目が覚めた。
  まだ寝ていた蒼星石を起こさないように気をつけて行動する。
  簡単に身支度を済ませ、水銀燈が締め出されないように窓の鍵を開けて台所へ。
  今朝は何を作るか・・・オムライスでいいや。チキンライスはまとめて作っちゃえばいいし。
  具沢山にしておけばおかずはそんなに無くてもいいだろう。いきなり4人分用意するのも大変だ。


  準備が終わった頃みんなが起き出してきたようだ。

 マ「もうテーブルに並べたから好きなように座ってて。」

  台所で片付けをしながらそれだけ言った。

  「分かったわ。」
  「じゃあここ。」
  「これが良さそうね。」

  しばらくして蒼星石がやって来た。

 蒼「ねえマスター・・・」
 マ「どうしたの?もうちょっとだけ待っててもらえるかな。
   あの二人が文句言いそうなら先に食べ始めちゃってもいいけどさ。」
 蒼「違うんだ・・・」
 マ「お手伝いしてくれるとか?もう中華鍋を洗って終わりだからいいよ。」
 蒼「そうじゃなくって・・・」
 マ「・・・終わった。じゃあ行こうか。」

  テーブルのところでみんなが待っていた。
  最後に一つだけ空いた席に蒼星石を座らせる。

 マ「・・・さーて、なんで僕の分の席と料理が無いのでしょーか?」
 真「あなたが用意しなかったからでしょ?」
 銀「私の分はあげないわよ。」
 蒼「僕はこんなには要らないけど、分けっこしても足りるかな。」
 金「とっても美味しそうなのに分けてあげるなんて・・・。
   蒼星石ってば本当にマスターさん思いかしら!」
 マ「こらそこ!」
 金「どうしたのかしら?」
 マ「なんで当然のように座っているのカナ?カナ?」
 金「さっきここに来たらカナにも座ってるように言われたかしら。」
 マ「いや、そのつもりは無かったんだが・・・」
 真「普通にいたから気にも留めなかったわ。」
 銀「そうね、何しに来たの?」
 蒼「君だけで来たのかい?みっちゃんさんは?」
 金「みっちゃん・・・みっちゃんは、みっちゃんは、ううっ!!」

  金糸雀が涙目になる。

 マ「と、とにかくご飯食べちゃおっか!話は食事しながらゆっくり聞くからさ。」
 蒼「マスターはどうするの?」
 マ「ご飯の残りを使って大急ぎで炒飯でも作ってくる。」


 マ「で、朝っぱらからどうしたの?」
 金「もぐもぐ・・・みっちゃんに見捨てられたかしら!!」
 蒼「食べながら喋るのはマナー違反だよ。」
 真「あらあら、捨てられただなんて穏やかじゃないわね。」
 銀「所詮はただの媒介って割り切っちゃえばいいのに。」
 金「朝起きたらこんな書置きがあったかしら。」

  金糸雀がメモ書きを取り出した。

 マ「どれどれ。

    『カナへ

       ちょっと忙しいから先に行きます。
       しばらく会えないかもしれないけれどご飯はチンして食べてね。
       寂しい思いをさせてゴメンね。』

   お忙しいんだね。」

  何やら慌ただしい中で書いたような文字だった。

 金「昨日の晩も帰って来なくて、待ちくたびれてちょっと寝ちゃって起きたらそれが・・・。」
 真「仕事でしょ?」
 蒼「気持ちは分かるけど、そこは我慢しなきゃ。」
 金「みっちゃんはカナなんてどうでもよくなったかしらー!!
   じゃなきゃ仕事があってもお出かけ前に一声かけて相手くらいしてくれるかしら。」
 銀「あんた・・・何を甘ったれてんのよ。」
 金「水銀燈ってやっぱりひどいかしら。」

  ぐずりそうな金糸雀に対し水銀燈が続ける。

 銀「あなたってば他人に何を期待してるのかしら。所詮は他人なのよ?
   それでも自分が相手を大事だと思うなら勝手にすればいいでしょ。」
 金「だって、だって・・・」
 銀「会えないったってその辺に居るのが分かってるだけマシじゃない。」
 真「言い方はひどいけどその通りね。ちょっとくらいお待ちなさいよ。永遠の別れでもなし。」
 蒼「きっとみっちゃんさんも寂しいはずだよ。」
 マ「そうそう、言ってる方も辛いんだって。・・・そういえばさ、それで何故うちに来たの?」
 金「ここなら二人だけだし、居心地も良さそうだったし・・・。」
 マ「ああそうですか。なんでここって溜まり場になるんだろうね。」
 真「気にすることは無いわ。あなた達の人徳よ。」
 銀「そうそう、気楽に利用できていいわよ。」
 マ「誉められてるの?」
 蒼「物は言い様ってやつだね。」
 金「とにかく寂しいからここに居たいかしら。」
 マ「はいはい。じゃあその辺も含めてみっちゃんさんに確認してみるよ。」
 金「ちょっと待ってかしら。」
 マ「何?」
 金「これ、食べてもいいかしら?」

  自分のオムライスを平らげた金糸雀が炒飯の残りに狙いをつけていた。

 マ「残り物で良ければ全部あげるよ。なんだか食欲も無いし好きなだけ食べて。」
 銀「私も一緒に片してあげるわ。」
 真「山分けよ。」
 蒼「じゃあ僕も。」

  食事を続ける四人を尻目にみっちゃんさんへ電話する。


 マ「あー、もしもし。お忙しいそうですが今お時間大丈夫ですか?」
 み『あら、もしかしてカナの事?』
 マ「ええその通りです。今朝うちに来ましてね。ご飯を一緒に食べたんですけど・・・」
 み『じゃあ悪いけど、そのまましばらく預かってもらえないかしら。』
 マ「お仕事そんなに忙しいんですか?」
 み『ええ。滅多に無いようなチャンスが飛び込んできたの。
   逃がしたくはないんだけどやっぱりカナの事も心配で・・・。』

  受話器から不安げな声が聞こえてくる。

 マ「分かりました。どの位かかりそうですか?」
 み『ごめんなさい、まだ分からないの。こちらから連絡するから。』
 マ「大変ですね。責任を持って面倒は見ますからどうか安心してお仕事の方を頑張ってください。」
 み『ありがとう。あなたなら安心だわ。じゃあ悪いけどこれで。』
 マ「お忙しいところすみませんでした、ではまた。」


  電話を切る。
  どうやら三人まとめて面倒を見る事になりそうだ。

 マ「みっちゃんさんと話したらさ、しばらくここに居なって。凄く寂しそうだったし心配してたよ。」
 金「ううん、もう大丈夫よ。カナはここでみっちゃんの帰りをいつまでも待つかしら!」
 銀「いつまでも居たら迷惑でしょ。」
 真「その位は常識としてわきまえるべきよ。」
 蒼「・・・君達もなかなかだよ。」
 マ「僕はもうすぐ出かけなきゃだけど、みんな仲良く留守番しててね。」

  まあ今夜辺りのりちゃんに電話してみるか。
  それで真紅が帰ってくれれば水銀燈も長居はしないだろう。
  それまではみんなで仲良くしてくれればいいや。

 マ「じゃあみんな、いってきます。」
 蒼「いってらっしゃい。」
 金「あなたも頑張ってね。」
 銀「DVD借りるわよ。」
 真「帰りに紅茶を買ってきなさいよ。」

  思い思いの言葉を口にする四人に見送られて家を出た。