蒼「ねえマスター、ずっとこうしていられたらいいのにね。」

  こちらを振り返った蒼星石が笑顔を見せながら言った。

 マ「うーん、まあね。」

 蒼「何さ、気の無い返事!」

 マ「あはは。そりゃあ出来るならずうっとこうしていたいさ。」

  理想はそうなのだが現実にはそうもいかなそうなのである。
  うーん・・・実に困った事になった。
  さっきはああ言ったが大至急手錠を外さなくてはいけなくなったのだ。

 蒼「どうしたの、そわそわして。」

 マ「いや、ちょっと用事がね。」

 蒼「大事な用?」

 マ「まあ・・・大事かな。どっちかって言うと小さい方なんだけどさ。」

 蒼「え、どういうこと?とにかくなんとかしないとだね。」

  蒼星石が膝から降りた。

 マ「じゃあ鍵か代わりになる物を探してくる!」

 蒼「うわぁっ!!」

  鎖に引っ張られて蒼星石が倒れ込む。
  余裕が無くなっていて鎖の事が念頭に無かった。

 マ「あ、ごめん。慌てていてつい。」

 蒼「ううん、平気だよ。でも急いでるんだったらおんぶしてもらえるかな。」

 マ「おんぶ?」

 蒼「うん、それなら今みたいな事も無く普通に移動できるでしょ?」

 マ「ああ・・・そうだね。」

  なんとなくだけど普段だったら抱っこと言いそうなのだが・・・。
  違和感を覚えたものの、今は急いでいるので手を後ろに回す。

 マ「さあ、どうぞ。」

 蒼「うん、ありがとう。」

  ガチャリ!

 マ「えっ!?」

  覚えのある音と感触。
  しかし何故?

 蒼「ごめんね。この手錠の鍵さ、本当は僕が持ってたんだよね。」

 マ「どうしてこんな事を。もう誤解は解けたんでしょ?」

 蒼「誤解はね。でも今は目的が違うんだ。」

 マ「どういうことなの?」

  返事は無い、その代わりとばかりに鎖の部分を踏まれた。
  まだ屈んでいたので後ろに倒れこんでしまった。
  仰向けになったところを上から蒼星石に見下ろされる。
  蒼星石がこちらを見据えつつ口を開いた。

 蒼「さっきのはマスターのため、マスターに喜んでもらうため・・・だと思ってた。」

 マ「そうじゃないならなんだったって言うのさ?」

 蒼「さっき水銀燈に指摘されて気付いたんだ。
   それも本心は僕のため、あなたの心が僕から離れないよう繋ぎ止めておくため。」

 マ「離れやしないって!」

 蒼「だけどあなたはさっき水銀燈と契約する事になるかもしれなかった。」

 マ「あんなの水銀燈だって冗談でしょ。」

 蒼「かもね、だけどマスターは雛苺や金糸雀たちのお願いを聞き入れた。」

 マ「あれは無理矢理だったし・・・ただお菓子とかあげるだけじゃない!」

 蒼「そうだね。実に他愛も無い、無邪気な関係だ。でもね、そんなのですら無性に不安なんだ。
   そういった他愛無かった関係がいつしか特別な物へと変わってしまわないか。
   もっと言えば、そんな事を想像させられるのすら耐え難い苦痛なんだ。だから・・・」

 マ「だ・・・だから?」

 蒼「あなたが僕だけにとっての特別な存在で居てくれるよう、僕だけをあなたの特別な存在にしてあげる。」

 マ「そんな・・・蒼星石は僕にとってはとっくに特別な存在だ!
   今までも、これからも、絶対に変わる事ははない!!」

 蒼「ありがとう、マスターのその言葉がその場しのぎの嘘ではないのは分かるよ。
   でもね、信じられないんだ。あなたにこれからもそんな風に言ってもらえるか。
   何よりも・・・自分が、自分自身に他の誰かには無い魅力があると信じられない。」

 マ「何を馬鹿なことを!!」

  そこで突然、蒼星石が名案を閃いたかのようにニッコリと笑う。

 蒼「だけどね、たとえ他の姉妹や他の女性に敵わずとも、あなたを僕色に染め上げてしまえばいいんだ。
   そうすれば、たとえ不完全な僕でもあなたにとっての最高で在り続けられる。ずっとあなたを独占できる。」

