【種別】
人名

【初出】
新約十三巻

【CV】
松岡 禎丞(ゲーム『とあるIF』)


【概要】

学園都市の外からやってきた、『どこにでもいる平凡な高校生』を自称する少年。
上条幻想殺しと同種にして対極とされる異能力、『理想送り』をその右手に宿している。
魔神娘々ネフテュスの前に突如として現れ、彼女達を含む全ての魔神を追放するという衝撃的な登場を果たした。

【人物・性格】

茶髪で身長は171cm、特に鍛えられているわけでもなく「貧相」と自認する体格の持ち主。
はいむら氏によれば、顔周りは上条と似せているが、
全体的なキャラクターデザインは削板軍覇の初期案をベースにしている。
これといった個性や趣味もない事を気にしていて、首の骨を鳴らす事を癖にしようとしているが、殆ど鳴っていない。
が、上条と対立した際に感情が高ぶった時、初めて音を立てた。
優しそうな声色だが、その言動の節々に退廃的な雰囲気がある。
去鳴(サロメ)という義理の妹がいる。

上里自身は学園都市の人間ではなく、日本の地方都市にどこにでもあるような高校の生徒。
能力を手に入れるまでは平凡な学校生活を送っており、
女性関係も、上手く会話できない疎遠な幼なじみの獲冴や、ちょっと気になるクラスの園芸部員暮亞程度。
上里もそれに満足しており、平凡な日常を愛していたと語っている。
しかし「絶滅犯」の義妹サロメに対し、兄として普通に彼女に接していた事から、
理想送りに関係なく既にこの時点で異常性があったと思われる。

11月初頭から、彼は自身の右手に違和感を覚え始めた。
その力に呼応するかのように「困難に苛まれている少女」達が現れ、
上里が語るところの「女の顔をした物ならなんでも救うクソッタレな性質(=ヒーロー性)」により、彼は少女達を助けていくことになる。

ところが、少女達は上里を異常な程に慕いだし、
更には原石魔術師といった常軌を逸した存在と化していった。
(これは上里視点での話であり、理想送りのせいとは明確に証明できない。
上里が認識していなかっただけで元からそうだった可能性もある。)
そして少女達は、上里勢力と呼ばれる「上里の為になんでもする」集団と化した。
この有様を目の当たりにした上里は、「魔神が与えた理想送りのせいで、
自分も彼女たちも望んでいた未来を無理矢理変えられた」と認識し、
自らの日常を壊した魔神への復讐を誓う事になる。

しかし、上条の推測によれば、「普通の高校生」でしかない自身を慕う少女達が上里には理解できず、
「これは理想送りによって作られた繋がりだから、右手が消えた時に自分から離れていってしまう」
という可能性に怯えていただけだという。
かつてオティヌスが上条に「偽上条が上条の居場所を奪った世界」を見せたように、
魔神を倒すことでその恐怖を無くそうとしていたのではないか、と上条は指摘している。
実際、理想送りを木原唯一に奪われた後も上里勢力の少女たちは上里を慕い続けており、上里も上条の推測を認めざるを得なくなった。

上条に対しては、最初は「自分と同じく望まない能力を押し付けられた被害者」として友好的に接しようとしたが、
思想の違いで対立し、以降は一触即発な関係になっており、
翌日出会った際には本気の喧嘩をした。
上里の信念は「迷いながらも抱いた理想を現実に負けずになし遂げさせる」といったものであり、
相手の譲れない矜持を尊重し、後押しをする事で救う。
上条が「幻想を殺し『否定』して」救うのに対し、
上里はいわば「理想へ送り『肯定』して」救う。

右手の力には辟易しているが、サンプル=ショゴスを利用したトラップ工作にも怒りを露わにするなど、根本的な思考は善人のそれである。
上条と同じように目の前の人間を見捨ずに必ず救っており、
だからこそ上里勢力という集団が出来上がったのだと言える。

【能力・スキル】

彼の特異性は右手に宿った『理想送り』の力だけではなく、
彼自身が概念的な特異性・異常性を持つ存在である。
自己評価は「何事も平均値かそれ以下しか叩き出せない凡人」と低いものの、
僧正が「幻想殺しは偶然で上条当麻に宿ったのではなく、
神浄の討魔たる魂の輝きに惹かれて定着した」と語っていたように、
ネフテュスは「上条当麻と同じように、上里翔流もまた、理想送りを引き寄せるほどの何かを持っていた」と考えていた。
反りが合わない上条でさえ、「上里もまた皆に慕われるヒーローである」という一点だけは認めている。

