ある日の柴崎時計店。
今日もおじじは一人でせっせと時計を直しています。
「ふぅ…カズキが亡くなってからもう6年か…早いものだのう。マツは相変わらず寝たきりじゃし…これからどうしたものか…」
ふと時計を直す手を止めて、机の上を見ると、見慣れない紙が一枚置いてありました。

<まきますか? まきませんか?>

「ムッ? 何じゃこれは。変わった修理依頼書だのう。だがこの柴崎元治に直せぬゼンマイ時計などないわい」
おじじはそう言って、豪快に<まきます>にマルをつけました。

しばらくして…
コトンと店の隅で聞きなれない音がしました。
何だと思って見てみると、またしても見慣れない、アンティークな鞄がひとつ。

「今日は何やら不思議な依頼が多いのう…。どれ、見てみるか」
開けてみるとそこには、シックな蒼色を基調としたケープが印象的な、
男の子のようにも、女の子のようにも見える可愛らしいお人形と、ゼンマイらしきものが入っていました。

おじじはとりあえず、そのお人形をゼンマイでまいてみることにしました。

キリキリキリ…
すると、蒼いお人形の目がゆっくりと開きます。その両眼は左右違った輝きを持ち、とても綺麗でした。
「うぅん…。あなたが僕のゼンマイをまいてくれたんですか? 僕はローゼンメイデン第4ドール、蒼星石といいます」

おじじは感心しながら、言いました。
「ほほぉ、よくできたゼンマイ仕掛けのからくり時計じゃ。壊れているところはなさそうじゃが…。
どこが壊れているのか確認してみんとな。どれ、分解してみるかのう」
そう言うなり、おじじは蒼い子の服を脱がせはじめました。びっくりしたのは蒼い子。
「えっ!? な、何を………や、やだぁぁぁぁぁぁっ! レンピカぁぁぁっ!!」
ゴスッ!!
「おふっ!?」
「あっ……やっちゃった……」
蒼い子はどこから出したのか、思わず巨大な鋏で思いっきりおじじの頭をぶん殴ってしまいました。
おじじは目から星を出して、その場にどさりと崩れ落ちました。

………

「うぅむ…ここはどこじゃ…」
おじじは和室で目を覚まし、布団から起き上がりました。
「あっ、気が付きましたか? マスター…」
さっきの蒼い子が、枕元にちょこんと座っています。
殴ってしまった引け目もあるのか、いくぶんおずおずとした様子です。
ところがそんな蒼い子を見て、おじじはなぜか目を輝かせました。
「ハッ…か、カズキなのか? カズキ…帰ってきたんじゃな!? カズキィィィィィ!!!」
「えっ…? ま、マスター…??」

………

(アニメ1期8話、nのフィールドにて)
「蒼星石! 翠星石と一緒に帰るですぅ! なぜあのおじじに拘るですか!」
「僕は…マスターのそばに居てあげたいんだ…」
(…言えない……僕が殴ったせいで、マスターのボケが進行しちゃったからだなんて言えない…)


おしまい。