  微笑む蒼星石の目には一片の迷いも無かった。

 マ「な、何をする気なの!?」

 蒼「くす・・・さっきみたいに要求を飲まされないようにするトレーニングにもなる事だよ。」

 マ「またさっきみたいな事を繰り返す気?」

 蒼「まさか。・・・さっき以上だよ。さっきとは目的が違うんだ。
   遠慮する必要も無いし、もう何をされても気にならなくなっちゃう位の体験をしてもらうからね。」

  笑顔のままで蒼星石が言う。笑っているのがとんでもなく怖い。

 マ「や、やめて!!」

  何とか体を起こして座った姿勢のままじりじりと逃げる。

 蒼「そんな風に怖がっちゃって、かわいいね。」

  あっさりと追いついた蒼星石が両手で顔をつかむ。

 蒼「さっきのところ、血が出てるね。・・・痛そう。」

  先程水銀燈の羽根で切られた傷を舐められた。
  痛いような、ぞくっとするような、不思議で妖しい感覚。

 マ「大丈夫だよ、絶対に裏切ったりしない。蒼星石を悲しませたりしないから。」

 蒼「口ではなんとでも言えるからね。」

 マ「本当だよ。それよりも・・・」

  蒼星石は気付いてないだろうが今は緊急事態なのである。

 蒼「お手洗い?」

 マ「え!なんでそれを。」

 蒼「大量の水を飲んだものね。さっきからそれで慌ててたんでしょ?
   膝に乗せてもらってればモジモジしてるのは分かっちゃうよ。」

 マ「じゃ、じゃあ・・・」

  嫌な予感がする。分かっていたのにこんな事をするというのなら・・・

 蒼「うん、手錠は外してあげないよ。」

 マ「そ、そんな!!」

 蒼「大丈夫だよ。トイレには行かせてあげるから。」

 マ「でもこれじゃあ・・・」

  両手がこれではなんとかドアは開けられるかもしれないがズボンすら下ろせない。

 蒼「ふふっ、僕が面倒を見てあげるからさ。」

 マ「や、やだよ!恥ずかしい。」

 蒼「じゃあこのまま漏らしちゃう?」

 マ「それも・・・」

  蒼星石が後ろからズボンの中に手を入れてきた。
  下腹部を軽く圧迫してくる。

 マ「だ、駄目だって!そんな事したら・・・」

 蒼「お漏らししちゃったら舌で舐めるようにキレイにしてもらうからね。」

 マ「お願いだよ、普通にトイレに行かせて。」

 蒼「これからの『普通』はさっき言ったようなやり方だよ。」

 マ「頼むよ、そんなのは嫌だよ。」

 蒼「じゃあ我慢するんだね。」

  冷たく言い放つ。
  冗談抜きで限界が迫ってきている。
  こうなったら奥の手で・・・・・・・・・ふぅ、これでもう少し持ちそうだ。

 蒼「あれ?」

  多少だが余裕が戻った頭で考えて、馬鹿な事をしたのに気付いた。

 蒼「マスター、これはどうしちゃったの?」

  蒼星石の手が下腹部からわずかに移動する。

 蒼「ねえ、どうして急に大きくなっちゃったのさ?」

  膨張した物に手を添えて耳元で囁いてくる。

 マ「だって・・・そうした方が長く我慢できるから。」

 蒼「ふうん、無駄な抵抗なのにね。」

  蒼星石がそっと握り締めて上下に動かす。

 マ「あ、駄目だって!そんな事したら・・・」

 蒼「出ちゃう?」

  蒼星石が耳を噛んできた。

 マ「本当に・・・頼むから!」

 蒼「じゃあ一つ答えて。」

 マ「何?」

 蒼「さっきの言い方からするとさ、これは故意に大きくしたんだよね?
   ・・・どうやったのかな?」

 マ「そ、それは・・・。」

 蒼「さぁ、言ってごらんよ。何を考えたのさ?」

  吐息でしきりに耳をくすぐってくる。

 マ「う、うぅ・・・それは・・・。」

 蒼「ほらほら、誰を思い浮かべたの?」

  再び蒼星石の手が暴れ出す。

 マ「それは・・・。」

 蒼「女優さん?それとも知り合い?まさか翠星石とか水銀燈だったりしないよね?」

