お前らたまには乙レデスの事も可愛がってあげてください。

タイトル「縁の下の乙レデス」


「縁の下の力持ち」と言う諺がある。人知れず蔭で誰かの役に立つ事だ。皆が帰った後の教室を一人で掃除したり、朝早公園のくゴミ拾いをしたり
というのがそれに当たる。皆に有益な事を見返りを求めず進んでやってのけるという事は凄い事だ。
こうした好意のある人間の行為があるからこそ公の目に見える秩序が成り立っていると言っても過言ではないと思う。
そしてあらゆる場所にそういった蔭のヒーローは存在している。それは無論手で触れることの出来ないネット上の世界にも存在している。
そして僕もスレという小さな世界の秩序を守る蔭のヒーローの一人だ。さて、今日も頑張ろう。

とあるマンションの一室。一人の男が寝転がりながら携帯を弄っていた。始めはただ見ているだけだったが、突如指を頻りに動かし始めた。
どうやら何かを書き込んでいるようである。

「「疲れたから蒼星石と寝てくる^^、と」」

そう書き込むと男は携帯を置いた。数分後、もう一度携帯を開いた。僕の出番だ。男の携帯にはお決まりの一言が表示されていた。

342 それ乙レデス

「まーすたっ☆」

僕が男の目の前にピョンと飛び出すと、男はかなり驚いた様子になった。

「うわ何処から入ってきANGYAAA!!」

「ふふ・・・僕と一緒に寝ようか」

「ふひぃーん!!」

と、こんな風に蒼星石を男共から守るのが僕の仕事だ。だが僕は蒼星石が嫌いだ。いつも「」君に大切に扱ってもらって。
僕と蒼星石は何処が違うんだろう。顔?性格?それとも胸の大きさ?ううん、蒼星石の姿になってるから全部違う。外見は蒼星石と一緒。
僕は無意識の海で彼(「」君)の夢から出た後、左目に薔薇の眼帯をした白いドレスの少女に声を掛けられた。あの時僕強がって笑顔で
彼の所を離れたけど、本当は泣きたいくらい悲しい気持ちだったからその少女の言葉は耳に入らなかった。ようやく彼女の話が耳に入ったときは
彼女が僕に何かを問いかけている時だった。そして訳も分からず「はい」と答えたのが僕の間違いだった。
僕は言われるがまま彼女の後をついていった。自分以外に夢の中を行き来する事が出来る者がいるとはと言う疑問は何故か持たなかった。
暫く歩くと遠くに人影が見えた。背丈からしてどうやら男性のようだった。

「ウメちゃん。この子がセキュリティーに入ってくれるそうですわ」

「そうかい!?女の子なのに中々感心な子だね」

判断した通りいたのは一人の男性だった。その後ろにツナギを来た男と老人、更に可笑しな事にタキシードを着たウサギがいた。
眼帯の少女は僕の事を笑顔で微笑んでいる男性に話しているようだった。セキュリティーとは一体何なのだろう。
話を聞き終えたらしい男性は僕の所に寄って来ると、僕の顔を見つめた。男はウメオカと名乗ると「人手が足りなかったんだ」と嬉しそうに笑った。
眼帯の少女は改めて名を雪華綺晶と名乗ると、僕に説明を始めた。遠回りで複雑な説明だったが、要約すれば蒼星石を守るのが仕事らしい。
話を聞かずに了承したとは言え、始めはあまり気が進まなかった。何故僕が蒼星石を守らなくてはいけないんだと考えたからだ。
でも蒼星石を守れば「」君も喜んでくれるらしいので仕方なく守ってやる事にした。

「いいですわね。お姉様とマスター様をお守りするのが私達の役目なのです」

「はあい・・・」

「そんなシケた顔するものではありませんわ。しっかり守って差し上げれば「」様もきっと褒めてくださいますわよ」

「本当?」

「そうですとも。そしていつしか「」様の心は私に・・・そして二人は・・・ああ!そんな「」様!!お姉様が悲しみますわ!!ダメ・・・」

「お前にはもう何も言えねえ・・・」

それから僕は毎日のように忍び寄る魔の手から蒼星石を守り続けた。でもいつも褒められるのは蒼星石。「」君の側にいるのも蒼星石。
「」君は僕らの存在に気付いているのだろうか。僕らが守っているという事に気付いているのだろうか。
僕はだんだんセキュリティーの仕事をする事に疲れてきた。誰からも「ありがとう」の一言も言われないのに腹が立ってきた。
お願い、「」君。一度でいいから蒼星石にするみたいに僕のことを褒めて。「いつもありがとう」って褒めてよ。でないと僕、泣いちゃうんだからね。

「何を悩んでらっしゃるの?乙レデス」

「雪華綺晶・・・」

僕は雪華綺晶に蒼星石を守ることに疲れてきたという事を話した。

「貴女、縁の下の力持ちって言葉ご存知?」

「さあ」

「桜って綺麗よね。皆花ばかり見て、幹や根なんか見向きもしないけど。それと同じ。
誰も褒めてくれないけど、根のお蔭で桜の木は立っていられるのですよ」

「そんな事当たり前じゃない・・・まさか!」

「次に貴女は”まさか雪華綺晶”と驚く」

「まさか雪華綺晶・・・はっ!?」

「そう。私達がいなければお姉様の平和はたちまち崩れてしまうのです。まるで根が無い桜の木のようにね。だから私達が必要なのです。
お姉様を守ると思ったらッ!!既に行動は終了しているのです!!」

僕らが守らなければ蒼星石の幸せが乱れる。それは「」君も悲しむ事。蒼星石といることが「」君の幸せなのだから。
僕らの見えない努力があるからこそ「」君も楽しそうに笑っていられるんだ。さっきまでの自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。
誰かに褒められたいとか、尊敬されたいとかそんなのじゃない。「」君に笑っていてほしいんだ。その笑顔は僕に向けたものじゃないけど。
その夜僕は夢の中で夢を見た。

「「」君・・・?」

「乙レデス。いつも守ってくれてサンキュな。これからもよろしく頼むよ」

そういうと「」君は僕の頭を撫でてくれた。彼の前では流さないと決めた涙が頬を伝った。だがそれは悲しみの涙ではなかった。
さて、今日も一日頑張ろう。元気な朝は乙レデスの幻覚から!!

fin