【種別】
人名(通称)・神名

【元ネタ】
北欧神話の神オーディンの『デンマーク人の事績』における名前[Othinus]。
名前に「オーディン」というルビが付く場合がある。

【初出】
名前のみ二十二巻の最後に登場
本人の登場は声のみ新約三巻、実際の登場は新約四巻(イラストはシルエットのみ)
全身像のイラストの初出は新約八巻

【CV】
瀬戸 麻沙美(メアリエ=スピアヘッドと共通)


【解説】

グレムリン』のリーダーを務める魔術師であり、正真正銘の魔神
正体は北欧神話の主神「オーディン」その人。また「オティヌス」でもある。

【人物】

ウェーブがかかった金髪に緑眼の、見た目十三~十四歳くらいの少女。
黒の革の装束を着ており、鍔広の帽子を被っている。
バゲージシティでは上から皮のコートを羽織っていた。

完全な魔神である故に、彼女は無限の可能性を内包する。
しかしそれ故の弱点も抱えており、
文字通りの「無限の可能性」は、あらゆる事象が「成功する可能性」も「失敗する可能性」も等しく担保してしまう。

具体的には、莫大な力を秘めた戦乱の剣上条右手を容易に握り潰す一方で、「半分魔神」に過ぎないオッレルスと右手を失ったフィアンマに撤退に追い込まれた。

成功する確率が五十%以上なら良かったし、その逆でもまだ対策が立てやすいのだが、
成功と失敗が完璧に五分五分な「無限の可能性」は彼女自身にも予想がつかない。
そこでこの厄介な「無限の可能性」を制御するべく、彼女は『主神の槍』を必要としていた。
オッレルス曰く、上条当麻の「不幸」はこの「五分五分」の可能性をも歪めるらしい。

魔術を極めたエキスパートとしての立場から、アレイスターの『プラン』の全容をある程度は推測していると語っている。
しかし、科学の知識が欠けているため確証を得られていないらしく、同時に「ベルシがいれば検証できた」とも語っている。

【正体】

元々オティヌスは各種史料で述べられる「主神オーディン」まさにその人であるという。

実は以前にも、彼女は好き勝手に位相を弄って世界を作り替えていた。
ある時、自分が手を加える前の「元の世界」の形を思い出せなくなり、
黒一色の世界で一人試行錯誤を続けて「幸せな世界」を創り出したが、その世界に疎外感を覚える。
その後も幾度となく世界を創り変え、最終的に「元の世界とほぼ完璧に同じ世界」を創り上げるものの、
常人の目では区別が付かないであろう「ほぼ完璧な世界」にすら、どこか違和感を感じていた。

何度も世界を創り変えても「元の世界」への糸口が見えず、黒一色の「迷宮」に囚われてしまう。
彼女は魔神の力を恐れて一度放棄し、「ほぼ完璧な世界」で妥協しつつもその世界で暮らしていた。
やがてその世界の違和感にも耐えられなくなり、今度こそ「完璧な世界」を元に戻すため魔神の力を取り戻そうとした。
それが新約での事件の発端であった。
仕掛けは大きいが、つまるところ彼女の目的とは「元の世界に帰る」、ただそれだけである。

【能力・スキル】

魔神であるため、全位相を超えた存在であり、
不完全な状態の時でさえ、
一瞬の内に数千、数億の、時間の連続性すら歪める程の攻撃を繰り出せる。

オーディン本人として、北欧神話で戦争の神、詐術の神と称される通り、
素の戦術眼や知識量、頭の回転も桁違い。
戦闘能力のない状態でも、作戦参謀役としての能力を度々発揮している。

「魔神」の力を失った現在でも、小規模な魔術を用いる事自体は可能。
神話中でムニンとフギンという2匹のカラスを使役したことから「鳥」と相性が良く、
魔神の力に頼れなくなった後は、鳥を操って移動手段としたり鳥の羽を介した術式を使ったりするなど、鳥に関するスキルを度々用いている。

記事のある能力は各リンク参照。

【作中での行動】

魔神の力を取り戻そうとした彼女は、
「『主神の槍』を完成に協力することと引き換えに、自分が魔神となったら願いを叶える」
ことを条件に正規メンバーを集め、「グレムリン」を結成。
第三次世界大戦の戦後処理に不満を持つ魔術師を使い捨ての戦力として利用しつつ、
など、『主神の槍』完成のため「グレムリン」を使って数々の事件を起こした。
ただし、本来であればオティヌスは単身でも『主神の槍』完成は成し得たらしい。
しかしその場合は数多くの妨害が予想されたため、『グレムリン』を始めとした回りくどい手段を取ったのだという言及がある。

新約八巻において遂に『主神の槍』を完成させ、魔神としての力を完全に制御することに成功。
魔神として全能の力を使って上条たちの世界を消滅させた。
新約九巻では地の世界と(隠世以外の)全ての位相が破壊された「黒一色の世界」に残された上条を絶望の淵に追い込む為だけに、
世界を数千億回以上も創り変えた。

