戦国BASARA/エロパロ保管庫

虎の若子と竜の姫2

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momo

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これは、その『つまらない答え』が模範解答、もしくは正解に近いもの
だったと思っていいのだろうか。
安堵する心と同じくらい、混乱している部分がある。柔らかくてあたたかい
『それ』が、俺の右腕から離れようとしないからだ。
何故かはわからぬがそちら側を向くことがどうしてもできず、ついでながら
右の肩から先を微動だにさせることもできぬまま、とにかく隣を歩き続ける。
特に目的のある散策ではないのだろう。足の向くまま気の向くまま、興味を
惹かれるものがあればそちらにと、あてもなくそぞろ歩くうちに景色は
川沿いのそれに変わっており、夕映えに紅く染め上げられた水面に目を
留めた姫君の歩みが緩やかになった。
そのころには何とか横顔に視線を向けることくらいはできるようになって
いたが、訪れた沈黙にどう対処していいものか、とにかく会話を繋げようと
浮かんだ言葉をそのまま口にする。
「り……竜の姫の御気性であれば、言い交わした相手が浮気などしよう
ものなら、即座に頭から真っ二つに斬り捨てそうでござるな」
ほんの軽口のつもりであったし、正直なところ姫君も笑いながら肯定
するかと思っていた。
なのに戻ってきた返答は、
「そう、思うか」
という、どことなく愁いを帯びた声で。
おや、と思う間もなく、俺に向けられてた眼差しがふいと逸らされた。
「………少し休む」
ひとこと言い置き、触れてきたときと同じほどのしなやかさでぬくもりが
離れていく。
……残念だと、一瞬確かに思ってしまった。
はねた毛先を揺らしながら土手を降りていく黒髪のあとを追う。いくさ場で
幾度となく目にしたのと同じはずの髪は、いつしか俺の中でその印象を
変えていた。
豪胆で、勇猛で、並の男など寄せ付けもしない戦姫は、いくさ場の外でも
同じ激しさでいるのかと思いきや、剣を手にせぬときは意外にも穏やかに
過ごされることが多く、高貴な姫君らしい雅な趣味をも多く嗜んでおられた。
いくさ場での邂逅だけでは知り得るはずなどなかったそんな部分はとても
新鮮で、新しい面をひとつ知る毎に、互いの距離も縮まっていくような気がしていた。
しかし今、律動的な歩調で川原へと降り立った姫君と取り残された俺との間には、
手を伸ばしても届かない距離ができていて、それが何となし違うものを連想させる。


―――――お館様。某は一体何を間違ってしまったのでありましょうか。


川原に腰を下ろした竜の姫は、水面を吹き渡る風に髪を嬲らせている。
膝を抱えているその姿はどこか子供めいて、不機嫌さよりも寂しさを強く
感じさせる背中から一間ほどの距離を挟んで立ち尽くす。
「……アンタなら、どうする?」
風に乗って届いた声に、咄嗟に答えを返せない。
「どうする……とは」
「言い交わした相手が別の誰かに心を移したら、どうする」
またも投げかけられた問いに、今度はかなり返答に窮した。さきほどよりも
一層具体的な想像力を要求され、導き出された結論に内心でまた当惑する。
「答えはどうした、真田幸村」
「―――それが、その」
回答を渋る俺に焦れたか、強い口調で促されて仕方なく想像の結果を告げた。
「その相手が一途な気性なので、他者に心を移すなどとはとても考えられず」
「………惚気か?」
何故か唐突に、後ろ姿から感じる気配が完全なる不機嫌さに切り替わった。
「い、いえ、実を申せば斯様な相手は居らぬ故、あくまで仮定の話でありますれば」
馬鹿正直に答えたところ、ようやく振り返ってくれた隻眼は呆れるのを
通り越して胡乱げに俺を映す。
「……Happyな野郎だな。架空の女相手に夢見てんじゃねえよ」


―――――お館様。その『架空の女』は何故かこのひとと同じ顔をしておりました。



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