水銀燈は俺の嫁!?

ー3rd stageー

「うう・・その・・ごめんなさい。」

体中傷だらけの俺の手当てをしながら蒼はそう言いしゅんと俯いていた

「いやいや、良いって良いって。俺Mだし。」

我ながら自慢することではないと思う

「でも・・水銀燈の傷もあるけどこの傷のほとんどはボクのハサミだし・・
あの・・本当、ごめんね?あの時はびっくりしちゃって・・
マスターもボクなんかとじゃなくて・・水銀燈と・・したかったよね?」

さっきの風呂場での事件が思い出される
うう・・思い出すだけで顔が赤くなってしまうな・・

「い・・いや・・その・・な、あれは100%俺が悪かったし・・
そ・・それに男としては・・べ・・べつに蒼みたいな可愛い子とち・・ちゅーできるのは・・その・・
イヤでは・・なかったし・・寧ろ俺みたいなのにされて・・蒼の方が・・イヤだったんじゃないか?」

うわわ、顔を真っ赤にして何を言ってるんだ俺は

「え、いや、ボクは・・えっと・・その・・あう・・」

蒼も手当てをする手を止めて顔を真っ赤にして俯いてしまった

ええい、なんだこの気まずい沈黙は!!
な・・何か話題!話題!

「というか良くあんな醜態を曝したマスターの元に居てくれるね・・
イヤになったりはしないのかい?」

あの憧れの銀様をお初にお目にかかれたから仕方無いものの・・
あれはちょい暴走しすぎだったよなぁ・・

普通の娘だったら普通にドン引きしてマスターを変えたくなるよなぁ・・

「それは・・まぁ何とも思わなかったと言ったらウソになるけど
マスターはマスターだから・・イヤにはなったりしないよ。」

そう言うと蒼は満面の笑みを見せてくれた

「ああ・・ええ娘や・・この娘は最大級のええ娘や・・」

俺は手当てする蒼を抱き寄せ撫でながら言った

「えへへ・・そんなことないってば・・」

蒼はそんなことを言いながら俺に身を委ねてまんざらでも無さそうな表情をしていた

「で、それは良いとしてだ。」

『もうやめちゃうの?』みたいな目で蒼がこっちを見上げてきた
うう・・かなり可愛いが俺には銀様という大切なお方がいるんだ・・すまない・・。

「翠星石を探しにいかないか?」

「えっ?」

蒼はとたんにびっくりした表情になる。
あれ?俺変なこと言った?

「いや、ほら・・やっぱり蒼も早くお姉さんに会いたいだろ?」

「あ・・そ・・そういうこと・・だよね?うん!ボクも翠星石には会いたいよ!ただ・・」

「ただ?」

「いや・・うん!なんでもない!大丈夫だよ!あはは・・」

?何を言いたかったんだ?

