ミッション№ |
名前 | 特殊条件 | 人数 | 戦利品 |
初級 №A0001 |
08 / 09 / 30 ~ 12 / 12 / 31 ジムヘンソン一家の一日 |
なし | 1人 | ストーンLV1 (2ポイント) |
プロローグ |
ラクロア国、セントーの街の外れから森へと伸びる道に、大きなカゴを背負ったジムヘンソンの姿があった。 彼の奥さんの誕生日である今日のため、ごちそうの材料を集めに行こうというのだ。 「ウフフ! きっと驚くぞ。あいつはキノコのシチューが大好物なんだ」 最近は森にモンスターが出るという噂を耳にすることがあるが、日が高いうちなら平気だろう。 雲は高く、空はどこまでも青く澄み渡っていた。 生まれたばかりの坊やが大きくなったら、こんな日にはハイキングに行こう。 そんな想像で、ジムヘンソンの頬は緩んでしまうのだった。 |
GC0031 スライムアッザム ★ 500 / 160 / 160 4 / 3 / 3 / 2 / 7 |
森に入って、2時間程も経っただろうか? ジムヘンソンは膝を抱いて座っていた。 隣に置いた大きなカゴは空っぽだった。 野生の獣も馬鹿ではない。草を結んだり穴を掘ったりという程度の罠では、ウサギ一匹捕まらなかった。 キノコの一本も見つからない。彼の目論見は完全に外れてしまった。 だけではない。手ぶらでは帰れないと奥へと進むうちに、彼は迷子になってしまったのだ。 「坊や、おまえー……うう、家に帰りたいよー」 ジムヘンソンの緑色の大きな目が涙で揺れる。 「ピーーーーーッ!」 「わぁ!?」 不意の鋭い鳴き声に飛び上がったジムヘンソンは、後ろの茂みを振り返った。 ピーと鳴く動物だって? そんな動物に心当たりはない。考えたジムヘンソンが青くなる。 動物ではない。 ガサササササッ! 再び茂みが鳴って、紫色の塊が飛び出してくる。 間一髪だ、ジムヘンソンは一目散に逃げ出していた。 ぴょんぴょんと地面に弾んで追いかけてくるそいつは、ジオン族のモンスター、スライムアッザムだった。 森にモンスターが出るという噂は本当だったのだ。 「「誰か助けてー!」」 助けを求める声は、二重に聞こえた。ジムヘンソンがハッと足を止める。 「その声……あなた、あなたなの?」 果たして、向かう先から逃げてきたのは愛する妻の姿だった。 ジムヘンソンが森に入ったと聞いた彼女は、帰りが遅いのを心配して捜しに来たのだ。 彼女の胸には、可愛い坊やも抱かれていた。 「あなたを捜しに来たの。そうしたら紫色のモンスターに襲われて」 「なんだって、そっちもか!」 そっちも? と言う妻の声を、スライムアッザムの笛の音のような鳴き声が遮る。 「ばぶー!」 「うぅ、怖いよぅ…怖いけど……」 坊やの声が、ジムヘンソンには「頑張れ」に聞こえた。 |
敗北時 | スライムアッザムの攻撃は突進だけだった。ぶよん、ぶよんと嫌な感触がジムヘンソンの身体で弾む。 「うぅ、痛いしヌルヌルする……」 もはや泥仕合だ。ジムヘンソンはべそをかきながら、必死で両手を振り回す。 |
エピローグ |
「あなた、こっちよー!」 愛する妻の声は、ジムヘンソンにとって随分と高いところから聞こえた。 木の上だ。ジムヘンソンも昆虫のような素早さで木に登る。 「ピーーーーッ!」 手も足もないスライムアッザムは、木に登ることができない。 「えい、えいっ! くるなー」 悔しそうに弾んでいるスライムアッザムめがけて、ジムヘンソンがなっていた木の実を投げつける。 木の実でおなかがいっぱいになったスライムアッザムは、どこへともなく去っていった。 「やったぞ、ジオンのモンスターを追い払ってやった!」 「すごいわ、あなた!」 歓声を上げる夫婦。お母さんの腕の中では、坊やも楽しそうに笑っていた。 「まったく……この子は将来、大物になるぞ」 坊やはジムヘンソンの指を捕まえると、ちゅぱちゅぱと吸い始めた。 「怖かった……あなた、どうして森に入ったりしたの? 近づかないようにお触れが出ていたじゃない」 「そんなの、今日はおまえの誕生日だからだよ」 ごちそうの材料を山程持ち帰るつもりだったと、涙目で白状するジムヘンソン。 「まったく、抜けているんだから」 「ごめんよ」 「ふふ♪ あなたは探すのが下手なのよ。あっちにキノコがたくさん生えていたわ、行きましょう」 嬉しそうに頷くジムヘンソンだったが、その時あることに気付いて遥か下の地面を見下ろした。 「ところで、おまえ……どうやって坊やを抱えて木に登ったんだい?」 「無我夢中のことだったから」 蒼白な顔を見合わせる二人。言葉を失うほど地面は遠かった。 「誰か、下ろしてーーーーーー!」 「キャッキャッ」 助けを求めるジムヘンソン一家の声は、その後、丸一日森に響いたという……。 |