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シドの「隣人」という曲を元にして書かれております。
「」の所は貴方の名前を入れてください。部活も入ってる人はそれに変換するといいかも

タイトル「隣人」


一人暮らしとは大変なものだ。食事や洗濯は勿論身の回りのこと全てを自分で管理しなくてはならないからだ。
無論朝の起床時間も自分に委ねられる。人間には様々な欲求があるがその中でも一番強い欲求は「朝の眠り」であろう。
あのまどろみの中にいつまでもいたいと思うのは人間として必然の事だと俺は思う。
どんな人間をもそんな気持ちにさせるあのまどろみの誘惑を人間に例えるならば、きっととてもセクシーな女性に違いない。
そして今日もその誘惑に負けた男が一人、布団の上でまどろみの快楽を味わっていた。

ジリリリリリリ・・・

そのまどろみから人間を呼び覚ますため孤独に鳴り続ける勇者、目覚まし時計の音も空しく、男の起きる気配は無い。
時折「うーん」と低い声を上げるだけである。男が目覚ましを止めようと腕を伸ばす。
だが朦朧とした意識で目を閉じたままなので腕は空を掴むばかりだ。暫くそれが続いた後ついに男の腕が目覚ましを捉えた。
ピタリと音が止むと、男は再び眠りについた。もう何も眠りを妨げる物はないと安堵の気持ちが心に芽生えたとき、携帯電話の着信が鳴った。

♪~

放っておけばその内消えると始めは無視していた。だが何時まで経っても一向に鳴り終える気配が無い。
ついに我慢の限界になり男は携帯を手探りで探すと、寝ぼけたまま電話に出た。
朝独特の低い声で電話の相手に応答する。

「はい・・誰ですか?」

電話の相手はサッカー部の友人であった。友人は漸くかといった感じで応答した。

「やっと出たか「」!お前今何処よ!?」

「何処って、声で分かるだろ・・・今まで寝てたんだよ」

ポリポと背中をかきながらダルそうに答える。だが次の一言でそのダルさは一気に吹っ飛んだ。

「・・・お前今日が何の日だか知ってるか」

急に低いトーンになった友人の声を聞き、少し嫌な予感がした。
はて、何かあったかと重い頭を働かせてみたが、今日が日曜だという事意外は何も浮かばなかった。

「何の日って、日曜だろ?嫌だな驚かせるなよ」

「オーケイ。今日は確かに日曜だ。だがな・・・」

「だがな・・」

「今日はC大との試合だろうが!!昨日監督が言ってたろ!」

少し怒鳴り気味の友人に言われたその言葉が頭の中で響く。C大・・・試合・・・。
まだ少し眠っていた頭が一気に冴えると同時にサーッと血の気が引いていくのを感じた。
そうだった。今日はあの強豪、C大との試合だったのだ。
監督がわざわざ相手方の大学まで足を運びやっとのことで組む事ができた試合の日だった。
追い討ちを掛けるように友人の言葉が続く。

「そして「」君、君のポジションはどこだったかな」

その言葉を聞いて更に顔が真っ青になる。

「き、キーパーです・・・」

そしてとどめの友人の言葉が胸を貫いた。

「キーパーが出来るのは何人いたっけかな」

「俺だけです・・・」

俺の大学はあまりスポーツ系のサークルが盛んでなく、中でもサッカー部はとりわけ人数が少なかった。
その中でキーパーが出来るのは俺一人というかなり厳しい環境の中チームが成り立っているというわけだ。
監督の練習が厳しくて新入部員もすぐに止めてしまうので、必然と扱きに耐え切れる根性のある者だけが残る仕組みだ。
まさしく少数精鋭と言った感じだ。そんな中でこんな自分が残っていられるのが時々不思議になる。
最も、辞めたいと言っても辞められないだろうが。

「9時試合開始だからな。それまでに来いよ」

そう言うと友人は電話を切った。ふと時計に目をやると既に8時を回っていた。
あの監督の事だ。遅れたら何を言われるかたまったものではない。
とは言ってもここからC大までは一時間半はどうしてもかかってしまう。どうしたものか。
とりあえず慌ててユニホームに着替えて顔を洗い髪を整える。時間が無くてもこればかりは譲れない。
布団の側に転がっていた食パンを一枚平らげるとそのまま家を財布と携帯を持ち家を飛び出した。
その時携帯のメール着信音が鳴った。友達からかと見てみると意外な人物からのメールだった。

蒼星石 件名:おはよう 本文 やあ、おはよう。まだ寝てるのかな?