 マ「あ・・・う・・・そ、そぅせいせきを。」

 蒼「何?聞こえないよ。」

 マ「そ、蒼星石の事を考えて・・・。」

 蒼「へー、これは驚いた。僕みたいに可愛げの欠片もない人形で。
   どうやらマスターは筋金入りの変態さんみたいだね。」

 マ「そ、そんな事ない・・・。」

 蒼「マスターは変態さんだよ。これから身をもって教えてあげるからさ。」

 マ「違う・・・蒼星石は・・・可愛げなくなんて・・・ない・・・。」

 蒼「・・・おべっか使って機嫌を取ろうとしても駄目だよ。」

 マ「・・・・・・・・・。」

 蒼「まあいいや。もう限界みたいだし、ここで漏らされても面倒だからお手洗いに行こうか。」



  尿意もあってうまく歩けないがなんとかトイレに移動する。

 マ「やっぱり・・・出ていってくれないの?」

  今はトイレの中に二人で居る。

 蒼「その状態でズボンや下着を下ろせるのなら僕は外で待ってるよ。」

  つまり出ていく意思はないという事だ。

 蒼「さあどうする?ここまで来ておいてお漏らししちゃう?」

 マ「お願いします。」

 蒼「何を?」

 マ「僕の・・・ズボンと下着を下ろしてください。」

 蒼「大の男がこんなお人形にそんな子供じみたお願いして恥ずかしくないの?」

 マ「・・・情けないよ。」

 蒼「そうだね、少しは身の程が分かってきたみたいじゃない。」

  蒼星石がどことなく嬉しそうにベルトに手をかけた。

 蒼「やれやれ、股間を膨らませてるから下ろしにくいったらありゃしない。」

 マ「ごめんなさい。」

 蒼「まったく、突っかかっちゃってうまく脱がせられないよ。」

  そう言いながらわざとらしく布で擦って先端に刺激を与えてくる。

 マ「いじわる・・・しないで。」

 蒼「言ってくれるね、このまま中途半端で放り出すよ。」

 マ「それもやめて。」

 蒼「『ごめんなさい』は?」

 マ「ご・・・ごめんなさい。」

 蒼「はい、よく出来ました。」

  やっと脱がせてもらえた。
  そうなったらそうなったで下半身を露出しているという恥ずかしさが襲ってくる。

 マ「あの・・・あとは一人でも・・・」

 蒼「へえ大丈夫なの?そんな状態でこぼさずに出来るのかな?」

 マ「あ・・・。」

  股間のモノはまだ上向いて屹立したままだ。
  今までの刺激と限界の尿意で戻せそうも無い。
  このままでは悲惨な事になるのは目に見えている。

 蒼「別にいいけどさ、汚したらマスターにお口で掃除してもらうからね。」

 マ「うう・・・お願いします。」

 蒼「ほら、何をお願いするのかしっかりと言う!さっき教えたばかりだよね?」

 マ「すみません、あの・・・おしっこをしたいので・・・補助を・・・。」

 蒼「もっと具体的に。」

  蒼星石に突き放される。

 マ「そ、それは・・・えーと、狙いを・・・」

 蒼「それじゃあ全然分からないよ。」

 マ「お、おち・・・を持って・・・これ以上は・・・恥ずかしくて言えないよ。」

 蒼「おやおや、女々しい事で。まあそういうのも育てていく楽しみがあるかもね。
   今回だけはサービスでそれでいいにしてあげるよ。感謝してよね?」

 マ「・・・ありがとう。」

 蒼「じゃあいくよ。」

  蒼星石がなんのためらいも無く肉棒をつかんで下に向ける。
  その刺激に思わず腰を引いてしまい、無様に突き出した形になる。
  なるべく低い位置からと思い腰の高さを落とすと顔が水洗のタンクに乗っかった。
  ひんやりとした感触がどこか心地よい。

 蒼「うん、これなら大丈夫だね。いつでもいいよ。」

  その言葉に安堵した瞬間だった。
  我慢し続けていた物が堰を切って流れ出した。
  固く目をつぶるが、ジョボジョボと水面を激しく叩く音が耳に入るのは防ぎようが無い。

