『作戦草稿』 作成者(蒼星石とお話したいんだぜカンパニー社長)
 懸命な諸君らはすでにローゼンメイデンオーベルテューレを視聴しただろう。そして蒼星石への処遇に憤ったことだろう。私もその一人である。
 本来、蒼星石とお話したいんジャー(以下  レンジャー)は蒼星石の死亡フラグ回避への誘導を旨とする任務を受け持ってきた。今回の事態は死亡フラグ自体は立たないものの、蒼星石の立場を著しく侵害することに間違いは無いだろう。
 一度解散したものをもう一度組み立てることが不恰好だということは百も承知である。しかし、社長として、いや一人の蒼星石ジャンキーとしてこの事態を放っておくわけにはいかない。諸君らも同意見だということを私は願っている。
 前置きが長くなった。特例的措置として、レンジャーを再結集する。目的は『侵害された蒼星石の立場復権』。および『中心人物の特定、撃破』。
 諸君らの健闘を祈っている。
 
 
――蒼星石とお話したいんジャー オーベルテューレ

蒼「クリスマスだね」
カズキ「ああ。去年までは実家で年末を過ごせるだなんて思ってなかったよ」
蒼「それまでは……どうだったの?」
カズキ「ずっと孤児院生活だったからさ。皆で祝うんだ。孤児院の先生がサンタの役をしてさ。それはそれで楽しかったけど、やっぱり家族でクリスマスを祝うってのに憧れてたんだ」
蒼「今は……幸せ?」
カズキ「……幸せ。また父さんと母さんに会えたし、蒼星石も助けられた。だから……たぶん、幸せ」
蒼「……」
マツ「蒼星石ちゃーん。翠星石ちゃんが来たわよー」
翠「メリークリスマスですぅ蒼星石! ……なんでお前までいるんですか!」
カズキ「ここは俺の実家ですが」
蒼「メリークリスマス、翠星石。今日のパーティ、楽しみだね」
翠「のりが腕を振るいにふるってご馳走を作るらしいですぅ。ほら、おじじもおばばもくるんでしょう?」
マツ「行ってもいいのかい?」
元治「こりゃあ楽しみだ」
カズキ「……」
翠「……お前は来るなですぅ」
カズキ「お兄さん悲しくなってきた」
蒼「翠星石!」
翠「冗談ですよ! こっちだってお前には感謝してるんです。やっぱり全員揃ってないと、パーティだって楽しくなかったでしょうし!」
カズキ「よかった。孤独クリスマス再開かと思った」
翠「感謝するですよ、人間。ちなみにあいつら二人も呼んでいいですからね!」
カズキ「ははは、あいつら鼻血出して喜ぶぞ」
蒼「あはは」
翠「きったねーですぅ」

ビーッ! ビーッ

翠「な、なんですか……」
蒼「か、カズキくん。今のは……?」
カズキ「すまん、俺の無線だ……。 !!」
蒼「どうかしたの?」
カズキ「エマージェンシーコード1だと……? いったい何が……」

ピッ

カズキ「こちらレッド……いや、違った。柴崎カズキ。応答願う、どうぞ」
?「レッドでいいぞ、カズキ隊員」
カズキ「その声は……社長?」
社長「そのとおりだ。コードは受け取ったな? 至急会社にきて欲しい。有無はいわせん」
カズキ「ちょっと、社長……!」

ブツッ

カズキ「くそっ、切れた……」
蒼「カズキくん……?」
翠「なんだか物々しい雰囲気でしたが……どうかしたのですか?」
カズキ「……今すぐ会社に行かなきゃいけないらしい。ちくしょう、今日は休日だろうが……!」
翠「なんだか分かりませんが、すぐ行ってくるですよ」
カズキ「すまん、行ってくる!」
マツ「おや、出勤かい?」
カズキ「ごめん、母さん。すぐ戻るからさ」
元治「カズキの会社も大変なんだなあ。私の家業を継がないかい」
カズキ「考えとくよ。じゃあ、行ってくる」