    • ま、いいか。

「それなら善は急げだ!早速でかけるぞ!」

「うん!」

  •   ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

と、いうわけでボクらは当ても無く翠星石を探すたびに出たわけですが

「大丈夫か?蒼?」

カバンの外からマスターの声が聞こえる

「うん、ちょっと狭いけど大丈夫。」

ボクの姿が人目につくのはまずいということでボクはカバンに入ることにした

「うーん・・やっぱり俺は別に良いんだぞ?人形オタと思われるだけなら・・
やっぱり抱っこして行ってやったほうがいいんじゃないか?」

マスターの優しい言葉がカバンの中に響く
でも・・そんなことされたら顔が赤くなってどうしようもなくなっちゃうだろうし・・
何よりマスターに迷惑かけたくないから・・

「ううん、大丈夫だってば。むしろマスターこそ大丈夫?このカバン結構重いでしょ?」

「うう・・お前はどこまでもええ娘や・・大丈夫だぞ!すぐにマスターがお姉さんを探してあげるからな!」

カバンごしでもマスターがガッツポーズをして凛とした表情をしてるのがわかる

「えへへ・・ありがと。」

それはそれで嬉しいんだけどさっきからボクの心の中ではモヤモヤが渦巻いていた

もしかしてボク・・翠星石を見つけたらマスターと離れ離れになっちゃうんじゃないかと

もともとマスターは水銀燈と契約したいんだったし・・
ボクもそれを聞いて翠星石のマスターと契約するハズだったんだ

だから・・マスターは翠星石をみつけたら・・彼女にボクを託しちゃうんじゃないか。って

マスターはハッキリとは名言しなかった
それがもうマスターの中では当然の事となってるからなのか

それともそんなことは微塵と考えてなくてただボクを姉と会わせてあげたいだけなのか・・

ボク自身の気持ちもまだハッキリしてない

確かに翠星石は大事だし・・マスターには幸せになって欲しい
あの水銀燈と幸せになれるかは疑問とするところだけど・・

でも・・まだマスターの隣に居たい

この人のそばから・・離れたくないんだ。

「っていうかさ・・あては無いのかねやっぱり・・」

しばらく歩いてからマスターが呟いた

「うーん・・そうだね・・まず目覚めてるかどうかもわからないし・・」

「うう・・なんかこう「ドールとドールは引かれあう」みたいな事は無いのか?」

「マスター・・一般人に伝わりにくいネタはやめようね。
まぁでも・・無いわけじゃないとボクは思うけどなぁ。」

ところどころ思い当たる節がある

「例えば水銀燈が今回ボクの元に突然でてきたし・・今までも何度か突然水銀燈が襲撃してきたり
他のドールと会うことはあったから何か感覚的にお互いの位置はわかるのかもしれないね。」

それか偶然出会うように出来てる・・とか?

「ふーむ・・でもとりあえずは様子見ってことにな・・っがあっ!?」

突然カバンが宙に舞った感覚がした
まさか・・マスターが事故か何かに!?

ボクはとっさにカバンを開けてカバンのバランスを持ち直し滞空する

「マスター!?大丈夫!?」

しかしマスターに目が行く前にボクの視線は
その倒れた頭上に浮いているカバンにであった

カバンがそーっと開いてその中から人影が現れた

腰まで届いた長い巻き髪
翠色の長いスカート
白い頭巾にレースのリボン
ボクと同じ・・翠と紅のオッドアイ

彼女は・・

「翠星石!?」

「えっ!?あ・・そ・・蒼星石ぃぃぃいいい!」

翠星石は自分の乗っていたカバンからボクのカバンまで飛び移ってきた

「うわぁ!?もう、相変わらず無茶ばっかり。」

「うわあああああん!良かったですぅ!二度と会えないと思ってたですぅ!
目覚めてみたら蒼星石が居なくて!寂しかったですよぉぉおおお!」

ボクを抱きしめて泣きじゃくりながら翠星石は言った
ああ懐かしいや・・良くこうして彼女をあやしてたっけ・・

懐かしさに浸り、彼女の背中をよしよしと撫でていると遠くから走ってくる音が聞こえた
まずい!人が来る!?

「駄目よ翠星石ちゃーん!一人で駆け出してったら・・はぁ・・はぁ・・
ジュンくんに翠星石ちゃんのこと任されてるんだから・・何かあったら大変!って、あら?」

メガネをかけたぽけーっとした女の子が曲がり角から現れた
翠星石を知ってるってことはまさか?

「ごめんですぅのり・・ただ翠星石は一刻も早く蒼星石を探し出したくて!」

「あら・・もしかしてその隣に居るのが?」

「そうですぅ!妹の蒼星石なのですぅ!」

翠星石は愛おし気にボクにほお擦りをした

「まぁ!良かったわねぇ翠星石ちゃーん!」

メガネの少女はまるで自分の事かのように両手を合わせてわらった

「翠星石?彼女が君の新しいマスターなのかい?」

「違うですぅ!翠星石のミーディアムはボサボサ頭の引きこもりですぅ!」

頬を膨らませながら翠星石が言った
くす、変わってないや。

「あらあら・・駄目よ翠星石ちゃん!ジュンくんだって事情があるんだから~」

「『外に出るのが怖い』からでしょうが!全く折角翠星石が一緒に行くと言ってるのにあのアホ人間は~!」

きー!というヒステリックな声を翠星石が発している
こういう時の彼女は大抵相手のことが本気で好きなのだ、間違いない。

そう思うと・・微笑ましいなぁ

「・・ってあー!マスター!」

と言ったところでボクはマスターのことを思い出しカバンから飛び降りた

「ねぇマスター!大丈夫!?ねぇってば!」

ゆさぶって見るが全く意識が無い
ど・・どうしてこんなことに?