 マ「はぁ・・・・・・」

  心地よい感覚と共に全身が弛緩する。

 蒼「ふふふ、気持ち良さそうな顔。」

  その言葉に羞恥を煽られ反射的に顔をしかめる。

 蒼「それにしても凄い勢いだね。ねえ、マスター?」

 マ「・・・・・・。」

 蒼「返事は?」

  ぎゅっと力いっぱい握られた。

 マ「ぐぅっ!!は、はい・・・こんな風に出るのは・・・滅多に無いです。」

 蒼「だよね。金糸雀にでも頼んで、カメラで記録しておきたいくらいだ。」

 マ「や、やめ・・・」

 蒼「今更間に合わないしね、今回は諦めるよ。」

 マ「これからもやめてよね。」

  これからも・・・こんな事が続いてしまうのだろうか?

 蒼「それにしても色は薄いのに結構におうね。」

 マ「わざわざそんな風に言わないで。」

 蒼「目の前でされたら気になっちゃうよ。それにマスターの健康管理は僕の役目だからね。」

 マ「くぅ・・・。」

  されるがまま、ひたすら屈辱に耐える。
  永遠に続くかとも思われた消え入りたい時間もようやく終わりを迎えた。

 蒼「すごく長かったね。僕、待ちくたびれちゃったよ。」

 マ「すいませんでした。」

 蒼「自分からちゃんと謝れたからご褒美にふきふきしてあげるね。」

 マ「い、いいよ。そこまでしなくても大丈夫だよ。」

 蒼「おや、僕の好意を受け取れないんだ。やっぱりまだまだ教育が必要そうだね。」

 マ「お、お願いしますっ!」

 蒼「はいはい。じゃあきれいに拭きましょうね。」

  蒼星石が小さくたたんだトイレットペーパーを手に取った。

 蒼「はい。ごしごし、と。」

 マ「ううっ。」

  こそばゆくて思わず声が漏れる。

 蒼「何を変な声出してるのさ?」

 マ「ご、ごめん。」

 蒼「さあ、隅々まで綺麗にしないとね。」

  蒼星石が尿道の中まで拭こうとする。

 マ「そ、そんなところまでいいよ!痛いから!」

 蒼「耐えられないと言うんならなおさらやらなきゃだ。
   これしき我慢できなきゃ困るからね。」

 マ「痛い・・・痛いよ。」

 蒼「それだけ?」

 マ「えっ!?」

 蒼「拭いても拭いても何かが滲んでくるんだけど。」

 マ「・・・ふうん、水を飲み過ぎたからかな。」

 蒼「じゃあそういう事にしておいてあげようか。キリが無いしこれで終わり、っと。」

  やっと蒼星石が手を放す。

 マ「終わった?」

 蒼「うん、終わったよ。」

  蒼星石がトイレットペーパーを放り投げトイレを流す。

 マ「そう・・・。」

  脱力して床にへたり込む。

 マ「あのさ、手を洗いたいな。」

  あわよくば手錠を外してもらえないだろうかという期待を秘めて言う。

 蒼「なんでさ。マスターは何もしてないでしょ。」

 マ「そ、そうだけど。こういうのは習慣だから洗わないと落ち着かなくて。」

  なんだか理に適った反論をされてしまった気もする。

 蒼「やれやれ、そんなに洗いたいなら洗わせてあげるよ。」

 マ「本当?」

 蒼「ただ・・・僕の手をだけどね。」

  顔の前に蒼星石の小さな手が突きつけられる。

 マ「えっ?」

 蒼「マスターのお世話で汚れちゃったんだからね。
   お返しにきちんと綺麗にしてよね。」

 マ「それはいいけど、こんな状態じゃあ・・・。」

 蒼「舐めて。」

 マ「舐め・・・?」

 蒼「舌で綺麗にしてよ。それ位は出来るでしょ?」

 マ「あ・・・あ・・・。」

 蒼「早く。」

  感情をこめない機械的な声で命令される。

 マ「は、はい。」

  おずおずと舌を伸ばす。
  不自由な体勢でれろれろと舌を這わせる。

 蒼「ふふふ、なんだかむずむずする。」

 マ「ご、ごめんなさい。」

