前回


 蒼「桜花さんが男!?」
 マ「ああ、たぶんね。」
 真「なぜそう思うのかしら?」
 翠「同好の士の嗅覚ですか?」
 マ「別に趣味じゃない!・・・さっき翠星石が言ってくれたような事をさ、桜花さんにも言われたんだ。」
 ジ「どういうことですか?」
 マ「蒼星石と金糸雀も一緒に居たからもしかしたら覚えてるかもしれないね。
   手当てしながら僕か蒼星石もエリザベスみたいにズタズタにされてたかもって感じの事を言ってたよね。」
 金「そんな事もあったわね。」
 蒼「うん、確かに言ってた。」
 マ「でもさ、さっきのりちゃんが言ってたように刃物の事は知らないはずなんだ。」
 蒼「あ!」
 金「・・・?」
 マ「つまりあの時点で刃物の存在を知っていたのは僕と蒼星石、みっちゃんさんと金糸雀、後は犯人だけだったって事さ。」
 み「でもストーカーに悩まされていたんならつい恐怖で想像が巡っちゃったのかもしれないわよ。」
 マ「その可能性もあると思います。ですが、初日にお風呂場で、女装を解いた桜花さんらしき人に会ったんです。」
 翠「なんで今まで黙っていたんですか!」
 マ「気付かなかったんだよ。髪形も違う上に眼鏡も外していたからね。近視のせいもあってか向こうも無反応だったし。
   すれ違った時に何か引っかかったけどこんな事でもなかったら多分ずっと気付かずじまいだった。」
 ジ「じゃあ襲ってきたストーカーってのは・・・」
 マ「たぶん桜花さんの変装だね。本当に桜花さんが女装してるのを確認できればまずそれで決まりだと思う。」
 の「どうやって確かめるんですか?」
 マ「話の流れでさりげなく接近して不意打ちでウィッグを取っちゃう。乱暴だけどそれが一番だと思う。」
 翠「そんな風に決め付けてかかって本当に女だったらどうするんですか?」
 マ「間違っていたらごめんなさい、でいいんです。」
 蒼「本当になんか乱暴だなあ・・・。」


  そんな訳で昨夜はいかに素早くかつさり気なくウィッグを外せるかの練習にも励んだ。
  最初はみっちゃんさんにやってもらったら長い髪のためかウィッグが浮き気味でいまいち練習にならなかった。
  次にのりちゃんにやってもらったら雰囲気がなんか襲ってるみたいだと蒼星石から駄目出しがあった。
  仕方無しにジュン君に頼んだら翠星石が変態くさいと文句を・・・いやこんな事を考えている場合ではない。
  とにかく練習の甲斐もあって首尾よくウィッグをゲットできたわけだ。
 梅「みなさん、すみません・・・」
  そこまで考えていたらちょうど黙り込んでいた桜花さんが口を開く。
 梅「女装して騙すような事をして。ですが、私がやったんじゃありません。」
 み「じゃあなんで女装なんてしたんですか?」
 梅「それは・・・この会に参加はしたかったんですが皆さん女性だと気後れして。
   それに男で人形好きだと奇異の目で見られて輪にも入りづらそうで・・・苦肉の策だったんです。」
  なるほどそう来たか。確かに下手にバレバレの嘘で取り繕うよりはそう認めてしまったほうがいいだろう。
  実際その気持ちは同じ境遇の人間としては分かってしまったりもする。
  逆に言えばその言い訳も想定の範囲内な訳だが。
 マ「ではストーカーの件は?」
 梅「それも・・・本当なんです。」
 マ「私を襲ったのがあなた・・・桜花さんのストーカーと同一人物のように言ってましたよね?」
 梅「はい、それも含めて本当なんです。同一人物だろうというのも嘘じゃありません。
   ただ、男が男につきまとわれていると言っても理解されずに警察も本腰を入れてくれないんです。」
  桜花さんもなかなかしたたかだ。
 み「本当にあなたの自作自演じゃなかったって言うんですか?」
 梅「違います!もしもストーカーじゃなければ・・・」
  そこで黒崎さんの方に視線を送る。
 黒「じょ、冗談じゃない!私はあの日宿に篭もりきりだったんだ。それにあの時間は白崎さんと打ち合わせをしていたんだ!」
 マ「確かなんですか?」
 白「ええ、確かにそうですね。その時間のアリバイって奴なら私が保証しますよ♪」
  場にそぐわない陽気な答えが返ってきた。明らかにこの状況を楽しんでいる。
 マ「そうですか。では・・・桜花さんの方は?」
 梅「ええと、その時間は・・・一人で部屋にいましたから・・・」
  要するにアリバイは無いという事だ。
  図らずも自分の首を絞めるような形になる。
 梅「で、でも!黒崎さんはナイフを持っているし・・・」
 マ「そのナイフですよ。のりちゃんは皆に事情を説明するときに私が殴られたと伝えて刃物の事は言っていません。
   彼女はナイフを持っていたことすら知らなかったそうなので勘違いはありえません。」
  一瞬言葉に詰まる。
  反論が来る前に二の句を継ぐ。
 マ「それにですね、あのナイフは昨日の物と違うんです。昨日の奴は私が捨てられているのを偶然発見しました。」
 梅「え!?」
 マ「変装用の服やサングラス、マスクといったものと一緒に紙袋に入れて人目のつかないところに捨てられていたんです。
   見つからないようにしたかったんでしょうけど・・・確認してみたところどれも犯人が使ったものと同じでした。」
 山「じゃあやっぱりあなたが・・・」
 梅「私じゃありません!そもそも青木さんの行動だって変じゃないですか。
   ナイフや服装を冷静に確認していたり、襲われたばかりだというのにあんな人気の無い森で偶然にも紙袋を見つけたり。
   あなたこそ襲った人間とグルなんじゃないですか?そうでもなきゃとてもじゃないですが怖くてあんなところ行けませんよ。」
 マ「あなたの言う事はまったくごもっともだと思います。確かに不自然ですが、真実です。」
 梅「そんなの不自然を通り越して出来すぎてますよ。」
  桜花さんが反撃を試みる。
 マ「桜花さんの言う通りです。・・・紙袋は確かに森で見つかりました。
   ですが、何故あなたは紙袋があったのが森だったと知っていたんですか?
   私はそんな事を言っていません。知っていたのは拾った者、そして・・・捨てた人間だけです。
   あなたはそのどっちなんでしょうか?」
 梅「あ・・・うう・・・。」
  桜花さんの顔に後悔と、一種の諦めの色が浮かんだ。