C. 翠星石と二人で食べてきて


 蒼「でもそれじゃあマスターが。」
 マ「いい、いい。実家が魚介類豊富なところだからお寿司も食べなれてるし。
   二人ともお寿司食べたことがないんでしょ?ゆっくりと楽しんでおいで。」
 蒼「だけど、僕たちだけで大丈夫かな。」
 マ「大丈夫だよ。ちゃーんと後ろの待機席で見守ってるから。」
 蒼「マスターはどうするの?それじゃあお腹が減っちゃって・・・」
 マ「いいから、いいから。気にせずに二人水入らずで堪能してらっしゃいな。」
  蒼星石の言葉をさえぎって促す。
 翠「さ、蒼星石、ここはお言葉に従ってさっさと食べるですよ。」
 蒼「でも・・・。」
 マ「もたもたしてると後のお客さんも困るからね。早く行ってらっしゃい。」
 蒼「うん・・・。」
  気が進まないながらも、といった様子で翠星石と二人で席に着いた。
  はじめの内こそどこかぎこちなかったが、次第に勝手が分かってきたようだ。
  二人とも喜んでくれているようで、それを見ているだけでこちらも満たされた気分になる。



  食事を終えて帰宅すると速攻で翠星石は別れを告げる。
 翠「ふう、たらふく頂いたです。じゃあ帰るですよ。」
 マ「本当にただ単にお寿司をたかりに来ただけなのね・・・。まあさようならです。」
 蒼「じゃあね、翠星石。」
  ともあれ、これでやっと一仕事終わったという気がする。
  安心したらなんだか空腹感を覚えてきた。
 マ「さて、自分も簡単に何か食べるとするかな。」
 蒼「マスター、ちょっと待っていてもらえればお昼用の仕度で軽めに何か作るよ。」
 マ「それはありがたい、ぜひお願いしますよ。」
  しばらくして、食卓に蒼星石の用意してくれた料理が並ぶ。
 マ「それじゃあ、いただきます。」
 蒼「はい、どうぞ召し上がれ。・・・マスター、今日は本当にありがとうございました。」
  ご飯やお味噌汁を盛ってくれた蒼星石が正座しながら深々と頭を下げる。
 マ「どうしたのさ、そんなにあらたまっちゃって。」
 蒼「僕も翠星石もあんなに高いものをご馳走になっちゃって。それも僕たち二人だけで。」
 マ「ああ、別に気にしないで。こちらもそれで満足した気持ちになれたんだから。」
 蒼「そんな事を言われても・・・。」
 マ「それにいいんだよ。あんなの目じゃないご馳走をしょっちゅう食べてるんだしさ。」
  そう言ってお味噌汁を一口すする。
 マ「・・・やっぱり、蒼星石の手料理のほうがよっぽどご馳走だな。」
 蒼「ええっ!そ、そんなことは・・・。」
 マ「何より愛情がたっぷりだから・・・だったらいいなあ。」
  ふっと笑いが漏れる。
 蒼「た、たっぷりかは分からないけれど、僕が込められ限りのあ・・・愛情は入ってるはずだよ・・・。」
 マ「それはありがたいな。どんなにお金を積んでも食べられない料理をいただけるんだからね。
   こちらこそ本当にいつもありがとうございます。」
  さっき蒼星石がしたようにかしこまってお礼を言う。
 蒼「マスターにそんな風に頭を下げられちゃったら僕、困るよ。」
 マ「でも、何とかして感謝の気持ちを伝えたいしね。」
 蒼「えーと、それじゃあ・・・僕も・・・マスターに愛情を注いで欲しい・・・です。・・・・・・だめ?」
 マ「愛情か・・・深さと大きさには自信があるけれど、注ぎ方っていうとこんなことしか思い浮かばないな・・・。」
  蒼星石を無言で自分の方へと抱き寄せる。
 蒼「あっ・・・!」
 マ「あの、その・・・君が好きだ!きっと大切にするから、ずっとそばにいて自分を支えて欲しい。」
  なんとかそれだけ言葉にすると、蒼星石をぎゅっと抱きしめる。
 蒼「・・・・・・・・・。」
 マ「えへへ・・・これじゃ駄目だったかな?なんか最後はお願いになっちゃったし・・・。」
 蒼「これでいい・・・ううん、これがいい。お願いマスター、しばらくこのまま・・・。」
 マ「ありがとう・・・。」
  何よりも大切なものを失うまいと、両腕に強く力を込めた。