誰が言った言葉・・・・・・・・・だったか・・・・・・・・・『うさぎの巣穴にご用心。はやての足を挫かぬよう』・・・
  いつ何時、どこでどんな状況でだったのか、一切分からないが・・・
  それまでどれほど平和に暮らしていても、いつ、どこにでも落とし穴が隠れているという事だろうか・・・
  そう、自分だって思いもしていなかった、まさか平穏な日々がいきなりあんな事になるとは
  ・・・未来という目の前に・・・・・・・・・ポッカリ開いた「落とし穴」があったとは・・・・・・・・・




 マ「で、今日は何の用よ?こんな所に呼び出してさ。」

  「いやさ、ちょっと預かって欲しいものがあるんだ。」

 マ「どういうこと?」

  「俺さ、今度引っ越すんだよ。」

 マ「手伝いか?」

  「大体そんなもんだが話を先に聞いてくれ。
   実は手違いで明け渡しと入居に間が空いちゃったんだ。」

 マ「うちには泊められないよ。」

  「だからそう話を急ぐな。実家に避難するから安心しろ。」

 マ「ほうほう。・・・で?」

  「で、その間だけちょーっと預かって欲しいものがあってね。」

 マ「実家に置けば?」

  「はっはっは・・・お前も男なら分かるだろ?家族には見せたくないものがあるって。」

 マ「・・・なんとなく見当はついた。」

  確かに家に持ち帰って見つかったら悲惨な目に遭いそうだ。

  「という訳で早速だが受け取ってくれ!」

   ここぞとばかりに紙袋を差し出してきた。

 マ「おいおい、まだ返事してないんだけど。」

  「まあまあ、気にすんな。これから他の奴にも持ってくからこれで失礼するぞ。」

 マ「他の奴にも?」

  「結構な量なんで分散させる事にした。いやー、持つべきものは一人暮らしの友だ。」

 マ「一方的に利用してるだけじゃないか。」

  「そんな事はないぞ、しっかりと興味を持ってもらえそうなものをチョイスしてる。」

 マ「ははっ、ヒマな事する奴だな。まあいいや、取りあえずコイツは厳重に保管しておくよ。」

  「中を見て気に入ってくれれば幸いだ。汚さなきゃ使ってくれて構わんぞ!!」

 マ「使わねーよ!!」




 マ「で、なんでこんなものをチョイスしたんだ・・・」

  家に帰って一応何を預からされたのか確認する事にする。
  後々あれが無いだとかこんなくだらない事で揉めたくない。
  中に入っていたのはハードなSMの本。

 マ「いくらなんでもこれは無いだろ、常識的に考えて。」

  しかも、どれもこれも男の方が責められている。

 マ「一体あいつは僕に対してどんなイメージを持ってるんだ。」

  一冊の雑誌を手に取る。

 マ「えーと、何々・・・

   “新創刊、月刊『SMのススメ』!毎号グッズが付録でついてくる!!
    全号そろえるとSMグッズワンセットが完成だ!初回は小手調べで手錠から!!”

   ・・・小手調べ?いきなりこれならこの後は一体どうなっていくんだろう。」

  好奇心に駆られパラパラとめくってみる。
  まったく興味は無いが、だからこそこんな機会でもなければ一生目にする事も無いだろうからだ。

 マ「うわ・・・引くわ。そもそもあいつはこれを見て喜んでるのか?」

  鞭を大上段に振り上げる女性、その前に四つん這いになり傷だらけになりつつも悦ぶ男。
  まったく理解できそうに無い世界だ。
  ページをさらにめくっていくと活字中心の記事もあった。

 マ「SM論か・・・何事にもこういうのはあるんだなあ。」

  試しに読んでみる。

 『人間は誰しもSとMの両方の気質を内に秘めています。
  大抵の人はそれが拮抗しているのですが、逆に言えばどちらにも目覚めうるのです。
  そして何をしようとも信頼しあえるSとMが出会えてこそ真のSMプレイが行えるのです。
  心が通い合ってなければそれはただの暴力なのです。一方的では成立しえません。
  ここではそんな理想の関係を築けるベストパートナーを見つけるためのお手伝いを・・・』

  なんだか出会い系もどきみたいな内容になってきた。
  『初めてのお相手探しはココ』という部分が赤ペンでチェックされている。
  友人関係を整理しようかという考えがちょっとだけ頭をよぎった。


  しかし・・・そこまで信頼できる相手、自分にとってはそんなの蒼星石くらいだろうか。
  自分はマゾなどではではない。しかし、蒼星石を傷つけるなんてとても考えられない。
  だったら傷つけられたほうが遥かにマシだ。
  じゃあ結局この場合はM寄りなのかな?