 蒼「まあ一生懸命なのはいい事だよ。次は指をしゃぶってもらおうかな。」

  蒼星石が人差し指をそっと伸ばす。
  暗示にかかったかのようにそれを口に含んでしまった。

 マ「ん・・・んう。」

  ほっそりとした指を口の中に迎え入れ、舌をしゃにむにこすりつける。

 蒼「そんな風にうっとりしちゃって、赤ちゃんみたいだね。」

 マ「はぁ・・・。」

  返事を返す余裕も無い。
  ただただ指をむさぼり続ける。
  しばらくして、そっと指が引き抜かれた。

 マ「あ・・・。」

 蒼「ふふふ、名残惜しそうな声。だいぶおりこうさんになってきたね。」

  蒼星石がつばきでべっとりと汚れた手をペロリと舐める。

 蒼「あーあ、べたべたになっちゃった。やっぱりちゃんと洗おうっと。」

  そう言って洗面台で手を洗う。

 マ「あの、そろそろズボンをはかせて下さい。」

  下半身を丸出しのままではやはり恥ずかしい。

 蒼「駄目だね。」

 マ「お願いだよ。」

 蒼「これからお部屋に戻るけど、マスターが逃げたり抵抗できないようにそのままにするよ。」

  確かに足枷のようになっていて思うように動けない。

 蒼「さあ、分かったら移動する!」

 マ「うわっ!」

  蒼星石に襟首をつかまれ半ば引きずられながら移動する。
  その時ふとひらめいた。

 マ(そうだ・・・ベルトの留め金で手錠の鍵を開けられるかも)

  今ならベルトも外されたままだ。
  気付かれないようにして先端部を引き寄せれば鍵開けに使えるかもしれない。
  移動しながら、少しずつ少しずつ慎重にベルトを手繰る。
  そして部屋に着いたところでちょうど手の届くところに先端が到達した。

 蒼「はい、それまで。」

 マ「あっ!!」

  つかもうとした瞬間、反対側から勢い良くベルトが引き抜かれた。
  見上げると蒼星石の愉快そうな顔。

 蒼「気付いていないとでも思っていた?これは没収だよ。」

 マ「くっ・・・。」

 蒼「おいたしようだなんていけない子だ。・・・お仕置きしなきゃだね。」

 マ「な、何をするの?」

  蒼星石は何も答えない。
  無言のままの様子に緊張が深まっていく。

 蒼「どれ・・・。」

  蒼星石は手にしたベルトを振って床に打ち付ける。
  最初はパシパシいっていただけなのが次第にバシンバシンという激しい音に変わっていく。

 蒼「まだうまく加減できなそうだけど最初はこんなものかな。
   これでひっぱたいてあげるよ。あの雑誌でしてたようにね。」

 マ「あの雑誌・・・。」

  その言葉に浮かぶ一つの光景。
  苦痛を受けながらも悦びに顔をゆがめる男の後ろで鞭を大きく振り上げる女性。
  直感に後押しされ、とっさに体が動いていた。

 蒼「えっ!?」

  すぐ近くでベルトを大上段に振り上げていた蒼星石に体当たりを仕掛ける。
  のけぞり気味だった蒼星石が、不意打ちをまともに食らって吹っ飛ぶ。

 蒼「きゃっ!!」

  いつもの蒼星石らしからぬ、いかにも女性らしい悲鳴。
  蒼星石は背後の壁に叩きつけられていた。
  期待した通り、ベルトも蒼星石の手から離れた。

    ―――ちゃりん

  音のした方を見る。
  鍵が弾みで飛び出たようだ。

 マ「しめた!」

  ベルトを拾いに行った勢いのまま、わずかに進路を変える。
  大急ぎで鍵を拾って両手の戒めを解く。

 マ「蒼星石、すまない!」

  そして壁に思いっきり当たったからか、まだ身動きの取れていなかった蒼星石を後ろ手に拘束する。
  体のサイズからすると多少鎖が長いが、自由を奪うには十分だろう。
  これなら蒼星石が落ち着いてくれるまで動きを封じられるはずだ。