ピカーーーーーーッ

蒼「カズキくん!」
カズキ「……どうした?」
蒼「パーティ……来れるよね?」
カズキ「……ああ。約束するよ」

ピカーーーーーーッ

翠「クリスマス出勤だなんて、あいつは金糸雀のミーディアムより大変ですね」
蒼「……(カズキくん……)」


カズキ「(なんで社長は……俺をレッドと呼んだんだ……? まさか……いや、違う……)」


――社長室

ブルー「遅い」
イエロー「なにしてたのさ」
カズキ「お前ら……なんで揃ってんだよ(しかもスーツ姿で……)」
ブルー「はあ? お前、見てないのか?」
カズキ「なにを」
イエロー「オーベルテューレだよ。まさか、本当に見てないの?」
カズキ「オーベル……いや、見てないな」
ブルー「お、お前……アホか? アホなのか?」
イエロー「修行中の僕も見てたのに……」
カズキ「アニメ側の世界にいたからどっちにしても見れなかったよ……オーベルテューレ、なんかあったのか?」
社長「それは私が説明しよう……その前に、スーツを着たまえ、カズキ隊員……いや、マスターレッド」
カズキ「社長……!」
ブルー「社長、お久しぶりです」
イエロー「全隊員、集結しました」
社長「うむ。よく来てくれた。……レッド。オーベルテューレを録画したものがある。視聴覚室で見てきなさい。ついでに着替えてくるように」
カズキ「……分かりました」

――一時間後

レッド「……こんなことって……」
ブルー「集まった理由、分かるな?」
イエロー「すぐに対応しなくてはいけないんだ。レッド」
社長「作戦報告書だ、読め」
レッド「…………『侵害された蒼星石の立場復権』。および『侵害の中心人物特定、撃破』……」
社長「今回の任務だ。行ってくれるな……?」
レッド「中心人物とは……?」
社長「分からない。しかし……裏で糸を引いていることには間違いない」
ブルー「エマージェンシーコード1。最優先事項だ。いま何が起こっているか知ってるか?」
レッド「……いや」
イエロー「この動画を見て」

携帯『蒼星石を倒せ! 水銀燈を切った蒼星石を倒せ! 殺戮せよ!』

レッド「これは……!」
イエロー「僕がこっそり撮ってきたものだよ。水銀党の決起集会の様子さ」
社長「このことを知ったのは私もついさっきだ。オーベルテューレの世界を改変しないと、蒼星石にも甚大な危害が及ぶ。これで事態が急を要することが分かっただろう」
ブルー「すぐにでも出発する。レッド、nのフィールドにダイブするぞ」
レッド「分かった……!」
社長「水銀党の攻撃も大いに考えられる。場合によってはこちらも援軍を寄越す。注意してかかれ」
レッド・ブルー・イエロー「すべては、蒼星石のために!」


――nのフィールド

レッド「俺たちは何も知らなかったんだな」
ブルー「ああ。過去のことには全く目を向けていなかった」
イエロー「あと5分でオーベルテューレの時空流域へと到達。始めは……前編の世界か」
レッド「腕ならしにはちょうどいいな。……うおっ!」
ブルー「どうしたレッド!」
レッド「なんだ、これ……糸?」
イエロー「糸……ほんとうだ。四本ある」
ブルー「なんだってnのフィールドに糸なんかが?」
レッド「分からん。……この糸、それぞれ枝分かれして扉に続いてるぞ」
イエロー「そこ、ちょうど前編の世界へと続く扉だよ」
レッド「いったいどうなってるんだ。最後にnのフィールドに来たときにはこんなのなかった」
ブルー「分からない。だけど、かえって目印になって好都合だな」
レッド「よし、行くぞ!」
ブルー・イエロー「おう!」

ガチャッ

ガキンッ! カキィンッ!

