【種別】
人名(通称)

【元ネタ】
北欧神話における雷神、トールより。
Wikipedia - トール

【初出】
新約五巻

【CV】
斉藤壮馬(ゲーム『とある魔術の禁書目録 幻想収束』)


【解説】

魔術結社『グレムリン』の正規メンバーの一員である魔術師
正規メンバーの中でも特に直接的な戦闘行為を専門に担当し、
その破格の実力から「戦争代理人」と称される。

【人物】

金髪青眼、色白の肌に腰までかかる長髪と、どこか少女的な印象を受ける少年。
黄色と黒を基調としたぴったりとした上着とズボンを着用し、肩にはストールを纏っている。

彼の行動原理は「力を求める」「助けられる人を助ける」の二つ。
  • 強敵と戦闘を行い、「経験値」を得ることで『成長』する(曰く、自己鍛錬だけでは限界がある、とのこと)
  • その過程で助けられる人は助ける
というサイクルを繰り返している。

「人を助けるために力を求めている」のか「力があるから人を助ける気になった」のかは
もはや本人ですら分からなくなってしまったものの、結果として「個人の闘争が戦争規模になる」ほどの破格の力を持つに至った。
この基準に従い、自身の成長に繋がる強敵と戦い『経験値』を得ることを目的としている。

このように戦闘狂ではあるものの、決して悪人という訳ではない。
全てを流血沙汰で解決しようとするほど狂った感性をしているわけではないし、
(曰くスプラッター映画は苦手だし、お化け屋敷に入りたいとは思わないとのこと)
自身のケンカに無関係な人々を巻き込むことを「後味悪い」と思える程度の良識は持ち合わせている。
そのため自らの属する『グレムリン』の行いにも強い憤りを感じ、愛想を尽かした。
しかし「経験値」を得て『成長』するためなら笑顔で自らの腹を拳銃で撃ち抜いたりと、傍から見れば常軌を逸した行動を行える面も持っている。

そんな彼は最近強くなりすぎて、
  • 「自分と戦うに値するほどの強敵が中々居ない」
  • 「いたとしても、それほどの力を持った敵と全力で戦えば周囲の人間を巻き込んでしまう。それは後味が悪い」
という悩みを持っている。

そこに来て上条当麻は、
  • 「戦うに値するほどの強敵」である
  • 「魔術を打ち消す」能力のおかげで、本気で戦闘したとしても周囲への被害を抑えられる
と格好の「経験値」稼ぎの相手であった。
そんなわけでトールの学園都市内での暗躍は、基本的に上条と戦うことを目的として行われていた。

【能力】

北欧神話における『雷神』トールの名の通り、
両手両足にはめたグローブの指先より噴出するアーク溶断ブレードを用いた戦闘を主体とする。
自前で出せるブレードの長さは数メートル程だが、グローブをミョルニルと接続し、魔力の供給を受けることができる。
供給を受けた溶断ブレードは最大で2キロまで伸長し、一振りで学園都市の学区一つを平らにすることすら可能。
その上ミョルニルから永続的な魔力の供給を受けているため、魔女狩りの王と同じく幻想殺しで消しきることが出来ない。
急激にブレードを噴出して空気を膨張爆発させることで、自身を加速させたり落下の速度を殺したりと移動補助に使うこともできる。

他にも霊装メギンギョルズ』の効果で、『聖人』レベルの怪力を発揮することも可能。
さらにトールがフレイヤに変装したという伝承から、女性限定の変装術式も持つ。

少女的な見た目とは裏腹に、上条を殴り合いで数m吹き飛ばしたり、マリアンを回し蹴り一発で気絶させたりと、運動能力と格闘技術も高い。
そして上条同様生身とは思えないほどに打たれ強い。

このように高い力を持っているものの、
彼自身は『聖人』や『魔神』、『世界を救う力』などといった特殊な素質の持ち主ではない。あくまでも普通の魔術師である。
つまり肉体が特別に頑強だったり、特別な魔術で保護したりしているわけでないので、
上述したような強力な魔術や無茶な動きの反動に肉体が耐え切れない事も多々ある。
しかし本人はそれに一切頓着しておらず、むしろ楽しい戦闘ができている証として歓迎している節すらある。

