目を開けた。
  視界には白い天井、そして周囲を取り囲む薄緑色のカーテン。
 マ「ここは?」
  なんだか全身がだるい。
  体を動かそうにも強い虚脱感が襲ってままならない。
  胸もなんだか重苦しい。
 翠「おっ!気付きやがったですね!!」
  カーテンが勢いよく開けられ翠星石が現れた。
  身を起こそうとすると今度は真紅に咎められた。
 真「まだ動いちゃ駄目よ。絶対安静だそうなのだわ。」
  そう言われて顔だけ動かし周囲を見ると、ここは病院の個室のようだ。
  そしてどうやら総出でお見舞いに来てくれているらしい。
 み「やっと目が覚めたようで何よりね。」
 マ「一体・・・何があったんですか?」
 真「水銀燈と蒼星石が戦った、そこまではいいわよね?」
 マ「うん・・・。」
  脳裏にあの瞬間がフラッシュバックする。
  思い出したくも無い、蒼星石の倒れる忌まわしい瞬間が。
 真「あなたは蒼星石と水銀燈に命を吸い尽くされ死ぬはずだった。」
 マ「何故それが・・・。」
 翠「翠星石のところに来たレンピカの案内で真紅達と駆けつけた時、蒼星石のローザミスティカがお前の上で輝いていました。」
 真「ローザミスティカの力がかすかながらであってもあなたを延命し続けていたわけ。」
 マ「そうだ!蒼星石は?蒼星石は今どこに!?」
  肝心の蒼星石の姿だけさっきから見えないことに今更ながら気付く。
 翠「取り乱して暴れるなですよ?蒼星石は・・・姿は見えずとも今もずっとお前のそばでお前に力を与え続けてるです・・・。」
 マ「それってどういう・・・まさか・・・。」
  最悪の想像が頭をよぎる。
  誰も疑問には答えてくれない。
  翠星石も、真紅も、他のみんなも渋面のまま黙り込んでいる。
  それじゃあやっぱり・・・。
 マ「・・・ん?」
  何か妙なことに気付く。みんな辛いのを我慢しているのではなく何かをこらえているような表情だ。
 翠「・・・ぷっ。」
  翠星石が吹き出した。
  それを皮切りにみんな笑い出す。
 雛「翠星石・・・わ、笑っちゃだめなのよー。」
  そう言っている雛苺の発言も笑いながらだ。
 金「で、でもこれは正直キツいかしらー、くくっ。」
  後ろを向いて顔を隠しているがあの真紅やジュン君、巴ちゃんまでもが明らかに笑っている。
 マ「何?何?なんなのさ。」
  わけも分からずに呆気に取られていると翠星石が口を開く。
 翠「やいニブチン、お前自分の胸のところを見てみやがれです。」
  促されるままに胸元に目を向ける。
 マ「うわっ!!」
  そこで驚くべきものを目の当たりにした。
  へばりついた蒼星石が安らかな顔で眠っていたのだ。
 翠「蒼星石ときたら、目が覚めるまで自分が力を分け続けるんだ、ってずっとそうしてたんですよ。」
 真「点滴もしてるし、元に戻ったらもう効果は無いはずと言っても聞かなかったのだわ。」
 の「そうそう、自分が看病するんだって言い続けちゃって。」
 み「看病疲れでそこで寝ちゃったみたいね。」
 金「そんなところにそんな風にひっついてるのにあんな必死な顔して『蒼星石はどこ!?』って・・・ぷぷっ。」
 マ「う、うるさいなあ!!」
 真「と、灯台下暗しというし笑ってはいけないのだわ・・・く・・・く。」
 マ「ちょ、ちょっと・・・疲れてお休みのところ悪いけどさ、蒼星石も早く起きて!」
  総出で馬鹿にされてしまい、慌てて蒼星石を起こす。
 蒼「あっ!!マスター目が覚めて・・・良かった!気がついてくれたんだね!!」
  蒼星石が今にも泣き出しそうな表情をしつつ顔を胸にこすり付けてくる。
 マ「おかげさまでね。でもさ、ほら・・・」
  なんだか温かくて気持ちいいのと同時に恥ずかしさと戸惑いを覚えつつみんなの方を指差す。
 蒼「・・・って、みんな何を見てるのさ!!」
  自分達が注目の的になっていることに気付いた蒼星石も真っ赤になる。
 の「照れなくてもいいのよ。とっても仲良しさんで素敵ねー。」
 真「無理も無いわ。感動の再会って奴だものね。」
 翠「まったく妬けちゃいますよ。」
 雛「蒼星石ったら甘えんぼさんみたいなのー。」
 蒼「う、うるさいなあ!!」
 金「リアクションまでそっくり同じかしら。」
  金糸雀がけらけら笑う。
 み「カナったら笑っちゃ駄目よ。仲良しさんでいいじゃない。」
  みっちゃんさん、あなたもどう見ても笑っておられます。
 の「じゃあ私たちは気を利かせて二人っきりにさせて上げましょ。」
 雛「はーい、二人だけで仲良しさんなのね。」
 蒼「気、気を利かせるってどういう意味ですか!」
 金「むふふふ、お邪魔虫は退散するかしら♪」
 翠「今回は翠星石も我慢してやります。でも蒼星石への感謝は忘れるなですよ。
   お前が眠りこけている間の着替えやら体拭きやらは蒼星石が一人で全部やったんですからね。」
 真「まあやらせようとしなかったという方が正しい気もするけどね。」
 蒼「余計な事は黙っててよ!」
 み「はーい、余計な事を言わないように失礼するわね。それじゃあお二人さん、ごゆっくりね。」
  みんなが部屋から居なくなり、シーンと静まり返る。
  しばらくして蒼星石が再び体を密着させてきた。
 蒼「マスター・・・本当に良かったよ。もう目が覚めないかと心配しちゃった。」
  蒼星石をぎゅっと抱き締める。
 マ「本当にありがとう、きっと蒼星石の献身的で手厚い看護のおかげだよ。」
 蒼「もう・・・マスターまでからかうの?」
  蒼星石が顔をしかめ、ムッとした表情でこちらを見てきた。
 マ「え、いやそういう意味じゃなく純粋に感謝して・・・」
 蒼「ひどいなあ・・・そんな悪いお口はふさいじゃうんだから。」
 マ「ええ?」
  言葉通り蒼星石の口で自分の口がふさがれる。
  今この瞬間だけは蒼星石と一つになれている気がした。