蒼「レンピカ!」

ピカーッ

真「くうっ!」
蒼「はあああああっ!」

バゴォォオン

真「……ふふ、庭師の鋏をそこまで使いこなせるなんて、すごいわ」

レッド「ここは……」
ブルー「冒頭の蒼星石と真紅の戦闘シーンだな。ここは建物の中らしい」
イエロー「(糸が見えなくなった……)」

真「蒼星石、でよかったかしら」
蒼「そうだ、僕は……」
真「ふふ、レディなのに自分のことを『僕』だなんて……誰の趣味かしら」
蒼「!!」

レッド「プチッ」
ブルー「ビキビキ」
イエロー「……あの、二人とも?」

蒼「君を、たおs」

ズッガアアアアアアアアン

レッド・ブルー「そこがいいんだろうがああああああああああ!!!!!」
イエロー「ふ、二人ともーーーーっ!(や、屋根を突き破った!)」
真「な、なんなの!」
蒼「( ゚д゚)ポカーン」
レッド「おいこらてめぇ真紅ぅ……いま僕ッ娘を馬鹿にしたな……?」
ブルー「万死に値するぞ……」
真「だ、だれなのあなたたちは!」
レッド「我々はローゼンメイデン第四ドール、蒼星石の守護者!」
レッド・ブルー・イエロー「蒼星石とお話したいんジャー!」
イエロー「(決めポーズには間に合った……よかった)」
真「そ、蒼星石! あなたこんな人たちとつるんでいたの!?」
蒼「いや、僕は何も知らないよ!」
レッド「あ、蒼星石さん。未来ではお世話になりまして」
ブルー「柴崎邸をぶっ壊してすいませんでした」
イエロー「あ、僕はやってないよ。勘違いしないでねこの二人がやったんだよ」
蒼「あ、あなたたちはなんなのさあ!」
レッド「いずれ分かるよ。それよりも……」
真「な、なにかしら」
ブルー「忘れたとは言わせない……」
レッド「お前は僕ッ娘を馬鹿にした……」
イエロー「(この二人は、なんでそこまでこだわりが……)」
レッド「誰の趣味かって? ……分からないのか?」
レッド・ブルー「てめぇーの親父の趣味だろうがああああああああああ!!!!」
真「!」
蒼「!」
レッド「ふはは、いいのか? いいのか? お前はいま『お父様』を馬鹿にしたんだぜ?」
真「あ、ああ……」
ブルー「俺たちはいつでもローゼンに会えるんだ。……現代のローゼンはレッドがぶっ殺しちゃったけどな」
蒼「お、お父様をぶっ殺したって……!」
イエロー「あ、大丈夫。すべて丸く収まってるから」
蒼「そ、そうなんですか……」
真「お、お父様に会えるのがなんだというの?」
レッド「ほう、そこまで君は抜けていたのか……」
ブルー「ふっふっふっふ……」
レッド・ブルー「ローゼンに言いつけちゃおっかなあ……『お父様の趣味を馬鹿にした』って言いつけちゃおっかなあ……」
真「!!! い、いや……!」
レッド「い~ってやろ~いってやろ~」
ブルー「ロ~ゼンにいってやろ~」
真「い、いやあ! や、やめてえ! 言わないで!」
イエロー「(うわ……超陰険……小学生かよ……)」
蒼「(なんだかよくわからないけど、擁護してもらってる……?)」
レッド「お父様が怒っちゃったらもうアリスになれないかもね~」
ブルー「むしろ『ジャンク』にされちゃうかもね~」
真「だ、駄目! それは駄目! お願いだから言わないで!」
レッド「どうしますかブルー殿。そこのお嬢さんはそう言っておりますが」
ブルー「難儀ですねえレッド殿。私見といたしましては『然るべき処置をとってもらう』というのが妥当だと思うのですが……」
真「な、なんでもするのだわ! だから……!」
レッド・ブルー「じゃあ謝れ」
真「!」
レッド「きちんと謝ればローゼンの趣味を馬鹿にしたことは胸にとどめておこう。しかしな、蒼星石は少なからず傷ついたと思うんだよな」
ブルー「そうだよな?」
蒼「……まあ、少しは」
真「あ、謝ればいいのね? それでお父様には言いつけないのね?」
レッド「心をこめて謝れば、な」
真「そ、蒼星石。ご、ごめんなさいなのだわ……反省しているのだわ……」
蒼「あ、いや。頭まで下げなくても……」
翠「蒼星石ぃ~!」
イエロー「あ、翠星石がきた」
レッド「じゃあ用事が済んだので俺たちはここで。あんまり喧嘩するなよ?」
蒼・真「は、はあ……」
ブルー「アディオス!」