「あわわ!そのダメそうな男が蒼星石のマスターだったですか?
それでしたら翠星石がぶつかちまったせいです!ごめんですぅ!」

「ええ!?じゃああれはマスターにぶつかった後だったのかい!?」

お説教の一つでもかましてやりたいところだけどまずはマスターが先だ!

「えっと・・のりさん・・でしたっけ!?お家まで案内してもらっていいですか!?
マスターを手当てしなきゃ!」

「え?ああ構わないわよ?それじゃあ着いてきて!」

「のりに着いていったら日が暮れちまうですぅ!飛ばしますよ蒼星石!?」

そう言うと翠星石は自らのカバンに戻り「乗りな!」という感じのポーズをした

「ば・・馬鹿言わないでよ!ボクだけなら良いものの人間なんだよ!のりさんに手伝ってもらわなきゃ運ぶのなんて無理だよ!」

「うー、なんだかその男のことばっか気にしてて良い気持ちじゃないですぅ。」

翠星石は拗ねたように頬を膨らました
う・・そんなにボクマスターのことばっかり言ってたかな?

「と・・とにかく!早く手当てしなきゃ!行こう!」


  •   ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

ボクはのりさんのお家・・桜田家にお邪魔してソファーを借りマスターを看病していた

「マスター・・大丈夫?」

返事は無い、ただのしかば・・ぐっすりと眠ってしまってるようだ。
そりゃそうか・・水銀燈が来てあんだけハシャいでたしね・・

でもここまで意識が無いってことは相当強いダメージを受けたみたいだね

「ったくいつもお前はアホばっかやらかして!少しは反省しろ!」

「イヤですぅ!あの男が蒼星石をたぶらかすからバチが当たったですぅ!ざまぁ見やがれですぅ!」

翠星石はどうやら先ほどの事をまだ気にしてるようで
相当マスターのことが気に入らないようだ。

で、あのボサボサ頭の子がジュンくん。翠星石のマスターらしい

「おーまーえーなぁ!人様に迷惑かけてんだぞ!お前の妹だってあんなに心配してるじゃねぇか!
ちょっとは罪悪か・・ぐはぁ!?」

翠星石が近くにあったカステラ玉をジュンくんに投げつけた
その瞳には若干・・涙?

「蒼星石は心配なんかしてないですぅ!あんなアホのことなんて・・心配してるわけねーです!
蒼星石は・・蒼星石は・・!うわああああああああん!」

たまらず翠星石は階段を駆けて二階へ上がっていってしまった

「いつつ・・なんなんだよ・・ったく。」

「ごめんなさい、彼女まだ子供で・・甘えん坊なんだ。きっとボクがマスターに取られたーとか思って
それで、拗ねてるんだろうね。」

前から少しも変わってない、あの真っ直ぐで純粋な性格。
ボクには無い・・感情をそのまま口に出せる性格。

「当然よねぇ!蒼星石ちゃんこんなに可愛いんだものー!」

不意にのりさんが後ろからボクを持ち上げて言った

「うわわ!わ、そ、そんなことないですよー!お、おろしてください!」

「あら抱っこはイヤ?ごめんね?すぐ降ろしてあげるから。」

まだマスター以外の人に突然抱っこされるのは慣れてないや・・
マスターは突然抱っこするからもうなれっこだけど・・

ってまた何を言ってるんだボクは!
うー・・なんか最近調子くるってるなぁ・・しっかりしなきゃ!

「えっと・・ご迷惑かと思いますが、マスターの目が覚めるまで・・置いといてもらえませんか?」

病院に連れて行くべきかな、とは思ったけど
大したことなかったらマスターにも迷惑だし、何より翠星石が可哀想だ

「ああ、そりゃかまわないよ。あのアホが迷惑かけたんだしな。」

ジュンくんがイライラした表情でお茶をすすりながら言った

脚が凄い貧乏ゆすりしてる・・あんなこと言ってるけど翠星石のこと、心配なんだろうなぁ
ふふ、何か・・翠星石と似ているな。

さて、翠星石の機嫌を直しにいかなくちゃ!

