B0003 鉄乙女


ミッション№
名前 特殊条件 人数 戦利品
中級
№B0003
09 / 10 / 14 ~ 09 / 12 / 31
09 / 10 / 14 ~ 12 / 12 / 31
09 / 10 / 14 ~ 15 / 12 / 31
09 / 10 / 14 ~ 30 / 12 / 31
鉄乙女
リーダー
エクトル
4人 火のリングLv2
(1ポイント)

プロローグ
――偵察に行ってくる

そう言って出て行った筈なのに…それなのに……

「何で……こんな事になってんだ…」
その姿はまるで獣のようだった――

エクトルは眼前に広がる惨状に思考が追いつかず、唯々その場に立ちすくんでいた。

可動部分から金属の軋み音をあげ、両手を広げた獣は走りながらぐるぐると回転する。
鉄の爪に薙られた兵士の体が思い思いの方向へと飛んでゆく。

兵士の一人が逃走を試みるが恐怖のためか足がもつれて思うように走れない。
その背目がけて一気に距離を詰める獣のグパァと開けた口の中、細かく鋭利な牙が兵士の左肩に食い込む。

突然おとずれた激痛に未だ何が起こったのか理解できず、転がり叫ぶ兵士は、
自分を見下ろす獣の姿を目にし息を呑んだ。

完全に腰が砕け、仰向けで尻をつき上半身だけを起し喘ぐ兵士の足下へ、
ゆっくりと近づき、獣は再度その拷問具の扉を開いた。
その扉の先に見えた真っ赤な刃と底の見えない暗い穴は瞬間、発されるはずの悲鳴は無慈悲に刈り取った。

その凄惨な行為を目にした瞬間、エクトルは胃の奥から熱いものが込み上げてくるのを感じた。
笑っていた……獣は兵士の頭部に食いかかる瞬間確かにこちらに視線を向けて、そして――笑った

止めなくては――そう思うも足が大地に縫い止められた様に動かせない。
しかしこのままここで全員が狩り尽くされるのを黙って見ている訳にはいかない。
エクトルは喉の奥から声を絞り出すようにしてやっとのことで言葉を発する。

エクトル
「なにやってんだよ!!」

我ながら何とも間の抜けた問いかけだと思った、しかし彼の口内はその一言を発するのがやっとな程渇ききっていた。
機動を止めた機械人形のその上、彼女はゆっくりとエクトルの方へと顔を向ける。
その顔に表情はなく、口の右側に含んだ何かをしきりに奥歯で噛み続けているようだった。
彼女は暫くエクトルの顔をじっと見つめた後、おもむろに口に含んでいたものを手のひらに吐き出し、
御覧なさいとでも言うかのようにその手をエクトルの方へと傾けた。
その物体を認識した瞬間、エクトルは見てしまったことを後悔した。
獣の持つ底の知れない狂気に触れてしまったようで、胃の中を更なる不快感が満たしていく。

そこには透明な液体にまみれたナットが一つ乗っていた。

その様子に満足したかのように彼女は――パオラは口の端を歪ませ、色の無い唯の透明な純正の狂気を移した瞳で――笑った。

したたか殴り上げられたように腹が波打ち、胃の中の酸が体内を逆流し喉を押し上げる熱さを感じる。
瞬間、彼は――吐いた。
危険度
★★

LC0090
ガーター騎士団マリルー

800 / 150 / 160
4/3/8/10/6
敵サポカ
土Lv1×3
公国騎士達の上げる鯨波の声と、剣戟の音が響いている。
エクトルも砦の奥へ進んで行く。

床が一面帝国軍兵士の死体で埋め尽くされている。
その奥、こちらに背を向けて彼女は佇んでいた。

エクトル
「お前…またこんな殺しかたをしたのか……」

その問いかけにパオラの頭がゆっくりとこちらに向けられる。

パオラ
「こんにちは、ゲロはきくん」
エクトル
「その呼び方を止めろ! お前は何でこんな酷い殺し方ばかりするんだよ」
パオラ
「あたしはただ可愛いこの子がおいし~いお肉を食べたいって言うから叶えているだけだもん」
エクトル
「何が叶えてるだけだ! こんなの唯一方的にいたぶってるだけだろ!」
パオラ
「コレは帝国軍よ。あんたの憎いにくぅ~い相手じゃない?」

