生ごみ処理技術
作成:野瀬光弘(5月8日)
食品廃棄物は、廃棄物処理法に基づいて食品製造業から発生するものは産業廃棄物、食品流通業、食品小売業、外食産業から発生するものは一般廃棄物(事業系)に区分されている(図は省略)。その発生量は前者が490万トン、後者が646万トンの合計1,136万トンと推計されている(表1)。食品リサイクル法では、再生利用の手法を肥料、飼料、メタン、油脂・油脂製品に限定している。
食品製造業から排出される食品廃棄物は、比較的規模の大きい事業所から排出されることから、まとまった量の確保が比較的容易で、組成が均質で安定しているため、再生利用率は62%と高い。一方、食品小売業・外食産業から排出される食品廃棄物は、多数のサイトから少量ずつ排出される上に、組成が一様でないこともあって、再生利用は進んでいない。食品小売業は22%、外食産業は12%の再生利用にとどまっている。
表1 食品廃棄物の発生及び処理状況(平成16年度)
年間 発生量 (万トン) |
発生 抑制 (%) |
減量 化 (%) |
再生 利用 (%) |
再生利用の用途別仕向割合(%) |
||||
肥料化 |
飼料化 |
メタン化 |
油脂化等 |
|||||
食品製造業 |
490 |
5 |
5 |
62 |
55 |
42 |
0 |
3 |
食品卸売業 |
75 |
6 |
2 |
33 |
42 |
57 |
- |
1 |
食品小売業 |
260 |
4 |
1 |
22 |
41 |
49 |
1 |
9 |
外食産業 |
310 |
3 |
1 |
12 |
45 |
40 |
2 |
13 |
食品産業計 |
1,136 |
4 |
3 |
37 |
52 |
43 |
0 |
5 |
資料:農林水産省「食品循環資源の再生利用等実態調査」
食品廃棄物は未加工の状態では水分が多すぎるので、何らかの副資材を加えることによって肥料化できる。
食品廃棄物の飼料への利用は、かつては養豚農家で盛んに行われていたが、衛生的な問題や配合飼料の普及等により衰退してきた。配合飼料原料の大部分は輸入に依存しており、国内の飼料用穀物の自給率は平成15年の時点で23%に過ぎない。このことから、食品廃棄物の飼料化は飼料自給率の向上にも寄与する。
現在、主として以下のような飼料化技術による装置が開発されている。
①油温脱水方式(天ぷら方式)
生ごみを、廃食油等を利用して脱水、乾燥させる方式。札幌市の生ごみリサイクルセンターや京都府下の京都有機質資源等で実際に稼動している仕組みで、粉砕した生ごみと廃食油を混ぜ、減圧状態の圧力釜に入れて100℃前後の温度で生ごみの天ぷらをつくって生ごみを乾燥させ、それを脱油し、粉砕加工する。
生ごみ→熱処理・乾燥→固液(油)分離→脱脂→飼料
↑ ↑ ↓ ↓
補給油 リサイク ル 油(動植物)
②発酵乾燥方式
生ごみに高温発酵菌を加えて加熱発酵し、乾燥させる方式。生ごみに水分調整材として米糠やフスマ等を加え、さらに好気性の高温発酵菌を加え、加温・攪拌し発酵、乾燥させる。鹿児島県で焼酎廃液を利用したシステムが稼働している。
(発酵菌)
↓
生ごみ→発酵→熱乾燥→粉砕・ふるい→飼料
③ボイル乾燥方式
生ごみを高温の蒸気で乾燥させる方式。内部で回転する特殊なフィンで被乾燥物を内面の垂直加熱面(蒸気間接加熱)に掻き上げ、薄膜状に接触させて乾燥させる。横浜市有機リサイクル協同組合(平成13年設立)の運営する食品リサイクル加工センターで家畜の配合飼料を生産している。
④湿式発酵方式(リキッド方式)
対象物を粉砕し粥状にして、高温・高圧で殺菌した後に発酵する方式。この生成物はリキッド状の生成物であるのが他の方式と大きく異なる特徴である。しかし、畜産農家の給餌システムがリキッド状のものに対応していることが前提となる。現在のところ、この方式で飼料を生産している事業体は国内に見あたらない。
生ごみなど有機性廃棄物を微生物の作用で発酵させ、メタンが主成分のバイオガスを生成させる。メタン発酵により発生するバイオガスにはメタンが60%程度含まれており、燃料としての価値が高い。発生したガスの利用用途は、施設・設備で内部利用する方法と外部に供給する外部利用に大別され、直接燃料利用と燃焼後の廃熱利用に区分できる。下記の図に示すように(図は省略)、廃熱利用は温水として供給することになるが、燃料利用についてはガスボイラ等で直接利用する場合と、発電して電力として供給する場合がある。また、ガスの発生量が多い場合にはガス会社や近隣工場等に供給することも可能である。平成10年に事業を開始した京都府八木町(現南丹市)のバイオエコロジーセンターは、家畜ふん尿におからなどを混ぜて発酵させたら発生するガスを自家発電の減量に使っている。
食品廃棄物等に適用されている技術は幅が広く、現在開発段階の技術も多い。現状では、肥料化、飼料化、バイオガス化などが採用され、排出量の多い食品加工業、ホテル、レストラン等の事業所から集められた食品廃棄物が利用されている。これらの処理方式を食品廃棄物に適用した場合の特徴、課題を整理して以下の表に示した。
肥料化、飼料化、バイオガス化は、従来から生ごみ処理として利用された技術で実績もあり、基本技術としては問題はない。しかし、資源化する場合には、処理によって生じる生成物の市場価値があるか、市場価値を確保するための挟雑物除去等が問題となる。肥料化は可燃ごみ全体を対象として機械選別する方式が研究開発されていたが、建設費・維持管理費が高くなること、挟雑物の混入が多くなることから実用化に至らなかった。成功している事例では、生ごみのみを対象として分別収集の徹底により良質なコンポストを生産しており、分別の良否が成功の鍵といえる。分別の必要性は、製品の特性により飼料化、肥料化、バイオガス化の順である。
表2 食品廃棄物の処理方式の比較
項目 |
肥料化 |
飼料化 |
バイオガス化 |
|
対象廃棄物等 |
食品加工残さ、卸小売食品残さ、家庭系厨芥 |
食品加工残さ、卸小売食品残さ |
食料品製造残さ、食品加工残さ、卸小売食品残さ、家庭系厨芥 |
|
処理規模 |
戸別~小規模~大規模 |
小規模~中規模 |
小規模~大規模 |
|
処理規模は戸別から大規模まで対応可能 |
大規模施設では収集運搬時間がかかり鮮度が保てないおそれがある |
1トン/日の小規模施設の実績はあるが、規模が大きいほうが望ましい |
||
実績 |
比較的多い |
数は少ない |
数は少ない |
|
生成物 |
有機肥料、土壌改良材 |
畜産等飼料 |
バイオガス |
|
生成物の価格 |
無料~8,000円/トン |