銀「あんた・・・早く自慢の鋏を出しなさいよ。」

  あまりの弱々しい様子に蒼星石は戦闘体制に入るのがためらわれているようだ。

 蒼「今の君じゃあまともには戦えない。もう少し回復してからでも・・・。」
 銀「ふざけんじゃないわよぉ!!」

  今までの様子が嘘の様に水銀燈が吼えた。

 銀「だからあなたは覚悟がなってないって言うのよ!私は・・・覚悟してる。
   戦いになれば傷つく事も、傷ついた時を狙われる事も。
   潰し合い?上等じゃない。それ位で屈するならハナからアリスの資格なんて無かったのよ!」
 蒼「・・・分かった。」

  蒼星石がようやく庭師の鋏をその手に握った。

 銀「そうよ、それでいいのよ。この私はアリスになるべき第一ドールよ?
   変なお情けをかけられたくはないわね。」
 蒼「いくよ。」
 銀「だからそれが馬鹿にしてるっていうのよ!!」

  水銀燈が剣を手にして蒼星石の方へと駆け出す。
  蒼星石も駆け出し、そのまま二人の体が重なった。
  しばらくして一方の体から力が抜け、剣が地面に落ちた。

 銀「なんで・・・一思いに鋏でぶった斬らなかったの?今なら・・・たやすく出来たはずよ?」

  水銀燈の胸には挟みの刃ではなく柄の部分が命中していた。

 蒼「今の君ならこれでも十分に倒せる。余力は残しておきたいし、お父様の作品を無碍に傷つける事もないからね。
   ・・・それに、永い眠りに就くのならきれいな姿での方がいいだろう?」
 銀「ふふっ・・・あんたも大分・・・女々しいところがあるのねえ。でも・・・ありがと・・・」

  水銀燈の体がずるりと傾く。
  何の抵抗も無くどさりと地に伏す。
  背中の辺りが光ると二つの結晶が出てきた。

 マ「これが、ローザミスティカ・・・。」

  心と命の具現とも言える、温かで美しい光。

 蒼「僕に力を貸しておくれ。僕が君達の想いも、覚悟も背負って戦うから。」

  蒼星石がローザミスティカに口を近づける。
  立て続けに閃光が広がる。
  視界が戻ると目をつぶって感慨に浸る蒼星石の姿があった。

 蒼「君達も・・・大変だったんだね。これからは・・・共に・・・。」

  その時、新たに誰かが現れる気配。

 雛「あら、出遅れちゃったの。」
 マ「雛苺!」
 蒼「君もここに来たのかい。」
 雛「手負いの水銀燈を倒して手っ取り早く強くなりたかったんだけど、考える事は同じね。」
 蒼「マスター、水銀燈を真紅のところへ。」

  大急ぎで水銀燈の体を抱えると真紅の横にそっと置く。
  二人ともまるで眠っているかのような安らかな表情で寄り添っている。
  こうしていると仲の良い姉妹にしか見えない・・・。
  両者が停止することで得られた偽りの睦み。

  それが、無性に悲しかった。