カワイイデスーネ!!
この話のマスターは日本文化に興味のあるアメリカ人ってことでお願いします。


タイトル「蒼星石とゴーイングテューキョート!!(前編)」


ハイ、日本のエブリワン。今私は日本文化に非常に興味津々インキンデス。それで今度の休みを利用して日本に行きマスオサン。
取り寄せた色々なパンフレットを見て何処に行こうか迷ってます。クサツ、ザオウ、キヌガワ、キョート。色々あって迷うネ。
この日の為に日本の食べ物にも慣れましたYO。ウメボシ、ベリグーね。NATTOはスメルがバッドで今一ネ。ウニューオイチイ。

「トーテーテキ、何処にイルノかね。トーテーテキ」

「蒼星石ですよ。マスター。無理せずラピスラズリって呼んでください」

彼女、トーテーテキ。何でも私と契約する前までは日本で暮らしていたらしいです。時折日本の話をしてくれますよ。
でも私のイメージしてる日本とは随分違いまス。例えば・・・

「トーテーテキ。日本の家は全部金で出来てるんだよネ?グレートだNE」

「マスター、それは東方見聞録の情報でしょう。今はそんな事有り得ませんよ」

「日本にはシノビがいるらしいね。早くニンポーをエクスペリエンスしてみたいよ」

「ニンジャは江戸時代です。それに空想だと前のマスターから言われましたよ」

こんな感じでいつも話が食い違いまス。私は間違ってませんよネ?まあいいです。私日本のシキタリも勉強しました。

「トーテーテキ。この布を体にロールして下さい。」

「今度は何です?」

いつもこんな感じで嫌がるけど、結局やってくれるトーテーテキ私ダイスキね。クルクルと体に布を巻いてく様子がキュートだZE。

「これでいいですか?はぁ・・・」

「オーケーボクジョー!!いきますヨ!」

「何をするんで・・・うわぁぁ!!」

ミトコーモンで見たよ。チョンマゲノGUYが女の腰布をつかんで、クルクル回すの。

「ワッハッハ。ヨイデハナイカ!ヨイデハナイカ!」

「あーれー、マスターお止めになってー!!」

それにしてもこのトーテーテキ、ノリノリですネ。さて、そろそろ真剣に旅行の事考えますYO。


私は蒼星石と話し合った結果、最もポピュラーな観光スポット、京都に行く事にした。古くからの伝統の町だ。
インターネットで京都の事を調べる。事前のチェックは念入りにして損は無い。椅子に腰掛けて指を動かすだけで
世界中のあらゆる情報が手に入るボーダーレスの社会では、異国の事を調べるなど造作も無い事である。
金閣寺、銀閣寺、五重塔など代表的なものは勿論、マイナーな情報もしっかりと調べる。それだけで胸が躍る。
出発は3日後。トランクに荷物を詰め、入念にチェックする。入国時にパスポートが無いなんてことは避けたいからな。

そして三日後、ついに出発の日が来た。何時もより二時間も早く起きて空港へ向かう。朝早くだというのに空港は多くの人で賑わっていた。
皆何処へ行くのだろう。この中にももしかしたら私と同じ京都へ向かう人もいるだろう。もしいたら是非一緒したいものだ。
ほら、日本の諺である「旅は道連れ」って奴だ。この日の為に学んだ日本の知識を存分に生かせれば嬉しい。
まだアメリカにいながらも私の日本への空想は膨らむばかりだ。早くフライトの時間にならないかと思うと自然に早足になる。
そのまま私は関西空港行きの飛行機のゲートへと向かった。

さて、ここで第一の難関「検閲」が待っている。左手に持ったこのトランクの中には蒼星石が入っている。
耳を近づけるとスースーと寝息も聞こえる。幸い人々の賑わう声でここでは聞こえないが。
荷物は全てこのリフトを通じて検査される。「中に人間の子供がいる」などと言われた日には私は京都に行くどころか
牢屋に送られてしまう。飛行機に乗った後の策は考えてあるのだ。ここだけは何としても乗り切らねば。

