今日は仕事も休みで、久々に二人で昼食がとれる。
ここ最近は土日も休み無しで忙しく、蒼星石に淋しい思いをさせてしまっていた。
蒼星石も嬉しさのあまりか鼻歌を歌いながら台所に立っている。
「マスター、もう少しで出来るからちょっと待っててね」
「了解ー。何か手伝うことはないか?」
「ん、いいよ。あと少しだからマスターは休んでていいよ。」
「わかった、それじゃあ俺は部屋に居るから」
「はーい。」

その時、二階の方からガラスの割れる音が聞こえた。
「!? なんだ? ・・・まさか」
急いで二階に駆け上がり、音のした部屋のドアを開ける。
「誰だ!!」
そこには見覚えのある形の鞄があった。
鞄からは緑色のスカートの端が見える。

「ね、義姉さん!」
『義姉さん』と呼ばれたその人形は怒りの表情でこちらを見る。
「その呼び方はやめろと何度言えばわかるですか!」
「すいません、義姉さん。今日はどういったご用件で?」
「もう何とでも呼びやがれですぅ・・・。で、今日はちょっと翠星石のマスターのことで・・・、あ。」

翠星石の視線の先を見るといつの間にやら蒼星石も上がってきていた。
「大きい音がしたと思ったら・・・、ガラスを割るのはジュン君の家だけにしなよ・・・」
「ごめんですぅ・・・、それで今日はそのジュンのことで話があって・・・」
俺と蒼星石はとりあえず話を聞くことにした。

      • 翠星石の話によると、昨日ジュン君の家に『ウメオカ』を名乗る男が現れ、
ジュン君に●●●して帰ったそうだ。人形達が家に通うようになってから自慰行為ができず、
性欲が溜まっていたところを変に刺激されて真紅と雛苺が大変なことになっているらしい。
そこで翠星石だけが何とか逃げ切り助けを求めに来たそうだ。

「・・・なんとまぁ、どうする?蒼星石。」
「能無しに変態属性まで加わったか・・・、って何を言ってるんだ僕は!」
「蒼星石?」
「あ、ごめんなさい。やっぱり一度現状を見てみないことには・・・」
「だったら二人ともさっさと来るですよ!」
そう言うと翠星石は猛スピードで飛び去って行った。
「さて、仕方ない。俺たちも行こうか。」
「あ、僕は少し用意するものがあるからマスターは先に行ってて!」
「ん? 分かった、先に行ってるからな」

俺が駆けつけると、桜田家の玄関の前で翠星石が待っていた。
「やっと来たですか、ってあれ?蒼星石はどこです?」
「蒼星石は何か用意するものがあるとか・・・」
「わかったです。じゃあ突入ですぅ!!」

ドアを開けるとそこにはぐったりとした真紅と雛苺がいた。
「お、おい!大丈夫か?」
「真紅!チビ苺!しっかりするです!」
「う・・・、出しすぎなの・・・だわ・・・」
「な、なの~・・・」
そのまま二人は倒れこんだ。
「人間、真紅達の仇をとるですよ!」
「で、肝心のジュン君は?」
俺がそう言った瞬間、廊下の奥にそれは立っていた。
「!!!、あれ、ジュン君??」
「そうです。もはや真性の変態と化した魔物ですぅ」

下半身は裸、上半身は女物の下着といういかにも変態という姿、
そして今目があった。
「ガルルルルル!!」
うわ、こっち見てる・・・
「マスター、お待たせ!って何?あれ?」
「・・・ジュン君だ」
「ひ、こっちに走ってくるです!!」
「ガルルルルル!!」

俺と蒼星石は変態の突進をかわす。が、翠星石は捕まってしまった。
「話しやがれです!この変態!」
変態の息が荒くなる。
すると蒼星石は鞄からあるものを取り出した。
「マスター、これを!」
渡されたのは、この前の注射器だった。
「こ、これ・・・」
「昼食にするつもりだったんだけど、持って来て正解だった。さぁ、早く食べて!」
「やむを得ない・・・か・・・。」
「行くよマスター!おあがりなさいッ!!」

グサァッッ!

「モ、モルスァ!!!、うおぉ、力が漲る!」
俺はたちまち筋肉質な体質になる。
「さぁ、ジュン君勝負だ!と、その前に!」
俺は素早く変態の手から翠星石を奪還する。
「う、なんか嬉しくないです・・・。」
「気にしないでくれ・・・、さて。くらえッ!」

ゴシカァン!

俺のパンチが変態を吹き飛ばす。
「どうだジュン君、ドーピングコンソメソーセイセキの力は。」
「・・・変態対決ですぅ・・・」
「そうだね、どちらも甲乙つけがたい変態だ。」
「ガルルルル!」
変態も応戦してくるがこの状態の俺の敵ではない。
「これでラストだ!!」

クシカツ!

俺が思い切り床へ叩きつけると、変態は正気を取り戻した。


――30分後。
「あの、ご迷惑かけてすいませんでした・・・」
「もっと謝るです。チビ人間!」
正気を取り戻したジュン君はさっきから延々と謝り続けている。

「さて、帰るか蒼星石」
「そうだね、もう一人の変態の調教もしなくちゃいけな・・・、ううん、何でもないよマスター」
「・・・蒼星石?」
まぁ、俺はMだから問題ないか。むしろ楽しみだ。

こうして長い一日が終わった。
そして、この日は蒼星石とのあらたな生活の始まりでもあった。



ー完ー