パオラはそこに横たわるものをちらと一瞥する。

エクトル
「確かに帝国の人間だ!でもこいつらだって全員が全員好きでこんな戦いしてるわけじゃないかもしれない……。
そうしなきゃならない時だってあるんだよ!!」

エクトルの脳裏に城を逃げ出したあの日の光景が浮かぶ。

パオラ
「ふーん。じゃーさぁ、あんたはここに横たわってるのがあんたの目的のメルだったとしても同じ台詞を吐くわけ?」

それは今のエクトルが一番聞かれたくない問いかけだった。
エクトルは口を閉ざし俯く。

そのとき――

「な……なにこれ!?」

背後から叫び声があがった。
そこにはガーター騎士団マリルーの姿があった。

マリルー
「お……おまえ達がやったのか!!」
「はぁ……はぁ、おまえ達は何なの!?」
パオラ
「はぁ~?連邦軍に決まってるじゃない。そう言うあんたは帝国軍よね? じゃぁさ、じゃぁさ、」

獣の口が縦に開かれる。

パオラ
「食べちゃってもいいのよね?」

言い終わるが速いかマリルーの喉元目がけ獣が駆けた。
マリルーはまたも巨大な盾の影に身を隠しそれを防ぐ。

パオラ
「も~! これじゃちっとも当てらんないわよ」

ガーター隊自慢の強固な盾だ。
そう簡単に打ち砕かれることはない筈――

パオラ
「なんちゃってぇ~」

獣はマリルーを身体ごと飛び越し、その背後へと着地する。

マリルー
「しまっ……!!」

ガラ空きの背中目がけ鉄の爪が振り下ろされる。 
マリルー衝撃を少しでも和らげようとぎゅっと目を瞑る。

ガギィンッッ

パオラ
「何のマネ?」

先ずパオラの声が聞こえた――

エクトル
「ここは俺がやる……俺がやるから、だから……こいつを止めてくれ」

次にエクトルの声が聞こえる――

マリルーは恐る恐る目を開け様子を窺った。
そこに見えたのはエクトルの背中。
足を踏みしめ両の腕を突き出し、交差させた双剣は獣の爪と重なっていた。

マリルー
「何で……何で私を庇ってるの……」

わけがわからなかった。
同胞をこんな姿にした相手が今は自分を庇って仲間の前に立ちはだかっている。

パオラ
「あたし、邪魔しないでって言ったわよね」
エクトル
「頼むから、パオラ!!」

暫しの膠着状態の後、獣はすぅとその腕を下げた。
そして一言も発さず壁際まで歩いて行くと、見学するようにじっとエクトルを見つめた。
エクトルは床の上に無造作に転がっていたマリルーの槍を手にし、それを差し出す。

エクトル
「おかしな形状をしていると思ったら火砲機能付きか…取れ。人の戦いだ」
危険度
★★

LC0100
狂気のパオラ

950 / 260 / 70
6/2/3/2/13
敵サポカ
機LV1×4
マリルー
「ぅあっ!!」

弾かれた手から槍が落ち、マリルーは反射的にそれを目で追ってしまう。
マリルーの注意がそれたその瞬間、エクトルは足を大きく引き上げ盾の側面に向かってその足を降ろした。
そしてそのまま勢いよく踏み抜くように盾を横に押し倒す。
マリルーは体勢を崩し、そのまま床に肘をつく。その喉元に剣先が突きつけられた。

見上げれば右手に握る剣をマリルーへと突き出すエクトルがいた。
その姿にマリルーは勝負の終わりを悟った。

エクトル
「このままここで死ぬか、仲間の無念を肩にしょって生きるか、どちらににするか言え!」
マリルー
「し……に……たくな……い」
「わ…わたしっ…わた…しにたくないよぉ……」

