、市民が策定する計画の内容が実情にあっていれば受け入れやすいが、そうでない場合は見直しも含めた対応が必要となる。ここで、市民が策定する計画の内容はシステムズアプローチと呼ばれている。公開型の計画策定と住民参加では、廃棄物計画などの作成のみならず、検討課題が発生した時点で公開委員会を開催するなどの対応が可能である。
市民参加には度合いや計画決定権などから表1のように分類できる。従来は受身・間接的な参加をしていた市民が次第に意識が高まり、直接的・積極的に計画策定に参加している東京都武蔵野市などいくつかの事例がみられる。例えば、京都市ごみ減量推進会議の場合は、行政によるイニシアチブが強く、住民参加の度合いがやや弱いことから、表の中央くらいに位置すると考えられる。
表1 市民参加の度合い・計画決定権などからみた市民参加の方式
市民参加の度合 |
計画決定権からみた分類 |
市民参加の方法(例) |
住民とのかかわり・検討課題 |
受身 間接
直接
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行政のみで計画決定 (行政→住民) |
○住民説明会への参加 ○工場見学会への参加 |
○受身 ○一方的な伝達情報 ○住民の意向の反映の機会が少ない |
行政主体の計画決定 (審議会など→住民) |
○公聴会への参加 ○処理施設などの都市計画(案)の縦覧・意見書の提出 |
○受身・間接的 ○やや直接的な意向の反映が可能となる ○意向の反映の決定権は行政にある |
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行政と住民による計画決定 (協議会など→住民) |
○運営協議会などへの住民代表参加 ○対話集会などへの参加 |
○住民・行政相互の意向の疎通が可能となる ○基本的な決定権は行政にある。協議会の決定事項は行政・住民の相互の信義にもとづき実行 |
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住民主体の計画決定 (住民→行政) |
○住民投票などによる一般市民の直接参加 ○住民による組織を結成し、計画決定・実行 |
○直接的な住民の意向反映 ○直接参加する住民の範囲をどう設定するかが課題 |
資料:高橋富男・古市徹(2002)を一部改変