マ「ん、カラスか?にしちゃあでかいな。俺の部屋の窓から出てきたような…まぁ、気のせいだよな」

蒼「…僕がマスターを守らないと…!」
マ「ただいまー」
蒼「っ!お、お帰りなさいマスター」
―どうしよう。さっきのこと話したほうがいいのかな。でもマスターには余計な心配を掛けたくないし…
マ「どうしたんだ蒼星石。深刻な顔して。うん?これは…!」
―あれは!
蒼「あ、そっそれは…」
マ「まさかさっきのカラスか!」
蒼「へ?」
マ「いやな、帰ってくる途中に俺の部屋からでかいカラスが飛んでいくのが見えたんだ」
蒼「…ああそう!そうなんだ!
  掃除のために窓を開けておいたら突然カラスが入ってきちゃってね!大変だったんだよ!」
マ「そうかあ、そりゃ大変だったな。でも蒼星石が怪我してなくてよかったよ。
  んじゃ俺は羽を片付けるから蒼星石は晩御飯をお願いね」
蒼「あ、はい」
―そう言って僕は台所へ向かう。
 …嘘も方便と言うし、この方がマスターにとってもいいはずだ。
 この事は僕だけで解決すればいい。
                 ・
                 ・
                 ・
マ「今日の料理ちょっとしょっぱくないか」
蒼「え!?あ、ごめんなさい」
マ「あーそんな気にするな。美味しい事には変わりないんだからさ」
蒼「うん、ありがとう…」
                 ・
                 ・
                 ・
マ「まだ寝ないのか、もう十時過ぎだぞ。」
―もうそんな時間だったのか
蒼「あはは、くんくん探偵・ザ・ノベルに夢中になっちゃって。じゃあ僕はもう寝ますね」
―本を閉じ、ソファーから降りて鞄のある寝室へと向かう
マ「あのカラスまた来るかな」
―なんで今更そんな事を言うの?
蒼「もう来ないと思うよ。僕が懲らしめておいたから」
マ「いやあ、奴は結構しつこいぞ。たぶん仕返しに来るだろうな」
蒼「なんであのカラスのことをそんなに気にするんですか」
マ「気にしてるのは蒼星石だろう」
蒼「僕は別に気にしてなんか」
マ「これ、なーんだ」
―マスターが手に持っているのは銀色の髪の毛だった
蒼「あ…」
マ「羽を片付けてる時に拾ったんだ。何事も無かった様だからあえて聞かなかったけど
  蒼星石がそんな状態じゃ聞くなってほうが無理だよ」
蒼「黙ってて…御免なさい」
マ「別に責めてる訳じゃないよ。何があったのか話してくれるよな」
蒼「はい」
―寝室に行き、マスターがベッドに座る。僕もその隣に座って水銀燈が来た時のことを話した
マ「なるほど。つまり水銀燈は俺を人質にして蒼星石をおびき出すつもりだったんだな」
蒼「そうです」
マ「なんでそんな重要なことを黙ってたんだ?」
蒼「マスターを、巻き込みたくなかったんです」
マ「むこうが俺を標的にしてる以上それは無理だろう。第一その程度のことは契約した時点で覚悟してるさ」
蒼「でも…僕はマスターを失いたくない」
マ「俺も蒼星石を失いたくない」
―マスターは僕を膝の上に乗せて話を続けた
マ「だからさ、二人で協力していこう。俺が蒼星石に頼ってばかりじゃ悪いしさ」
蒼「迷惑じゃ、ないんですか?」
マ「迷惑なんかじゃないさ。むしろもっと頼って欲しい」
蒼「我侭を言っちゃうかもしれませんよ」
マ「ああ、好きなだけ言ってくれ。て言うか何でさっきから敬語なのかな?」
蒼「あ…それは…」
マ「お前さ、問題を抱えてるときに限って人を遠ざけようとしてるよな。それじゃあダメだぞー」
―なんでこの人はここまで僕のことを分かってくれるんだろう。嬉しいけどちょっと気になる
蒼「マスターはなんでそんな事まで分かるの?なんだか心を覗かれてるみたいで…あまりいい気分じゃない」
マ「あ…ごめん、配慮が足らなかったな。蒼星石は昔の俺とそっくりでさ、
  そのせいで考えてることが嫌でも分かっちゃうんだ」
蒼「僕とマスターが似てる?」
マ「そういう時期もあったんだよ」
蒼「じゃあ、僕もマスターみたいになれるかな」
マ「え!?うーん、なれるだろうけど、なって欲しいような、なって欲しくないような…」
蒼「クスッどっちなのさ」
マ「…いつもの顔になったな」
―マスターがいつもの優しい笑顔でそう言って僕の顔を見つめる
蒼「いつもの…って、僕そんなにひどい顔してたの?」
マ「そりゃあもう、この世の終わりのような酷い顔だったぜ…ってのは冗談だけどな、
  ああいう顔を見せられるのは結構キツイからさ、これからは一人で抱えずに俺に相談してくれよ」
蒼「うん。心配かけてごめんなさい。それと心配してくれてありがとう」
マ「ん。じゃあ寝ようか。だいぶ遅くなっちゃったな」
―マスターが僕を膝から降ろそうとする。…まだはなれたくない…
蒼「あっあの!今日は…一緒に…寝たい…な」
―我侭言っても、いいんだよね
マ「鞄で寝なくても大丈夫なのか?」
蒼「一日くらいなら平気だよ」
マ「そうか。なら遠慮なく…」
―マスターが僕を抱っこしたまま布団に入る。…あったかい
マ「フフ…蒼星石の身体あったかい」
蒼「うん…僕もマスターが傍にいてくれるからあたたかい…。」
―今日はいい夢が見れそう
マ「おやすみ、蒼星石」
蒼「おやすみなさい、マスター」
―だいすきです…
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                 ・
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「蒼星石、寝ちゃった?」
腕の中の蒼星石は寝息も立てずに寝ている。まあ人形だから当然なんだが。
しかし脈も無いのはちょっと困る。すごく不安になる。
「まったくこの子は人を心配させるのも上手だから困る」
そういや水銀燈が俺を人質にするとか言ってたよな。一体どうやって?
普段は車通勤だし、家に居る時はほとんど蒼星石と一緒だし…
「…ひょっとしてからかわれた?」
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「どんな酷い顔をしてるか見に来てみれば…なぁにあれ。つまんなぁい。
 からかい損だわぁ。
 …めぐの歌でも聴いて気分を晴らしましょう…」

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最終更新:2006年09月23日 02:57