蒼「マスター…今日の昼食、そうめんでいい?これしかないんだ…」
マ「あぁいいよ。涼しげでいいじゃないか。」
蒼「…ありがとマスター。さっそく作るね。」
蒼はさっそく鍋を温めはじめる。
しかし、いつもと変わらないのどかな風景だな。まぁそれがいいのだけれど。
ピンポーン
インターホンが鳴る音が聞こえる。
蒼「あ…行かなきゃ…」
マ「いいよ。俺行くから。」
蒼「え…でも…」
マ「蒼忙しいんだから俺にこれぐらいの事はさせてくれ。」
蒼「う、うん…」
バタバタと玄関へと走る音が響き渡る。
(まぁこのぐらいの事はして当然だよな。)
蒼はしぶしぶそうめんを作り始めた。
マ「どちらさまですか?」
「俺。」
何このあからさまなオレオレ詐欺。まぁ声聞けば大体分かるが。
ガチャ
「や。久し振り。」
マ「…用は何?」
「おいおい、結構久し振りなのにその返事は無いでしょ兄ちゃん。」
目の前にいたのは俺の弟だった。ちなみに蒼の事は知らない。
弟「ほら、兄ちゃんに…あの…あれ…時計貸してたじゃん?黒の。たまたま立ち寄ったからついでに、ね。」
二年前に確かに借りていた。修学旅行用に…
マ「そうか…まぁ上がれよ…」
弟「悪いね。いや~久し振りだここ…なんかすんごい綺麗になってるような気がする…」
そりゃそうだ。蒼が丹念に掃除を家中してるからな…
蒼(…?…誰か来たのかな…?)
マ「確かこの辺に…あった。これだろ?」
弟「ああ!そうそうコレ。良かった在って。…ところで兄ちゃん…誰かと付き合ってる?」
蒼(!?)
マ「あぁ…まぁ…」
弟「本当!?すごいな…名前なんていうの?」
マ「…蒼」
蒼(!…マスターってば…もう…)
弟「へぇ…なんか単調的な名前だな…」
蒼(……)
弟「いい子なの?」
マ「あぁ…とってもな。」
弟「そうなの?でもなんか几帳面すぎやしない?いやに綺麗なのもその蒼って人がやったんでしょ?」
マ「まぁな…」
弟「なんか…生活感が消えてる感じなんだよなぁ…」
蒼(なんでだろ…今までやってる事を否定されたような感覚…とっても……切りたい)
マ「それは性格なんだからいいって……!…」
後ろで怪しく鋏がうごめいている…
ヤバい。これ以上なんか言わせたら…切りかかるのも時間の問題だ…
マ「ま、まぁ今日はこの辺で帰れば…?」
弟「ほら、この天井の隅…埃が…凄いよ?…表だけやっとけば良いって人なんじゃない?…変な事言ってるのは承知だけど…誰か見合いの人紹介しようか?」
蒼(後でやろうと思ったのに…しかも紹介って何……切ろう。切っちゃおう。あの人切っちゃいたい。なんか…うずくよ…)
マ(ヤバい。もう蒼は戦闘準備に入ってる。ここは早く…)
マ「あぁ…分かったよ…んじゃまたな。」
もう遅かった。俺の顔をかすめた何かが、弟を連れ去った。
マ「…あ、あれ?帰った…のか?」
そんなわけはなかった。奥の部屋で何か聞こえる。まさか…
弟「な…何が起きた…?」
蒼「ばかぁ!僕のマスターに…何言ってるの!」
弟「へ…?ま、ますたー?いや…知らな」
蒼「もう……怒ったよ…レンピカ。ブゥゥン」
弟「え?ちょ…まって…」
蒼「ジャキン…おしおきだよ!!!!!」
(声にならない叫び)
バタッ
蒼「あれ…なんか…フラフラする…」
バタッ
マ「おい!…あ…」
その部屋には二人とも仰向けに似た姿勢で倒れていた。
弟も蒼も無事みたいだ。
マ「これは夢を装って家に帰らせるしかないな…」
辺りは日が沈みかけていた。
しばらく寝ていた弟が目を覚まし、もう遅いという事で帰る事になった。
弟「…なぁ兄ちゃん…」
マ「なんだ?」
弟「この家に…小さい子なんていない…よね?」
マ「あぁ…夢だったんだろ。」
弟「そう…か…そうだよね…んじゃまた…」
マ「じゃ。」
バタン
ふう…なんとかごまかせた。
こっちの方は…
蒼「…ねぇマスター…今日誰か来た?」
マ「いや?誰も来てないよ。」
蒼「そうだよね…なんか…やってはいけない事したような…まぁいいや…夢なら、ね。ごめんねマスター、変な事聞いて」
マ「いや、いいよ。多分疲れてるんだよ。今日はゆっくり休めば?」
蒼「そうだね…分かったよ…」
バタン
マ「ふぅ…今度から人を呼ぶ時は細心の注意をしなきゃいけないな…」
天井の隅には埃がたくさんたまっていた。