理想送りの力を失ってからも、「もし学校にテロリストが現れたらどうする?」という妄想をもとに、
日常雑貨を使った戦法で100m超級のエレメントを難なく倒す等、平凡とは言いがたい戦闘センスを見せている。
上里に言わせれば「平凡であるがゆえの自由度の高さ」であるようだが、
その様子を見た上条からは「これが本当にどこにでもいる平凡な高校生なのか」と疑問を持たれており、
作中の描写でも「どんな非日常も日常として実行できてしまう」という異常性を生まれつき持っていることが示唆されている。

【作中での行動】

初登場は新約十三巻。
娘々とネフテュスの前に突然現れ、娘々を新たな天地へ追放する。
その後、「他の魔神達は…?」と尋ねたネフテュスに対して「知らないし覚えていない」と返し、
続けて消し飛ばした。
しかし主要な臓器が別の場所に保管されていたため、結果的には逃走を許してしまった。
彼の存在は真のグレムリンの魔神達はもちろん、
アレイスター=クロウリーですら予想できなかった事であり、
娘々やネフテュスの前に姿を現した際に初めて存在が確認され、
ローラ=スチュアートのみが最初からその存在を感知していた。

新約十四巻。ネフテュスが上条へと逃げ込むことを予見し、上条の前に現れるが、
突如現れた『』と『黒』の戦闘に巻き込まれたため、一時上条と共闘。
『黒』の正体であったパトリシア=バードウェイを回収し、現場を離れる事になった。
上里勢力の絵恋達と合流し、パトリシアの事情を聞いた後、
上里は『サンプル=ショゴス』の除去が難しい事を踏まえ、 肉体ごと理想送りで全て消滅させる手段を提案したが、
「姉を救いたい」という強い思いから彼女はこれを拒否。
パトリシアに理想送りが作用しなかったことで
「命をかけてでも姉を救う」という彼女をヒーローとして尊敬し、望みを叶えるために協力を約束した。

再び上条と対峙し、
「望みもしない力を与えられ、日常を乱された者」として同類だろうと期待したが、
上条に
「俺とお前は全く違う」「他人を信じることができなかったから疑念を払えなかった」
「自分を信じることができなかったから卑屈に定義付けた」と評され憤る。
『幸運』で卑屈になった上里と、『不幸』で前向きになった上条は決裂。

レイヴィニアとパトリシアの激突ではパトリシア側につき、
上里勢力を投入した上で上条達と交戦。そこで上条と再度主張をぶつけ合うが、
最後まで両者を救うための方策を諦めない上条に押し負けることになった。
結果的に上条が考案した暮亞の能力を利用するパトリシア救出作戦に協力した。
作戦後、上条に「魔神に対して復讐しようと思わないのか」と尋ねるも、
「パトリシアを救ったネフテュスを見ても『悪』だけしかないように見えるなら、お前の方こそが敵だ」と断じられる。
最後には「幻想殺しと理想送りがぶつかったらどうなるのか?」という純粋な疑問を解消するため、再び上条と激突した。
理想送りは幻想殺しに打ち勝ち、上条の右腕を消し飛ばした。
しかしその直後に腕の『奥』から出てきたモノに襲われ、深手を負いながらの撤退を余儀なくされた。

撤退後、アレイスターの意向を受けて現れた木原脳幹と対峙。
理想送りで対魔術式駆動鎧を消し飛ばされ、
「新たな天地を望むか?」と問われてもなお、 『願望の重複』をもたらすことがなかった脳幹に対し、敵として敬意を示した。
抵抗する脳幹を警棒のような物で叩きのめして瀕死にした後、どこかへ姿を消した。

新約十五巻。僧正がとある高校を破壊したため、上条達は別の学校の校舎を間借りすることになったが、
上里自身も偶然その学校に一足先に転入しており、図らずも激闘から一夜明けて上条と再会することになる。
地の文曰く、ここでまたもや軽い殺し合いになった模様。
初日はお互いいがみ合いながらも平穏な生活を送った。
一転してその次の日は、去鳴が学園都市に侵入したことを利用し、対処に協力する振りをして上里勢力と共に上条の殺害を決行。
しかし、上里を元に戻す為に上条が必要と判断した去鳴が上条を助けた事、
去鳴と交戦していた一方通行が現れた事により上条を逃す。

