起きたらもう朝食の時間だった。
  最近は睡眠が不規則だったり、風邪気味だったりしたせいか、食欲もあまりなく、だるい。
蒼「おはよう、マスター。最近体調が良くなかったから朝食はさっぱりとした食べやすいものにしたよ。」
  メニューは納豆、山かけ、温泉卵、味噌汁、もずく、焼き海苔。
  なるほど、食べやすくかつ栄養は十分そうだ。
  流石だな、蒼星石。心から感謝しつついただく。なんか元気が出てきたかもしれない。


  レポート等の作業をしていたらもう昼食の時間だ。朝よりも幾分か食欲はある。
蒼「お昼はね、スパゲティーにしたよ。
   ちょっとニンニクが多めになっちゃったかも知れないけれど、元気になってもらえればと思って。」
  昼食は和風の梅おかかスパゲティー。
  麺だから軽く食べられる上に味付けが梅干しでされているので酸味も食欲をそそる。
  それが鰹節とお互いを引き立ててからみつくうまさだ。「ハーモニー」というか「味の調和」というか……。
  たとえるならサイモンとガーファンクルのデュエット!翠星石に対する蒼星石!という感じだろうか。
  確かにニンニクが多いようだが自分は好きだし気にはならない。食べれば食べるほどもっと食べたくなった気がする。


  もう夜だ。早い。休日はあっという間に過ぎてしまう。課題も終わってないし、蒼星石ともあまりふれあえなかった。
蒼「やっぱり土用の丑の日だから鰻を食べないとね。安くてたくさん買えたから存分にお替りしてね!」
  蒼星石お手製の鰻丼を堪能する。もちろんそんな高級な鰻を手に入れる事はできなかったが、
  お酒やらで手間をかけて骨などが気にならないように美味しく仕上げてくれている。
  食欲も元に戻ったのか2回もお替りをしてしまった。元気いっぱいだ。


  そして夕食後の一服。二人でお茶を飲む。
蒼「どうかな、少しは元気になってもらえた?」
マ「うん、もう元気になったよ。蒼星石の料理のおかげかな。」
蒼「良かった…、最近マスター元気ないみたいだったから。」
マ「そう…、心配をかけちゃってごめんね。」
蒼「……ねえ、元気になったのなら、今日は久しぶりに甘えちゃってもいいかな?」
マ「そうだね、最近あまり一緒に過ごせなかったし、そうしてくれると嬉しいかな。」
蒼「じゃあさ、久しぶりに膝に乗せて欲しいな。」
  蒼星石がちょっと恥ずかしそうに言う。
マ「ナヌ!」
蒼「あっ、やっぱりまだ元気じゃないんだ。ごめんね無理を言って。」
  蒼星石はしゅんとしてしまう。
マ「いや、元気だよ、とっても元気。」
  そう、このところ夜も何もせずに早寝してばっちり休養をとってたし、今日は精のつくものもいっぱい食べた。
  一応はまだ若いんだし、間違いなく元気だ。ぶっちゃけ元気すぎて、『俺の下はスタンドだ!』だから困る。
  そんな状態でいつもみたいにあぐらで蒼星石を膝に乗せたりしたら………


    蒼『あの…マスター?何か硬いものが当たるんだけど?』
    マ『あっ、そ、それは…。』
    蒼『……!?見損なったよ、マスター。あなたも所詮は下劣なオスだったんだね。』
     そう言って、養豚場のブタでも見るかのように冷たく、残酷な目で見下すような視線を送ってくる。
    蒼『まあいいさ、これからは僕がきっちりと躾けてあげるからさ。ほら契約しようか。』
    マ『契約って…もう契約はしてるんじゃ…。』
    蒼『ケダモノの分際で生意気だよ?ほら、再契約は靴に口付けしてよね!』


  ………そういうのもちょっとだけいいかもしれない。って何を血迷ってるんだ、自分。
蒼「マスター、どうしたのボーっとしちゃって。やっぱりまだ体調が悪いの?」
マ「あ、いや、そんなことないよ。さあ、おいで。」
  不安そうで切なそうな顔を見てつい言ってしまったがこれは大ピンチだ。
  そうだ、正座をしよう。多少だけれどリスクを減らせそうだ。
蒼「マスター、何そのカッコ。」
  蒼星石がいぶかしげな視線を送ってくる。
マ「いや、今日の食事は和風だったからね、和の心に目覚めたんだよ。」
  我ながら無茶苦茶な言い訳をして蒼星石を膝に乗せる。
  しかし、やはり接触してしまうのが怖くて腰の辺りを引いた奇妙な姿勢になってしまう。
蒼「マスター、僕にくっつかれるのイヤ?」
  不自然さを感じた蒼星石がそんなことを言う。
マ「違う、違う、そんな事ない!えーっと、ほら、風邪っぽくて入浴を控えてたから汗とかで汚いかなーって。」
蒼「そんなの全然気にならないのに…。」
マ「でもこちらとしてはやっぱりさ。
   あ、そうだ今日は早めにゆっくりとお風呂に入って、汗も流してそれからのんびりしよう。
   それなら後は時間も気にしなくていいし、ね?」
蒼「うん、分かった。じゃあお風呂の支度するね。」


  なんとか蒼星石をごまかして入浴。ゆっくり入ると言ったし多少の時間はある。G作戦始動だ!
  西部劇のガンマン風に言うと…『ぬきな!どっちが素早いか試してみようぜ』というやつだぜ。
  これからッ!てめーをやるのに!1秒もかからねーぜッ!
    ガチャリ
マ「!!」