  •   ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

「う・・うーん・・」

ど、どこだここは
というか俺どうしたんだっけ

ああ、そうだ突然カバンが飛んできて倒れたんだっけ・・

いつつ・・思い出したらまた頭が

そんなことを考えているとぬっと俺の頭に影がかかる

「マスター!良かった!気付いてくれて!」

その影の主は俺の首にいとおしく抱きついてきた

「おう、蒼。悪かったな心配かけて。」

俺はそう言い抱きついてきた蒼の頭を撫でてやる
こいつ、ずっと看病しててくれたのかな?

「とっとと蒼星石から離れるでーすー!変態人間!」

突然後ろから出てきた人影に蒼が引き離されてしまう
その人影はカールした茶髪で頭巾を被ってて・・

「あ、君が翠星石か。」

蒼のお姉さんだな、確か。

「お前の話は蒼星石からハッキリシッカリしっぽり聞いたです!」

怒りを露わにした様な表情で翠星石に詰め寄られる
うう・・聞いてた通りの性格だなぁ。

「お前みたいな変態に蒼星石を任せておけるわけないのですよー!」

「ちょ・・ちょっとやめて!やめてよ翠星石!」

思いっきり顔面を蹴られた、ちょっとくらい手加減をしてくれよ・・

というか俺の話ってまさか銀様の話もされたのか
ああ、そりゃ妹がそんな男のとこに居たら蹴られて当然だわ

「と・に・か・く!蒼星石をお前みたいな人間のところにおいてなんておけません!
今すぐ出て行くですぅ!」

翠星石が俺のカラダを無理矢理起こした
うう・・まだ頭がグラグラするよぅ

「待ってよ翠星石!話が違うじゃないか!」

蒼が翠星石の肩を揺さぶりながら叫んだ
む?話が違うって?

「嘘に決まってるです!こんなアホに蒼星石を預けられるハズが無いです!
こんなアホと一緒に居たって蒼星石は幸せになれないですよ!?」

胸にチクリと何かが刺さったような痛みがする
動きを止めて俯いてるのを見ると蒼も同じ痛みを感じたのだろう

「こいつは水銀燈に相当うつつを抜かしてるのです!
ありえないでしょうけどもし水銀燈がコイツのミーディアムになったとしたら!コイツは幸せですが!
きっとコイツは水銀燈にばかり構って、蒼星石のことなんて見もしなくなるです!」

ああ、まただ
またチクリと胸が痛む

「それでも蒼星石は幸せだって言えるですか!?」

「そんなこと・・マスターはっ」

蒼が何かを言おうとしたが、俺はそれを右手で止める

「ごめん、ありがとうな蒼・・でも俺、自信が無いや。」

胸の痛みがどんどん高まっていく
油断したら泣いてしまいそうなほどに

「それってどういう・・」

「銀様が来たとして、お前を蔑ろにしない自信が俺には・・無い。」

蒼の表情がどんどん絶望に染まっていく

「そ、れ・・本気で、言ってる・・の?」

蒼は俯いて肩を震わせ、途切れ途切れに言った

「・・ああ。」

俺がそう言うと蒼は返事もせずに走っていってしまった
ああ痛い
ただただ胸が・・痛い。

「・・っ!ほらほら!とっとと出てくですよ!これ以上やることも無いでしょう!」

さっきまでなんだかおろおろしてた翠星石が出てけと催促する
俺はそれに従い、ソファーから起き上がった

「何か、ごめんな。しみったれた空気にしちゃって。」

「・・・・・・・」

翠星石は何も答えなかった
ただ俺をにらみつけるだけで

「そんじゃまた。」

バタン


「やっぱり翠星石は正解だったです・・お前みたいな奴に・・蒼星石を任せられるはずなかったです。」


外は雨

ああ、蒼がウチにやってきた日もこんな雨だったっけ

あの日はあんなに嬉々として蒼を追い出しっていうのに

なんで今日はこんなにも辛いんだろう

たったの2週間だってのになぁ・・

たったの・・


  •   ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

はぁ、すっかり夜だ
最近マスターとは喧嘩してばっかだなぁ・・

はっ!違う違う!もうマスターの事は考えないんだった!

