魔法大国スヴェイン。 この国に凶悪な魔物たちが出現するようになってから早1年。 スヴェインがほこる魔導師団の奮戦により、かろうじて魔物たちの勢力拡大は防いでいるものの、 その侵攻は日に日に激しさを増すばかりで、人々の不安も頂点に達していた。 さらに、首都マルベスから北東に300km離れた場所に建つ 大神殿、その地にはさらなる脅威が舞い降りていた。 数十人のスヴェイン神殿守備隊が倒れこむその中心で、 神殿内に差し込む光のいたずらなのか、1人の青年が神々しさすら持ちつつ、たたずんでいた。 アルティア 「ふーん。この程度の力しかないのに魔法大国なんだ。ちょっと期待はずれだな。 ま、いいか。マーシュが退屈しない人間たちもいるって言うし。もう少し遊んであげるよ。」 少年のように輝かせた瞳の奥には、底知れぬ冷たい光を宿し、その美しい顔には、どこか自虐的な笑みを浮かべる。 アルティア 「スヴェイン・・・綺麗な国。 フフ・・すぐに壊してあげるね・・・ハハ・・・アハハハハハ!!」 その凶悪な魔気をいち早く感じ取った人間もいた。 呼び名を「魔断師」。 魔断師コウ 「リー兄さん。何かな・・・?北東の方角、まがまがしい気を感じる。今まで倒したどの魔物よりも強い魔気・・・」 魔断師リー 「ああ・・・なにかいるな。とてつもないものが・・・。もしかしたら、本気でこの国を潰しにきたのかもしれない。」 リーとコウ。双子にして、最強とされる退魔の力を得た兄妹。 この世界の歯車が、音を立てて崩れていく感覚を、リーとコウは人一倍感じていた。 彼らの元に大神殿を支配した魔族の討伐、 およびディンマルグへの潜入命令が届いたのはこの1週間後。 人と魔物、15年前を超えるであろう激戦が、本格的な開戦を告げる。 そして、はるかフィンの国から、騎士の称号を受けた勇者たちも、ディンマルグを目指し、スヴェイン領内を旅していた・・・ |
魔法大国スヴェインが誇る、魔物討伐を専任する者 「魔断師」。 王国魔導師であるファランから、双子の魔断師リーとコウの下に「魔物に制圧された大聖堂を取り戻し、いち早く世界中に巻き起こっている異変の正体を掴め」との指令が伝えられ、二人の魔断師は大聖堂に向かったのだった。 凶暴な魔物が世界中に蔓延している理由・・・ リー 「騎士国フィンや、隣国のノールからも報告が入っている。スヴェインの調査も含め、もはや疑いの余地はないとな。」 コウ 「魔物のしもべが、世界中にゲートを開けているのね。」 リー 「ああ。今さら各地のゲートを閉じたところで、根本の解決にはならない。」 コウ 「15年前、魔王が封印されたのは、魔道大国ディンマルグ・・・」 リー 「そういうことだ。大聖堂を解放したら、俺たちのすべき事は・・・」 女の声 「大聖堂を解放するまでもなく、ここで倒される事が、あなた達の定めとなります。」 リーの言葉をさえぎるように、美しい女性の声があたりに響き渡る。 が、次の刹那、コウの武器である宝玉の一つが、前方の空間を殴りつけるように飛来した! コウ 「気配を消してもダメ。私達の前では無駄なの。」 レニッシュ 「きゃぁ!ど・・・どうして気づかれたの・・・!?」 リー 「魔女か。邪悪な心は感じられないな、操られているわけでもなさそうだ。コウ、軽くこらしめる程度でいいぞ。」 コウ 「わかったわ兄さん。喜んで、あなたはちょっとのお仕置きですむみたい。」 レニッシュ 「ずいぶんと私のことを過小評価していますね。これでもアルティア様から認められたのですから・・・排除させてもらいます。」 リー 「アルティア。そいつがお前の主というわけか。」 レニッシュ 「はい。あなたも強そうですが、アルティア様の方が上ですから。悪く思わないでくださいね!」 |
