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  ある日、真紅たちがやってきた。
 真「あなた、翠星石にお寿司を食べさせたそうね。」
 マ「うん、まあ。」
 真「じゃあその責任は取ってもらうのだわ。」
 マ「責任?まさか食べさせちゃいけなかったとか!?」
  傍らの蒼星石に不安げな視線を送ったところ、蒼星石も訳が分からず困っている様子だった。
 真「違うわ。・・・私たちにも食べさせなさい。」
 雛「翠星石だけずるいの~。」
 マ「だからなんでうちに来る!」
 真「簡単なことなのだわ。こんなことを頼めるのはあなたをおいて他にいないもの。」
 マ「そりゃあ、普通は断られるでしょうよ。それって体よく利用できそうってことでしょ?」
 真「・・・・・・まあ否定はしないわ。」
 マ「形だけでもちょっとは否定してよ!」
 翠「みみっちいこと言うなです。この間みたくサクッと連れてきやがればいいですぅ!」
 マ「駄目だよ。ただでさえみんな目を引く姿なのにそれで五人も連れ立ったらなおさら目立っちゃう。」
 金「なら目立たないようにすれば連れて行ってくれるのしらー?」
 マ「いや、それはまた別の問題という気も・・・。ところでさ、なぜ金糸雀までいるの?みっちゃんさんは社会人でしょ?」
 金「みっちゃんはカナたち用の服なんかを買い漁るから、とてもじゃないけどそんな贅沢はできないかしらー。」
  社会人なのに・・・もっと計画的に生きなくていいのだろうか。
 金「ただ、別方面での協力は惜しまないかしらー。」
  そう言って大きな紙袋を突き出す。
 マ「これは?」
 金「みっちゃんから借りた変装セットかしら。
   これを着ればあら不思議、まばゆく輝く薔薇乙女も一見地味なカワイイ子に大変身かしらー!」
  それを聞いて他の姉妹も色めき立つ。
  すでにこちらの話も聞かずに自分の着る服を入念に物色している。
  なにやらもうお寿司を食べに行く空気になってしまいつつある。
  ・・・みっちゃんさんも経済的な援助もなしに余計な後押しをしないで欲しい。
 金「そうそう、あとこれは個人的にご迷惑をかける上での手土産かしらー。」
  そんな中、金糸雀が先程より小さい紙袋を手渡してきた。
 マ「中身を見るよ?・・・これも服だね。」
 金「蒼星石用のセーラー服かしら。ぜひぜひ有効活用して欲しいかしらー。」
 マ「ふうん、確かに似合いそうだね。可愛いだろうなあ・・・。」
 蒼「ちょっとマスター、そんなもので釣られないでよ!」
 マ「でもいいの?高かったんじゃない?」
 金「もともとそれは蒼星石用にみっちゃんが買っておいたものだからノープロブレムかしらー。
   着せる機会もなさそうだから、どうせなら着てもらえれば幸いだそうかしら。」
 蒼「ぼ・・・僕は絶対に着ないからね!」
 マ「じゃあ頂いちゃおうかな。でも写真を撮るのはなしだからね。」
 金「カナは別に構わないかしらー。じゃあ今日はよろしくかしらー。」
 マ「あいよー。それじゃあみんなお着替えしてー。」
 蒼「すっかり乗せられちゃってるよマスター!」



  どうやらみんな着替え終わったようだ。そこで今回の最終確認を行う。
 マ「はーい、それじゃあ双子さんは僕の娘、残りの皆さんは外国人の友人のお子さんで、
   日本文化を体験するためにお寿司屋さんにやってきたという設定で行きます。」
 雛「なんだかめんどうくさいの~。」
 マ「いやまあ、子供で茶髪はまだしも金髪ってのはやっぱりね。」
  話していると腕をクイクイと引っ張られる。
 マ「あ・・・!」
  そちらに目をやると、引っ張っていたのは金糸雀だった。
 マ「髪・・・見事なまでの緑色だね。」
  これはいけない。流石に変な目で見られてしまうだろう。
