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  今日は翠星石と話し込んでいたためにお夕飯の準備が少し遅くなってしまった。
 蒼「マスターお待たせー、ご飯だよー。」
  しかし普段のように返事も無ければやってくる気配も無い。
 蒼「マスター?」
  様子を見に部屋に行く。
 蒼「マスター、ご飯できたよ。」
  しかし反応は無い。
   コン コン
  そっとノックしてみた。やはり反応が無い。
 蒼「マスター・・・中に入るよ。」
  そっとドアを開けて中の様子をうかがう。
  マスターがこちらに背を向けて机に座っている。
  ヘッドホンをしているところを見ると音楽でも聴いて夕食までの時間をつぶしていたのだろう。
 蒼「マ・ス・タ・ー、ご・は・ん・で・す・よ!」
  ドアのところからちょっと大きな声で呼んでみる。
  やはりなんの反応も無い。
  多少ためらいながらも無断で部屋に入る。
 蒼「ねえ、マスターったら・・・。」
  少しはなれたところから呼びかける。反応は・・・無かった・・・。
  もうちょっと近づいて手を触れればすぐに気づいてくれるのは分かっている。
  だけど・・・自分の声で振り向いてほしかった。
  手を伸ばせば届きそうな距離なのに自分の声が届かない、それだけのことが無性に切なかった。
  まるで・・・マスターにとって自分など存在していないかのようで・・・。
 蒼「マスター・・・こっち向いてくれないとご飯抜きにしちゃうよ?」
  うつむきながらそんなことを言ってもみたが、当然反応は無かった。
 蒼「マスターの心に僕の声が届かないようでさびしいよ・・・。マスターは僕の一番大事な・・・のに。」
  ぽつりと本音が漏れてしまう。
 マ「ほぉ、そりゃ光栄だ。翠星石のほうが大事なのかと思ってた。」
 蒼「す、翠星石とマスターはまた別の意味で・・・えっ!?」
  顔を上げるといつの間にやらヘッドホンをはずしたマスターがこちらに体を向けていた。
 マ「や、お迎えありがとう。どう別なの?」
 蒼「マ、マスター、ひょっとしてヘッドホンで何も聞いてなくて、今までの全部お芝居だったんじゃ・・・。」
 マ「いや、本当にちゃんと聞いてたよ。・・・で、どんな意味なのかな。」
  マスターがにこやかに意地の悪い質問をしてくる。
 蒼「そ、それは・・・その・・・ああぅ。・・・ほら!早くご飯を食べようよ。冷めちゃうよ!」
 マ「ねえ~、どんな意味~?」
 蒼「もう知らないっ!」
  結局その後もマスターの執拗な追及は続くのだった・・・。










 蒼「と、ところで・・・本当にさっきは何かを聞いていたんだよね?」
 マ「いや、本当に聞いていたんだって。それで無ければ蒼星石の声を聞き逃すわけ無いだろ。」
 蒼「ちぇっ、マスターこそ僕なんかより音楽の方が重要なんだね?ひどいなあ・・・。」
  しつこい追及をそらす思惑もあってか、珍しく蒼星石がすねたように不満を漏らす。
 マ「いや・・さっきのは・・・これを聞いていたから。」
  マスターが聞いていたCDを見せる。
  そこにはマスターの字でこう書かれていた。
   『蒼星石の声 ~日常編~ 』
 蒼「な、何を聞いてるのさ・・・!」
  蒼星石の顔が真っ赤に燃え上がる。
 マ「・・・まあ、そういうわけで、さすがにすぐには気づけなかった。」
  マスターも目をそらし、顔を赤らめつつ弁解する。
 蒼「もう・・そんなものじゃなくて僕自身の生の声を聞いてほしいよ。」
 マ「うん・・・ごめん・・・。寂しい思いをさせちゃって。」
  そう言ってマスターが蒼星石の頭を優しく撫でる。
 マ「もう君の声を聞き逃すようなことはしないから許してくれないかな。」
 蒼「うん、約束だからね、マスター。」
  二人が笑顔を交わす。
  そこには何の言葉も必要なかった。










 蒼「ところで・・・『日常編』ってあったけれど他には一体何編があるのかなあ?ねえ、マスター?」
  さっきまでの笑顔から一転して蒼星石が鋭い表情でマスターを問い詰める。
 マ「・・・・・・・・。さあ、冷める前にご飯だ!!」
  マスターがそしらぬ顔で颯爽と立ち上がり食卓へと向かう。
 蒼「ちょっと、なんで逃げるのさ!」
 マ「知~らない、知~らない!」
 蒼「ねえ、ちゃんと答えてよ!」
 マ「アーアー、聞こえなーい。」
  耳をふさぐとそのまま行ってしまう。
 蒼「マスターの嘘つき!」
 マ「アーアー、ごめんなさーい。」
 蒼「ほら!聞こえてるじゃない。」
 マ「アーアー、蒼星石の可愛さは異常ー。」
 蒼「な、そ・・そんなので、ご・・ごまかされないんだからね!」

  ・・・その後もしばらく二人の声が途絶えることはなかったとさ。