レニッシュ 「な・・・なんて強いの」 コウ 「これでも魔断師だから」 まるで感情のこもっていない表情と口調でコウが告げる。 レニッシュ 「ま・・・魔断師!?たしかマリノアが言ってた・・・退魔の力に特化した魔術師で、魔物と戦わせたら世界最強かも・・・って。」 リー 「君は完全に人間の敵、というわけではなさそうだ。で、このスヴェインに何が起きている?先ほどアルティアと口走っていたが何者だ?」 レニッシュ 「あ・・・それはその・・・」 コウ 「早く答えて。」 リー 「コウは俺ほど待ってくれないぞ。君の持っている情報、渡してもらうだけでいい。」 レニッシュ 「・・・わかりました。あの方も恐ろしいけど、貴方たちも十分強い・・・」 観念したと言わんばかりに両手をあげ、魔女は喋りだした。 レニッシュ 「魔断師クラスなら知っていますね?魔王様の復活は目前です。とはいえ私は魔王様崇拝者というわけではありません。ですが、魔王様のご子息が動き出しましたので・・・」 コウ 「魔王の息子・・・」 リーとコウの表情が少しだけ険しくなる。それを知ってか知らずかレニッシュは淡々と話を続ける。 レニッシュ 「正確には本当の息子ではなく、15年前の対戦で魔王様の体から生み出された方のようです。ただそのご子息、アルティア様は強い・・・。そしてあの人には破壊願望がありすぎます。人間から見たらこんなにやっかいな魔物はいないでしょうね。」 リー 「そいつの目的は?」 レニッシュ 「ただ・・・壊したいだけです。こんな綺麗な国ならなおさら・・・アルティア様の軍勢は、こう近くまでやってきていますわ。」 コウ 「そうね。すぐ近くで嫌な気を感じるわ。で、大聖堂のあたりに感じる魔気がアルティアね。」 レニッシュ 「・・・はい、あの神殿は生粋の魔族にとって何か意味があるようですから。ふぅ、ここまで喋ってしまったら、私は立派な裏切者・・・この場は去らせていただきます。それに・・・」 リー 「来たか」 つぶやくと同時に振り向いたその先に、魔獣の群が現れたのだった。 |
炎の魔獣ケルベロスをも、涼しい顔で退けた魔断師たち。 しかし、アルティアの軍勢は圧倒的な数を頼りに、魔断師の兄妹へ襲いかかる。 コウ 「兄さん、数が多すぎてキリがない・・・」 リー 「そうだな。コウ、この数だ。解放してもかまわないぞ。」 魔導解放 魔断師の強さは体内に封印した魔物の強さ。そして、魔導解放は秘めたる魔物の力を解放する術である。その力は絶大だが、強大すぎる力ゆえ制御が難しく、リスクも背負う。 また、魔断師が全力を尽くすときは、周りの味方に被害を及ぼす事もあるため、魔導解放時は、よほどの場合を除き単独行動を行う。 ゆえにコウは、リー許しがあった時のみ魔導解放を行う。 リー 「ここからは全力でかまわない。そしてお互いに大聖堂で落ち合おう!」 コウ 「わかったわ。兄さん、気をつけてね。」 リー 「まだお前に心配されるほどヤワじゃないさ。」 リーは、戦場には不釣合いなやさしい笑顔を浮かべ妹をみつめる。 リー 「次は石像の化け物か・・・覚悟してかかってこいよ。」 |
単独行動となったリーは、魔物の軍勢の注意がコウよりも自分に向くように仕向けつつ戦っていた。 単体でリーに勝てるような魔物はここにはいない。いつも通り魔物の群を片付けて大聖堂に向かう・・・はずだった。 それはまるで光の矢。 リー 「ぐぅ・・・この矢は・・・」 炎や魔術の類であれば、ある程度の自然防御は可能。 しかし、この精密すぎる矢の攻撃は、リーの魔法防御をすり抜け、肉体に直接ダメージを与える。 矢の主はダークエルフのセラ。 リー 「ただの矢じゃない。やっかいだな・・・」 セラ 「魔断師・・・個人的な恨みはないのだけどね。シュミシュトの矢は防げないわ。」 まだ全力ではないにせよ、矢の攻撃と押し寄せる大群にリーは足止めを余儀なくされた。 その瞬間。 ギィン!という金属音と共に、リーを狙った矢が弾き返された! セラ 「な・・・!?」 青年 「助太刀します!」 リー 「君は・・・?」 青年 「銀竜騎士団のルークスです。こっちはアーヤ。」 アーヤ 「こっちって・・・もぅ!魔断師さんのリーさんですね?スヴェイン王国魔断師のファラン様から事情を聞きました。」 セラ 「この軍勢の中をあんな少年と少女が・・・」 リー 「君たち・・・強いな。素直に心強い。だいたい事情はわかったよ。ファランのやつ相変わらずだな・・・」 困ったもんだ、といわんばかりに苦笑するリー。 ルークス 「そこのダークエルフ・・・その武器は聖なる矢だよね。悪の心じゃ扱えない。」 セラ 「フ・・・正義でも悪でも、私にはあまり関係ないわ・・・ただ、人間は許さない!」 ルークス 「とりあえず、全力でこの場を切り抜けましょう!」 リーに加え、ルークス、アーヤの3人は、魔物の群に向き合った! |