    コンコン

 蒼「マスター、入るよ。」

  ドアのノックに心臓が飛び出しそうになる。
  大慌てで雑誌どもを布団の下に滑り込ませた。

 マ「はーい。」

  返事とほぼ同時にドアが開く。
  普段から気にせず入ってもいいと言っていたが、今回ばかりは蒼星石が律儀で助かった。

 蒼「どうしたの?いやに驚いてない?」

 マ「あ、いやー、ちょっとウトウトしてて。春眠暁を覚えずってやつかな。あはは・・・」

 蒼「もう夕方なのに?」

 マ「あ、は、は・・・ところで用件は何かな?」

 蒼「ああ、ご飯できたから呼びに来たんだけど。疲れてた?仮眠でもとる?」

 マ「そういう訳じゃないよ。じゃあ行こうか。」

 蒼「・・・?」

  蒼星石が空の紙袋に注意を向ける。
  何が入っていたかは分からないだろうが、聞かれでもしたら困る。

 マ「さっ、さあ!ご飯ご飯。今日の献立は何かなー、楽しみだなー!!」

 蒼「わっ、そんなに慌てないでよ。」

  蒼星石を後押しするように食卓へと向かった。
  記事に釣られて実に馬鹿な事を考えてしまった。
  傷つけるも傷つけられるも無い、こうして普通に共に過ごせるだけで幸せなんだ。
  あんな事をしたら、だなんて考える必要も無い。




  そしてそんな興味の無い雑誌が忘却の彼方へと移動した頃。

 蒼「いい天気だね。」

 マ「うん、休日に晴れとはありがたい。布団でも干すかな。」

  部屋に戻り布団をたたむ。

 蒼「手伝うよ。」

  蒼星石がやってきてそう言った。

 マ「いいよ、大きくって持てないでしょ?無理はしなくていいさ。」

 蒼「なんだか悪いな、じゃあお部屋をお掃除しておくね。」

 マ「気に病むことないのに。ほんとに可愛いんだから。」

 蒼「マスターに喜んで欲しいから。そのためにはできる事をしたいんだ。」

 マ「今でも十分なのに感謝、感謝だよ。じゃあこっちはお任せするから。」

  両手をかけて布団を一気に運ぶ。
  何か忘れているような気もしたが、布団で手一杯なので足早にその場を去った。




 マ「うーん、お日様の匂いがする~♪」

  布団たたきでパンパンと叩くと小さい何かがもうもうと舞う。
  舞ってるのは中の綿屑だとか、お日様の匂いはダニの死骸の匂いだとか聞くが気にしない。
  どっちもなんとなく好きだから気にしたら負けだと思っている。