「HY!荷物はここに乗せてくださいね」

「はい」

検閲官は私の顔を見た後、視線を下ろしてはまた顔を見る、といった動作を三回繰り返した後言った。

「あなた、お顔のわりに随分太ってるんですね」

検閲官が不思議そうな顔で聞いてくる。わたしはそれを苦笑いで返すと早足で検閲を去った。やった。通れた。

「ニンポー「ニニンバオリ」大成功だ・・・」

ボディーチェックの人が眼を離した隙に蒼星石を抱き上げた後、スッポリ覆い込める程大きなコートを羽織り、検閲を出し抜いた。
その後は何事も無く飛行機に乗れた。チケット二枚を係員に渡す。何故二枚なのか?もうお分かりであろう。
係員は私の横に立っている私の腰程の背丈の子供を見て「Have a nice flight」と笑顔で言った。
私が少々早足で歩くとトテトテと小さな歩幅で私の後を追いかける。人目につかないところでピタリと足を止めた。
その子供も足を止めると手を膝にやりハアハアと息を切らした。

「はあはあ・・・もう、何で急にペースを上げるのさ、マスター」

不満そうに子供は聞いてくる。私は子供に「違うだろ」と言い聞かせた。

「マスターじゃないだろ。「パパ」だろ?蒼星石」

既にお分かりであろうがこの旅行の間、蒼星石は「人形」ではなく「人間」として扱う事にした。
外見は完璧に人間の少女に見える点を利用した作戦だ。私から見ても9~10歳程の少女に見える。
球体関節を見られたり触れられたりしない限り、誰も不審には思わないだろう。特異なその服装で少しは怪しまれるかもしれないが。

「あ、そうだったね。ゴメンね、マスt・・・パパ」

私達が飛行機に乗ってから暫くして飛行機は離陸した。ついに京都への旅が始まった。隣に座っている蒼星石よりも私の方がずっと
子供っぽかった。写真でみた金閣寺は本当に黄金に輝いているのだろうか。三年峠で転んだらどうしようか。
観覧車に始めてのって落ちたらどうしようかと騒ぐ子供のような気持ちで、私は興奮を抑え切れなかった。

「ちょっとパパ、周りの人が見てるよ・・・ボク恥ずかしいよ」

見ると周りの席の人たちがチラとこちらを見ては目を逸らしていく。途端に恥ずかしくなって萎縮した。

「ん?あ、ああ・・・コホン」

ワザとらしい咳払いを一つするとようやく落ち着いた。子供に注意されるなど恥ずかしい事この上ない。
窓側席の特権、窓から見える景色に目をやる。雲の中を飛ぶという不思議な現象に私は釘付けになってしまった。
その後一気に澄み渡る青が視界に広がり、さらに驚いた。普段見上げている空が同じ目線にあるというのは
言葉では言い表せない物だった。そんな不思議な世界に引き込まれた私はただその景色を眺め続けていた。


「パパ、パパ。ボクもお外の景色が見たいよ。」

「・・・」

「パパッたら!」

「・・・」

ダメだ。マスターは完全に自分の世界に浸ってしまったらしい。そもそもボクは今回の旅行には行かないハズだったのだ。
なのにマスターが強引にボクまで連れてきてしまった。でも京都には少し興味があったので、楽しみといえば楽しみだった。
鞄ではせいぜい上空20メートルが限度なので、いつもとは違う斬新な気分を味わっていた。
この飛行機はこれから僕の前の前のマスターがいた国、日本に向かおうとしている。日本には思い出がある。

皆で和解してアリスゲームは永遠に廃止になったこと、アリスゲームは運命と抗い続けたボクらに必死でその無益さを訴え続けたジュン君。
そして、ボクを今までのボクじゃなくさせた前のマスター、「」さん。
彼らの意思があったからこそ、ボクらは戦いを止めるという有り得ない結論を出すことができた。
水銀燈は「そんな甘い考え」と言って馬鹿にして最後まで同意しなかったけど、実は彼女自身が一番それを望んでいるようにも思えた。
そしてボクも、あの時のジュン君の「お前ら姉妹だろ」と「」さんの「もうやめろよ、な?」の一言が無ければ未だに同意していなかったかもしれない。ボクが今こうして笑ってマスターと旅行が出来るのも彼らのお蔭なのだ。彼らと出会わなければボクはまだ昔のボクのままだったのかもしれない。
いけない。またこんな暗い事を考えちゃって。いつでもスマイルってマスターも言ってるじゃない。あ、今はパパなんだっけ。