暢気な内容のメールに少し笑みがこぼれたがその笑みはすぐに消え鬼気迫る表情で返信を打った。

Re:遅刻しちゃうっス>< これから試合なんだ

ふだんならもっと内容のあるメールを送れるのだがいまはこんな簡素なメールしか返せない。
ドアの鍵をチェックした後、ボロアパートの階段を駆け下り駐輪場に向かうと自分の自転車を出し走りだした。
二階の一番奥の部屋なのでここまで行くのもかなりの時間がかかる。時刻は8時15分。自転車を全力で飛ばすしかない、か。
慌ててアパートから出た俺は自分の郵便受けを見るのを忘れていた。そして二階からの誰かの視線にも気付かなかった。


「ボラボラボラボラ・・・ボラーレ・ヴィーア!(飛んで行け)」

最近買った漫画のセリフが今の気持ちと重なり頭の中でシンクロしている。日曜なので道が混んでいる。
E・Tの映画のワンシーンのように自転車で空を飛べたらどんなに楽だろうか。
だが悲しいかな、これは現実、そんな夢みたいな話は有り得ない。ひたすら自転車を漕ぎ続ける。
そして人気の無い道にでた所で一気に所謂「チャリンコ暴走族」になり、自転車を一気に飛ばす。
足を動かせる限り早く動かしスピードを出す。前を走る主婦の自転車にグングン近づき、あっと言う間に抜かす。
汗かきな俺はまだ涼しい朝だというのにダラダラ汗をかいていた。信号で止まったとき携帯の時計を見る。
8時45分。後はこの坂道を真っ直ぐ進めばC大に着く。これはもしかしたら間に合うかもしれない。
信号が変わると同時に強くペダルを踏み込む。ラストスパートを一気に駆け抜ける。

「風になる!!」

さっき以上のスピードでペダルを漕ぐ。そしてついにC大に到着した。だがなにやら回りの様子がおかしい。
C大の学生であろう女性がこちらを見てクスクス笑っているのだ。俺が目を合わせると目を逸らした。
よくわからないままC大のグランドへと向かう。こっちだと友人が手を振っていた。
時計を見ると8時59分。どうやらギリギリで間に合ったようだ。

「よう、なんとか間に合ったぜ」

はあはあと息を切らしながら友人に話しかける。友人は少し恥ずかしそうに言った。

「ばっか。お前何が「風になる」だ。恥ずかしいだろうが」

「何で俺が心の中で思った事を知ってんだ?」

俺が不思議そうな顔をして友人に問うと友人は呆れたような顔で答えた。

「何が心の中だ。ここまではっきり聞こえる声で叫んでたくせに」

それを聞いてさっき女子大生に笑われた理由が分かった。どうやら無意識のうちに声に出しまっていたようだ。
必死になっていると人間何をするか分からないものである。そしてその場面を想像して恥ずかしくなった。
更に試合前の整列の時相手の選手の一人から「キーパーは風になる男か」と言われ余計に恥ずかしくなった。
だが試合中そう言った選手のボールをパンチングしたときは少し気分が晴れた。
試合は9対8でC大の勝ちであったが、C大の選手達は思いの他俺達のチームが食いついてきた事に驚いているようだった。
「風になるキーパー強かったよな」と言われ嬉しくなったが少し複雑な気持ちになった。

試合後それぞれ解散した後、友人がどこかに行こうと提案した。

「腹減ったからいつものマック行こうぜ」

何時ものマック、と聞いて少し顔が引きつった。あの場所には蒼星石がいるではないか。

「悪い、今日はいいや。また今度誘ってくれや」

「マジか。ノリ悪いぞ「」。まさか彼女が働いてるとか」

「馬鹿言え」

見抜いているかのような友人の発言に少し動揺気味に答えた。

「冗談だよ。今度は来いよな。じゃあな「」」

「ああ、じゃあな」

交差点で友人達と別れた後、俺はゆっくりと帰路を自転車で進んだ。朝の疲れもありかなりスローペースだ。
喉が渇いたので自販機でジュースを買おうと立ち止まっり、時間を見ようと携帯を開いたところで蒼星石からの返信に気付いた。

8:16 Re:そうなんだ。まさか遅刻ギリギリとか?

今は2時30分。かなり間が空いていることが分かった。とりあえず返信した。

Re:試合終わったよ。負けた

返信した後コーラを買い、飲みながら再び帰路についた。道なりに進み、何時もの角を曲がり真っ直ぐ進めばアパートが見えてくる。
家賃25000円のボロアパートだが、大家さんがいい人なので割りと気に入っている。アパートの駐輪場に自転車を止め、
朝は忙しくて見れなかった郵便受けに目をやる。と言っても新聞は取っていないのであまり見ても意味が無いが。
予想通りたいした物は届いていなかった。架空請求のような手紙をその場で破ると、そのまま丸めて外のゴミ箱に捨てた。
その時何気なく横の郵便受けに目をやると、俺は目を疑った。俺の横の郵便受けにはこう名前が入っていた。

