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朝起きると、
「あ、今頃お目覚めですか」
居間に翠星石がいた。
「お早うございます義姉さん。何でまたこんな朝早く?」
「蒼星石ー。人間が起きてきたですよー」
「はーい」
聞けよ。
「お早うマスター。直ぐご飯用意するから待ってて」
律儀にも、駆けてきて朝の御挨拶を俺にする蒼星石。
エプロン姿・・・今日もその可愛さは異常・・ッ・・・!
「う・・・ニヤニヤして気色悪いですぅ」
「そりゃあ蒼のあんな姿見たら笑みの一つも」
ありゃ・・俺は毎日ニヤけてるってことか。
「マスター、お茶碗並べるの手伝ってー」
と、横のテーブルに蒼星石が盆を運んできた。
翠星石も食べるのか、いつもより皿の数が一セット多い。


数分後。俺達は仲良くテーブルを囲むことになった。
「味噌汁うめぇwwwww」
「ちょ、唾飛ばすんじゃねえですぅ!」
「行儀悪いよマスター?」
二人に窘められる俺。
「義姉さん、済みません。あんまり蒼の料理が美味しくて」
「そんな・・・美味しいなんて・・(///)」
「蒼・・・」
「ますたぁ・・・」
ああ蒼星石可愛いよ蒼s

めきょ。

「ぐふっ」
「実の姉の前で妹をたぶらかすたぁ、度胸がありますねぇ。人間?」
いつの間にか翠星石の手には箸じゃなくて如雨露が握られていた。
というか俺にめり込んでますよ義姉さん。
「反省しました。以後気をつけます」
「判ればいいんですぅ。わ・か・れ・ば」
「はい」
ちぇ。
・・っと、そういえば、
「もう八時か・・カブト『あ、くんくんが始まる時間ですぅ!』」
リモコンを使って局を回す翠星石。
「うわぁぁん!八時が俺を呼んでます!」
「駄目ですぅ。今から翠星石がテレビを見るんですから」
抱える様にリモコンを俺から遠ざける。
「オゥマイッヒーロータイムッ!」
「幼稚ですねぇ」
「・・・ふぅ」
俺に呆れた様に蒼星石が席を立つ。
そのまま台所へと消え―
ない?
「えっと、お茶の葉お茶の葉・・・」
いつもは閉め切っている棚に手を伸ばす蒼星石。
「あっ、ちょっ、アッー!」
「え・・・?」
はらり、と封筒が蒼星石の足元に落ちた。
「何だろ、これ」


         △▼


「・・・まったく。へそくりとか、人が悪いよ。マスター」
「こそこそ金を貯めるなんてチビにも劣るチビですね」

テレビからは盛大に犬っころの声が聞こえてくる。
何かドラマCD集の宣伝して―
「聞いてるんですかっ!?」
「あうっ!」
痛い。痛いよ。
テレビは見逃した上に女の子二人に説教を受けるなんて、
はっはっは。社会人形無しじゃないか。
「蒼、義姉さん。それは俺がコツコツとデジカメの為に貯めてきたお金なんです」
床に手をつく。
「どうか、ご容赦頂けないでしょうか」
頭を下げて土下座みたいな形の俺。
非情にもその頭をゲシゲシと、
「おらおら、頭が高いですよ?」
踏みつける翠星石。
「どど、どうか平に、平にぃ・・・」
「・・・もうしないって言うなら」
そっと蒼星石が俺の顔に手を回す。
「今回は返してあげる。次はないけど」
後光が見えた。
「流石蒼!わかってるぅ!」
「甘えさせちゃいけないですよ蒼星石。躾ける時にはキチンとすべきですぅ」
「でもマスター可哀想だよ・・・」
「いっその事この機会に奴隷に(ry」
「・・・。ってだからぁ!問(ry」
「(r」
「(」
・・・・・・


