闇の中で静かに鞄が開いた。
  中からそっと蒼星石が現れる。
 蒼「あ・・・マスター起きてたんだ。」
  窓辺に座って夜空を見上げていたマスターが蒼星石の方を向いた。
 マ「蒼星石も起きたんだね。」
  蒼星石がこくりとうなずく。
  マスターが再び星空に目を戻す。
 蒼「どうしたの?」
  いつもとは違う憂いを帯びた表情にそう問いかけた。
 マ「ちょっと・・・寂しくなっちゃってね。」
  今度は天を仰いだままで言った。
 蒼「何かあったの?」
  蒼星石もマスターの隣に腰を下ろした。
 マ「さっき寝ようとしてたらさ、昔のことを思い出したんだ。」
 蒼「昔のことって?」
 マ「一緒に過ごした人達との思い出、一緒に遊んだりおしゃべりしたりの楽しい時間、とかかな。」
  マスターの言うのがどんな思い出なのかは蒼星石には分からない。
  しかしマスターが懐かしさに微笑んだのが分かったので少しだけほっとした。
 マ「・・・だけどね、気付いたらそんな風に楽しい時間を共有した人達とも疎遠になっていた。
   進学なんかで環境が変わったり、日々の雑事に忙殺されたり、いつの間にか連絡も取り合わなくなっていた。
   ・・・今ではもう連絡を取りたくっても取れない。関係が失われてしまったんだなあ、って。」
  さっきの笑いが一瞬で消え失せてしまう。
 蒼「でもそれは仕方が無いんじゃないのかな。別れはいつか訪れる・・・その代わりに新しい出会いもあるんだし。」
  蒼星石の慰めを聞いたマスターがうつむいて何やら考え込む。
 蒼「だからさ、元気を出してよ。」
 マ「ありがとう。でも思ってしまうんだ、もしも自分がちょっと暇な時にメール一通でもいいから連絡を入れてたらって。
   ひょっとしたらそんな些細な事でもやっていれば、細々とでもやり取りするくらいの関係は残せていたかもしれない。」
  マスターが隣の蒼星石をぎゅっと抱き締める。
 マ「怖いんだ。ひょっとしたらまた同じような過ちを繰り返して・・・気付いたら蒼星石まで失ってるんじゃないかって。」
 蒼「マスターの不安は分かる気がする。契約で僕らの心が繋がってるからかな?」
 マ「うん不安なんだ。蒼星石とずっと離れたくない、別れたくない、って。本当に一つになれたらどんなにいいか・・・!」
  そう言ったマスターの声が震える。
 蒼「じゃあさ、今夜は一緒に寝ようか。」
 マ「・・・いいの?」
 蒼「マスターがそんなんじゃ僕も困るからね。」
  マスターの腕の中で蒼星石が微笑んだ。
 マ「ありがとう。」
  マスターの顔にも笑顔が戻った。
  そして蒼星石を手放すまいと抱き締めたままで布団に入る。
  しばらくするとマスターは安らかな表情で寝息を立て始めた。