   ピー ピー

 マ「おっ、洗濯も終わった。」

  洗い終わった布団や枕のカバーを干す。

 マ「いやー、今夜が楽しみだ。きっといい気分で寝られるぞー。
   蒼星石もたまにはお布団で寝たら気持ちよく眠れないかな?」

  あとでちょっくらそんな話を持ちかけてみようと考えながら、早くもいい気分で部屋に戻る。

 マ「蒼星石、何かお手伝いできるかな?」

  ガチャリとドアを開けると蒼星石は正座して本を読んでいた。
  よほどのめり込んでいるのだろうか、何やら真剣な表情だ。

 蒼「あ!マスター、こっ・・・これは!!」

 マ「別に本を読んでくれてたって責めないから慌てないでいいよ。
   面白い本を見つけたなら掃除の方は引き継ぐから読んでなよ。」

 蒼「あの・・・これは・・・」

 マ「ところでそれって何の本?・・・げ!!」

  何気なしに本に目を向けて凍りつく。
  蒼星石が読んでいてのは例の預かり物だった。
  布団の下に封印して以来、今の今まで存在を忘れていた。

 マ「げ、げげげのげ、それは・・・」

 蒼「勝手に読んじゃってごめんなさい。・・・マスターってこういうのが好きだったんだ。」

 マ「違います!違います!誤解です!!」

  首をブンブン横に振って全力で否定する。
  預かった方が悲惨な目に遭ってどうする。

 蒼「あのさ、まだこういう事をするお相手は居ないんだよね?」

  例の赤丸がつけられたページを開いていた。

 蒼「他の女の人には言えなくても僕なら大丈夫だよ。
   二人だけの秘密にするし、いつでもお相手するよ?」

 マ「全力で断る!」

 蒼「僕じゃあ・・・信頼できる相手にはなれないのかな。」

  どのように受け取ったのか少し落ち込む蒼星石。
  どうやら結構読み進んでいたようだ。
  あんな記事を真に受ける辺りがなんとなく蒼星石らしい。

 マ「いや、信頼はしてるけどさ、それとこれは別問題だから。」

 蒼「僕は決心したんだ!マスターに喜んでもらえるなら頑張るから!!」

  蒼星石が両手で僕の手をぎゅっと握る。

 マ「だから必要ないって。今のままでも幸せなん・・・」

  いきなり蒼星石が機敏な動きを見せる。

   ガチャリ・・・

 マ「・・・だよって。」

  油断していたら後ろ手に拘束されてしまった。
  どこに隠してたかは分からないが、どうやら付録の手錠を使ったようだ。
  付録だけにどことなくチャチかったが、鍵もちゃんとついていて、それ無しには外れない作りだった。