新約九巻で、彼女は上条という「制御しやすい器に入った幻想殺し」を手に入れ、その機能で「世界の復元」を試みる。
しかし幻想殺しを用いても納得のいく「元の世界」を生み出せなかった彼女は、
「元の世界に戻るために足掻く」という第一希望と「元の世界に戻ることを諦めて別の世界で生きる」という第二希望との間で葛藤を強いられることとなる。
そんな中、永きに渡る闘争の果て、彼女の方が上条より先に経時による精神的限界に達してしまったため、
やむなく彼女は「第一希望を完全に切り捨て、上条当麻を殺す」決断を下す。
妖精化による「失敗百%」を逆用し、魔神としての奥の手『』を解放することで彼女は上条に勝利した。

その直後に彼女は、「元の世界に戻る」というのは実はより大きな目的のための手段に過ぎず、
自分が真に求めていたのは「世界に対する違和感と疎外感」を共有する『理解者』であったことに気付く。
更に「元の世界を取り戻すために幾千億年も歪められた世界に立ち向かった」上条こそが『理解者』だったのだと気付いた彼女は、幻想殺しを用いて「元の世界」ではなく「上条当麻が生まれた世界」を復元する。
同時に『妖精化』が自分の体を次第に崩壊させており、どの道長くは持たないことを悟った。

しかしオティヌスの『理解者』となった上条は、彼女がただ殺されるだけという結末を許せず、
彼女に自分の罪をちゃんと償わせる為に彼女を守ってみせると宣言した。
上条の思いを理解したオティヌスは、体の崩壊を防ぎ、魔神としての力を捨て去る方法として
ミミルの泉から、かつて魔神に昇華する為に捧げた『目』を回収して人間に戻ることを提案。
魔神として残った最後の力で『骨船』を使用して上条と共にミミルの泉を目指すこととなった。
道中、どんな状況になっても自分を見捨てない上条に頬を緩めるなど、心境の変化が見られる。

だがミミルの泉に到達したオティヌスは「自分は本当に救われていいのか?」と悩んだ末、
上条が『魔神オティヌスを救った罪』を背負うことを否定。
彼との戦いの中で死ぬことでその功罪をゼロに戻すため、上条に向けて再び『弩』を発動した。
上条は『弩』を乗り越え『妖精化』の光の杭を抜き取るも、既に魔神の力を使い果たしていた彼女の体は次第に崩壊。
最後に「上条が自分を救ってくれると言った時、もう自分は救われていた」と伝えると、光の粒子となって消えてしまう。

こうして死亡してしまったかと思われたが、実際には消滅を免れて全長十五cm程の大きさとなっていた。
本人は『自分はまだ目を入れておらず本質的に魔神のままであったため』、『弩は最後の一本まで放たれず、その前に幻想殺しで妖精化を破壊されてしまった』、『魔神は五体が砕けた程度で死滅するものでもない』と説明していた。
つまり未だ魔神であったため、残った部分が勝手に再統合し、かつての力ももう使えないが、自分の意思が残留してしまったという。
余りにもデタラメな話に上条だけでなく、傍にいたインデックスすら唖然としていた。
またオティヌス自身、『本当に自分の意思に介在しないで、『自動的に』肉体の再統合が実行されたのか』という疑問を抱いていた。

ロベルト=カッツェエリザード達が下した、オティヌスへの罰は
『自殺してでも目を背けようとした幸せな世界を、一番近い場所で永劫に眺める』というもの。
一見生温いように思えるが、本質的に魔神のままであるオティヌスにとってはかなり皮肉が利いている。
また、理解者の上条はあくまで人間であるので当然寿命がある。
つまり漸く手に入れた理解者と一生添い遂げることができないというオティヌスにとっての最大の罰が待っている。
世界に許された訳ではなく、あくまで「執行猶予がついた」のである。
ちなみに新約10巻ではこの事を上条に伝えようとしたが、
オティヌスに興味を抱いていたスフィンクスに襲われ、その後きちんと話せたかどうかは不明である。

新約十二巻からは上条の学生寮の新しい居候として生活している。
上記の身体の所為で、スフィンクスからは非常食か猫じゃらし的なモノと認知されており、日々命懸の逃走劇を繰り返している。
サンジェルマンが起こした騒動では、魔神としての知識で上条にサンジェルマンの正体を説明したり、術式を解析する為にインデックスと共に彼をサポートした。
サンジェルマンの思考に感染され、死亡した能力者の亡骸を見て不快感を抱いたり、
上条に指先で頭を撫でられて「気安いぞ」と言いながらもされるがままだったりと、
デンマークの時よりも大きな変化が見られる。
オティヌス自身も上条による影響を自覚し始めており、「私も本格的に壊れてきたな」と嘆息していた。