ピカーーーーーッ

蒼「!!(人間なのに、nのフィールドを……!?)」
真「ああ、本当にあの人たちはお父様に言いつけないでいてくれるのかしら。心配なのだわ……」
蒼「(真紅とも、戦える状況じゃないな……)」
翠「はあ、はあ、蒼星石! ようやく姉妹が出会えたというのに戦うなんて……!」
真「ああ、心配なのだわ! 誓約書でも書かせればよかったのだわ!」
翠「……あの、蒼星石? 真紅はどうしちゃったのですか?」
蒼「たぶん、真紅は少しの間ああだと思うから……帰ろう、翠星石」
翠「あっ! 待つのですう蒼星石い!」

蒼「(どうして、赤い人と会ったときあったかい気持ちが流れ込んできたのだろう……)」


――nのフィールド

社長『そうか、よくやった。僕ッ娘を馬鹿にする奴は許せんな』
レッド「ええ、それで次は……」
社長『うむ、次は……ドカァァァアアアアアン』
イエロー「社長!?」
ブルー「いったいなにが……」
社長『いったいどうしたんだ、状況を報告しろ! ……うわなんだおまえくぁwせdrftgyふじこlp』
レッド「社長!!」
?『あ~あ~、聞こえるかお? レンジャーの諸君』
ブルー「貴様……、社長に何をした!」
?『社長? ああ、こいつね。ちょっと眠ってもらっただけだお』
イエロー「この声は……お前、ジャンクイエローか!」
ジャンク黄『正解だお。ちょっと待ってるお。おい、レッド! 代わるお!』
ジャンク赤『……久しぶりぃ蒼星石とお話したいんジャーの諸君……』
レッド「貴様……いったいなにを……!」
ジャンク赤『ああ、蒼星石とお話したいんだぜカンパニーを襲撃したのさ』
ブルー「てめえ……!」
ジャンク赤『熱くなるなよ。せっかくの青色が台無しだぜ? マスターブルー』
ブルー「くっ」
イエロー「襲撃した目的はなんだ!」
ジャンク赤『見せしめさ。蒼星石の捜索も兼ねてたんだが……さすがにこんなところにはいないか。お前らどこにいるか知ってるか? ……言うわけないよな。俺たちがどうして動いてるか知ってるんだろ?』
レッド「……お前らに蒼星石はやらせない……!」
ジャンク赤『オーケイオーケイ。お前らがいまいるところは大方nのフィールドだろう。よし、俺たちも行くぜ。首を洗って待ってな……それにしてもお前らの会社は妙だな。社長が会社にいて、社員が他にいないとはな……制圧も簡単だったぜ」
レッド「なに……?」
ブルー「(おい、俺たちが来たときにはたくさん居たよな?)」
イエロー「(そのとおりだよ。なんでみんないなくなったんだ……?)」
ジャンク赤『社員も全然居ないなんて可哀想な会社だな! あばよ!』

ブツッ

レッド「おい……おい! くそっ! 切れやがった!」
ブルー「社長は無事なのか? 眠らせただけとは言っていたが……」
イエロー「それよりも! 後編の世界に急がないと蒼星石がやられちゃうよ!」
レッド「よし、全速だ!」
ブルー・イエロー「おう!!」

水銀党に襲われることとなった蒼星石を助けることができるのか! 走れ! 蒼星石とお話したいんジャー!【後編へ続く】