蒼星石


俺は思わず大家さんのいる101号室の扉をドンドンと叩いた。暫くすると中から人の良さそうな老婆が出てきた。
俺はその旨を大家さんに尋ねてみた。

「あの、俺の横の郵便受けに書いてある蒼星石さんってどなたですか?」

「ああ、つい3日前に越してきたんだよ。礼儀正しくていい子だね。最近の若い子とは思えないよ」

「あの、どんな子、なんですかね?」

大家さんは少し考えた後言った。

「可愛い子だよ、間違ってもアンタなんかにゃ振り向かないだろうね。」

そう言うと大家さんはヒッヒッヒと童話に出てくる魔女のように笑って見せた。俺は大家さんに例を言うと、
大家さんは「今月の家賃急いでね」と家賃の催促をすると部屋に戻っていった。
可愛い子、だけでは分からないが珍しい名前なので滅多にいないだろう。
だとすれば俺の知っている「ソウセイセキ」さんはあの子しかいない。
だがまさかあんな子がこんなアパートに越してくる訳も無いと思い、俺は軽く流すことにした。
鉄製の階段を上り、二階の一番奥の部屋に進もうとした時、俺の部屋の手前の202号室のドアが開いた。
そして中から出てきた人物を見て俺は驚いた。

「そ、ソウセイセキ、さん・・・?」

目の前に現れたのは栗色のショートへアに左右非対称のオッドアイ。紛れも無く蒼星石だった。
青のジーパンに白いパーカー姿の蒼星石は、俺を見るとこう言った。

「や、今度から君の隣人になる蒼星石です。よろしく」

蒼星石は笑顔で俺に言うと、話を続けた。

「酷いじゃないか。朝僕が二階から見てたのに無視するなんて」

「え、ああ。ゴメン。急いでたから」

「まあいいや。それじゃちょっと僕は出掛けてくるから。じゃあね」

そう言い終えるとカンカンと階段を下りて何処かへ出掛けてしまった。俺は暫くその場に立ったままだった。


夜になり、俺は部屋で一人空腹に耐えていた。今月は遊びに使いすぎて金が無いのだ。
昼の誘いを断ったのはこれの所為でもある。おまけにサッカーの試合で動き回った後の体にはかなりキツイ。
布団の側にあったパン二枚だけではとても足りない。仕方なく水で腹を膨らまそうとキッチンへ向かおうとした時、蒼星石からメールが来た。

件名 晩御飯 本文 作りすぎちゃったんだけど、まだご飯食べてないかい?お裾分けしたいんだけど

こ、これは・・・神の助けとはまさにこの事か。俺はすかさずメールを返信した。

Re:食べてません。ぶっちゃけ金無くて食べれません ぜひお裾分けしてください

そう返信した後、玄関のドアがコンコンと鳴った。ドアを開けるとそこにはタッパーを持った蒼星石がいた。
蒼星石は俺の顔を見るや否やぷっと吹き出した

「君は馬鹿だなあ。食費の分ぐらい考えなきゃ」

「むしゃくしゃしてやった。今は反省している」

「ふふ、ホントに君は面白い人だね。そうだ、はいこれ。お裾分け」

渡された透明な三つのタッパーの中には白いご飯と、それぞれおかずが入っていた。

「ご飯も無いだろうと思って、ご飯もつけておいたよ。じゃあね」

蒼星石はそう言うと自分の部屋に戻っていった。俺は早速食べようとタッパーを開けると、蒼星石からメールが来た。

件名 忘れてた 本文 そうそう。タッパーは洗って返してね

俺は了解と返事を返すと蒼星石のお裾分けを食べ始めた。その味は甘くてクリーミーで、
こんな素晴らしいお裾分けを貰える私はきっと特別な存在なのだと思いました。
      • というのは冗談で、ともかくとても美味かった。
食べ終わった後、俺はタッパーを洗うと、蒼星石に返しに行くとメールをした。
すると、蒼星石の方からタッパーを取りに来た。

「やあ。味の方はどうだった?」

「何とも形容し難い味でした」

「それは不味かったって事?」

「とても美味しかったって事。なんかさっぱりしてるね」

「お風呂入ってたから。一緒に入りたかったかい?」

「まさか。これタッパーね。ホントサンキュね」

俺は笑顔でタッパーを返した。タッパーを受け取ると蒼星石は「もう寝るから」と言って部屋に戻っていった。
俺は部屋に戻った後、コンポにシドのCDをセットして、イヤホンで聞き始めた。
ボーっと音楽を聴く。トラックは進んで気付いたら最後の曲になっていた。
シドの「隣人」という曲である。この曲はどんな情景を歌っているものなのかは分からないが、この曲のサビの部分は今の俺の気持ちを良く表していると思う。

♪拝啓 そちらを好むものです どうか 扉を開けてみてはくれませんか 追伸 怪しい者ではありません 
只の隣人です 隣人です

鍵穴から こぼれた 病的スマイル

知らず知らずのうちにサビの部分を口ずさんでいた。

fin