「俺、やっぱりちゃんと返して欲しいですから」
論争を続ける二人を止める俺。

「だから、俺と二人で勝負をしましょう」

「へ?」
「えぇっ?」
同時にすっとんきょんな声を上げられる。
「じょーだんじゃねえですぅ!人間が翠星石達に敵うとでも思ってるんですか?!」
「幾らマスターが元気でも、僕ら二人相手じゃ身がもたないよ?」
すっ、と時計を指差す。
「今は九時少し前、ここらの店は大抵閉まっています。なので、十時まで」
「何ですか?」
「隠れん坊で勝負!もし十時までに蒼達を見つけたら全額俺の物!逆に見つけられなかったら・・・」
ぐっと言葉を躊躇し・・・
ええい!
「この二万円を使って!蒼と義姉さんに何でも好きなものを!買って差し上げます!」
ばん、と千円で成っている二万円分の束を叩く。
「さ、作戦ターイム!」
「認める!」
多分翠星石の、鞄が置いてある部屋の隅に引っ込む二人。
「注意は二つ。外、nのフィールドに逃げ込むのは禁止、家の中だけ。
 もう一つは、一度捕まえられたら復活なし、捕まる直前のバリアとタイムは禁止、の方向で行きます」 
こしょこしょと話している二人に言い放つ俺。
うぇっへっへっへ。自慢じゃないけど俺ん家は広い方じゃないんだ。
人間が隠れる所なんざ、限られ―

            あ。
「マスター」
そういやこの人達・・・
「この勝負、受けて立つよ!」
小さな、お人形さんでしたね。


         △▼

五分後。

あらかじめ設定した時間を過ぎたのでゆっくりと家の中に入る俺。
家の中は閑として、まるで誰もいない様に感じる。
「・・ま、一応・・・」
ゆっくりと廊下にある鏡を覗き込む俺。
まあ見える筈もないし、現に映っているのは俺とすいぎんと



( ゚д゚ )



ズズズッと銀髪が俺の前に現れる。
「ごきげんよぅ。蒼星石はぁ?」
( ゚д゚ )
「・・・ちょっとぉ。こっち見ないでくれなぁい?」
「すいません。今日はお引取り願います」
何か今日の俺、へこへこしてばっかりだ。
「蒼星石もちょっと隠れん坊で手が忙しくてね」
「何それぇ。つまんなぁい」
パタパタと羽を使って天井付近を回る水銀燈。
「隠れん坊なんて幼稚な物、貴方達にはお似合いねぇ。今日は帰るわぁ」
再び鏡に体を吸い込ませる。
「真剣なバトルなんだ。これは二万円というグローリーを賭けたジハードだからな」
体をハンティング体勢にする俺。
ターゲットは最悪なことに人形だが、要領は同じだ。
相手は見るんじゃない。感じるんだ。
「・・・にまんえん?」
まだ顔を半分だけ残した水銀燈が俺に話しかけてきた。
「それ怖いです」
「・・・・」
とん、と軽い音を立てて廊下に着地する水銀燈。
「やるわ」
「へ?」
キッと俺を睨む。
「隠れん坊」
「マジですか?」
「私に何回も言わせる気ぃ?」
マジなようだな。
「おーい!蒼ー、義姉さーん!一旦バトル中止ー!」
家の中に呼びかける。
と、間髪入れず、
「マスター、中止って?」
「・・げぇっ!水銀燈ですぅ!」
脱衣所から二人が出てきた。
「あらぁ?ご挨拶ねぇ翠星石ぃ」
「何でも、水銀燈も参加したいとの事で」
「何に?」
「隠れん坊に」
「・・・・・・」
無言。

「に、二度目の作戦ターイム!」
「認める!」
途端、三人が体を低くして顔を付き合わせる。
「隠れん坊であの人間をのしたら、ろくせんよんひゃくえんより沢山貰えるのよねぇ?」
「六千四百円って・・・くんくんのドラマCD集と同じ値段ですね」
「ぐ、偶然よぅ」
「それより作戦を考えないと・・・」
「・・スィ・・て・・・したら・・・・」
「おばかさんの翠星石にしたら考えたわねぇ」
「うるせーですぅ!」