 蒼「隠さなくっても大丈夫、僕はマスターが望むならなんでもやるから。
   さあ何をすればいいか言って?」

 マ「何もしなくていいからー!あえて言うなら早く手錠を外して!!!」

 蒼「強情だなあ。それとも・・・やっぱり他の女性の方がいいの?」

 マ「え・・・いや。」

 蒼「まあいいよ、これを参考にするか。」

  蒼星石が本をめくる。

 蒼「うわ、鞭で思いっきり叩いてる。・・・こういうのが嬉しいの?」

  無邪気におっそろしい事を尋ねてきた。
  先程と同様ぶんぶんと必死で首を横に振る。

 蒼「だよね、それじゃあ・・・こんなのはどうかな。」

  蒼星石が広げて見せたページには訳の分からない縛り方をされた男が逆さ吊りになっていた。

 マ「いや、遠慮しとく。そもそもいろいろとムチャだから。」

 蒼「じゃあソフトなところから・・・『入門編:まずはビンタ! -愛のビンタで目覚めちゃおう-』か。」

 マ「いや・・・だから・・・。」

 蒼「じゃ、じゃあいくよ!覚悟してね。」

  蒼星石が手を振り上げ反射的にぎゅっと目をつぶる。

     ぺち・・・

  頬に手が当たる、と表現するよりもおっかなびっくり触れると表現したほうが良いかもしれない。

 マ「・・・・・・。」

 蒼「あの・・・いきなり痛すぎた?」

 マ「え・・・と・・・。」

 蒼「あの・・・やり過ぎちゃったかな。」

  あれで痛かったらこの先生き残れない。
  やり過ぎというならむしろ手錠の方だが、この分ならうまく話を進めればすぐに誤解も解けるだろう。

 マ「大丈夫、大丈夫、それよりもさ・・・」

  余裕を取り戻して軽い調子で言いかけたところで ―――

 銀「あらぁ、あんた達ってば何をやってるのかしらぁ?」

 蒼「水銀燈!!」

 銀「ふうん・・・何やら素敵な趣味をお持ちのようね。」

  水銀燈は雑誌の方に目をやっている。

 マ「誤解だー!!」

 蒼「そうだよ、人の趣味に文句をつけたらいけないよ!!」

 マ「そうじゃないからー!」

 銀「なるほどねぇ・・・じゃあちょっとばかり私が伝授してあげちゃおうかしら。」

 蒼「伝授?」

 銀「そうよぉ、私って頂点に君臨する風格があって、天性の女王様って感じじゃない?」

  口元に手を当ててポーズを取る。
  今にも高笑いが聞こえてきそうで無駄に説得力があるような気もしないではない。

 蒼「例えば・・・どんなだい?」

  蒼星石も同じ様な事を考えたのか水銀燈に問いかけた。

 銀「そうねぇ、水責めなんていいんじゃない?」

 蒼「水責め?」

 銀「そうよぉ、水で呼吸できなくなって意識が戻ってこなくなる一歩手前が凄いのよ♪」

 マ「デタラメを言うな!そんな経験も無いのに当てずっぽうで言ってるでしょ!」

 銀「もちろん私自身は息苦しくなんてなる訳ないけど、めぐの体験談よ。」

 マ「あの子が?」

 銀「以前呼吸困難で危篤に陥った際に天国が見えたとか・・・。
   その体験のおかげでちょっとだけ生きる意欲が湧いてきたんですって♪」

 マ「嘘つけ!」

  本当だとしてもその天国はマジでヤバイものな気がする。

 銀「男は度胸よ?今ならお鍋一杯の水で出来るお手軽で安上がりな方法を伝授しちゃうわよぉ!」

 蒼「ふむ、何事も物は試しと言うし、チャレンジしてみるか。」

 マ「人の命を懸けてチャレンジしないで下さーい!」

  だがそんな必死の言葉も今の蒼星石には届かない。

 蒼「水銀燈、今から水を汲んでくるけど、その間にマスターに手を出したら承知しないよ!」

 銀「はいはーい♪」

  水銀燈に釘を刺して蒼星石は部屋を出て行った。

 マ「・・・何しに来たんだよ。」

 銀「アリスゲームに決まってるじゃない。仲良しごっことでも思った?」

 マ「だったらこんな事してないで戦え・・・とは言わないけど加担はしないでよ。」

 銀「あらぁ、だって戦いはいつでもできるけどこっちは今しか出来ないじゃない。
   こぉんな面白そうなイベントをほっておく訳ないでしょ?」

 マ「悪魔ーー!」

 銀「なんとでも言うがいいわぁ。手錠で拘束されたあなたにはどうせそれしか出来ないんだしぃ。」

  水銀燈が愉快そうに笑う。

 マ「水銀燈!てめーの根性はッ!畑にすてられカビがはえてハエもたからねーカボチャみてえにくさりきっ・・・」

 銀「うるさいわよぉ。」

 マ「タコス!」

  水銀燈の掌底が口の辺りに入り悲鳴を上げる。

 マ「ううっ、もう少しで最後まで一息で言えたのに・・・。」

 銀「あんたもこんな状況で余裕あるじゃない。見所あるわね。」

 蒼「持って来たよ。」

  えっちらおっちらと蒼星石が水のなみなみ入ったお鍋を手に戻ってきた。

 蒼「これで水責めってどうやるの?」

 マ「やーめーてーくーれー!!」

  頭を押さえつけられて水に顔を浸ける自分の姿を想像してしまった。

 蒼「じょうごでも使う?」

 マ「じょうごも押さえつけられるのもやだーー!!」

 銀「あらぁ、あんた達って遅れてるぅ。」

 蒼「え?」

 銀「いい?最新式の水責めってのはね、そんな野蛮な方法じゃなくって・・・」

  水銀燈が何やら蒼星石に耳打ちしている。

 蒼「え、そんな事をするの!?」

 銀「そうよぉ、それがトレンドってやつぅ。」

 蒼「だけど・・・」

 銀「嫌なら私が代打でやってあげてもいいわよ?」

 蒼「断る!・・・分かった、マスターのためだやってみる。」

  キッとした顔で水銀燈を睨むと部屋を出て行った。

 マ「何を吹き込んだのさ!」

 銀「さあ?じきに分かるわよ。」

  水銀燈はニヤニヤ笑うだけで答えない。
  蒼星石がコップを持って戻ってくると、先程のお鍋から水をすくい取る。
  まさかあれを口と鼻に当てられるのでは・・・確かに経済的だ。