【全能の力】

ここまで述べただけでも十分に強力な魔術師だが、
これは“『雷神』としてのトール”の力であり、本来のトールの力を最大限に抑え込んだ程度のものでしかない。
そもそもトール神は今でこそ人の都合によって『雷神』とされているが、
元来は農耕・製造・気象・季節・天候・災害などを司った『全能』の神であった。

そしてその名を冠する彼もまた『全能』としてのトールの力を突き詰めており、
その力は魔神オティヌスがいなければ「グレムリン」の頂点に据えられていたとされている。

この『全能』の正体は、「対象との戦闘に絶対に勝てる位置に自動的に瞬間移動する」というもの。
より正確に言えば、トールではなくそれ以外の「世界すべて」を動かし、あたかもトールが瞬間移動しているかの如き現象を引き起こしている。
(原理的には骨船と同じ)

あらゆる攻撃を自動的に回避しカウンターするため、この状態のトールは指定した対象には絶対に敗北しない。最悪でも引き分けになるだけである。
また手足を適当に振っているだけで、相手がどこにいても自動的に位置を調節してクリーンヒットさせるため、フィアンマの右腕のようにただ体を動かしているだけで勝ててしまう。
『全能』のトールを倒すためには、オティヌスのように世界全体を滅ぼして回避の余地を無くすしか無い。

さながらボタン一つで勝てる連打ゲーであり、故にこの術式を使ってどんなに勝利を重ねても学べることは何も無い。
トールが戦闘における「経験値」を求める最大の理由である。

唯一の弱点は、「相手との戦闘に直接かかわりのないもの」は対象にできないこと。
もっとも対象を設定し直すだけでよく、当然本人も弱点は自覚しているのでこれを突くのはほぼ不可能。
また、使用すればするほど地球の自転や公転に誤差が生じる可能性があるため、前述の理由もありあまり使いたがらない。

なお、上条は「移動するためだけに世界全体を動かす」という点に全体論の超能力との共通性を指摘しており、トール本人もそれを認めた上で
『似て非なる物で、同じような現象は起こせるが完全に同じではない』
『オッレルスと第七位の関係に近い』と語っている。

【作中での行動】

オティヌスの命令に従い、マリアンミョルニルと共に一端覧祭開催中の学園都市に潜入する。
上記の変装術式で美琴に変装し、溶断ブレードで上条と軽く交戦。
ハンバーガー店で上条にグレムリンの今回の目的とトール自身の経験値が欲しいという目的を告げ、
フロイライン=クロイトゥーネを救うため「グレムリン」を裏切り上条と行動を共にする。

彼女が「窓のないビル」から脱走すると、他のメンバーを前線から遠ざけてから美琴を唆して共にオッレルス勢力の前に立ちふさがり、シルビアと交戦。
その後、学園都市を出る前に本命である上条と戦闘し、雷神としては敗れたが全能神としての力で上条を一蹴する。

学園都市を出たあとはオッレルスと入れ替わって組織を脱退。
オティヌスやオッレルスなどを思い浮かべながら誰を次の「経験値」とするか思案する。

その後、オティヌスを殺そうと世界中から集った「グレムリン」メンバーを全滅させ、ミミルの泉で上条と再戦。
『全能』の力を持って上条を圧倒するが、弱点を突かれて線路の上に誘い出され、列車の激突を受けて敗北。
血まみれになりながらも五体満足で、経験値を得て清清しい表情を浮かべた。
その後は上条に最後の敵が誰であるかを伝え、その決着を見守った。

【口調】

一人称は「俺」。
特殊な口調といったものはないが、上条の事を「上条ちゃん」や初対面の美琴を「ミコっちゃん」と呼ぶなど、妙に馴れ馴れしすぎる名前で呼ぶ。
 「気にすんなよ上条ちゃん。俺って生き物は、楽しくなっちまうとそういうのはどうでも良くなっちまうんだ」
 「よぉーっすミコっちゃん。元気してたー?」

【補足】

元ネタである雷神トールは『ヴァルトラウテさんの婚活事情』および『とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情』にも登場。
共に脇役としての描写のみである。

【余談】

新約六巻あとがきによれば「まだ見ぬ領域の力を求めて戦闘を重ねる」というトールの方向性は
登場初期の一方通行と似通っており、
仮に一方通行が踏み外さずに順当に成長していたなら、彼もまたトールのような性格になっていたらしい。

最終更新:2023年03月05日 10:43