         △▼


「突入」

再び五分経った後家に入る俺。
水銀燈乱入で中途半端になったんで、仕切り直しになった。
当然の如く家の中は静まりかえってい・・・?
「居間・・・テレビ点いてるのか」
摺り足で進む俺。
居間のドアを開けた刹那、
『良く見たまえ、ガイシャの首を!』
『うひょぁあ!この跡わっ!』
くんくーん。
「ッチ!犬の再放」
目に飛び込んできたのは、
「蒼か・・・?」
ソファの上に例のでかい鞄が置かれている様子。
待て、これは孔明の罠だ。
こんなあからさまな囮に誰が引っかかる―
・・・あれ?
ソファの横にある、さっきへそくりがばれた棚。
良く見ると、
「・・・」
隙間から羽が覗かせていた。
こっそり棚に近づく。
そして、

「水銀燈みーっけ!」
案の定、水銀燈が収まっていた。
「あ・・・あらぁ?」
状況が把握できてない様だ。
「俺に捕まったから負けー。終わりー」
棚から抱きかかえて床に下ろす。
「・・・いやぁ・・私は・・・」
力なくへたり込む水銀燈。
「じゃ、ここにいてくれよ」
ああそうだ。敗者には居間で待機してもらうk
「・・・ちょっと待ちなさいよぉ!」
呼び止められる俺。
「?」
「わ、私は負けてなんか無かった!」
肩を抱いてワナワナと震えている。
「囮も考えた!完璧に身も隠したはずだった!
 それもこれも皆、あの方の新たな御声を聞くために!」
ビッとテレビを指差す水銀燈。
何か犬が推理している。
「私の想いはこんなにも大きいのに・・・!
 何故私は勝負に負けてしまったの?!」
「水銀燈・・・」
「答えて!」
優しく、その頭に手を回す。
「・・・それは、君の愛故。
 大き過ぎるくんくんに対する想いが、君を盲目にしただけだ」
涙を浮かべて、俺を見上げる水銀燈。
微笑む俺。
「大丈夫。君の想いは誰にも負けていないさ」


即座、踵を返して居間を出る。
「俺が近くにいちゃあ、泣くもんも泣けねえよなあ」
右手で、軽く鼻を啜った。


         △▼


続いて蒼星石と翠星石。
さっき二人して脱衣所から出てきたし、作戦内容を盗み聞きしたところからも、行動は共にしているようだ。
時間は後五十分はある。
「余裕だな」
先ず、真横のトイレを開けてみた。


・・・まあ、こんな狭い所に居る訳ないか。
と、
『・・せき・・・い匂いが・・・ですぅ』
『んっ!・・・すいせ・・っ・・ら・・』
廊下奥の部屋から会話らしき声が聞こえてきた。
「これはリーチ掛かったんじゃね?」
多分、蒼星石の鞄が置いてある部屋だろう。
俺は歩みを速めた。


ギイイ・・・と軋みを上げてドアを開くと同時に、聞こえていた話し声が止まる。
どうみても追い詰めたな。
グルリと部屋を見回すと押入れに微かな隙間が開いているのが見えた。
「フヒヒヒヒ」
気持ち悪い声を出しながら押入れに手を掛ける。
「蒼み『スィドリーム!』ぐへっ!」
押入れを突き破って翠の光球が俺の顔を捉えた。
鼻を押さえて向きかえると、
「オホホホホ!バカが掛かったですぅ!」
「翠星石!早く逃げなきゃ!」
蒼星石の鞄から二人が飛び出した所だった。
流石にその発想は無かった!
「させるかぁ!」
持ち得るポテンシャルを引き出してドアへ猛進する俺。
だが一瞬き間に合わず、二人は家の中へ消えた。