 蒼「じゃあ・・・マスター覚悟してね。」

  蒼星石の顔が目の前に迫る。
  緊張して次の動きを見守っているとなぜか蒼星石がコップに口をつける。

 マ「あれ?」

 蒼「・・・んっ!!」

  いきなり蒼星石がこちらの唇に自分の唇をぶつけてきた。
  大胆にも舌まで差し込もうとしてくる。
  こちらが放心しているとそのまま口をこじ開け、液体を流し込んできた。
  次から次へと送られてくる液体を嚥下する。
  やがて、口の中の水が尽きたのか蒼星石が唇を離した。

 蒼「・・・ぷはぁ・・・どう?飲み干してくれた?」

 マ「はぁ・・・はぁ・・・う、うん・・・飲んだ。」

  呼吸が苦しくてではないが息が荒くなってしまった。

 銀「あらあら、それだけじゃとても満足してくれないわよぉ?疲れたなら交代する?」

 蒼「分かってるよ!まだ平気だ。」

  蒼星石が鍋からコップに水を補給する。

 マ「こら、水銀燈!デタラメばかり言うな・・・」

  無言の蒼星石にまた口をふさがれる。

 マ「ん・・・んぅ・・・!」

  視界の端にさも愉快そうな笑顔でこちらを眺める水銀燈が映る。
  せめてもの抵抗でそちらを睨みつけてやっていたら事を終えた蒼星石に声をかけられた。

 蒼「だめ・・・僕の方を見て、僕だけを。そのためなら・・・なんでもするから。」

 マ「蒼星石・・・。」

 蒼「さあ、もう一回・・・。」

  蒼星石の必死さに胸打たれ、しばらくされるがままになってしまった。




 蒼「・・・もう汲めないや。」

  ようやく鍋の水が尽きてくれたようだ。
  もうお腹がタポタポだ。

 蒼「大急ぎで補給してくるかな。」

 マ「もういいって!」

  慌てて蒼星石を制止する。
  こんな事を続けていたら水中毒になってしまいそうだ。

 銀「そうねえ、マンネリだと飽きられちゃうわよぉ?」

  その時部屋の外が騒がしくなった。

 銀「あらあら、やっと他の連中も到着のようね。」

 マ「他の連中?」

 銀「メイメイに呼びに行かせたのよ。」

  ちょうどそこに藍色の人工精霊がみんなを引き連れ現れた。

 真「水銀燈、あなたいったいどんなつもり・・・!?」

 翠「お前まさか蒼星石に・・・!?」

  入ってきた二人が絶句する。
  みっともないところを見られてしまったが、これで助かるかもしれない。

 銀「ふふふ、この男のSMプレイに付き合ってやってるのよ。
   あなた達もストレス解消に参加しない?」

 翠「お前は蒼星石に何をやらせるですか!!」

 真「人間のオスって本当に下劣ね。」

 マ「誤解だーー!!」

 蒼「そうだよ、無理矢理じゃなくって僕が自主的に・・・」

 マ「それも誤解だー!しかも誤解深まるからーー!!」

 雛「えすえむ・・・プレイってお遊びのことよね?面白そうなの、ヒナもやるのーー!!」

 金「撮影係はカナにおまかせかしらーー!!」

 マ「やめーーい!!」

 銀「じゃあ乗り気のあんたらはこれを持ちなさい。」

  水銀燈が自分の黒い羽根を渡した。

 雛「うゆ?」

 金「これは何かしら?」

 銀「こう使うのよ。」

  水銀燈が手にした羽根でくすぐってきた。

 マ「ひゃひゃひゃ・・・やめて、くすぐったいから・・・!!」

 銀「やめてって言われてやめたらSMにならないでしょ?」

 マ「だから違・・・」

 雛「分かったのーー!!」

 金「バッチリかしら!!」

  二人も加わり、体のあちこちを羽根でなぞられる。

 マ「だ、だから・・・ははは・・・息が苦しいから・・・やめてって・・・ば・・・。」