 マ「ウィッグは用意していないのかな?」
 金「みっちゃんもそんなものは持っていないかしら・・・。」
 翠「お前は足手まといだからついて来るなです。これで解決ですね♪」
 金「そんなのひどいかしらー!カナもお寿司を食べたいかしらー!」
 マ「こら、お姉さんをいじめないの!あっ、一応なんとかなるかも。」
  以前に買ってあったある物を引っ張り出して取ってくる。
 マ「はい、これ。」
 金「これは・・・何かしら?」
 マ「くんくんなりきりセットのフード。これをすっぽりと被ってれば髪は隠れちゃうでしょ。」
 真「ちょっと、なんであなたがそんな高級品を持ってるの?」
 マ「蒼星石に買ってきたんだけど・・・使ってくれなかった・・・。」
 蒼「だって、なんか恥ずかしくて・・・ごめんなさい、せっかく買ってくれたのに。」
 金「確かに・・・これで出歩くのは少し恥ずかしくないかしら?」
  金糸雀は被ったフードを脱ごうとしてしまう。
 マ「そっかあ、くんくんみたいにすっごい知的に見えたのになあ・・・。じゃあ他の手を考えるか。
   本当に残念だなあ・・・孔明さえもビックリドッキリの策士に見えたのに・・・。」
  その言葉に金糸雀が目を輝かせる。
 金「本当かしらー♪カナはこれでいいかしら。なんだか気に入っちゃったかしら!」
 翠「・・・ほんっと扱いやすいやつですね。恥ずいから近寄るなですよ?」
  そう言って翠星石は金糸雀からやや距離をとってしまう。蒼星石もそれに倣った。
 真「翠星石、そんなことを言うものではないのだわ。・・・ねえ金糸雀、ちょっと近くで見てもいい?」
 雛「わーい、金糸雀ったらくんくんみたいなのー。」
 マ「うむ、見事なまでに設定通りに割れたな。」
  そもそもくんくんって知的に見えるか?という疑問は飲み込みつつ出かけることにした。



  何はともあれ前回の回転寿司屋へと到着。
  今日はボックス席がばっちり空いていた。
 マ「はーい、みんなお茶ー。あとお醤油ねー。」
 翠「さあみんな、遠慮せずにたらふく食べるですよ!」
 マ「あはははは、なんで翠星石が言うのかな。」
 蒼「マスター、本当に大丈夫?」
 マ「まあ、なんとか・・・なるでしょ・・・。」
  ボックス席の一番内側、お寿司を取るための場所は自分と蒼星石で抑えている。
  これなら無茶苦茶な取り方をされるのは防げるはず・・・。
 翠「なんか遠くて取りづらいですね・・・。おやじ、トロくれです!」
 真「あら、注文できるの?それなら私はイクラを頂こうかしら・・・。」
 金「まずは卵焼きかしら!」
 雛「うにゅー!」
  ちいぃっ!翠星石め余計な知恵をつけおってからに。
  しかも何で最初っからそんなものばっか頼むんだ。
  あと雛苺、なぜお寿司を食べたがっていたのにうにゅーを頼む。
  そんなもの注文しても何も・・・
 店「はい、お待ち!」
  ・・・ウニが来た。こうなると金糸雀の注文が可愛く思えてくる。
 蒼「みんな、せっかくの回転寿司だから今回はいろいろと回っているのを取って食べてみない?ね?」
  蒼星石が涙ぐましいフォローを試みてくれる。
  蒼星石のおかげでみんなとりあえず無茶苦茶な注文はやめてくれた。
  席を入れ替わり立ち代わりして回転寿司の醍醐味を味わう。
  そんな中、真紅が明らかにしなびたマグロを取ろうとする。
 マ「あ、それはもうずっと回って古くなった・・・。」
 真「・・・ホーリエ・・・。」
  ほのかな紅い光とともに皿の上のお寿司がみずみずしさを取り戻していく。
 マ「・・・便利だね。でも目立たないようにやってね。」
  なぜかは知らないがどっと疲れを感じた。
 真「ちょっとあなた。」
 マ「はい、なんでしょうか?」
 真「あのくんくんなりきりセットを使い終わったらいただけないかしら?」