その後、上条の男子クラスメイトと上条の右腕から出たものの正体を掴もうとしたが、
復讐を図る唯一の策により隙をつかれ、理想送りごと右手を切断され出血多量で気を失う。
辛うじて意識を取り戻すが、上里勢力が自身の右手を簒奪した唯一に従い自分を殺そうとすると思い込み、
近づく少女達に対し初めて恐怖を露わにした。
しかし、以前と同じく自身を慕う彼女達の姿を見て自分の勘違いを悟り、迷走を止めて正当な進化を歩むことを決意した。
そして理想送りを取り戻すべく、上里勢力の少女達と共に唯一へと立ち向かった。

新約十六巻。エレメントの活動を抑えるために、
府蘭に指示を出して学園都市に大熱波を引き起こした。
自身を「平凡な高校生」だと強調しながらも、右手がない中で
「もし学校にテロリストが現れたら?」という妄想をシミュレートし、
日常雑貨を使った戦法で100m超級のエレメントを難なく倒す等、卓越した戦闘センスを見せた。
水晶の塔」の破壊工作後に常盤台中学を急襲してきた唯一から上条たちを救った。
そこで上条を自分達の拠点に連れていって事情を話し、唯一いるという『窓のないビル』への殴り込みを持ちかけて協力を得る。

唯一との決戦では、自身と同じ復讐者である唯一の思考を読みつつ、
上里勢力が「世界」を把握する連携で、A.A.A.を駆使する唯一に理想送り無しで対抗する。
獲冴の能力によるハッタリで唯一を動揺させ、その隙にA.A.A.の破壊に成功。
が、唯一の策にハマり、ブースターによる全面焼却を阻止するために理想送りを使わざるを得なくなってしまう。
既にこの時点で上里は「復讐を果たしたい」「周囲への被害を抑えたい」という、相反する願望を抱えてしまっていた。
理想送りを使用すれば自身が『新たな天地』へ追放され、使用しなければブースターの高熱で全員が消し炭になる。
自分の追放を覚悟の上で強引に繋ぎ合わせた右手を振るい、上条達を死守。
共に戦った少女達を上条に託し、笑いながら世界から消滅した。

新たな天地』に送られた後は、先に追放されていた魔神たちに死なない程度にお礼参りされた。
娘々が冗談めいて「演武」と言うように、かなり加減されていた。

その後、彼に悪意を抱いていない娘々とネフテュスに、
彼を本気で殺害しようとする魔神達から保護され、全力全開の「魔神」同士の本気の戦闘を安全圏から目撃する。
その最中、
「上里翔流はどこにでもいる平凡な高校生『ではなく』、非日常の妄想通りにどうにかしてしまう自身の異常性に理想送りが宿ったのではないか。そしてそれを自覚していたのではないか」
などとネフテュスと娘々と押し問答を続ける内に
「ありふれた世界の中で何度でも挑戦し続けたい、輝ける自分に!」という答えを口にする。

そして二柱の魔神はその答えに価値を見いだし、上条たちがネフテュスを媒介にして発動させた術式により、『新たな天地』から現世に舞い戻った。
その後「理想送り」の力を消すために世界を旅することを決め、上条に別れを告げて学園都市を去った。

【口調】

一人称は「ぼく」。二人称は「きみ」。
理想送りの使用時には、「新たな天地を望むか?」と問いを投げかける。
「ぼくは上里翔流。どこにでもいる平凡な高校生さ」 
「なあ、一つ教えてほしいんだ。きみにとっての『救い』の定義を」 
「新たな天地を望むか?」

【余談】

オティヌスから「上条が天然のダイヤなら上里は人工のダイヤ」と称されている。
が、これは上条の理解者であるオティヌスが上里を色眼鏡で見ていた故の評価である。
よって、上条と交流を交わした上里勢力の去鳴、琉華、府蘭が上条を高く評価したように、その逆もあり得ると言える。

また、本人が素晴らしい輝きを持ち多くの人を惹き付ける点、
描いた理想像をまっすぐなぞり、それを笠に着る事無く困った人を助け出す点、
右手に宿る力の名が自身の本質そのものを表す点、
そして何より、これらを本人がまるで自覚していない点が徹底して上条と共通している。
なお、
  • 違和感を感じ始めたのは11月初頭(第三次世界大戦前後)
  • 明確に『身に宿る力』と自覚したのは2、3日前(サンジェルマンの騒動前後)
と、時系列がズレていることから、
理想送りを使わずに、最低でも意識外で使うことで少女達を救っていたことが分かる。
つまり上条と同じく、自分の力に頼りきらずに多くの人を救ったということになる。


最終更新:2021年06月28日 08:13