「兄さん・・・大丈夫かしら?」 リーよりも先に大聖堂に入ったコウ。そして目の前には巨大な扉。 その扉は、他の部屋につけられた扉よりも大きく、美しい装飾がなされていた。 とはいえ、コウにとってはさほど重要なことではないらしく、いつもと変わらぬ表情でその扉を開ける。 その瞬間、部屋の中から目がくらむほどの白光があふれ、コウを包み込んだ! メデューサ 「油断したな魔断師よ!そのまま石像となるがよい!」 それは伝説において語られるメデューサの眼力。 その目から発する魔気を直視し、その魔力に負けたものは石となり果てる。 しかし、その白光の中で静かに響くコウの言葉がメデューサの高笑いを止める事となる。 コウ 「ふぅ、私が先にこの部屋に来て正解」 メデューサ 「なんだと・・・?・・・貴様のその右目は!」 黄色い光、大地の力を宿したコウの右目がせきかの魔力を防ぎ、メデューサを睨み返していた。 コウ 「でも、兄さんが負けるはずないけどね。」 メデューサ 「大地の魔力も宿しているのか、魔断師よ!ククク・・・お互い石化の魔力は使えぬというわけか。久々に本気になれそうだ。こい、魔断師よ!」 コウ 「あなたも・・・凶悪な魔力をもっているのね・・・あなたは倒さなきゃいけないわ・・・」 言いながら、自分もそうなのだと心の中でつぶやくコウ。 しかし今は兄のためにも目の前の魔物を倒す事だけに集中するのだった。 |
コウ 「ちょっと強かった・・・」 少し焦げた服を気にしつつ、メデューサを退けたコウ。ほぼ同時に、リーの声が聞こえてきた。 リー 「コウ、待たせたな。ん、また派手に力を使ったみたいだな。」 コウ 「敵も石化の魔力使ってきたから手加減できなかったの・・・で、兄さん、その人たちは・・・?」 呟きながら、少しだけ兄の影に隠れようとするコウ。 リー 「心強い仲間だよ、コウ。ファランの紹介だから大丈夫だ。」 ルークス 「始めまして。僕はルークス。」 アーヤ 「私はアーヤです。コウさんよろしくね。」 人見知りが激しいコウにとって、初対面ではあいさつする事も珍しいのだが、コウの目はアーヤに釘付けとなっていた。 コウ 「アーヤ・・・ちゃん。何かしら?やさしい光・・・」 ロウベリアル 「さて・・・感動の再会劇はそこらへんでよいか?」 静寂が支配しそうになった空間を、魔族ロウベリアルの声が引き裂いた。 ルークス 「何者だ!」 大聖堂の奥から現れたものは、伝説として語られる悪魔そのものの姿をしていた。 リー 「もう少しゆっくりさせてもらいたいものだな。」 別段驚くそぶりもせず見せず、リーは呟く。この青年はすでに魔物の存在など把握していたのだろう。 ロウベリアル 「アルティア様に会いに来た愚か者どもよ。ここで灰となり、己の運命を嘆くがよい。」 リー 「どうせ、全てを灰にするつもりだろう・・・とっとと先に進みたいんでね。手加減なしで行くぞ。」 |
大聖堂の最深部には巨大な空間が広がっており、奥には祭壇のようなものが作られていた。 そこにりーたちが踏み込んだ瞬間、上空から拍手と笑い声がこだました。 アルティア 「ようこそ・・・スヴェインの勇気ある人たち。」 上空には、まるで道化師のような仮面を身に付けた男が浮いており、仮面を外しながら静かに舞い降りてきた。 仮面を脱いだその男は、綺麗な顔をこちらに向け、ゆっくりと口を開いた。 アルティア 「魔断師と・・・勇者くん?君たちなら僕を退屈させずに遊んでくれるかい?」 ルークスとアーヤは息を呑んでその様子を見守った。この1年の経験が告げるのだ。この男は危険だと。 リーとコウの二人までもが緊張に包まれていることからも、目の前の男がどれほど危険な存在なのかが伝わる。 コウ 「魔人クラス・・・。」 