「妙に足が速いな、注意しないと・・・?」
部屋を出ようとする俺を光球を遮る。
と、どういう仕掛けか一人手にドアが閉まった。
「はっはーん・・・」
なるほどね。
「俺をこの部屋に閉じ込めようって腹か」
眼前で、翠色の光球文字で『出たいなら闘れ』と描かれる。
「・・上等だ!かかってこいやぁ!」
俺は拳を握り締める。


         △▼


妙にドアが重いと思ったら蒼の光球が外から押さえていた。
困った様に俺の周りを回ると、そいつは脱衣所へと消えていった。
「ま、またあそこか・・・」
死闘を制した俺は既に満身創痍。
部屋で転がっている光球を尻目に、
小刻みに震える足で俺は脱衣所へと向かう。
時間は、残り五分にまで迫っていた。


さて、俺の前にはあの二人が身を隠せ得る場所が二つある。
洗濯機の中とこんもりとした衣服の山。
というかその一つからは長いドリル髪が覗かせていた。

「あれぇ~?何処にいるのかわかんないなぁ~?」
バレバレな方を背に、声に出して芝居を打つ俺。
「体も痛いし逃げられたら終わりだなぁ~」
ここはそれほど広い空間ではない。
それでも俺が最も出口から離れたとき、
「今だ!」
後方で蒼星石の声が上がり、服が舞い上がる音が聞こえた。
さっき見た通り、二人の逃げ足は相当速い。
恐らく俺が見返すまでに彼らの姿は再び消えるだろう。
一瞬・・・!
ほんの一瞬だけでも・・・!
「CLOCK UP!」
「んなっ?!」
飛び出した二人の内後ろの方が一瞬止まる。
気力を振り絞って、俺はその腕を掴んだ。
「CLOCK OVER・・・なんちゃって」
「は、ハメられたですぅ!」
服の色は、翠色だった。
「残りは蒼だけか・・」
耳に階段を上る音が響いた。


         △▼


「だってぇ。あの方の勇姿にぃ、人間が眩むと思ったんだもの」
「スィドリームを打ちのめすたぁ中々やる奴ですぅ」


左手で、居間のドアを開けた。
「あ、蒼星石も捕まっちゃったですかぁ・・・」
「・・あらあら、見せ付けてくれるじゃなぁい?」
右手に蒼星石を抱えてるからな。
「やだぁ・・マスター降ろしてよ・・」
恥ずかしいのか、首に手を回して二人に顔を背ける蒼星石。
「まったく、可愛いやつめ」
うりうりと柔らかい頬を突く。
「蒼ならきっと、俺の部屋にいてくれると思ったよ」
「・・・(///)」
「蒼・・・」
「ますたぁ・・・」
ああ蒼星石いじらしいよ蒼s

すこっ。

「ノオオオオオオオッ!」
「何か癪だわぁ」
羽根っ、目がっ、目がぁっ!
「負けは負けだからね。はい、どうぞ」
蒼星石に元の封筒に戻された二万円を渡される俺。
「・・・そっか。俺の勝ちか・・・」
ちくちく痛む目を擦りながら、思い思いに残念がる三人を見た。


         △▼


二時間後。

小脇に包みを抱えて満足気な三人の少女を連れ、ファミレスに来た俺。

「ちょっとぉ!ヤクルトおかわり出来ないって何ぃ?!」
「店員さんを虐めちゃらめぇぇぇ!」
「健やかにぃ~伸びやかにぃ~」
「俺の唐揚げに手を伸ばさんといてください!」
お子様ランチに付いているヤクルトの個数に不満気な水銀燈。
虎視眈々と俺の主菜を狙う翠星石。
ここまで乱暴な子達とは思わなかったぜ。

「・・本当に良かったの?マスター」
一人、俺の横で大人しくグラタンを食している蒼星石が尋ねる。
「僕達の為に折角のお金使ってくれて・・」
「・・・」
ぼふ、とその頭に手を乗せて撫ぜる俺。
「いいっていいって。偶にはこういう使い道も悪くない」
「えへへ・・くすぐったいよ」
あ、唐揚げが消えた。
「・・・まあ、蒼達が喜んでくれて俺は満足さ」








終われ