前回


  蒼星石とともに部屋へ戻ってきた。
 マ「あの・・・みなさんすみませんでした。」
 蒼「勝手に飛び出たりしてごめんなさい。」
  さっき話したように二人揃って頭を下げる。
 真「その分だと頭は冷えたようね。」
 マ「うん。自分が何から何まで出来るものとでも思っちゃってたみたいだ。
   僕は僕にしかなれない。出来ない事も多いけどそれが僕なんだ。」
 真「ふふっ、そうね。」
 み「でも元気になってくれたようで本当に良かったわ。」
 の「みんな心配してたんですよ。ねっ、翠星石ちゃん。」
 翠「そうですね。まあ元気になったのは何よりです。でもまださっきの言葉を撤回する気はありませんからね。」
 蒼「翠星石、いい加減に・・・!」
  自分をかばおうとしてくれる蒼星石を手で制止する。
 マ「まあ頑張りはするさ。大事な妹を預けてるんだもんね、なるべく心配かけないようにするよ。」
 雛「ところでその紙袋はなんなのー?」
 マ「これ?」
 金「お土産かしらー?」
 蒼「違うよ。まあちょっと・・・落し物を拾ったんだ。」
  詳しい事は話してくれなかったが蒼星石が露天風呂付近の森で拾ったそうだ。
 み「中身は?」
 マ「まだ見てません。」
 み「確認しておいた方がいいわよ。後々トラブルにつながりかねないし。ついでにデジカメで記録もしておきましょう。」
 マ「そうですね、何が入っていたかをはっきりさせておきましょう。」
  みっちゃんさんの助言に従い紙袋を開ける。
 の「あら、服みたいですね。」
 み「ほとんど新品じゃない。」
 マ「なんか・・・見覚えがあるような・・・。」
 金「そう言われればカナにもあるわ。」
 蒼「あ、あれじゃないかな?一緒に出かけた時にマスターが気に入ってた奴。」
  ちゃんと広げて確かめてみる。
 マ「あー、確かにあのお店で見たのと同じだね。」
 金「あ、あら?カナ達はそんなところ行ってないかしら。」
 翠「お前の勘違いですよ。名前に違わぬトリ頭ですね。」
 金「ひ、ひどいかしら!カナだってそれくらい覚えられるんだから!」
  他に入っていた物も順次取り出す。
 マ「これってあのマネキンが着てた奴じゃないかな?」
 蒼「多分そうだと思う。」
 マ「ということは今日のお昼頃に買ったって人のか。」
 蒼「その可能性が高いね。」
 マ「!?」
  取り出していた手が止まる。
 蒼「どうしたの?」
 マ「これは・・・とんでもない物を拾っちゃったみたいだよ。」
 蒼「え!何々?」
 み「何が入っていたの?」
 マ「そしてどうやら、金糸雀のも勘違いではなかったみたいだ。」
 金「どういうことかしら?」
  服の下に隠されるように入っていたものを取り出す。
 マ「サングラス・・・マスク・・・」
 み「それって・・・」
 金「さっきの犯人のかしら!?」
 マ「そしてナイフまで・・・三拍子揃えばたぶん間違いないだろうね。」
  親指と人差し指でつまんだナイフにみんなの視線が突き刺さる。
 蒼「確かに・・・そのナイフだった。」
 み「じゃあこれを買ったのがその犯人って事?」
 翠「ちょ・・・ちょっと待つです!」
 マ「どうしたの?」
 翠「ナ、ナイフを持った野郎に襲われたですか?」
 蒼「そうだよ。」
 翠「なんでとっとと逃げなかったですか!!」
 マ「逃げたさ。逃げ損なったけど。」
 翠「何を淡々と言ってやがるですか!ものすごく危険な目に遭ったんですよ?」
 マ「そうだね、蒼星石だけでもなんとか逃がすべきだったよ。」
 翠「違います!お前だって下手したら今回の人形達みたいに恐ろしい目に遭わされてたんですよ?」
 マ「え・・・?」
  翠星石の言葉に何か引っかかりを感じた。
 翠「まったく・・・へなちょこ人間はへなちょこ人間らしくとっとと蒼星石に助けてもらえば良かったんです!」
 マ「・・・あのさ、翠星石は今までナイフの事は知らなかったんだよね?」
 翠「へ?ええ、まあ。」
 の「あの・・・ごめんなさい、私が勘違いして伝えてしまったんです。
   私が行った時には犯人はもう逃げていたし、顔の怪我でてっきり犯人は殴りかかってきたものかと・・・。」
 マ「じゃあみんなに説明したのも・・・」
 の「そうです、同じ様に。どうしよう、本当はもっと警戒しならなきゃいけなかったのに・・・。」
 マ「・・・・・・・・・。」
 翠「お、怒ったですか?しゃあねえです、さっきは知らなかったからついカッとなったです。」
 の「あの・・・翠星石ちゃんのことは許してあげてください、私のせいなんです。」
  おぼろげながら何かが見えてくる。
 マ「・・・ジュン君、人形の修理はもう終わったんだよね。何か変わったところは無かった?」
 翠「こら、へそ曲げて無視しやがるなです。」
 の「翠星石ちゃんが言い過ぎたのは私が・・・」
 マ「え?ああその事なら全然気にしてないよ。だって言われた通りじゃない。
   相手がナイフ持ってようが拳銃を持ってようが大事な子を守れなきゃ駄目だもんね。」
  振り返って簡単に答えると再びジュン君の方を向いて答えを促す。
 ジ「変わったところ・・・ありました。」
 マ「それってさ、もしかすると・・・」
  自分の考えが正しいとしたらきっとこうであるはずだ。
 ジ「え、ええ、その通りです。」
 マ「じゃあ・・・やっぱりそうなのか?」
 蒼「マスター、一体どういう事なの?」
 真「あなたの考えついた事、私達にも聞かせて頂戴。」
 マ「確かにみんなにも聞いてもらって穴が無いか確かめた方がいいな。あのね・・・」