 マ「好きにしてくださいな。使ってもらえた方が幸せだろうし。」
 真「そう、いい子ね。あなたも好きなものを食べてもいいわよ。」
 マ「だからなぜ真紅が言うのかな・・・。」
  もはや突っ込む気力までも尽き果ててしまった気がする。




 真「それじゃあ今日はご馳走様。」
 雛「ありがとうなのー!」
 金「とっても美味しかったかしらー!」
 翠「それじゃあこれでおさらばするですよ。」
  ようやく一同から解放される。
 蒼「マスター、今日はお疲れ様でした。」
  蒼星石がお茶を持ってきてくれる。
 マ「うん、なんだか本当に疲れきった・・・。」
  さっきまでの慌ただしさから解放されて、蒼星石との憩いのひと時を満喫する。
 マ「ふぅーっ、やっぱりこうして二人でのんびりしているほうが落ち着くなあ。」
 蒼「ごめんね、翠星石たちのわがままで迷惑をかけて。
   でもさ、マスターが変なものに釣られちゃうのもいけないんだよ。」
 マ「変なもの?・・・あっそうだ、金糸雀からもらった服を着て見せてよ。」
 蒼「い、や、だ。そんなの着ないからね。」
  にべも無く断られてしまう。
 マ「えー、せっかくだし一回だけでいいから着てよー。お願い、この通り!」
  必死で拝み倒す。
 蒼「そんな事したって聞かないよっ!」
 マ「そんな・・・きっと似合うのに・・・きっとものすごく可愛いのに・・・。」
 蒼「も、持ち上げたって無駄だよ。」
 マ「頼みます、ぜひ!疲れ果てた哀れな男に癒しと潤いを与えると思ってどうか一つ。」
 蒼「だ・・・だめったらだめっ!」
  気のせいか、少しずつだが蒼星石の態度が軟化してくる。
 マ「お慈悲を!」
  頭を床にこすり付けるようにして頼み込む。
 蒼「・・・そうまでして見たいの?」
 マ「見たい!!」
  一片の迷いもなく即答する。
 蒼「はあ・・・一度だけだからね。」
  きっと顔がぱあっと輝いていたことだろう。
 マ「ありがとう、本当にありがとう!!」
 蒼「でもマスターったらなんでそんな格好が見たいのさ。・・・ねえ、マスターはのりさんのことどう思う?」
 マ「へ?えーっと、そうだなあ、気立ては良くって裏表の無いいい子だけど・・・
   なんか本人も気づかないうちにトラブルの元になっていそうな気もするかな。」
  予想外の質問に要領を得ない答えをしてしまう。
  しかも落ち着いて考えるとちょっと失礼なことを言ってしまった気もする。
 蒼「そう・・・じゃあ巴ちゃんは?」
 マ「え、巴ちゃん?うーん、あまり積極的に自己主張はしないみたいだけどしっかり者だよね。
   あと本当になーんとなくのレベルだけど、どことなく蒼星石に似た感じのところがあるかな。」
 蒼「・・・そういうことなんだ。分かった、この服を着てくればいいんだね。」
  何が分かったのかは分からないが、蒼星石は隣の部屋に消えてしまった。
  着替え終わって出てくるまでの時間がたまらなく長く感じられる。
  あの薄い戸一枚のみを隔てた向こう側で蒼星石が着替えをしている。
  そう考えていたら幻聴なのか衣擦れの音が聞こえるような気がしてきた。
  見てみたい・・・。
  いや、やっぱりそんなことはしちゃいかんだろ。
  でも・・・見たい、うんすっごく見たい。
  さてさて、ここで取るべき行動は・・・。


A. 「アバカム!!」勢いに任せて中へと突入した。

B.  おばあちゃんは言ってた。「石の上にも三年、待てばワームのひよりあり」って。












  ・・・って、ここは悩むところじゃあないだろ。
  せっかく気の進まない蒼星石が着替えてくれると言ってくれたのに、その信頼を裏切ってどうするんだ。
  ここは蒼星石に軽蔑されたりしない、紳士たるマスターとして振舞わねば!
