今日も今日とて我が家ではローゼンメイデンが大騒ぎをしていた。
  すっかりと薔薇乙女のたまり場と化している。

 銀「真紅ぅぅぅーーー!!」
 真「あなたって名前の通りに沸点が低いのね。」
 翠「しかも有毒なものを撒き散らすと。うまいこと言いますね。」
 銀「お黙りっ!」

  羽根がブチ撒けられる。
  今ではすっかりいつもの光景だ。

 マ「まったくもう、少しは落ち着いて欲しいものだ。」

  箒で羽根を掃き取りながら言った。

 金「喧嘩するほど仲が良いってやつかしら。」
 マ「かもね。」

  ちりとりに溜まった羽根をゴミ袋にあける。

 蒼「マスター、羽根が!」

  とばっちりで羽根が飛んできた。

 マ「はい、いらっしゃい。」

  そのままゴミ袋の中に迎え入れる。

 マ「まったく、あまり散らかさないで欲しいものだ。」
 蒼「・・・手際いいね。」
 マ「慣れたから。」
 雛「すごいのー。」
 金「プロのお掃除屋さんになれちゃうかしら!」
 マ「どうも。」

  話していると今度は背後に気配。

 蒼「マスター、危ない!」

  ひょいっと左足を持ち上げる。
  その下を何かが高速で通過した。

 翠「あぎゃっ!」

  ごちん、という音とともに悲鳴が上がる。

 金「翠星石どうしたの?」
 雛「床に寝るのはお行儀が悪いのよ。」
 翠「あ、あ、あ・・・。」

  翠星石は身を起こしたものの、後頭部を押さえてうずくまったままだ。

 蒼「あんなに勢い良く蹴ろうとするからだよ。」

  翠星石の頭を撫でながらたしなめる。

 翠「違います!この野郎がかわすのがいけないんです!!」
 金「普通はかわすかしら。」
 雛「良く気付いたわね。」
 マ「流石に35回も蹴られればね。だが今ので覚えた!」
 蒼「翠星石、もうこんな事はやめなよ。ジュン君に会えない八つ当たりなら僕も一緒に謝るから帰ろう?」
 翠「な、違います!あんなメガネチビ関係ありませんっ!
   これは・・・そう、この人間が蒼星石の足を引っ張らないかのテストです!」
 雛「じゃあ合格なの?」
 翠「う、まだまだです。これからはもっとドギツくってエグい攻撃で試しちゃるです!!」
 マ「やめてよね。」
 蒼「やれやれ、まだ続けるのかい?それにしてもあの二人の方も良く飽きないもんだ。」

  未だに二人で戦ってる水銀燈と真紅の方を見て呆れたように言う。

 マ「でも小競り合いみたいなものだしね。じゃれあってるようなものだよ。」
 雛「また羽根が散らかっちゃったの。」
 金「あんなに飛ばして禿げないのかしらね。」
 翠「鬼太郎は禿げましたね。まあ無くなっても面白くもねえですけど。」
 蒼「まったく、マスターに面倒をかけるのもいい加減にして欲しいよ。」
 マ「まあいいさ。ちょっと掃き掃除するだけだから。」
 蒼「お手伝いするよ。そんな事にばかり時間を割くわけにもいかないでしょ?」
 マ「確かに・・・このままでは3時のおやつを作れない・・・。」
 蒼「いや、そういうのじゃなくってさ。」
 銀「・・・・・・。」
 真「・・・・・・。」
 雛「今日は何?」
 マ「ホットケーキなんてどう?」
 金「それでいいかしら。」
 雛「ヒナはね、ジャムをいーっぱい乗っけて欲しいの。」
 マ「それはいいんだけどさ、あの二人が・・・。」
 真「どの二人?」
 マ「あれ?」
 銀「何よ、変なものでも見るみたいに。」

  いつの間にやらそばに水銀燈と真紅が居た。

 銀「さっさとやる事をやったらどう?」
 真「もうすぐ3時になってしまうのだわ。」

  懐中時計を見ながら真紅が急かす。

 マ「はい・・・。」

  釈然としないながらも台所へと向かおうとする。
  と、ズボンを掴んで引き止められた。

 マ「何?」
 雛「ホットケーキって何枚?」
 マ「一人二枚ってとこかな。」
 金「三枚にしてくれかしら。」
 マ「三枚・・・甘いの三枚欲しいのか、このいやしんぼめ!」
 金「いいのかしら!」
 マ「だが断る。食べ過ぎるとお夕飯がおいしく食べられなくなる。」
 雛「欲しいのー!」
 マ「あと、二人に認めるとなんだかんだで全員分作ることになるのが目に見えてるからね。」
 金「うむむむ・・・そうだわ、雛苺は三枚食べたい?」
 雛「食べたいの。」
 金「じゃあカナとホットケーキを一枚賭けて勝負しましょ。」
 雛「勝負って何?ケンカはやなの。」
 金「大丈夫、平和的に『マスターのぼり』で勝負かしら。」
 マ「なんか思いっきり巻き込まれそうな予感が・・・。」
 金「ルールは簡単、先にマスターさんに登頂したほうが勝ちよ!!」
 雛「とうちょう?」
 金「頭の上に乗っかればOKよ。」
 雛「よーし、受けて立つの!」
 金「じゃあちょっとの間そこにじっと立っててもらえるかしら?よーいスタートよ!」
 雛「負けないのー!!」