 マ「・・・やった。」

  まさに一瞬の出来事だった。
  なんだか心臓がバクバク言っている。
  鼓動が激しすぎて胸が苦しいくらいだ。
  まずは落ち着いてズボンをはくことにした。

 蒼「・・・・・・。」

  蒼星石はさっきからうつむいたままでなんの反応も示さない。

 マ「蒼星石、大丈夫?まさか変なところをぶつけちゃったんじゃ?」

 蒼「それは・・・平気だよ。」

 マ「ごめんね、無我夢中だったからさ。」

  さっきまでと違い力を失った蒼星石の言葉に思わず謝ってしまう。

 蒼「でも、でも・・・もうおしまいなんだ!
   もう・・・マスターとは共に居られないんだ!」

 マ「なんでさ?」

 蒼「あんな事をして、マスターに拒まれて、僕はもう必要とされる訳が無い。
   僕は・・・マスターにも見捨てられちゃうんだ!!」

 マ「落ち着いて。そんな訳ないじゃない。」

  異常なまでに取り乱す蒼星石の態度に動揺する。
  緊張のせいかまだ胸がドキドキし続けている。

 蒼「どうすれば許してもらえるの?女の子らしくすればいいの?
   だったら僕、ううん、わ、わた・・・私、これからはそうするから!」

 マ「何を馬鹿な・・・無理してそんな事しないでもいいよ。」

 蒼「ははっ・・・今更似合わないよね。本当だ。僕って馬鹿だね。」

  今まで一度も見たことが無かった、あまりにも弱々しい蒼星石の様子。
  まるで全ての支えを失いでもしたかのような脆さを見せている。

 マ「蒼星石は今のままでいいんだよ。これからも今まで通り一緒に過ごそう?」

  ――― どくん ――― と心臓が大きく脈打つ。

 蒼「それはマスターが何も持たない僕を憐れんでるからだ。
   そんな風に同情されて傍に置いてもらっても辛いだけだよ!」

 マ「蒼星石・・・」

  ああそうか。
  僕はやっとさっきから続く動悸の正体に気付いた。
  この苦しいまでに激しい鼓動が狂おしいまでの胸の高鳴りだった事に。

 マ「やれやれ。さっきから・・・蒼星石は自分に魅力が無いみたいに言ってるけどそんな事ないよ?
   とても可愛いし、身も心もとても女性らしいじゃないか。」

 蒼「そんな事ある訳ない!いいんだ、そんな風に慰めてくれなくっても。
   悪いけど・・・マスターにさっきの僕みたいな気持ちは分かりはしないよ。」

  あくまでも蒼星石は突っぱねる。
  ・・・どうやら・・・荒療治が必要なようだ。

 マ「そんな事ないさ。だって今なら僕にもその気持ちは理解できるからね。」

  期待に胸を弾ませ、うなだれたままの蒼星石の元へと歩み寄る。

 蒼「えっ?」

  今まで僕は、蒼星石をガラス細工の花でも愛でるかのように接してきた。
  決して傷つけまいと、やさしく丁重に扱ってきた。
  だが、今この胸にこみ上げてくる衝動はその真逆。

     ――― 無茶苦茶にしたい ―――

  そんな危うく美しい物を、壊れてしまうほどに激しく、手荒に扱いたい。
  その禁忌を犯した時、一体どんな変化を見せてくれるのかを知りたい。
  相手の全てを、喜びを湛えて笑う様も苦痛にあえぐ様も全部、何から何まで自分だけの物にしてしまいたい。
  相反する、だがどちらも蒼星石への思慕から生じる感情。
  今、隠れていたもう一つの気持ちが顕在化したのだ。

 蒼「マ、マスター?」

  きっと僕の顔には笑いがにじみ出ていた事だろう。
  こちらを見上げてそんな内面の変化を嗅ぎ取ったのか、蒼星石が不安げな眼差しを送ってきた。
  今ではそんなおびえた表情すら、どす黒く燃え滾る火に油を注ぐ事にしかならない。
  素晴らしい、もっとだ・・・もっと・・・見せてくれ・・・。

