蒼「年越しそばできたよ。」
 マ「いやー、今年も残すところあとわずかですなあ。おかげさまでいい一年が過ごせました。」
 蒼「いえいえ、こちらこそ。ところでさ、なんで二人分のおそばを一つの丼にまとめろなんて言ったの?」
 マ「もちろん一杯のかけそばのごとく蒼星石と分かち合い、互いに食べさせあいながら年を越したいからさ♪」
 蒼「そんなしち面倒くさい。」
 マ「まあまあ、のびる前に食べましょうよ。さあ、おいでおいで。」
  蒼星石を膝に乗っけてしっかと抱き締める。
 蒼「マスターは一年の最後の最後まで相変わらずだったねえ。
   もうすぐ始まる除夜の鐘にしっかりと耳を傾けることをお勧めするよ。」
 マ「それはどういう意味かな?」
 蒼「除夜の鐘の由来は知ってるよね?」
 マ「うむ、わしの煩悩は百八式まであるぞ」
 蒼「そう、マスターはもう少し、いや、かなり入念に煩悩を払ったほうがいいよ。」
 マ「うわぁ、きっついお言葉。・・・じゃあさ、音がよーく聞こえるように蒼星石に耳掃除してほしいな♪」
 蒼「なんで?」
 マ「いやいや、今年最後の大掃除って事でさ。」
 蒼「だからなんで僕が。自分でやればいいじゃない。」
 マ「こういうのは人にやってもらうのが格別に気持ちいいんじゃない。」
 蒼「だからそういうところがね・・・ほら、もう鐘が鳴り始めたからしっかりと聞いてよ。」

    ゴーン・・・

 マ「うむ、心に染みとおるような、どこか洗い流されるような・・・。」
 蒼「わびさびを感じさせる音だね。」
 マ「・・・蒼星石ごめんね。」
 蒼「突然どうしたの?」
 マ「いやさっきああ言われた事もあって自省してみたんだけどさ。、
   考えてみれば一つの器での食事を女性に強要するなど破廉恥の極みだった。申し訳ない。」
 蒼「別に今更そんなところで遠慮する必要も無いでしょ。」

    ゴーン・・・

 マ「・・・・・・・・・。」
  無言で蒼星石を膝から降ろす。
 蒼「どうしたの?」
 マ「ごめんよ、蒼星石が逆らえないような立場なのをいい事に好き放題してきて。
   無理矢理にこんなセクハラまがいの振る舞いを続けてたんだなんて自分が恥ずかしい。」
 蒼「別に逆らえないから従っていた訳じゃないよ?」

    ゴーン・・・

  鐘はまだまだ鳴り続ける。
 マ「ありがとう、蒼星石。でもね、そういった蒼星石の優しさに甘え続けてきた自分が許せないんだ。」
 蒼「そんな急に極端に変えなくても。」
 マ「いや、やはり分別をつけるところはわきまえていなければいけなかったんだ。
   そうだな、これからはきちんと蒼星石専用のスペースも確保して互いに干渉し過ぎないようにして・・・」
 蒼「ちょっと、マスターってば本気で言ってるの!?」
 マ「ごめんね、今まで蒼星石の意思をないがしろにしてきて。これからはプライベートには立ち入らないように気をつけるよ。
   蒼星石が一人の時間も持てるように変にまとわりついたりもしないから。」
 蒼「一人の時間って?そりゃあ確かに僕は他人とのうまく距離が取り方がよく分からないし、
   いっその事一人でいた方が楽に感じることもあるけれど・・・」
 マ「やっぱり付きまとわれて迷惑だと思われていたんだね。本当に悪かった、もう二度としないよ。」
 蒼「それも本気で・・・言ってるの?」
 マ「もちろん。ようやく真の心にめぐり会い申した。無頼の月日今は悔ゆるのみ。
   今日ただいまより契約の礼をとらせて頂きたく…。」
 蒼「違うよ!さっき言ったように自分からはうまく表せないけれどけど、マスターのことは大好きだし、
   本当はもっとマスターを近くに感じたい時もあるんだ。
   だけど、そんな時でもどうしていいか分からないから、その・・・いつもみたいに構ってくれる事は嬉しいんだ。」
 マ「蒼星石は本当にそれでいいの?」
 蒼「う、うん。どちらかと言えばそっちのほうがずっといい。」
 マ「・・・・・・・・・うおおぉぉぉーーー!!そんなの遠慮する必要ないのに!好きな様に甘えてくれてもいいのに!!
   蒼星石可愛いぞ!可愛いぞ!!可愛い過ぎるぞぉぉぉぉーーーーッ!!!」
  目の前で縮こまっていた蒼星石をがしっと抱き締めると猛烈な勢いで頬擦りをかました。
 蒼「ちょっと、さっきまでの殊勝過ぎるくらいの態度はなんだったのさ!」
 マ「かわいいかわいい蒼星石を見てたら消えたはずの煩悩が再び燃え上がってきちゃった。」
 蒼「もしかしなくてもからかってたでしょ!!」
 マ「はっはっは、燃え盛る太陽が百八発の水鉄砲ごときで消えるわけが無かろうなのだぁーーッ!
   さあ、おそばが冷めないうちにお互いふーふーしあって食べましょ♪」
 蒼「・・・やっぱり、マスターは除夜の鐘をもっとしっかりと聞くべきだったね。」
 マ「えー、まだそんなことを言うの?」
 蒼「じゃあ早くおそばを食べようか。食べ終わったら除夜の鐘がよく聞こえるように耳掃除してあげるから。」
 マ「え、いいの!?わーい、蒼星石大好きだー!!」
 蒼「まったく、本当に困った人なんだから。」
 マ「お、気づいたら日付が変わってた。蒼星石、あけましておめでとう。今年もよろしくね。」
 蒼「あけましておめでとうございます、マスター。今年も、そしてこれからもずっとよろしくお願いします。」



                         おわり