蒼星石「誰も……いない。マスターは買い物に行ってるし……よし」

そう言うと、マスターが脱いだままにしていたワイシャツを手に取った。愛おしそうにそれを抱きしめる蒼星石。

蒼「マスターの匂いだ……」

お次はそれを着てみる。さすがにサイズは合わない。

蒼「ふふ、ぶかぶかだぁ。何だかマスターに包まれてるみたい……」

襟の部分で顔を覆い、嬉しそうに目を細める。
甘酸っぱい感情が出てくるのを抑えきれず、ワイシャツを着たままごろごろ転がりはじめる。

蒼「えへへ、早く帰ってこないかなマスター。でもこんな姿見られたら恥ずかしいな。ふふっ」

ワイシャツを抱きしめてごろごろごろごろ。いけないことをしているような感じもする至福の瞬間。

ごろごろにも飽きた頃合い――

翠星石「な、何やってるですか……蒼星石」

蒼「す、翠せ……!」

真紅「久々に遊びに来たら……こんなことをしてるなんて」

蒼「こ、これは、その」

雛苺「蒼星石ったらとっても幸せそうだったの」

蒼「ち、違うんだ、みんな」

翠「あの人間に身も心も毒されちまったですか……」

真「嘆くことはないわ。少女はいずれ大人への階段を登るのよ」

雛「いつまでも子供のままではいられないのー」

真「そういうことね。さあ、邪魔しては悪いわ。帰りましょう」

蒼「ちょ、ちょっと!」

翠「蒼星石、翠星石は嬉しいような、悲しいような、複雑な気分ですよ。
  でも、旅立ちの時は必ず来ちゃうんですね……」

蒼「す、翠星石――!」

マスター「……はっ、夢か」

翠「なぁにが『夢か』ですぅ?」

枕もとには般若の形相の翠星石と、赤くなってもじもじしている蒼星石がいた。

翠「内容は全て寝言でしゃべっていましたよ。ご丁寧にもナレーション付きで!
  お前は蒼星石にそんなことをさせる願望しか持ってないんですかこの変態ドチクショウ人間!!
  修正してやるからそこになおれですぅ!」

マ「お、落ち着いて翠星石!蒼星石、助けて!」

蒼星石に目を向ける。しかし

蒼「……マスター、僕そんないやらしい子じゃないよ……」

赤くなったままうつむいてそう言うと、蒼星石は部屋から出て行ってしまった。

マ「殺生な!」

翠「ふふふ……さぁて、たっぷりとおしおきしてやるですぅ……覚悟しやがれエロ人間!ですぅ!」


――――その夜、マスターの部屋にはこの世の地獄が顕現したという。

                                   『夢落ち』完