すごい事なんてない。ただ当たり前のことしか起こらない。 by某アニメ主人公
 名前なんて便宜上些細なものである。 by真紅


「今日も蒼星石の可愛さは以上、と。」
最後の“と”の音と同時に俺はレス送信ボタンをマウスという媒体を通じ、クリックした。その時は誤字には気づかなかったが
送信したレスを更新し、確認してから自分の些細な過ちに気がついた。しかし、それをどうこうして編集できるわけでもないの
で、清く諦める。
 俺が書き込んだスレッドは某板の“蒼星石とお話しないかい?”というスレッドだ。ここはまるで閉鎖空間のようにVIPからの
因果を断ち切られているかのように物静かなスレである。それゆえにdat落ちやスクリプトによる容量落とし、なんてことも日常
茶飯事だった。
 同じ日の昼頃。ついに夏の照りが激しくなる時間帯だが、今日は分厚い雲が天をサランラップの如く覆っていたので、日光が
差すことはなかった。そのためすごしやすい気温が保たれ続けた。俺はさきほどの某板のスレに保守レスを送信すると、寝るわけ
でもなく、特に考えることもなく、床に寝転がった。脳はしなくても、体がもう少しボーっとしようとした時、不意に玄関からチ
ャイムの音がした。体の意見をねじ伏せ、脳が無理やり体を玄関に向かわせる。ドアを開けるといかにも郵便です、みたいな格好
の人が薄っぺらい笑顔でそこに立っていた。彼は大きなダンボールを引きずってくると、俺に判子を求めた。
「えっと・・・判子だけですか?」
俺は頼みもしない品物に妙な疑問を抱いていた。
「はい、運送だけですので。」
と、そう彼は答えた。俺は中身がなんなのか気になったので結局判子を押してしまった。ここが人生の分かれ目といっても過言で
はないだろう。

 俺はさっそく巨大なダンボールを居間へ運び込んだ。巨大なわりには大して重さは感じられない。箱には「割れ物注意」と「カ
ッター注意」などといったシールが張られている。それに従い、俺は手で几帳面にダンボール箱の口を封じているテープを剥がして
いく。
ようやく剥がし終え箱を開けてみると、中にはマトリョーシカのように、これまた大きな鞄が入っていた。茶色を基本色とし
た・・・アンティークというのか?とりあえずそんなオーラを放つ鞄だった。俺はこの雰囲気をよく知っていた。まるで某アニメ
そっくり、もといまったく同じだからだ。なので俺は恐れずして鞄を一気に開けた。
 俺は驚愕する。中には蒼を基調とした服装のドール、いつも妄想に思い描いていた蒼星石がそこにいたからだ。突然の衝撃に
俺の思考回路がショートしはじめる。そのおかげで冷静さを失い、光る風を追い越す勢いで螺子を巻いてしまった。今思えばほかに
もいろいろやっておけばよかったな。
 しばらくすると俺の予想通りに命を吹き込まれていなかった人形が、しだいに“蒼星石”になっていく。完全に蒼星石が覚醒し、
発した言葉は
「うわっまぶしっ」
そりゃずっと鞄の中に入ればそうだろう。

 俺は蒼星石にまっずい緑茶を出し、とりあえずおきまりの自己紹介でも聞くことにした。しかしここで高感度も上げておきたい。
ありふれた自己紹介の言葉が蒼星石の口から俺の耳に伝わる。名前、特徴、趣味その他もろもろは全て知っているさ(ネット
サーフィンの賜物)。
 しばらくすると自己紹介も終わり、俺は1つの提案をすることにした。
「よし、俺から提案。この家に居候するなら“敬語”の使用は無し!どぅーゆーあんだすたん?」
俺の突然で、しかも意味不明な提案にもちろん蒼星石はおどおどし始める。
「えっ、居候ちが・・」
「どぅーゆーあんだすたん?」
「い、いえす さー!」
こうして俺たちは出会った。もう、「それ梅岡」とは言わせない。
「・・・ところであなたの名前は・・?」
「名前なんて便宜上些細なものなんだよ。蒼星石にはそれがわからんのです。」


 ・・・一週間と4日後

58 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 22:48:29.44 ID:nurupo/a0
   ついに俺の家にも蒼星石が!

59 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 22:48:30.45 ID:CRFy9l7nO
   >>58
   梅岡

60 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 22:49:47.90 ID:iKq96lwL0
   >>58
   ジャーン!ジャーン!ジャーン!
   げえっ 梅岡!

61 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 22:49:47.99 ID:HC2yoT8o0
   >>58
   いい梅岡だな。でも借りはしないぞ


「マスター、どうかした?」
蒼星石が俺のとは違う、おいしい緑茶を持ってきてくれた。
「いや、なんでもない・・・。それにつけてもこれほどの屈辱は初めてだ・・・」
「大丈夫だよマスター!上り坂もあれば下り坂もあるんだから。」
蒼星石がなんとも理解しがたい慰めをかけてくれる。なら、大きな上り坂の上には下り坂があると信じたいものだ。