 雛「蒼星石のマスターさん、いつも元気一杯ね。」

 金「すごい反応がいいわね。楽しいかしら!」

  必死でもがいてる様子を見てそんな無邪気で脳天気な感想を述べる。

 真「くだらないわ。」

 翠「蒼星石もこんなアホな連中と同レベルの事はやめろです。」

  二人はつまらなそうに言う。
  助けてくれないが、説得の余地はあるかもしれない。

 マ「なずぇ・・・見てるのさ!助・・・けてよ!」

  必死で息を絞り出して助けを求める。

 翠「めんどっちいです。」

 真「遊びの範囲では不干渉よ。」

 マ「裏切ったんですかー!」

  徹底的に無関心の方がある意味腹が立つ。
  そんな事をしていると本格的にやばくなってきた。

 マ「あ、あの・・・い・・・息が・・・や、やめ・・・。」

  水責めを乗り切ってから呼吸困難になるとは思いもしなかった。
  これ程に呼吸が死活問題になった人間は自分と波紋使いだけではなかろうか?

 金「ヒナちょっと手を止めて。」

 雛「うゆ?」

 金「やめて欲しいのかしら?」

 マ「はぁはぁ・・・うん。とっても。」

 金「じゃあ今度カナが来た時に特大の卵焼きを作ってちょうだい!」

 マ「え?」

 金「嫌なら~」

  金糸雀がちろちろと羽根を動かす。

 マ「分かった分かった、それでいいよ。」

 金「きゃー、やったかしらー!ちゃーんと証拠は録画しちゃったんだから!!」

 マ「はいはい。」

 雛「あのね、ヒナにもうにゅーをお腹一杯ちょうだいなの!!」

 マ「うーむ・・・分かったよ。」

  まあこれで二人がやめてくれるならいいだろう。
  後は誰かを説得して手錠を・・・

 翠「これはこれは面白い事になりましたねー、真紅?」

 真「その通りね、翠星石?」

  いつの間にやら二人が迫ってきている。

 マ「お二人さん、下らない事を終わらせてくださいな。」

 翠「その前に、」

 真「やる事があるのだわ。」

  両手には羽根。何を考えているのかは明快だ。

 蒼「あのー、二人とも・・・僕がやるから。」

  そんな制止も空しく―――

 マ「やめ、やめっ・・・急に参加しおって・・・!!」

 真「私はくんくんのDVDやグッズが欲しいのだわ。」

 翠「翠星石は高級なお菓子で我慢してやるです。」

 マ「そんなにこすって・・・魔法のランプじゃないんだぞ!!」

 真「抵抗するんだったら持久戦よ。」

 翠「どっちが有利かはお前のおつむでも分かりますよね?」



  ―――で、

 マ「分かった・・・今回だけだからね。後で追加とかは無しだから。」

 真「まあいいわ。」

 翠「寛大な翠星石はそれで勘弁してやります。」

 マ「じゃあさ、満足したら手錠を・・・」

 銀「まだよぉ?」

 マ「うげ!水銀燈までか・・・まあいいよ。他のみんなにも認めたし、今回だけなら聞くよ!」

 銀「今回だけ・・・んー物足りないわねぇ。願いを増やしてくれってのはぁ?」

 マ「人から搾り尽くす気か!」

 銀「搾り尽くす・・・ふふっ、いいお願いをひらめいちゃったぁ♪」

 マ「何?」

  どうせろくでもない事に決まってる。

 銀「あなた私と契約しなさぁい。」

 真「な!」

 蒼「何を馬鹿な事を!!」

 翠「早まるなです!」

 マ「失礼な!」

  予想外の発言に場が騒然となる。

 銀「あなた活きはいいみたいだから、燃料源としては遠慮せずにそこそこ使えそうだしね。
   それに・・・生命力を搾り尽くされたくなかったら、って言う事聞かせれば便利そうだしぃ。」