 マ「・・・という訳じゃないかと思うんだけど。」
 雛「よく分からないけどなんかすごいのー!」
 金「く、くんくんもびっくりの裏があったのね!」
 み「ふむ、とりあえずそうだったのなら今までの事が結びつきそうな気もするわね。」
 の「でも・・・本当にそんな事が?」
 マ「さあ?まったくの思い違いかもしれない。」
 真「私は特に異論は無いわ。」
 蒼「確かに考えにくいけど、それでも他よりは可能性は高い気がする。」
 翠「そうと決まったら即行動に移すですよ!」
 マ「何をする気?」
 翠「言うまでもありません、しばき倒してやります!」
 ジ「相変わらず過激な奴だな。」
 マ「それは駄目だよ。」
 翠「なんでですか!犯人をみすみす放置しておけというですか?」
 マ「その犯人という証拠が無いんだよ。」
 翠「え、でもさっきの推理では・・・。」
 マ「一見したら筋は通ってそうかもね。でもそれはただの推測。悪く言えばただの荒唐無稽な妄想だからね。」
 翠「でも他には考えられませんよ。」
 マ「ストーカーがこの旅行までつきまとってきた。たまたま旅館内の人間に異常者が居た。どっちでも説明はつくよね?」
 翠「だったら翠星石達が夢の中に入って・・・」
 マ「それもペケ。もしもさっきの推理が正しいのならこれはれっきとした犯罪も関わってる可能性が高い。
   警察に夢で白状してましたなんて通報できないでしょ?」
 真「物的証拠を確保する必要があるって事ね。」
 翠「じゃあお前はどうするつもりなんですか!」
 マ「証拠が無くて判断できないんなら本人に話してもらえばいい。」
 翠「犯人に聞いたって言うわきゃねえです。」
 マ「普通に聞いたらね。」
 雛「うゆ・・・ゴーモン?」
 ジ「お前までさらっと恐ろしい事を言うな。」
 真「つまり罠にかけるのね?」
 マ「そういう事になるね。一番いいのは犯人にまた犯行に及んでもらう事なんだけど・・・」
 み「囮を使うって訳ね。」
 マ「はい。」
 翠「す、翠星石は嫌ですよ!」
 マ「大丈夫、僕の考えが正しいとしたら翠星石じゃ囮にはならない。」
 翠「その言い方もなんか癪に障りますね。」
 金「じゃ、じゃあプリティなカナ?」
 雛「キュートなヒナなのかもしれないのー?」
 マ「いや、違う。もしも僕が思った通りなら候補者は一人しかいない。」
 の「誰なんですか?」
 マ「それは・・・」
  そこで言い淀んでしまう。
 真「・・・・・・。」
  真紅は何も言わずこちらを見守っている。既にそれが誰なのか気付いているのかもしれない。
 マ「それは・・・・・・」
  一同が固唾を呑んで次の言葉を待っているが、なかなかその名前を口にする事が出来ない。。
 蒼「僕だね。」
  また言いにくい事を言わせてしまった。
 翠「な、なんで蒼星石が狙われなきゃならないんですか!違いますよね?」
  翠星石がこちらに聞いてくる。
 マ「いや、蒼星石だ。他に適任者はいない。」
 翠「何を馬鹿な・・・お前は蒼星石が心配じゃねえんですか!?」
 マ「・・・心配だよ。自分の事みたいに、ううん、ひょっとしたらそれ以上に怖くて決心がつかないんだ。」
 蒼「僕やるよ!」
 翠「蒼星石!?」
 蒼「翠星石、君はさっき犯人をとっちめてやろうって言ったよね。僕も同じ気持ちだよ。
   だから犯人を突き止めるために僕がやれるだけの事はやりたいんだ。」
 翠「蒼星石・・・。」
 マ「ありがとう。・・・じゃあさ、どうかみんなにも協力して欲しいんだ。
   可能な限り確実に犯人をはっきりさせるために、そして蒼星石にも、他の誰にもこれ以上危害が及ばないように。」
 翠「翠星石が断るわけがありませんよ。」
 真「私も犯人を許しはしないのだわ。」
 雛「ヒナだってそうなのー!」
 金「どうやらカナの頭脳が必要とされる場面のようね♪」
 み「もちろん協力するわよ。なんでも言ってちょうだいよ!」
 ジ「何も役に立たないかもしれないけど・・・乗りかかった船ですしね。人形をあんな風にしたのはひどいと思うし。」
 の「出来る範囲でならいくらでもお手伝いしますよ。」
 マ「みんな、本当にありがとう。じゃあ早速ですが作戦会議と行きましょうか。」
  そして遅くまで話し合いと打ち合わせが続いたのだった。




  ―――そして今、目の前には予想通りの人物がナイフを手に立っている。
  ここまでは大体考えていた通りに事が進んでいる。
  だがまだ半分にも達していない。
  失敗の無いようにいったん落ち着いて考えを整理した。