  雛苺は言うなり足にしがみついてきた。
  二人とも本気なのだろうか。

 マ「あのさ・・・。」
 雛「うんしょ、うんしょ・・・ジュンより高いのー。」
 マ「おーい。」
 雛「うあー。」

  ずるずると床に滑り落ちる。

 雛「立ってるから登りにくいの。」
 マ「・・・・・・。」

  早く終らせた方が得策だと思い直しされるがままになる事にした。
  そう言えばなぜゆえか金糸雀は登ろうとしていない。

 金「んっふっふ、こっちを見るかしら!!」

  声のした方を見ると本棚の上に颯爽と立つ金糸雀の姿が。

 雛「なんでそんなところに居るの?」
 翠「ほんとバカとなんとかは高いところが好きですね。」
 金「伏せる方が逆かしら!違うわよ、これはカナの策なの!」
 マ「策?」
 金「ふふん、雛苺が登るのに苦労している隙にカナは登りやすい棚に登る。
   あとはマスターさんの頭の上にダイブすれば勝ちかしら!!」
 真「珍しくまともな作戦ね。」
 金「ヒナのホットケーキは楽してズルしていただきよ!とうっ!!」

  金糸雀が高く舞い上がった。

  ゴン!

  ・・・べちょ

 真「飛距離が足りなかったわね。」
 蒼「天井に頭をぶつけてたね。」
 マ「リアルマリオを見た気分だ。」
 銀「おばかさぁん。」
 翠「これでちょっとはマシになればいいんですがね。」
 金「あたた・・・悪いけどもっと棚の近くに立ってもらえるかしら?」
 マ「はーい。」

  金糸雀が気を取り直して棚を登ろうとする。

 雛「ヒナも棚を登るのよー!」
 金「ちょっと!カナのアイデアを盗んじゃ駄目かしら!」
 雛「インスパイアなの!!」

  二人で押し合い圧し合いながら登っている。

 マ「二人とも危ないよ。」
 真「醜い争いね。」
 銀「まるで蜘蛛の糸だわぁ。」
 蒼「こら!そんな事してたら・・・」

  まさにその時。

 金「あら?」
 雛「うゆ?」

  二人の手が滑る。

 『落ちたーーーー!!』

  一同が思わず叫ぶ。

 マ「任せて!」

  棚の近くに居たので両手を伸ばせば届きそうだ。
  はたして無事にキャッチできた。

 マ「二人ともくだらない事で怪我したらどうするの!!」
 雛「ごめんなさいなの。」

  左手に乗っかった雛苺が小さくなって謝る。

 金「反省したかしら。」

  右手の金糸雀も素直に頭を下げる。

 翠「ほーっほっほっほ!」

  その時、翠星石の高笑いが聞こえた。

 マ「どうしたの?」

  笑い声のする方を見ると翠星石もちょっと低い他の棚に登っていた。

 雛「翠星石も高い所が好きなの?」
 金「カナと同じね。」
 翠「お前らお馬鹿コンビと一緒にするなです。今こそさっきの頭痛の仇をとってやります!」
 マ「さっきの仇?何をする気さ?」
 翠「お前の頭にここからすさまじい勢いで着地してやるですっ!
   ついでに登頂一番乗りでヒナカナのホットケーキも一枚ずつゲットしてやるから覚悟しとけです!」
 雛「ひどいの!」
 金「このタイミングでの乱入はズルいかしら!」
 翠「黙れですぅ。両手にヒナカナで命中率20パーセント!!
   いつもの2倍のジャンプがくわわって20×2の40パーセントっ!!
   そしていつもの3倍の回転をくわえれば40×3の、お前が回避不能の120パーセントですーッ!!!」

  翠星石が宙に舞い、そのまま落下してきた。

 蒼「翠星石の体が光の矢になった!?」
 真「ただの百貫落としじゃないの。」
 銀「ドッスンみたいね。」
 マ「あれを喰らえば一たまりも無いッ!」
 翠「ほれほれ、どうするですかぁ?」
 マ「それは・・・逃げる!」

  ひょいと後ろに下がる。

 翠「へ?」
 真「そりゃああの理論じゃ到底無理よね。」
 銀「常識的な対処ね。」
 翠「待つです!このままじゃ着地が・・・」
 マ「だがッ!」

  退いた位置から足を前に出す。
  そこに翠星石がお尻から着地する。
  絶妙なタイミングで翠星石をトラップできたようだ。
  衝撃もあまり無かった・・・はず、だ。

 マ「大丈夫だった?」
 翠「ひ、ひ・・・。」

  足の上の翠星石は怖い思いをしたのかまともな返事をしない。

 金「みんな無事でよかったかしら。」
 雛「翠星石ったら無茶しすぎよ。めっ!なの。」
 銀「自力じゃ飛べもしないのにあなたもおばかさぁん。」

  集中砲火を浴びても翠星石は黙ったままだ。

 真「それにしてもなかなか器用な人間ね。」
 蒼「翠星石、ちゃんとマスターにお礼を言いな。」
 翠「この、この・・・いい気になるなです!!」
 マ「ちょ・・・待った!」

  翠星石が自分の乗っかった足の裏をくすぐる。

 マ「やめて、くすぐったい。」
 翠「くすぐってるんだから当然です!」

  身悶えしていたらバランスが崩れた。

 翠「お?」
 金「きゃー!!」
 マ「言わんこっちゃ無い・・・。」
 雛「倒れてるの!」
 蒼「マスタァァァァッァーー!!」

  体勢を戻すことが出来ず体が後ろに倒れる。
  なんとか三人だけでもと思い手足を持ち上げていたら受身を取り損ねた。

    ごっちん

  後頭部の鈍い感触とともに視界が真っ黒に染まっていった。