 マ「ふざけるな!そんな一方的に利用されるためになんt・・・」

  刹那、黒い線が視界を横切る。
  そして右頬を走る鋭い痛み。
  振り返ると床に刺さった一枚の黒い羽根。
  どうやら水銀燈が飛ばしたらしい。

 蒼「マスター!」

 銀「あなた、まだ立場が分かってないようね。
   人間のあなたが、しかもそんな状態で何が出来るのよ。」

  水銀燈がすごんできた。

 マ「くっ・・・。」

  座ったままなんとか後ずさる。
  何やら液体が垂れる感触がある。
  固い羽根に切り裂かれて出血したようだ。

 蒼「水銀燈、いい加減にしろ!それ以上マスターに危害を加えるなら・・・」

 銀「あらぁ、あなたがしようとしてた事とどこが違うのかしら?」

 蒼「そ、それは・・・僕はマスターに喜んでもらおうと・・・君みたいに利己的な動機じゃない!!」

 銀「へぇ、ほんとにぃ?」

 蒼「当たり前だ。君と一緒にするな!」

 銀「あなただって自分勝手な理由・・・自分のためだったんじゃないのぉ?」

 蒼「何を馬鹿な・・・話していても時間の無駄のようだね。」

 銀「まあいいわ、どっちにしろ他人のおこぼれにあずかる気もないし。
   とりあえず当初の予定通りあなたにはアリスゲームの盤上から退場してもらおうかしら。」

 翠「蒼星石に手を出すなです!」

 真「仕方ないわね。」

 金「や、やるしかないみたいね!」

 雛「がんばるの!」

 マ「おーまーえーらーーー!!!」

  一同の視線がこちらに集まる。

 銀「あらぁ?左だけだけど手錠が外れてる?」

 金「あらら、本当かしら?」

 マ「こういう事だ。」

  外れた方の輪を閉じる。
  かちゃり、と鍵のかかる音がした。
  そして鍵穴に・・・

 雛「あ!」

 真「水銀燈の羽根で・・・。」

  羽根の根元を差込みしばらくいじる。
  かちり、と音がして手錠が開いた。

 マ「何か固くて細長い物さえあれば、こんなの十秒足らずで開けられる。」

 翠「なんでそんな事が出来るんですか!?」

 マ「マスター七つの威力だ!」

 金「質問の答えになってないかしらー!」

 蒼「あとの六つは?」

 マ「秘密!なぜならその方がカッコイイからだ!!」

 雛「・・・アトム?」

 マ「誰がサザエさんだとーーー!!」

 真「言ってないわよ!」

 翠「あのー、ブチキレてますか?」

 マ「Exactly!(全員ブチのめすッ!)」

 銀「ちょっと姉妹で仲良く遊んだだけじゃなぁい。許してよ、ねっ、ねっ?」

 マ「質問だ、許すか許さねえか・・・当ててみな?」

 真「これはまずいわね。」

 蒼「聞くまでもなさそうだものね。」

  話しこんでいる間に右手の手錠も外しにかかる。
  左手でだからちょっと時間がかかる。

 銀「くっ!!」

  いきなり手にした羽根が燃え上がった。

 マ「うわっ!!」

 金「今よ!逃げるのかしらーー!!」

 翠「水銀燈ナイスです!」

 蒼「でも凄い顔して追っかけてきてるよ!!」

 マ「待てー!!」

  右手に手錠をつけたままだが後で外せばいいだろう。
  逃げる連中を全力で追いかける。

 雛「やめてなのーー!!」

 マ「うぎゃ!!」

  足を取られてすっ転ぶ。
  どうやら雛苺の苺轍の仕業だ。

 蒼「マスター!!」

  蒼星石が心配してくれたのかこっちへ駆け寄ってくるのが分かる。
  それでちょっとだけ怒りが冷めたがまだまだ怒り足りない。

 翠「やったです!そのまま『床さん』に熱烈なキスでもしてろです!!」

  両手足を床から伸びた苺轍が拘束する。

 真「これで終わったのね・・・。」

 マ「なまっちょろいわーー!!」

    ブチブチブチ・・・

  右手の苺轍を力任せに引きちぎる。

 金「ええっ!?」

  続いて左手。

 銀「嘘でしょぉ・・・。」

  そして両足。
  怒りに任せて拘束を解く。

 翠「あいつ人間やめかけてませんか?」

 マ「いくぞッ!最終ラウンドだッ!!」

  すぐさま追いかけっこを再開する。

 マ「うおっ!?」

  走り出したそばから右手を引っ張られて思いっきりのけぞる。
  どうやら手錠が何かに引っかかったらしい。
  そちらを見ると先には近くのテーブルの脚元にしゃがみこむ蒼星石。