知らないよ!もう、マスターなんて・・ううっ

「蒼星石・・?まだ、泣いてるですか?もう落ち着いたですか?」

扉の前から翠星石の声がする
ああ、ずいぶん心配かけちゃってたみたいだ

「ごめんね、・・うん。もう大丈夫だから入っていいよ。」

翠星石が遠慮がちに扉を開けて入ってきた
後ろには真紅と雛苺も一緒に

「あ、2人とも・・どうしたの?」

「どうしたの、とは酷い言い方ね。心配して慰めにきたんじゃないの。」

「なの!」

雛苺が嬉しそうに飛びついてきてボクの頭を撫でる
少し照れくさくなって顔が赤くなってしまう

「あはは・・ありがと、みんな。」

そして雛苺を抱きしめ同じように頭を撫でてあげる

「でも驚いたなぁ、まさか君達全員があの男の子と契約してたなんて・・」

「正確には雛苺は契約してないのだけれどね。」

まさか翠星石と一緒の家にこの二人が居るとは思わなかった
でもこれだけたくさんのドールが集まるということは、あのジュンくんという子・・良い子なんだろうなぁ

「それにしても蒼星石は可哀想ですぅ!あんな変態薄情人間なんかと契約してしまって!
別れられてせいぜいしたですよねぇ!」

翠星石が満面の笑みでぼくに近寄ってきた

「あ、うん・・そ、そうだね。」

「翠星石。」

真紅が咎めるように翠星石を止めた

「ちょっと、私は蒼星石と話があるから・・2人とも外してもらえるかしら?」

「なっ、なんでわざわざ出てく必要があるですか?」

「積もる話もあるのよ、いいから早くでていきなさい。」

キッとしためつきで真紅が言うと翠星石も萎縮したのか
雛苺を抱え悪態をつきながら外にでていった

「ホーリエ、ドアの前で盗み聞きしないように追い払いなさい。」

念には念を、という様に真紅がホーリエを飛ばす
すると思ったとおりだったようで、外で翠星石達が騒いでいるようでドタドタという音が聞こえた

「・・話って何?」

翠星石を追い出したんだから
何となく話はわかってる

「あなたのマスターの話に決まってるわ、出てらっしゃいレンピカ」

真紅がレンピカを呼ぶと真紅のポケットからレンピカが出てきた

「あ・・あれ?なんでレンピカがそこに居るんだい?」

そういえばさっきから姿を見てなかった

「翠星石から又聞きした話だとあまり信用できなかったから、彼女に話を聞かせてもらったわ
悪いマスターでは無さそうじゃない。」

レンピカがボクの傍に戻ってくる

「あ・・あはは・・うん、良いマスター『だった』っていうか・・。」

まさかあそこで裏切られるとは思わなくて・・

「・・あなたのマスターもあなたと同じように泣いてるわ。」

「そんな訳無いさ、マスターもせいせいしてるよ。」

あんなにキッパリといわれちゃったんだ
ボクの戻る場所はきっとあの人の心にはもう・・

「あら、レンピカに聞いてホーリエが見てきたのよ?」

    • え?

「彼は泣いていたわ、声を出して嗚咽してたわけじゃないけど静かに耐えるように泣いていたわ」

「そんな!だってマスターは水銀燈を!」

真紅がふっとした笑みを浮かべる

「彼ね?ホーリエを見つけて『レンピカ!?』って叫んで捕まえようとしたそうよ?
『メイメイ!?』じゃなくて・・ね?」


「彼はあなたを愛してるわ、それがあなたの想ってるような立場としてじゃなくても、
どんな形でも『愛される』ことは私達ドールにとって幸せだとは思わなくて?」

真紅が微笑んだまま右手の紅茶を啜る

「あなただって未だに契約は解かないし、『マスター』という呼び方も変えないし
    • 帰りたいんでしょ?彼の元へ。」

優しく諭す様に真紅が言った

「マスター・・会いたいよ・・ボク・・真紅!ボク・・もう一度マスターに会いたい!」

ボクの中で何かが吹っ切れた
会いたい・・もう一度会ってあの手で撫でてもらいたい、優しく声をかけられたい!
娘のような、ペットの様な愛され方だって構わない!
いっそ愛してくれなくたって構わない!
ボクは・・マスターにあいたい・・っ

「良い娘ね、良く言えたわ。下に大きな鏡があるの、翠星石達に見つからないように行くわよ。」

真紅がステッキでドアを開けて見張っていたホーリエを回収した

「リビングでジュンと遊んでいるようね・・今がチャンスよ
翠星石に見つかったら色々とややこしいわ。」

足音を殺しながらも急ぎ気味で鏡のある物置へとつきそうだったその時だった

「?真紅?何してるですか?」

リビングのドアから翠星石が顔を出した

「まずいっ・・蒼星石早く行きなさい!」

ボクは言葉に甘えて先を急いだ
ごめんね・・翠星石、またいつ会えるかはわかないけど
今はとにかく・・マスターに会いたいんだ!