新約十四巻では食材の買い出しに赴いた際、フライドポテトの悪口を言った上条の耳に攻撃したり、
魔神の貫禄をかなぐり捨ててじゃがバターを食べたがるなどしたことから、
じゃがいもを調理した食品が大好物の模様。とある魔術の禁書目録 幻想収束でもこれが再現されている。
どうやら上条の右肩(後に「所定の右肩」と表現される)が定位置となっているようで、
上条の肩の上から「魔神」としても「理解者」としてもアドバイスを送っている。

新約十八巻では窓のないビルに突入する上条たちに同行。
クロウリーの魔術思想や魔神から見た聖守護天使エイワスの正体などを伝えた他、
呪詛の魔術剣の解除をサポートしてエイワス召喚理論の歯車を狂わせ、上条の一助になった。
余談だが「所定の右肩」によじ登った際、
上条から他の女の匂いを嗅ぎ取り、上条に対する独占欲を見せている。

新約二十巻以降は上条達イギリス突入組に同行。
上条がアレイスターの作戦で振り落とされてイギリス清教に捕まった際、いち早く駆けつけて脱走を手伝った。
イシス=デメーテルに取り憑かれたオルソラとの戦闘でも引き続き上条をサポートしていたが、
上条にオルソラの猛攻から庇われた事を察し、打ちのめされた彼に言葉をかけ再起させている。

ロンドン~スコットランドでの活動間は常に上条の傍で(時に場を茶化し、親しみを込めた罵声を浴びせつつも)支えた。
リバースの試読範囲では何故か彼女の姿が見えなかったが、
「上条」は別に存在し、オティヌスもずっと彼に付いていた様子。

【余談】

非常に勘違いされることが多い例として、「上条は10032回世界を繰り返した」というものがある。
これは大きな間違いであり、あくまで校庭でのオティヌスとの直接対決が10032回というだけで上条は何百万、あるいは何千万、何億回もループを経験している。
さらにオティヌスとの直接対決で一度死ぬたびに、再度オティヌスと戦うまでにも「数千億」以上の世界を体験しているため、上条とオティヌスは年数で言えばおそらく数万、数億年もの間一緒に過ごしたと思われる。
少なくとも腐れ縁であるオッレルスすらも上回る時間を共に過ごしたようで、オティヌス自身の口からも「共に過ごした時間ももはやお前が追い抜いたか」と言われている。
そして現在作中で、唯一上条の心を完璧に折った存在でもある。
もっとも無間地獄と自己の完全否定という形でしか折れなかった上条の精神力もすさまじいものだが。

上条は「無間地獄と幸せな世界」は、かつてオティヌスが体験した事と推測している。
事実、新約九巻の行間でオティヌスと思われる人物のエピソードが綴られており、その中には「黒一色の世界」と「幸せな世界」の描写もある。

創約になりアンナ=シュプレンゲルやアリスなどの魔神とは別の魔術の超絶者が登場したが作者の後書きにより一度オティヌスの世界改編で死亡していることが明らかになった。
世界改変中、僧正ら真正の魔神を除くアレイスターなどの特殊な存在がどのようになっていたか不明だったが、今回の作者の発言から存在が消失していたと思われる。

【鎌池和馬の他作品にて】

元ネタである主神オーディンは『ヴァルトラウテさんの婚活事情』にも登場。劇中では特に尊敬されることもなく「ヒゲ」とか呼ばれる。

刊行順だと新約十巻後は本編より先に、セルフコラボ小説『とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情』第四章で再登場する。
『ヴァルトラウテさんの婚活事情』に登場する主神オーディンがグングニルを投擲しようとした際、
オティヌスはかつてオーディンと同一の存在であった事を利用し、短時間ではあるがオーディンへのジャミング(存在を乗っ取ること)に成功。
最終的に、異空間を彷徨っている上条たちを禁書目録の世界へと連れ戻した。

鎌池和馬公式サイト掲載のSS『合コンやってみました。ただしオールスターで世界の危機ではあるけども。』でも登場。
等身大のまま合コンに参加し、ヴァルトラウテから「ヒゲ」と呼ばれた。
インデックスいわく、「オティヌスに一切歪みが発生しなかった全力全開バージョン」が髭オーディンとのこと。

また、「魔神」であるオティヌスも「神格級」に分類されるらしく、
同作者の小説『未踏召喚://ブラッドサイン』のメインヒロイン「白き女王」(神々の先にある未踏級)の実力には及ばない事が示唆されている。

『未踏召喚://ブラッドサイン』本編でも「神格級」のオティヌスと青行燈がとある手法で顕現したが、
これが「禁書目録」のオティヌス(とインテリビレッジの青行燈)かどうかは不明である。
同作では既にオーディンとヴァルトラウテにも言及済みで、特に後者は『ヴァル婚』と酷似したデザインだった。

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最終更新:2022年08月24日 02:33