リー 「魔王の息子という話、噂ではないようだな。」 ルークス 「破壊を楽しんでいる目・・・だ。」 アーヤ 「うそ・・・これだけ邪悪な魔気なんて・・・初めて・・・。」 アルティア 「本当だ・・・すごいすごい。僕もわかるよ。君たちとても強いね。マーシュの言ったことは嘘じゃないんだ。魔王様はもうすぐ目覚めるからね。その前にこの世界を壊しておきたいんだ・・・魔王様に献上しなきゃ。」 後半は、まるで独り言のように呟くアルティア。 リー 「コウ。強いぞ・・・」 コウ 「うん。兄さんと戦ったらきっとこんな感覚になる気がする・・・」 ルークス 「アーヤ、いつも通り、俺の後ろから援護たのむ!」 アーヤ 「うん。まかせて。魔断師のジャマにならないように援護しなきゃね。」 笑いながらリーたちに近づいてくるアルティア。 果たして、この魔王の息子に勝てるのか・・・? |
アーヤを狙った熱線をコウが弾き返す! 次の瞬間、アーヤの魔法がアルティアに炸裂!それは一瞬の隙を作るには十分な破壊力。 次の刹那、ルークスの剣とリーの魔剣がアルティアの身体を貫いた。 アルティア「な・・・!」 すこしうわずった声とともに、アルティアは膝から崩れ落ちた。 アルティア「うぁぁ・・・負け・・・?負けるなんて・・・。魔王様に怒られるじゃないか・・・。むぅ・・・まぁいいよ・・・。今回は僕の負け。」 うつろな目でしゃべりながら、アルティアの傷づいた身体はみるみる回復していく。 魔断師リー「すごい再生力をもっているな。」 アルティア「けっこう死ねない身体なんだよね。これはこれで困りものなんだけど。で、そこの勇者君。君はアーガスの息子だね・・・?」 ルークス「おまえも父さんを知っているのか!?」 アルティア「当然だろう?15年前、魔王様を打ち倒した男、アーガス。でもね、今回の魔王様は、ほぼ完全な状態でよみがえるよ。英雄の息子じゃぁ、僕が倒すわけには行かないじゃないか。魔王様も15年前の借りを返したがっていると思うからね。早くディンマルグまで行くがいいさ。魔王様が首を長くして待ってるはずさ。まぁ・・・辿りつけたら、ね。次に僕の前に現れたらね・・・本気で相手してあげるよ・・・必ずひねり潰してあげるよ!」 どこか穏やかだった口調は最後の言葉を発するとき、ヒステリックな叫びへと変わった。 アーヤ「な、なによ!ルークスはね、あなたたちなんかに負けないんだから!」 魔断師コウ「負けおしみ・・・?今すぐトドメをさしてあげる」 コウがアルティアの方に歩みかけるも、すでにアルティアは、気配もろともその場から消え去っていた。 魔断師コウ「逃げちゃった・・・気が抜けない相手。」 魔断師リー「それにしても、噂に聞いていたけどな。君がフィンの英雄だったとは。」 ルークス「英雄だなんて。そんな呼ばれ方、俺には似合わないですよ。」 魔断師リー「ルークス、アーヤ。君たちのおかげで、使命が楽に果たせたよ。ありがとう。」 解放した魔導の力を抑えながら、リーは笑顔を見せた。 アーヤ「でも二人とも強かったし、私たち手助けできたのかしら・・・」 ルークス「うん、だよなぁ。俺たちこそ、リーさんたちがいなかったら、どうなっていたか。」 お互いを認め合い、自然と握手を交わすルークスとリー。 魔断師リー「もう、この世界に何が起きているかはわかっているね?」 ルークス「うん、全てはディンマルグ・・・封印された魔王がよみがえる。しかも完全な姿で。」 アーヤ「ルークス、私たち、勝てるのかな・・・?」 ルークス「うーん・・・とな、勝つ!絶対に勝つさ!勝たないと父さんに合わせる顔がないしね。」 アーヤ「そうか・・・うん、そうだよね!ルークスがそう言うなら大丈夫だね!」 今目覚めようとしている、魔界の王。 しかし、その恐怖に臆することなく、輝く瞳で未来を見つめるルークスとアーヤ。 それは暗い時代にともった希望の光、そのものなのかもしれない。 |