震える喉から剣先が離れる。
歪む視界に自分を見下ろしたまま剣を鞘へと収めるエクトルの姿が映り、発する声は完全な嗚咽へと変わった。

その姿を黙って見つめるエクトルの瞳には、あの日の自分と今のマリルーの姿とが重なって見えていた。
国の為、大公の為、何時だって命を投げ出す覚悟はあった。
あの時だって、騎士として生命を賭して戦おうと決めていた、なのに、それなのに自分はに下された命令は「国の為に逃げろ」だった。
国を守ることと、騎士道を守ることは違うのだと、その時初めて気付いた。
しかし、その事実は、国の為の騎士であり続けた自身にとっては簡単に受け入れられるものではなかった。

これ以上は無粋か――

エクトルはふぅと一つ息を吐くと、マリルーに背を向ける。
その瞬間、目の端に勢いよく迫る白い先端を確認し、反射的に剣を抜いた。
金属同士の鋭くぶつかり合う音が響き、剣の上を何かが滑っていった。
今度は逆側から、白い光が迫るのを捉え、即座にマリルーの頭を抱え、真横に押し倒す。
直後、マリルーの頭のあった場所を何かが斜めに射貫き、その後ろの床に穴を開けた。

エクトル
「随分と気が短いんだな、素直に譲ってくれたから後で何かされるんだろうと思ってはいたけど、終わった早々これとはな」

エクトルの見つめる先には機械の獣がいた。

パオラ
「ステキな茶番をありがとう。今のはそのお礼よ」

パオラの表情は笑っていたが、その目の奥に灯された光は薄暗くぬらりとしていた。

パオラ
「そして、これは、」

獣の足元でギギギギという音が鳴る。

パオラ
「あたしたちの食事を邪魔してくれたことへのお礼よ」

捕食対象をエクトルへと定め、食欲を持て余した獣は地を蹴った。
危険度
★★

LC0113
紫の悪魔レオ

1300 / 250 / 140
5/10/10/18/16
敵サポカ
土LV1×3
獣の攻撃には何時ものような勢いはなく、むしろどこかしら手を抜いている感があった。

パオラ
「あんたは友好国からの大事な預かり品よ、流石にバラバラに壊すことは出来ないわ」
エクトル
「そいつぁ、随分とマジメなんだな」

グァァアァアァアァアッ

と、地を揺らすような咆吼を上げ、突然獣の動きが止まった。
見ればグルルと低く威嚇するように呻り声を漏らし、目はエクトルを通り越しその奥を睨み付けていた。

パオラ
「はっ…はぁっ…はぁぁっぁっ」

同様にその上のパオラも俯き肩で呼吸をしながら口から断続的に息を漏らしていた。 

エクトル
「おい! 急にどうした…」
パオラ
「いるの……この奥に……この子が食らいたいって…」
エクトル
「いる…?」

獣は砦の奥へと駆けて行った。
敵の増援部隊だとするならば、放っておくわけにもいくまい、エクトルは後を追おうと駆け出した。

グァギィィィッッ
しかし獣の食らいつく先には何も無かった。

パオラ
「逃がしたっ!?」

刹那、左肩にかすかな風と熱を感じた。
そしてその熱は一拍後には神経をねじ切るような痛みをパオラへと捧げた。

エクトル
「パオラッ!!!」

咄嗟に駆け寄ろうとするその先に先程までパオラと対峙していた黒い獣――黒い狂気を宿した男がいた。

エクトル
「お前…オルメカの騎士か?」
レオ
「君とは初めましてかな? 僕は聖ロンギヌス騎士団アポストロ隊のレオ・アレバロと申します。」

対峙した瞬間、エクトルは身体の奥底から嫌悪感がわき上がってくるのを感じた。
気付けば自然と腰の剣へと手をかけていた。

レオ
「見たところ君も騎士のようですが、戦う以上同じ騎士同士正々堂々、」

ビュゥッ

踏み込み、エクトルの突き出した剣の先端はレオの胸を貫いた筈だったが、手応えは全く感じなかった。
直後、背後から声がする。

レオ
「言ってるそばから不意打ちですか? 情けない」
エクトル
「だまれぇぇぇ」

背後に向かって剣を薙ぐ。
例えようもない嫌悪感だけがエクトルを突き動かしていた。
危険度
★★★

LC0108
波濤の騎士エクトル

1150 / 210 / 190
17/11/14/14/11
敵サポカ
無し
「おっと、そろそろ皆さん撤収するころですね…では、僕もそうしましょう。このまま置いてきぼりを食らって獣の餌になっては堪りませんからね。」