 マ「蒼星石が自分の魅力を認められるよう、みっちりと教え込んであげるからね。」

 蒼「え?な、何を!?」

  後ろ手に拘束された蒼星石をひょいと抱え上げて膝の上に乗せる。
  その背後から両手を伸ばし、服の中へと侵入させた。

 蒼「あ!マ、マスターやめて!!」

  お構い無しに手をもぞもぞと動かし目的地を探す。

 マ「ふむふむ、ほう・・・やっぱりこっちは何もついてないんだね。」

  下半身の、人間ならば何かがあるべきところには案の定何も無かった。

 蒼「ご、ごめんなさい!!」

 マ「謝る事じゃないさ。別にそんなの気にならないしね。
   むしろ・・・こっちはある事にちょっと驚いたよ。」

  上半身に侵入した手がそっと突起物に触れる。

 蒼「んぅっ!!」

  それと同時に蒼星石が声を上げる。

 マ「へえ、感覚もちゃんとあるんだ。やっぱり敏感なのかな?」

  そっとつまんでこりこりと刺激してみる。

 蒼「あ、あ・・・マスター!だめ、だめっ!!」

  蒼星石の背筋がピンと伸びた。

 マ「なんでさ?」

  蒼星石の耳元に口を寄せて囁くと、そのまま舌を耳の穴に侵入させた。

 蒼「ううっ、だってぇ・・・。」

  身悶えしながら切なげな声を漏らす。

 マ「気持ちいいんでしょ?」

 蒼「ち、違うよ!」

 マ「そうなの?とっても素敵なオンナの顔をしてたよ?」

 蒼「そんな事・・・ある訳ない。」

 マ「そこまで頑なじゃあ仕方がないな。」

  蒼星石を抱いたまま立ち上がり、場所を移す。

 蒼「何をする気?」

 マ「すぐに分かるさ。」

  着いた先は鏡の前。
  みんながnのフィールドを利用する際の出入り口にもなる大きな姿見だ。

 蒼「ま、まさかこんなところで!」

 マ「ふふ・・・自分の目で確かめてもらうのが一番だと思ってさ。」

 蒼「でも・・・もしも誰かが来たら・・・。」

 マ「見られちゃうね。快感に溺れる蒼星石のいやらしい姿をしっかり見られちゃう。」

 蒼「い、いやらしくなんて・・・。」

  蒼星石はぎゅっと目を閉じて鏡を見ようとしない。

 マ「おやおや、見る気がないんならそれこそ録画でもしようか。
   それなら場合によっては他のみんなの意見も聞けるしね。」

 蒼「や、やめて!そんなのやめて!!」

  蒼星石が慌てて目を見開く。

 マ「ふふっ、冗談だよ。蒼星石のこんな悩ましい姿、誰にも見せてたまるもんか。
   これからも僕だけが独り占めさせてもらうよ。」

  今度は両手を同時に使って蒼星石をいたぶる。

 蒼「あ・・・あ、嘘だ。そんなの嘘だよ。」

 マ「鏡の中の自分をしっかり見てごらん?
   ほら、あんな色っぽい表情をしてるじゃない。」

  指の腹で乳首をくすぐる。

 蒼「はうっ!」

 マ「ふふふ、もっと色っぽくなったね。」

  今度は爪で軽く引っ掻いてやる。

 蒼「や、やめ・・・」

  その後もあれこれと執拗に責め続けていたら次第に蒼星石の声が切羽詰ったものに変わってきた。

 蒼「だ・・・だめ・・・だったら・・・」

 マ「これでもまだ自分が女の子らしくないなんて思うのかい?」

  蒼星石の首筋に舌を這わせ、そのまま耳の方へと上ると耳朶を甘噛みする。

 蒼「んう・・・僕は・・・僕はぁ・・・」

 マ「ほら、素直におなり。」

  きゅっと乳首をつまんでやった瞬間。

 蒼「いっ・・・・・・」

  抱えていた蒼星石が身を強張らせながら一声上げるとぐったりとしてしまう。
  向きを変えて抱き直し、放心した蒼星石の目を見つめて言う。

 マ「やっぱり蒼星石は僕のベストパートナーだ。
   これからも、ずっとずっとよろしくね。」

 蒼「ますたぁ・・・。」

  蒼星石はまだうつろな目をしたまま、こくりとうなずく。

 マ「ありがとう。それじゃあ誓いの口づけだ。」

 蒼「ん・・・。」

  未だに正体がはっきりしない様子の蒼星石と唇を重ねる。
  互いに相手をむさぼり、激しく舌を絡めあう。
  二人とも、いつまでも相手を離そうとはしなかった。


  自分でもこれから二人の関係がどうなるのかはさっぱり分からない。
  確かなのは磁石の両極のように自分という存在はもう蒼星石から離れられないという事。
  そしてこの底知れぬ穴からは決して抜け出せず、堕ち続けるしかないという事だけだった。

  なんだよHANTAIってwwwミスってごめんね(編集した人