  変な気など起こさずにここでじっくりのんびり、そしてねっとり想像力を働かせつつ待っていよう。
  こんなもの覗かずともホレ、来たるべき蒼星石との対面の時を想像すれば・・・うっとり・・・。
  などとアホな一人相撲を取っていたら戸が開いた。
 蒼「マスター、この服でいいんだよね?」
  恥ずかしげに帽子を押さえながら蒼星石が出てきた。
 マ「うおおぉぉお!やっぱりすんごく似合ってるーー!!」
  蒼星石の清楚さを象徴するかのような純白の半袖と半ズボン。
  ちょこんと頭に乗っけられたやはり真っ白の帽子。
  セーラーカラー、袖、帽子の淵にそれぞれ入れられた蒼いライン。
  セーラーカラーからのぞく翠色のリボン。
 マ「いいなあ、いいなあ、最高だー!!」
 蒼「セーラー服だなんて言うから変な誤解しちゃったよ。」
 マ「変な誤解?ブルセラ好きとか?やめてよね。」
 蒼「あ、いや、なんでもないよ。えへへ・・・。」
 マ「でもやっぱ可愛いなあ。・・・私はカモメの水兵さん、まるで天女に会ったようでしたー。」
  すでに自分でも何を言っているのか分からないが気にしない。
 蒼「ま、まあ・・・マスターがそんなに喜んでくれるのならこれからも時々・・・って、マスター?」
 マ「あ、あ・・・ああーー、もう我慢できない。可愛いぞ、可愛いぞーー!!」
  異常な可愛さのあまり理性が吹っ飛んだのか、本能の赴くままに蒼星石をがっしりと抱き締める。
 蒼「うわぁぁーー、マスター暴走しないで!そんなに激しく頬ずりもしないで!」
 マ「なんて可愛いんだ、コンチクショー!!」
 蒼「もう・・・もうこんな服二度と着ないからね!」
 マ「そんなあ・・・。じゃあ今回で堪能しつくしてやるーー!!」
 蒼「だからぁ、落ち着いてってばーー。」
 真「あら、何をやってるのかしら?」
  背後から聞こえた真紅の冷静な声で我に返らされる。
 雛「蒼星石とマスターさん仲良しなの~。うらやましいの~。」
 金「早速あの服がお役に立ちまくりのようかしらー♪」
 翠「・・・・・・。」
  見るとさっき一緒に食事に行った面子が再びそこにいた。
  真紅は先程お土産に持たせたくんくんなりきりセットで早くも全身を固めている。
  あと、翠星石だけ無言のまま笑顔を作っているのがかえって怖い。
 マ「・・・みんなこそ今度は何を?」
  恥ずかしさを必死に隠しつつ当然の質問をする。
 真「あなたに回転寿司屋へ連れて行ってもらったとのりに言ったら、お返しに食事でも作ってあげればと・・・。」
 マ「いえ結構です。」
 蒼「・・・自覚の無いトラブルメーカー・・・なるほど。」
 真「あら、そんな風に遠慮することはないのだわ。
   あなたにはこのくんくんなりきりセットももらってしまったのだし、この真紅、通常の3倍腕によりをかけて・・・。」
 マ「お引取りください!!」
  もう絶対に回転寿司なんか食べに行くもんか、そう固く心に誓ったのであった。