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   自室にて。   

   チーーン

   鼻をかみ、使い終えたティッシュをゴミ箱に・・・
   傍らにチラシで作られた紙製簡易ゴミ箱に気付く。
   蒼星石が作ったものだ。折り方はマツさんから教わったらしい。
   俺はそこにティッシュを投げ入れた。
マ:「・・・・。」
   うーむ。


   さる数時間前にて
マ:「蒼星石、何作ってんだ?」
   蒼星石が数多の牛乳パックを床に広げて何やら作業をしている。
蒼:「んーとね、牛乳パックが必要な分だけ揃ったから、座椅子作りに挑戦してるんだ。」
マ:「座椅子?」
   牛乳パックで座椅子となっ?
蒼:「うん、この前テレビで作り方をやってたからメモしておいたんだ。
   牛乳パックに被せるカバーももう作ったんだよ。ほら。」
   蒼星石は嬉しそうにカバーを手にして俺に見せた。
蒼:「テレビだと寸法しか書いてなかったんだけど、自分で底の方を紐で絞れるように改良したんだ。」
   それとキルティングのカバー布にはくんくんの刺繍がされてあった。
   毎度ながら器用なことだ。感心する。
マ:「ほう・・。」
   俺は布を手に取り感嘆の声を漏らした。
蒼:「♪」
   蒼星石はにこやかに牛乳パックを座椅子型に組み立てる作業に戻った。


   現在、自室にて
   チラシで作ったゴミ箱といい、牛乳パックで作った座椅子といい、普通なら捨ててしまうものを
   役立つ何かに仕立て直すというのは誠にけっこうなことだ。
   古きよき日本の文化である『ものを大切にするという精神』というものを蒼星石は如実に体現している。
   おそらくそれは柴崎夫婦からの影響もあろうが。
   しかしだ・・・。
マ:「俺ってそんな甲斐性ねぇかなぁ?」
   自室のイスに背もたれながら俺は呟いた。
   わざわざ手間隙かけて座椅子とか作り出さんでもなぁ・・。
   イスなどいくらでも買ってやるぞ。・・そういう問題でもねぇか。
   ・・考え過ぎかなぁ・・・。
   ふと、壁に掛かった小物入れ用のラックが目に入った。それも蒼星石のお手製だ。
マ:「・・・・。」

   コンコンコン

   ノックの音が。
マ:「どうぞ。」
蒼:「マスター、見て。座椅子出来たよ!」
マ:「お。」
   まごうことなき座椅子だ。中身は牛乳パックだが。
   蒼星石は座椅子を床に置くと、その上にちょこんと座ってみせた。
蒼:「どう?」
   か、かわいい・・・。
マ:「うん、よくできてるな。」
蒼:「マスターも座ってみて。」
マ:「俺が?」
   大丈夫かいな。大人の体重を支えきれるもんなのか甚だ不安だ。
マ:「俺が乗ったら潰れちまわないか?」
蒼:「大丈夫だよ。思ったより頑丈にできてるんだから。」
   蒼星石は座椅子から降り、俺に座るよう促した。
マ:「ううむ。」
   潰してしまったら洒落にならんし、座るの拒んだら蒼星石の気を悪くするし。
   俺はドギマギと座椅子の前に立つと、ゆっくりと座ってみた。
マ:「・・・・。」
蒼:「マスター、不自然だよ。ちゃんと腰掛けてる?」
マ:「あ、ああ。」
   俺は嘘をついた。本当は空気イスのように座椅子に体重を掛けないようにしてる。
蒼:「じー。」
マ:「凄いね。ビクともしないよ。ははは。」
   微動だにできん。
蒼:「もう、ちゃんと座ってよ。」
   と、蒼星石が俺の膝によじ登ってきた。
マ:「お、おい。」
   そしてそのまま俺の膝の上に座る蒼星石。
蒼:「ほら、僕が一緒に乗っても大丈夫でしょ?」
   膝の上で蒼星石は俺をたしなめるように言った。
   空気イス、見抜かれてたか。
   そして事実、座椅子はしっかりと俺と蒼星石二人分の重みを支えていた。
マ:「本当だ。なんともない。」
蒼:「ねっ。」   
   ほんとよくできてるもんだな。たかが牛乳パックと侮っていた。
蒼:「ふふ。」
   蒼星石はご満悦の表情だった。
   なんだか堪らず愛おしくなってなって俺は、蒼星石を後ろから抱きしめた。
   そしてそのまま、お互い身じろぎもせず幾ばくかの時間が過ぎた。
蒼:「・・・・。」
マ:「・・・・。」
蒼:「さ、そろそろ夕飯の支度しなくちゃ。」
   腕をはなすと、蒼星石は膝から降りた。
   そして部屋を出てく間際、
蒼:「あの、ご飯食べたら・・・またその座椅子使って、一緒にテレビでも見よ?」
マ:「ああ、わかった。」
蒼:「約束だよ。」
   そう言って蒼星石はそそくさと台所の方に向かっていった。


                                     終わり