   ド ド ド ド ド ド ド ド

蒼「お風呂いっしょに……入っても……」

  ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

蒼「いいかな?久しぶりにお背中流すよ……。」
  そこには服を濡らさぬためだろう、下着になった上にバスタオルを巻いたと思われる蒼星石の姿があった。
  慌ててとっさに股間をタオルで隠す。
マ「ああ、お願いするよ。ありがとう。」
  なるべく怪しまれないようにさりげなくお願いする。
蒼「じゃあちょっとセッケンを取るね。」
  蒼星石は背後から肩越しにセッケンを取ろうとする。
  あ、蒼星石の胸が背中に触れ…これはヤバイ!
マ「はい、セッケン!じゃあお願いするね。」
  慌ててセッケンを取って手渡す。
  蒼星石は純粋な気持ちで接してくれているというのに変に意識してしまう自分が情けない。
蒼「どうかな、気持ちいい?」
マ「うん、とっても気持ちいいよ。本当にありがとう。」
蒼「今日は湯船にもご一緒しちゃおうかな…。」
  恥じらいに頬をほんのりと朱に染めた蒼星石がそんなことを言い出す。
マ「だ、だ、だめっ、絶対だめ!恥ずかしいからそれはごめん!」
  そんな事やったら冗談抜きで破滅が待っている気がする。
  もしかして、今バスタオルの下って何も着けてないのか…?
  余計なことを考えてしまい、さらに余裕がなくなる。
蒼「なーんてね、流石に冗談だよ。」
マ「なーんだ、冗談かー、びっくりしたなー。」
  蒼星石さん、いくらなんでも今のタイミングでその冗談は殺生です。
蒼「ふふっ、マスターって意外にこういうので動揺するから、ちょっとからかいたくなっちゃった。」
マ「…あんまりからかわないでね。」
蒼「マスター、大丈夫?なんか顔が真っ赤だよ。」
マ「ああ、久しぶりのお湯だしちょっとのぼせちゃったのかな。」
蒼「そう、じゃあ体洗ったらあんまり長湯しないで上がってね。心配だから外で待ってるから。」
マ「いや、そこまでしてもらわなくても大丈夫だと思うよ。」
蒼「でも、なんか今日のマスターは普段と違うみたいで心配だから。」
マ「それならお願いします…。」


  なんとかお風呂は切り抜けた。が、蒼星石が外で待機してくれていたために当初の目的は遂行できなかった。
  むしろ入浴前よりも切羽詰ってしまっている。ってか、パジャマだと盛り上がりが隠せない。
  とりあえず布団にでももぐりこんで下半身を隠してしまおう。
  下腹部の辺りを押さえつつ腰を引いてやや前かがみになって移動する。
  無様だ。こんな姿は蒼星石には絶対に見られたくない。
  げえっ 蒼星石!!
蒼「マスター、なんか苦しそうだよ?」
  オレのそばに近寄るなああーーーーッ!
  いや、もちろんお気持ちは非常にありがたいんだけどね。
  まずい、非常にまずい。なんとか鎮めなくては。
マ「ウメオカ、ウメオカ、ウメオカ、…。」
  突如頭に浮かんだ得体の知れない呪文をぼそぼそとつぶやく。
蒼「うめ…おか…?あっ、ひょっとして!」
  ばれたか!?人生終わったか!?
蒼「マスター…お腹が痛いの?」
マ「へ?」
蒼「お昼に梅干しなんか使ったから、お夕飯の鰻との食べ合わせでお腹痛くしちゃったの?」
  食い合わせ…ああ、そんなのもあったね。
マ「いや、昼と夜ならもう平気でしょ。そもそもアレって迷信のはずだし。」
蒼「でも、さっきからお腹の辺を押さえて辛そうにしているし、痛いんでしょ?ごめんね僕のせいで…。」
マ「いやいやいや、違うよ、そんなんじゃないよ!
   きっとしばらく小食だったのに夕飯を美味しさのあまり3杯も食べちゃったからだよ。
   だから自業自得だからさ、蒼星石は気にしないで!」
  蒼星石には申し訳ないがここは腹痛ということにしてやり過ごさせてもらおう。
蒼「でも、ひょっとしたら病気のせいかもしれないし…やっぱり今日ももう寝た方がいいね。」
  すっごく寂しそうな顔をされてしまう。
  そういえば最近は看病のためなんかで拘束されてしまい、翠星石達にも会っていないようだった。
  自分のせいで今まで本当に一人ぼっちにしてしまってたんだな……。
  それで今日はやけに積極的な感じだったんだろう。
マ「ごめんね、自己管理がなってない所為で、蒼星石に寂しい思いをさせて。」
蒼「いいんだよ。それは僕の責任でもあるんだから。」
  蒼星石はあくまでもこちらを気遣ってくれる。
  それなのに、こんな下らない事で蒼星石を悲しませている自分が真底情けなくなってくる。
蒼「そんな顔しないで、マスター。誰だってそういう時はあるよ。
   でも、邪魔じゃなかったら寝るまでの間そばにいさせて欲しいな。」
マ「そうだね、何かお話でもしようか。」
蒼「うん、その気持ちがとても嬉しいよ。そうだ、少しでも楽になるようにマスターが寝るまで僕がお腹をさすってるよ。」
マ「え、いや、蒼星石だって寝ないと、このところ看病させちゃったりしたし疲れてるでしょ。」
  下腹部なんてさすられたらまた厄介な状況に陥ってしまう。
蒼「今日はまだ早いし大丈夫だよ。それにこのままじゃマスターの事が心配で安眠できそうにないしね。」
  どうやらまだまだ気を抜いてはならないらしい。
  今夜は眠れぬ夜になりそうだ……。