そう一息で言い終わると、レオは後方へと飛び退き去っていった。
後には荒い息を吐く一匹の獣と、力なく両腕をおろした一人の騎士だけが残された。
・・・

ティターノは砦の付近に野営を展開していた。

その地の一角に張られたテントの中でエクトルは身体を横たわらせていた。
と、その入り口に人影が映っていた。

エクトル
(こんな時間に来訪者? なにかあったのか?)

そう思い、腰を上げ入り口まで進む。
中の気配を察したのか、人影はすぅっとその場を離れる。

エクトル
(逃げた? 怪しいな……)

傍らに置いた剣に手を掛けると、慎重に入り口の布を捲り外の様子を覗った。
と、その先、川へと続く道の先に走り去る人影が見えた。
エクトルはテントを飛び出し即座にその後を追った。

エクトル
(罠か……?)

そのあまりの不自然な挙動に途中敵の罠である可能性を疑ったが、それでも引き返し応援を呼ぶ所か、足を止めることさえしなかった。

水の流れる音が聞こえ川に水辺に佇む人影に向かい一歩一歩慎重に足を進めた。
そして月明かりに照らし出されたその姿を目にした瞬間、エクトルは息をのんだ。
流れる川を背にし、その相手は立っていた。
頭には目元を隠すようにフードが被り、腰には二本の剣を差し、その柄には見慣れた文様が刻まれていた。
目元が覆われているため顔ははっきりとはわからないが、これは――これは

エクトル
「俺……」

そこには見慣れた自分自身の姿があった。
エピローグ
エクトル
「お前は何者だ…これもオルメカの魔法か?」
「なにっ…!」

剣の戒めから解放された男はふらつく足取りで川の縁まで進み、そのまま川へと身を投げ入れた。 
川の流れは激しく、瞬く間にその身を飲み込みさらってゆく。

エクトル
「逃げ…られたのか…? 何だったんだあれは…」

呆然と呟きながら相手のいた場所を見つめ、その足元に何かが落ちているのを見つけた。
拾い上げるとそれは小さな円柱形の金属部品だった。

エクトル
「ボルト……?」
パオラ
「何か用、ゲロ騎士君?」
エクトル
「いい加減それは忘れろ、お前に話がある」

朝日が昇り、エクトルはパオラの元へと向かった。

パオラ
「話?」
エクトル
「昨日の話だ。お前は昨日、相手がメルでも同じ選択をしたかと聞いたよな……俺は…きっと相手がメルでも同じことをした」

パオラは心なしか真面目な表情でその顔をじっと見つめた。

パオラ
「その結果憎いメルを取り逃がすことになっても?」   
エクトル
「取り逃がすことになってもだ。何度取り逃がそうと俺はあいつを追う。追って追い詰めて必ずその首を取る!」
パオラ
「そう……ならその騎士道守り抜いてみなさいよ」 

宣言するエクトルの元へパオラが寄る、先程よりもずっと近く、触れあう程の距離へ。
身長差の所為か、下から上目遣いに覗き込む形になる。

パオラ
「せいぜいあんたの騎士道に食べられないようにすることね」

一言だけ言い捨てて今度こそその場を後にした。

残されたエクトルは手の中の物体に目を落とした。
そこにはちいさなボルトが1本だけ乗っていた。

それを目にしたエクトルの脳裏に、先程パオラの言い残した言葉と昨晩の出来事が思い起こされ、
空っぽの胃の奥底から苦い液が込み上げてくるのを感じ、そして、彼は――吐いた。

■攻略法募集中■
  • 戦利品 火のリングlv2 -- 名無しさん (2009-10-16 12:15:47)
  • マリルーは土1が3枚、パオラは機1を3枚確認、エクトルは1枚もなしです。 -- 名無しさん (2009-10-31 15:41:57)
■最終更新■(2011-03-27)

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最終更新:2011年03月27日 15:16