「ねえ、君名前何て言うの?」

不意に前の座席から声がした。見るとボクの席の一つ左の前の席から身を乗り出している一人の少年がいた。
顔と背丈からして13~15歳ぐらいだろうか。少し大きめジーンズに少し大きめのTシャツ。それに赤いキャップを被ったその容姿は
いかにもアメリカン・ボーイと言った感じだった。少年はスッとガムを一枚差し出すとボクにくれた。

「ガムありがとう。ボクは蒼星石だよ」

「ソウセイセキ?変わった名前だね。俺はトニオ。トラサルディーとかトラさんって呼んでくれていいよ」

トニオと名乗った少年から受け取ったガムを口に入れる。イチゴ味だ。ボクは暫くトニオと話をした。
トニオは見た目は不良少年の様だが、どこか親しみやすい不思議なオーラを感じた。
中々ユニークなトーク術の持ち主で、ボクはしばしば笑いを堪えられず周囲を気にせずに笑ってしまった。
そして話しているうちに目的地がボクと同じ京都である事がわかった。その事を言うとトニオは嬉しそうに笑った。

「ソウセイセキも京都に行くのかい?奇遇だね」

「そうだね」

「ねぇ、もし良かったら一緒に京都を見て回らないかい?俺ならきっと退屈させないよ」

トニオにそう持ちかけられて僕は反応に困った。マスターが許してくれるだろうか。まだ聞いていないので何とも言えないが。

「パパに聞いてみるね」

ボクはマスターを何度も呼んだが反応は無かった。どうやら眠ってしまったらしい。どうしよう。

「君の父さん眠っちゃってるのか。丁度俺も寝ようと思ってたんだ。後で返事聞かせてね」

そう言うとトニオは眠りについた。何だろう。トニオからは何処か懐かしい匂いがするのだ。
子供の頃父に連れられ食べた綿菓子のような、駄々を捏ねて買ってもらった林檎飴のような、そんな匂いだ。
ボクはその正体を探ろうとしたものの、トンと検討がつかなかった。気になって仕方がない。
そうして考え込んでるうちにウトウトしてきて、ボクも眠りに就いてしまった。

「蒼星石、起きろよ。着いたぞ」

ユサユサと肩を揺さぶられて、ダルそうに目を擦って起き上がる。見ると機内に残っているのはボクとマスターだけだった。
見上げるとスチュワーデスの人がボクをみてニコニコと笑っていた。

「すいません。お騒がせしました。行くぞ蒼星石」

マスターに手を引かれ、僕は飛行機を出た。そこには多くの人がいて、ボクは思わず声を上げてしまった。

「わぁ!見てパパ。人が一杯いるよ」

「ああ。そしてついに日本へ着いたぞ!!」

二人してはしゃぐボク達に周りの視線は集まった。そうだ、と思い出したボクはマスターにあの事を伝えた。
きっと駄目と言われるだろうが駄目もとで聞いてみた。

「ねえパパ、ボク一緒に京都を回りたい人がいるんだけど、ダメかな?」

「ん?誰だそれは。まさかボーイフレンドか。蒼星石はもてるなぁ!」

そんなんじゃないよ、と赤面して必死に否定するボクを見てマスターは高らかに笑った。だがその後に出たマスターの返事にボクは笑顔になった。

「ああいいぞ。でも何処に行くのかちゃんとパパに言うんだぞ。」

そう言うと僕に携帯電話を投げてよこした。ボクは笑顔でありがとうと言うと、トニオを探した。
始めは僕はマスターの後を着いて回るだけだと思っていたこの旅だが、ボクにも目的が出来た。
マスターの目的は京都を満喫すること。そしてボクの目的はトニオの懐かしさの正体を追求することだ。
果たしてこの旅はどんな風に過ぎていくのだろうか。今から楽しみになってきた。

fin 後編へ続く