「マスターっ!」

慌ててドアに手をかけて物置へ入っていった

「なっ?マスター!?ちょっと真紅!?蒼星石に何を言ったですか!?」

「マスターのとこに帰るのだそうだわ。」

真紅が極めて冷静に答えた

「な!な!んななななな!?あの変態の元へ?なんで!?」

「知らないわ、最後に決めたのはあの娘の意思。それをとめるなんて姉としてどうなのかしらね?」

激情して掴みかかる翠星石

「でも!でもでも!ここで皆で一緒に居た方がきっと幸せなのです!きっと・・?」

「たとえ双子の妹といえど、どちらが幸せかを決める決定権があるのはあなたではないわ・・あの娘よ。
今は、見守ってあげなさい・・いつかもし本当に耐えられない時は彼女がまた来るだろうからね。」

そう言うと真紅は翠星石を手を振り解いて自室に戻っていった

「全く・・困った姉達なのだわ。」

似た様な台詞を蒼星石に言われた事もあったが
ここでは割愛しよう

  •   ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

「マスター・・?居る・・?」

闇夜の中で微かに声が聞こえた
蒼・・・?
いや、そんな訳無い蒼は翠星石達の家に・・

「寝てる、の・・?」

次は聞こえた
ハッキリと
俺は夢で無いことを願ってゆっくり眼を開けた

「蒼・・なの・・か?」

ゆっくりと蒼の頬に手を触れる
これは・・涙?

「マスター・・マスターッ!」

そのまま首に蒼が抱きついてきた

「夢じゃ・・無いんだな?蒼、なんだ・・な!?」

俺もその蒼を抱き返す

気付けば俺の目にも涙がたまり
こぼれだしてしまってしまっていた

「俺っ、あやまりた・・くてっ!本当に身勝手、だけど・・俺!ま、まだお前と離れたくなくて!
おかっ、おかしい・・よな!?会って二週間し、か経って・・無いのにさ?
この数時間、で、全部失、った様な・・気持ちに!なっちゃ、て!
も、もうあんなこと言わないから!お、お前をっ!大切にするか・・ら・・っ!」

嗚咽まじりで良く聞き取れないような感じになってしまったが
それでも蒼はしっかりわかってくれたいたようで
泣きながら強くうなずいていた

「全然おかしくなんか・・無いよ?ボクも・・マスタ、とは・・二週間しか一緒に居ないけど
翠星石たちと一緒に居る時、なんか・・!寂しかったんだ・・よ?」

お互いを抱きしめる力が強くなる
そのまま暫く嗚咽混じりで泣きながら抱き合いながら謝りあった

「はぁ・・っやっぱりマスター・・あったかい。」

なんだか恥ずかしくなるセリフを蒼が言った

「ねぇ、マスター?マスターにとってボクって・・どんな存在?」

「ん・・?なんていうのかな・・こう・・可愛い妹っていうか娘っていうか・・そんな感じ?」

「そっか・・うん!ありがと!・・でね?今日は、その、このまま一緒に寝ても・・いいかな?」

お互いの顔が真っ赤に染まる。真っ赤な誓いいいいい

「あ、お、おう・・良いよ。ほら、おいで?」

蒼が俺の首から離れると同時に俺は布団を持ち上げて蒼の居場所を作る
すぐさま蒼が布団に潜り込んで抱きついてきた

「ふふっ・・もうこの温もりから離れたりなんかしないよ・・」

呟くように蒼は言い、泣きつかれたのかそのまま寝てしまった
ああ、幸せって・・こういうことを言うのかな?

ってこんな場面見られたら銀様に「浮気!?」って言って殺されちゃうかも!
ああでもそのままお仕置きされるのも悪くは・・!?

  •   ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

あったかい

そういえば初めて会った日も

冷たい雨の中

この温かい腕で暖めてもらったっけ

今は・・どんな関係でもかまわない

でもいつか、いつかは・・

ふふっ・・ガラじゃない・・かな?

おやすみ、ますたー

だいすき、だよ?


To be continued..→