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  蒼々たる森の中、蒼星石と水銀燈が対峙している。
 蒼「ふうん、奇遇だね。君とこんなところで『偶然』会うなんてね。」
 銀「ちょっと湯治に来たのよぉ。」
 蒼「だから?」
 銀「カリカリしちゃってまあ怖いこと、カルピスでも飲んだらぁ?」
 蒼「・・・どういうつもりだい?」
 銀「カルシウムと同時に乳酸菌も摂れてお得よぉ♪」
 蒼「違う!何が目的で姿を現した?」
 銀「ひどいわぁ、妹を見つけたから遊びに来ただけなのに。傷ついちゃう。」
 蒼「いいだろう。遊びとやらに付き合ってあげるよ。」
  蒼星石がそっと差し上げた手に鋏が現れる。
 銀「いいわぁ、ちょっとだけ遊びましょ。でも大丈夫なのかしら、あなた一人で。」
 蒼「君も構えなくていいのかい?随分と余裕のおしゃべりが続くじゃないか。」
 銀「ふふふ、とは言っても翠星石達の気配は無いし、あなたのマスターさんもそれどころじゃないものね。
   だーれもあなたを助けには来ない・・・かわいそぉ。」
 蒼「うるさい黙れ!」
  そう叫ぶなり蒼星石が飛び掛った。



  先程から蒼星石は庭師の鋏で鋭い斬撃を繰り出し続けている。
 蒼「でやぁぁっ!・・・はぁっ!!」
 銀「ふふふ・・・怖い怖い。何があったのか知らないけれど鬼気迫るって感じぃ。」
 蒼「くっ、なぜ手を出さない?」
  水銀燈は蒼星石の攻撃をのらりくらりとかわすだけで何故か反撃はしてこない。
 銀「私と契約した人間がさっき湯治のし過ぎでのぼせてダウンしちゃったのぉ。だから念のため力は使いたくないってワケ。」
 蒼「・・・そういうことかい。すまなかったね。」
  それを聞いた蒼星石が攻撃の手を止め鋏を下ろす。
 銀「なーんて、まあ媒介の力なんて使わずとも単純なあなた位なら余裕・・・」
  刹那、膨れ上がった黒い翼が蒼星石を捉えた。
 蒼「!?しまっ・・・」
  すんでのところで翼が止まる。
 銀「・・・なんだけどぉ、あなたのマスターさんに介抱してもらっちゃってるから見逃しといてあげるわぁ。」
  攻撃の意思を持たない翼が元の大きさに戻る。
 蒼「君の・・・マスターをかい?」
  蒼星石の脳裏に水銀燈と契約した少女の姿が浮かぶ。
 蒼「あっ!」
 銀「ふふふ、じゃあこれでお遊びは終わり。また会いましょう。その時は・・・」
  水銀燈が空へと舞い上がる。
 蒼「待て、聞きたいことがある!」
 銀「やぁよ、私はあなた達と仲良しごっこで馴れ合う気はないのぉ。さようなら、おばかさぁん。」
 蒼「・・・・・・。」
  水銀燈が消えたのを見届けつつこれまでの状況を整理する。
 蒼「そっか、さっき浴場で見た女性は水銀燈の・・・」
  そして脇の藪へと目をやる。
 蒼「そうだ、ここに来た誰かを驚かしちゃったんだっけ。何か落としたみたいだけど後でマスターに届けてもらおうかな。」
  藪の中、音がした辺りを捜索する。やがて紙の手提げ袋が落ちているのを発見した。



 マ「あのー大丈夫?」
 め「ふう、なんとか・・・。」
 マ「じゃあ後は脱衣所で休んでもらうって事でいいかな?」
 め「別に平気よ。どうせ放っとかれるのは慣れてるわ。」
 マ「またそういう言い方をする。そう言われたら放っておけないじゃん。」
 銀「私が見ててあげるから平気よぉ。」
 マ「あ、戻ってきたんだ。勝手にどっか行っちゃうなんてひどいよ。」
 銀「ふん、私にも私の事情ってものがあるのよぉ。」
 め「ごめんね水銀燈、また迷惑かけちゃって。」
 銀「別にあんたのためじゃないわぁ。これも私がアリスになるためよ。
   アリスゲームが起こった時、その時まであんたには生きていてもらわなきゃならない、それだけよぉ。」
 マ「なんだかんだ言って面倒見が良いんだね。」
  水銀燈に睨まれてしまった。
 銀「くだらない!・・・でも自分と同じ境遇に陥りかねない存在と思うと見てられなかったのかもね。」
  めぐちゃんには届かぬような小声でそう答えてくれた。
 マ「じゃあ後は任せたよ。」
 銀「お待ちなさい、ここの戸を開けてってちょうだい。」
 マ「脱衣所!?見つかったら変質者扱いじゃない!」
 銀「あなたなら事情を説明すれば済むでしょ。私が見つかったらアウトじゃない。」
 め「私は・・・正直まだふらついてうまく立てなくて・・・。」
 マ「はいはい分かったよ。ノックしてもーしもし。」
  反応が無い。どうやら今は誰もいないようだ。
  一気にガラッと開ける。
 マ「ほら、急いで入って!」
 め「どうも・・・。」
 銀「じゃあねぇ、おばかさぁん。」
 マ「ひどい言い草だなあ。」
 銀「ふふふっ・・・おばかさん同士でせいぜい仲良くおやりなさぁい。」
  めぐが水銀燈に助けられて中に入っていった。
  今度は急いでガラス戸を閉める。
 マ「やれやれ・・・。」
  ようやく解放されて一息つく。
 蒼「マスター!!」
 マ「あ、蒼星石。・・・ひょっとして遅くなったからまた心配かけちゃったのかな?だったらごめんね。」
 蒼「マスター、さっきの事で真剣に話がしたいんだ。」
 マ「さっきの事?」
 蒼「そばに居ても迷惑でしかない、って・・・あれは本気なの?」
 マ「それは・・・」
 蒼「それは?」
 マ「それは・・・えーと、このままだと寒いからさ、服を着てからでいいかな?」
 蒼「あ、そうだね。タオル一枚じゃ寒いよね。ごめん焦っちゃって・・・。」
 マ「それに蒼星石相手とはいえ恥ずかしいしね。まあ気にしないで。」
  一旦中を見て誰もいないことを確認し、それから二人して脱衣所に入った。