雪「・・・ごちそうさまでした。ふぅ・・・なるほど、中華料理とは奥が深いのですね。
   流石四千年の歴史、ローゼンメイデンよりも長い時を超えて磨かれてきただけはあります。」
 マ「これでも一部なんだよね。」
 雪「そうですか、それでは他のものはまたの機会に。」
 蒼「また来るんだ。」
 雪「はい、今日は失礼しようと思います。」
 翠「そういう意味じゃありませんよ。」
 雪「ではお姉様方もお元気で。次はラプラスあたりに林檎のウサギでも作ってもらいます。」
 真「共食い・・・なかなかの嫌がらせね。」
 雪「いえ、なんでもお見舞いで果物を貰って林檎が余ったとか。」
 銀「あらぁ、あの性悪兎がくたばるの?」
 雪「いえ、違いますけど。では名残惜しいですがまたお会いしましょう。」

  炒飯、酢豚、春巻き、餃子、青椒肉絲・・・
  食べるだけ食べて満足したのか雪華綺晶は帰っていった。

 金「きらきー一人ですごい量を食べたかしら。」
 銀「味は問題ないけど、こんなのばっかりでくどくないのかしら。」
 翠「舌がなんだか脂っこいですよ。」
 マ「ふふん、そんなこともあろうかと、だ。」
 雛「なーに?」
 マ「デザートに杏仁豆腐を作ったんだ。冷蔵庫から出すから待っててね。」

  杏仁豆腐の入った器を食卓に運んだところで鏡から誰かが現れる。

 雪「こんばんは。」
 マ「・・・はい、こんばんは。」
 雪「ちょっと忘れ物をしました。」
 マ「何を?」
 雪「えー・・・あー・・・。」
 マ「・・・・・・。」
 雪「・・・デザートを。」
 マ「正直でよろしい。」

  こっくりとうなずいて雪華綺晶を迎え入れる。
  再び薔薇乙女勢揃いで食卓に着く。
  ちょっと食べてから雪華綺晶に感想を聞いてみた。

 マ「初めてなんだよね?どうかな?」
 雪「ああ、舌の上でふわりと崩れて、脂っこいのが流されて・・・おいしい・・・。」
 銀「あんた平気で帰ったじゃない。」
 雪「いえ、それはそれ、これはこれという事で。」
 蒼「ところでさ、まさかずっと覗いてたの?」
 雪「あの、お替りいただけますか?なにぶん初めて食べたもので。」
 翠「人の話を聞けです。」
 マ「すまないけどみんなに分けちゃった分しかないんだ。」
 雪「そうですか・・・甘い物・・・ほとんど食べた事がなくって、こんな幸せもあるんだなあ、と。」

  一同がしんとなってしまった。

 マ「・・・はい。僕の分を上げるよ。」
 雪「本当ですか!?」
 マ「女の子って甘い物が好きだもんね。まあ、また作ればいいし。」
 雪「ありがとうございます。」

  そういってすごく嬉しそうに笑う。
  自分達は普段おやつなんて何気なく食べているが彼女にとっては稀有な物なのだろう。

 蒼「しかたない、マスターだけにってのも気が引けるし僕のも上げよう。」
 雪「え?」
 翠「じゃあ翠星石もやりますよ。蒼星石が食べないのに食べるわけにはいかんです。」
 金「まあカナはお姉さんだし妹に譲っちゃうかしら。」
 雛「ヒナもお姉さんなのー!妹だから上げるの。」

  雛苺も滅多にない『姉』として振舞いたいのかそう言った。

 真「ふぅ、家来が上げたんじゃあ主人が何もしないのも無様よね。」

  そこで残る一人の動向に注目が集まる。

 銀「・・・何よ、みんなして。ふん!上げなきゃ悪者扱いされるんでしょ!
   まったく乳酸菌が入ってないものに未練なんてないわよ!!」

  結局全員分の杏仁豆腐が雪華綺晶のもとへと集まった。

 雪「すみません、これ、なんとかして持って帰れないでしょうか?」
 マ「出来るけど・・・なんで?」
 雪「せっかく皆さんからこうしてご好意をいただいたので一気に食べず大事にいただきたいんです。
   じっくりと感謝して味わいながら食べたい・・・。」
 マ「そっか、待っててね。今用意するから。」
 雪「はい、一年くらいかけてじっくりと消費します!」
 真「腐るわよ。」
 銀「だからちょっとは常識を学びなさい。」
 マ「また来ればいいからさ。」
 雪「はい、じゃあ今度こそ失礼します。ありがとうございました。」

  みんなが見送る中、雪華綺晶が鏡に消えていった。

 マ「・・・帰ったね。」
 翠「帰りましたね。」
 雛「あーん、ほとんど食べてなかったのー!」
 金「やっぱヒナはまだ子供ね。カナはぜーんぜん平気かしら!」
 雛「む、ヒナも平気よ!」
 マ「おー、二人ともえらい。じゃあ3時のおやつの分ホットケーキでも焼くか。」
 雛「ほんと?」
 金「嘘じゃないわよね?」
 マ「みんな妹思いのいい子だったからご褒美だ。」
 銀「あらぁ、青二才のくせに子ども扱いしてくれるじゃない。」
 真「じゃああなたは食べないのね?」
 銀「・・・食べるわよ。」
 蒼「ふふ、また雪華綺晶が嗅ぎ付けて来たりしてね。」
 真「洒落にならないわね。」
 マ「念のために余分に焼いておけばいいよ。」

  かくして全員分+1のホットケーキを焼き、一気に運ぶ。

 マ「ほーら、ホットケーキだよー。」

  半ば予想していたがまた鏡から気配が現れる。

 マ「はいはい、君の分のホットケーキもあるからたらふくお食べ。」

  その声に驚いて片目を隠した少女の動きが止まる。
  だがしかし、そこに居たのは薔薇水晶だった。