「…そういえばさ、何で俺たちについて来たいの?」
僕たち四人が会場に向かっている最中、思い出したようにマスターが雪華綺晶に訊いた。
雪華綺晶はその問いに、含みのある言い方で答える。
「…私が行きたいのは、『とうや』『はこだて』『おたる』『さっぽろ』――それに『のぼりべつ』『とまり』を加えた六ヶ所です。
 …この六ヶ所に覚えはありませんか?」
「…どこも今回行く場所だな」
曖昧に答えるマスター。
「そうです。貴方の学校の校長はなぜこの六ヶ所を日程に入れたのでしょうか」
あくまで簡単に真相を語ろうとしない雪華綺晶。
「…有名なところだからじゃないのか?」
いまいち分からないと言った風な顔で答えたマスター。
すると雪華綺晶は一度咳払いをした後、突然長広舌を振るいだした。
「確かに『とうや』『はこだて』『おたる』『さっぽろ』『のぼりべつ』は北海道の中でも有名な土地です。…調べたらそう書いてありました。
 …ですが、『とまり』はどうです?原発はありますが、逆に言えばそれ以外なにもありません。普通に考えれば、
 ここを無理に日程に入れる必要はないはずです。なのに、実際には組み込まれている。なぜか分かりますか?」
…雪華綺晶、なんかくんくんみたいなしゃべり方だなぁ…
「…言われて見ると、分からねぇな…」
マスターはそんな雪華綺晶の問いに、渋面をつくって答える。
…すると雪華綺晶は、妙な事を言った。
「私には分かります。…なぜなら、貴方の学校の校長は――恐らく、私と同じだからです」
「なんてこった、まさか校長がローゼンメイデンシリーズのドールだったとは…」
「ちがぁぁぁぁぁぁぁぁあああああう!!!!」
まあ、違うよね…
「え、違った?じゃあ霊体か幻なのか?」
「…マスター、さすがの僕でもそれはないと思うよ…」
突拍子もないマスターの答えに、頭を抱える雪華綺晶。
「言い方が悪かったんでしょうか…そうですね、じゃあ真紅や水銀燈…いや、私たちドールズ全員と同じだと言えばわかりますか?」
「…やっぱり校長はローゼンメイデン第八ドールだったのか…」
だからちがうって…
「ちがうって言ってるでしょぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!??だいたいにおいてローゼンメイデンシリーズは第七ドールまでしかいません!!」
二度同じことを言ったマスターを、雪華綺晶は声を張り上げて否定する。
「そっか、また間違えた。よく間違えます」
わけの分からないことを言うマスター。
このままだと話が終わらないので、僕は自分の推理を言ってみることにした。
「…あの、もしかしたらだけどさ…雪華綺晶が言いたいのは、『マスターの学校の校長先生もくんくんが好き』ってことじゃないかな」
…あってる自信はないけど、少なくともマスターの説よりは近いと思う。
「そのとぉーりっ。さすがお姉様!この人にできない事を平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥッ!」
「い、いやぁ、僕はそんな…ってお姉様?」
「あら、貴方は第四ドール、私は第七ドールですよ。お姉様じゃないですか」
まあ、確かにそうなんだけど…
真紅とか雛苺からそんな風に呼ばれたことないからなぁ…
「は………発想の方向性が……………違った……………………」
…なんか打ちひしがれているマスター。まさかあれであってると思ってたんだろうか…
「昔取った杵柄ってやつだねぇ」
突然、さっきまで黙っていた『白崎』が僕に言った。
「昔取った杵柄?」
「ほら、ドラマCDで…」
「ああ…」
多分、真紅の家に遊びに行ってたときのことだろう。
あの時は六人で、どこかへ消えてしまったジュンくんの家のくんくんを探したのだった。
…まあ、別に僕が見つけたわけじゃなくて、僕が推理したのは『なぜカラスはくんくんを連れて行ったのか』だけだけど。
そういえば、あの時は水銀燈に悪いことしたなぁ…
そんなことを考えていると、突然、さっきまで打ちひしがれていたマスターが話し出した。
「ドラマCDっていやぁさ、トロイメントのドラマCDでラプラスが……」
「わーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!」
…『白崎』がやけに焦っている…何?
「…ラプラスがどうしたの?」
「…何かやったんですか?」
状況がよく分からない僕たちはマスターに詳しく教えてもらおうとするが、『白崎』が必死にそれを邪魔してくる。…何をやったんだろう…
「うん、まあ…『何かやった』っていうよりは『何かヤった』だけども…」
…………………本当に何をやったんだろう………………………………………
「そ、それよりも、彼の学校の校長がくんくんが好きでどうしたって?」
何気なく話をそらす『白崎』。……よっぽど知られたくないんだろうか………
「は、はい…ですから、貴方の学校の校長はくんくんが好きなのです」
「うん、それさっき聞いた」
容赦なく言い放つマスター。…冷ややかな声なのは、やっぱりSだからだろうか。
「え?す、すみません…えーっと、どこからでしたっけ?」
ああ、こういうことってあるよね…
「いや、だから俺の学校の校長がくんくんが好きなのと、修学旅行の日程に『とまり』が入ってることとの関係だよ」
普通の口調に戻って説明するマスター。
こちらもさっきまでのもったいぶる口調に戻して、雪華綺晶が話し始める。
「あ、はい、そうでしたね。…それは、今日ここで特別に公演されるショーのことを考えれば分かります」
「『名探偵くんくん・海底王国の罠~Submarin Konigreich Schlinge~』か?でもそれと何の関係が……つっ!まさか…」
何かに気付いたらしいマスター。…僕にはさっぱり分からないや…
「…そうです、『とうや』『はこだて』『おたる』『さっぽろ』『とまり』でもくんくんショーが行われるのです。それも違う内容の」
…修学旅行をそんなに私物化していいんだろうか…
それを聞いたマスターは、納得しつつも至極もっともな質問をした。
「それを見るためにこの日程を組んだってわけか…でもさ、それだったら俺たちについて来なくてもnのフィールドを使えばよかったんじゃないのか?」
「普通ならばそれでいいでしょう。しかし、今回は普通ではないのです」
嘯く雪華綺晶。
「なにがだよ」
「どうも今回、校長が乗るバスの車内で、校長のためにオリジナルのくんくんショーが行われるらしいのです」
…えぇ~~……?
「…あのおっさんは…」
マスターも呆れているらしい。くんくんが好きなのは分かるけど、生徒のための修学旅行を…
「そこで、私たちもできるだけ自然に同乗して、くんくんの活躍を見ようという作戦なのです」
なぜか自慢げに言う雪華綺晶に、マスターは皮肉っぽく言う。
「悪いな、俺と同じバスだ。俺一組だから」
しかし、雪華綺晶はまったく気にしていないらい。
「ええ、別にかまいませんよ…くんくんの活躍が見れるならどうでも…」
「…ほ、本当に好きなんだな…」
半ば呆れたような、半ば引いたような表情でマスターが呟いた。
「当然です。くんくんは私の全て…彼に関係するものは全て見聞きし、触り、手に入れなければ気がすみません…!」
す、すごいな…僕もくんくんが好きだけど、ここまでの覚悟はない。
「こ…こいつは!こいつは!こいつはやばいッ!コレクター性!異常性において真紅以上だあーーッ!!」
「ええ、くんくんの素敵さは異常ですね」
ま、まったく話がかみ合ってない…

そうこうしているうちに、僕たちは会場に着いた。

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