 マ「テーブルの脚につないだのか。でもそんなのは持ち上げてしまえばすぐに・・・」

  いや、ちょっとだけ違った。
  テーブルの脚には手錠がかけられていない。
  蒼星石は自分の手に手錠をつないでテーブルの足にしがみついていたのだ。

 マ「蒼星石、放すんだ!」

  言いながら乱暴に鎖を引っ張る。

 蒼「痛っ!!」

  蒼星石の顔が苦痛に歪む。
  それを見た瞬間、胸に強い痛みが走り強い後悔の念が襲ってきた。

 翠「蒼星石!」

 蒼「みんなは早く逃げて!これは元々僕のせいだ!僕には気にせず早く!!」

  蒼星石の叫びに応え、みんな一目散に逃げ帰っていった。
  さっきのでもう追いかけようという気は無くなっていた。
  後に二人だけ取り残され、その場に腰を下ろす。
  隣でまだテーブルの脚にしがみついている蒼星石に話しかけた。

 マ「はぁ、みんな帰っちゃったね。」

 蒼「あの、ごめんなさい。みんなの分も僕に怒ってくれればいいから。」

 マ「もういいんだよ。さっき・・・蒼星石が痛そうに上げた声を聞いて、なんて馬鹿な事をって気付いた。
   ごめんね、もうさっきのところは痛くないかい?」

 蒼「あんなのは平気だよ。それよりも、僕の方がもっとひどい事を一杯しちゃって。
   しかもそれが原因でみんなにもひどい目に遭わされて・・・。」

 マ「気にしないの。もう過ぎた事だよ。それに蒼星石は僕のために頑張ろうとしてくれたんだしね。」

 蒼「マスターは本当にそれでいいの?
   さっきはあんなに怒ってたのに・・・僕が悪いんだから気を使わないでいいんだよ。」

 マ「さっきは本気で怒ってたんだけどね。蒼星石とこうしてたらどうでも良くなっちゃった。」

 蒼「本当に?」

 マ「ああ、本当だよ。ふふっ、やっぱり蒼星石の考えた通り僕はMの方寄りなのかな?」

 蒼「あ、あれは・・・本当にごめんなさい。」

 マ「まあいいさ、それより手錠を外そう。鍵は?」

 蒼「あ、鍵だね。僕がしまって・・・あれ?・・・おや?」

  蒼星石があちこちをまさぐる。

 マ「どうしたの?」

  嫌な予感がする。

 蒼「さっきの騒ぎか・・・それまででか・・・落としちゃったみたいだ・・・。」

 マ「じゃあしばらくは・・・」

 蒼「このままだね・・・ごめん。」

 マ「ふふっ、まあこういうのもいいんじゃない?ベストパートナーって感じでさ。」

 蒼「本当に・・・重ね重ねごめんなさい。」

 マ「まあごっつい赤い糸だと思えば構いませんよ。
   そう思えば短くて丈夫だなんて最高じゃない。」

 蒼「えへへ、そうかな。」

 マ「ちょっとの間このままで居ようか。」

  蒼星石を膝に乗っける。

 蒼「あんな事をするよりも普通にこうしてる方がとっても落ち着くや。」

  なんだかんだで蒼星石と一緒にこんな風に過ごすのが自分にとって一番幸せなのだと再確認した。





  こうして一つの穴からは無事に抜け出せた・・・・・・かに見えた
  ・・・しかし・・・・・・・・・時には・・・その穴のすぐ隣に・・・・・・・・・
  もっともっと深い・・・・・・奈落への穴が待ち受けている事もあるのだ・・・・・・・・・・・・



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  ※この先は比較にならない程HENTAI度が増すので
   健全な関係がいいんだー!という人 → Alt+F4 か Ctrl+W をぽちっとどうぞ