【種別】
人名

【元ネタ】
ドイツ語。Fräulein:(未婚の)女性、お嬢さん

【初出】
新約五巻


【概要】

魔女狩りの時代において、神明裁判に308回ほど掛けられながらも、一切の傷を得ず、死に至らなかったとされる女性。
当時の歪んだ司法と照らし合わせると、
「神の試練を受けても無傷であるため、善良で潔白なただの人間である」
と結論せざるを得なかった、世にも珍しい事例。
火刑・圧殺・溺殺・飢餓・・・・・・等々、あらゆる方法において、命を落とさなかったどころか、ろくに顔色を変えることもなかったという。
しかし、時代的に情報精度が不確かな事もあり、彼女の特異な『伝説』は有象無象の中に埋もれてしまっている。
その異能は当時たまたま魔女狩りに引っかかってしまっていたが、
実際の所、科学・魔術のどちらに属する性質なのかは判っていない。
あるいはどちらにも属していない可能性すらある。

外見は女性としては長身で、おおよそ2メートルほど。
足首まである長い銀髪で、薄い合成繊維でできたワンピースに似た装束を纏っているが、
見た目に頓着しないのか、下着が透けて見えている。
白い肌の質感は10代の少女のそれに似ているが、
身に纏う雰囲気が発する「周囲から浮いている感覚」が強く影響し、
根本的な部分で、どこか同じ人間に見えない。

【能力・スキル】

アレイスターの利用する問答型思考補助式人工知能が語るところによれば、
遺伝子配列上は人間ではあるものの、遺伝子の螺旋が三重になっていてもおかしくないほどの肉体を持っている。
また、分類で言えば科学に属する人間だが、『自分だけの現実』を用いる能力者とは系統が違う。

また、上条当麻トールを吐血させて戦闘不能に追い込んだ、謎の攻撃手段を有する。
トールの分析によれば、これは「ミクロな体組織をターゲットの内側に潜り込ませて破壊活動を引き起こし、
生体の場合は拒絶反応を発生させ、無機物は内側から膨張して引き裂かれる」というものらしい。
つまり、水道管が凍結現象で破裂するようなものとのこと。SF的に言えばナノマシンによって相手を体内から攻撃する手法に似ている。
なお、体内に侵入した体組織は高圧電流で破壊可能。

【正体】

科学サイドから見たその内情は、精神や自我と呼ばれるものの主柱たる『自分だけの現実』を保有しない生物であり、
思考回路としては、昆虫を更に簡略化した物に近い。
暑い・寒い、甘い・苦い、湿っている・乾いている・・・・・・等の条件を一つ一つ走査し、
その都度生体活動に適した方向を選択するという、その行為の積み重ねが『深く考えているように見える』だけである。
極めて簡略化された思考と、不釣り合いな最適化を施された肉体のアンバランスによって、
通常では考えられない特性を有していると推測されている。

彼女は本質的に「状況に合わせて常に変化し続ける」存在であるとされ、
一定以上の情報を吸収することによって、昆虫のような思考回路から複雑で柔軟な思考回路へと「羽化」を遂げる可能性をも秘めている。
羽化した彼女は人間を捕食する側に回る可能性すらあり、
そうなれば人間を頂点とする食物連鎖の構造は壊れ、現在の人間の文明も崩壊しかねないと推測されている。
『問答型思考補助式人工知能』の推計では、彼女が直接見聞きできる範囲で学習を続けるならば「羽化」までに約2300年が必要だが、
現代の情報化社会の中で『書庫』などから効率的に情報を吸収すればその限りではなく、
特にミサカネットワークと接触すれば、わずか3秒で「羽化」に達すると見積もられている。

レイヴィニアが語るところによれば、
魔術サイドから見たクロイトゥーネの内情とは、十字教的に言えば「アルファ(始点)でもオメガ(終点)でもない人間」である。
十字教は生まれ変わりを認めないため、十字教における人間の在り方はマラソンのような仕組みになっており、
エデンの園で原罪を負ったところからスタートし、長く辛い道のりを経て、天国というゴールに帰ることになっている。
しかし彼女はこのマラソンの仕組みが当てはまらない「純粋」な人間で、彼女が普通と異なる奇妙なバランスの肉体を持っているのはそのためだという。
レイヴィニア曰く、不純物のない純水が特別な振る舞いをしたり、電子レンジで均一に温めた水が突沸を起こしたりするようなもの。
逆に言えば、クロイトゥーネの肉体へ「不純物を混ぜ込む」ことさえ出来れば、彼女を可殺状態に追い込むことが可能という事でもある。
イギリス清教ローマ正教のような「人間の純度を増す」ことを目的としている教会組織の技術では彼女に対処できないが、
近代西洋魔術では不純も人間の在り方の一つという考え方をするため、
後天的に人間を不純にするような技術があり、クロイトゥーネと相性がいいらしい。

【作中での行動】

あらゆる方法で害されなかった彼女は老いで死ぬこともなく、現代まで生存を続けている。
しかし、どうやっても殺せない人間を一般社会で野放しにすることはできない上に、
学習を続けさせた結果「羽化」に至るリスクを見過ごすこともできない。
アレイスターが魔術を使えば彼女を殺害できるが、それによって彼の正体が露見しプランが崩壊するリスクもある。
アレイスターは苦肉の策として、学園都市にある最高クラスの要塞でもある、
窓のないビル』内に彼女を隔離することで、存在の排除と学習の阻止を狙った。

異常なまでの肉体の頑強さを持ちながらも、魔術・超能力のどちらにも依らない出自を持つことから、
グレムリン』のオティヌスには『全体論の超能力』を使用できる素体として目されており、
バゲージシティでの実験の後、彼女の身柄を求めて学園都市に正規メンバーを送り込んでいる。

上条当麻トールはオティヌス・オッレルスの両勢力に身柄が渡る事を良しとせず、
協働して独自に救出作戦を決行。
彼らが行った『窓のないビル』破壊工作に興味を示したのか、
傷ついた外壁を何らかの力で破った直後、目にした上条とトールに謎の攻撃を浴びせて吐血させ、ふらふらと街中をさまよい歩き始めた。

脱出後は長時間外界から隔絶されていた反動で情報に飢えており、
それを補うべく世界最大規模の生体ネットワークであるミサカネットワークを接収するための捕食機能を獲得。
ネットワーク管理者である打ち止めの脳を経口摂取することによってそのアクセス権を獲得するため、打ち止めの探索を開始する。

新約六巻にて打ち止めたちと和解するも捕食機能を制御できず、打ち止めの脳を模したダミー(ケーキ)を捕食することで停止。
その影響からか容姿は打ち止めたちと同程度まで幼くなり、さらにより人間的な精神構造・感情・表現力を獲得した。
同時にその本質にも変化が起きたようで、『全体論の超能力』を使用できる素体には適さない存在へとシフトしてしまったことから『グレムリン』からの追撃も打ち切られた。

新約七巻ではフレメアを利用した薬味久子への制裁のために登場し、
たった一噛みで薬味久子の情報の30%以上を食らった。その後は『お仕置き』としてたった一切れ程の情報を残したまま、
薬味へ長い時間の中で自分自身を見つめ直せたなら、最後の一切れを食らってあげると伝えた。

新約十六巻にて登場。特性上、大熱波の影響を受けない為エレメントを撃破して回っている模様。


最終更新:2023年01月30日 13:58