突如、恐ろしい魔気があたりを支配した。 リー 「な・・・!?」 コウ 「え・・・?」 魔断師は瞬間的に理解した。 しかし、そんなはずはないと必死に否定する。 リー 「これは・・・魔導開放!?」 アルティア 「似ているよね・・・一体きみたちの身体には誰が封印されているんだろうね?」 ルークス 「アルティア!!」 そこに現れたのは、魔王の息子、アルティア。 しかしその姿は、以前とは似ても似つかない。 まるで魔断師が力を解放した時のように、身体の内側から魔獣のごときうごめきが現れており、その周りには狂気が満ちている。 そしてアルティアは軽く右腕を振り上げた。瞬間ルークスたちの背後の壁が爆音と共に破壊された! アルティア 「言っただろう・・・?今度は本気。あー、この姿は嫌い・・・嫌いなのに。」 コウ 「勝手に消えて、勝手に現れて・・・兄さんの周りをウロウロしないで。」 話ながらもコウのほほを伝う汗。 魔断師はわかっていた。アルティアは今までのどんな敵よりも強い・・・強すぎる。 リー 「これが宿命だからな・・・」 しかし、その強大な力を前にしてもひるまない者がいる。 ルークス 「こんな力を見せられたら余計に負けられないね。お前は絶対ここで倒す!」 アーヤ 「うん、ルークス。この人は止めなきゃダメ。絶対勝とうね!」 アルティア 「へぇ・・・気に入らないね。僕を恐れない愚かな人間がいる。君たちのその目。無性に腹が立つ・・・君たちも、他のやつらのように僕を恐れなよ・・・アハハ!!!いいよ、力ってどういうものか見せてあげる。」 アルティアを自由にする事は、スヴェインの危機という言葉では収まらない。 今、魔断師と勇者たちの全てをかけた戦いが幕を開ける。 |
アーヤ「ルークス、今よー!」 ルークス「ありがとう、アーヤ!くらえ、アルティア!」 アルティア「う、うわぁ!!」 ルークスの剣からほとばしる、龍のごときオーラがアルティアを打ち砕く! たしかに魔導解放を行ったアルティアの力は絶大であった。 魔断師たちですら死すら覚悟した。 アルティアの誤算は、ルークス・アーヤという二つの光。 ルークスはどれだけ強力な力を前にしても、ただの一瞬たりともくじけることはない。 真の勇気。 理解できないその力にアルティアは恐怖したのだ。 その勇気がもたらす原動力こそ、かたわらに寄り添うアーヤという少女のおかげなのだと彼は見抜けただろうか? アルティア「う・・・うそだろう・・・?2度も負け・・・負けるなんて・・・。いつか・・・いつか・・・絶対に、絶対に、絶対に君たちをほろぼしてやる!!」 そう言い残し、残る力を振り絞って、その場から消え去るアルティア。 ルークス「アルティア、待て!!」 魔断師コウ「あの逃げる能力、やっかいだわ・・・トドメをさしずらい。」 それから2週間。 逃がしたとはいえ、アルティアを打ち砕いた事で、スヴェインに押し寄せる魔物の数は激減した。 ルークス「リーさん、コウさん、色々ありがとうございました。俺達先にディンマルグへ向かいます。グレンたちとも合流しなきゃだし。グレンもすっごい強いから、リーさんに会わせたいな。」 アーヤ「コウさんて、シャルクさんと気が合うと思うから、シャルクさんにも会わせたいな♪」 魔断師リー「俺達も。もう少しだけスヴェインの様子を見守ってから、ディンマルグへ向かうさ。」 魔断師コウ「えっと・・・ルークス、アーヤちゃん、後から・・・駆けつけるね。」 妹が自分以外の人間に屈託のない表情を見せることへの動揺を隠しながら、リーは答える。 魔断師リー「ディンマルグ・・・国内がどうなっているのか検討もつかない危険な場所だ。無茶だけはするなよ。」 また会う約束をしながら、ルークスたちとリーたちは別れを告げた。 魔断師リー「英雄の息子ルークス・・・いや、息子という評価は失礼だな。俺達にはない輝きを持っている。」 魔断師コウ「兄さん、国内を早く平定して、すぐに後を追いましょう。ディンマルグは・・・本当に危険。」 ルークスたちとの出会いが、コウの精神をひとまわり成長させた。 リーはほほえみながらいつものように妹の頭に手をのせる。 魔断師リー「ああ、急ごう。そして俺たちの宿命にも終止符を打とう。」 辛い宿命を背負った魔断師たちもまた、荒野に向かい歩き出すのだった。 |