蒼:「じゃあ行ってくるね、マスター。」
マ:「ああ、いってらっしゃい。」
   蒼星石は時計屋の爺さん婆さんとこに出かけていった。
   今、自宅に俺だけの珍しい状況だ。
   いつも休日は蒼星石と一緒に何かかんかしてるからな。
マ:「さて・・。」
   蒼星石のいないこの機会に・・・あれをやるか・・・。
   俺は腰を上げ、あれの準備に取り掛かる。
   ふー、やっとあれが出来る・・・。


   蒼星石のマスターが自宅でゴソゴソとあれの準備をしている頃
   その自宅の周囲をカメラを持ってうろつく影があった。
   影の正体はローゼンメイデン第二ドール、金糸雀である。
金:「今日は蒼星石たちのラブラブぶりを激写かしら!」
   みっちゃんにその状況の写真を撮るよう頼まれやってきたのだった。
   この頃、みっちゃんはコスプレさせたドールの写真に飽き足らず
   ドールの様々な状況を捉えた写真に新たな悦びを見出しているのだった。

   家の住人に見つからないよう物陰から家の窓にカメラを向ける金糸雀。
   この時、金糸雀の頭には『盗撮は犯罪』という概念は皆無であった。
   いや、そもそもドールに人間の法律が適用されるかどうかすら怪しい。
   そのことを意識してるのか定かではないが、ドールにそれをさせるみっちゃん。
   なかなかの策士である。
   カメラのレンズ越しに金糸雀は蒼星石のマスターの姿を捉えた。
   しかし、マスターの様子がおかしい・・・。
金:「あ、あれは・・・な、なにをしているのかしら・・・?」
   金糸雀がマスターの異変に気付いた。
金:「・・・・・。」
   その異様な光景を凝視する金糸雀。金糸雀の頬がほんのり赤くなる。 
金:「な、なんて激しい動きかしら・・・!」
   パシャ!パシャシャ!
   予想だにしてなかった状況だが、思わず写真に収めてしまった。
金:「も、もしかして金糸雀は見てはいけないものを見てしまったのかしら・・・・!」
   あらかたその様子を撮り終え蒼星石は外出中らしいことを察っすると、金糸雀はいそいそと帰路についた。


マ:「ふぅ、腹踊りの練習はこれぐらいでいいかな。」
   俺は自分のお腹にペイントされた絵を見やる。
   上半身裸でこんな情けない姿、蒼星石には見せられない。
マ:「ふぅ。」
   仕事先での宴会のために、一発芸を準備しとくのも大変だ。


   しかし、まさか金糸雀にカメラに撮られたとは露ほどにも気付かない蒼星石のマスターだった。


   別の日の休日にて。

の:「では今日はよろしくおねがいします~。」
マ:「ほいほい、いってらっしゃい。」
   今日一日、予定の無かった俺は桜田家にてドール達の面倒をみることになった。
   別に子守が必要なほど彼女らは幼くはないのだが、俺もヒマだしせっかくだからということでだ。
   ジュン君は図書館の方へ勉強しに行っている。
   今、この家にいるのは俺と蒼星石、真紅、雛苺、翠星石だ。
   俺が居間のソファの上でくつろいでると雛苺がやってきた。
   ちなみに真紅と蒼星石は二階、翠星石と雛苺は俺と同じく一階の居間にいる。
雛:「ヒナ、オセロのやりかた覚えたのよ。いっしょにやりましょ。」
   とびっきりの笑顔で俺に勝負を挑んできた。
マ:「ああ、いいよ。」
   ゲームのルール覚えたてってやつは、とにかく誰かかれかに勝負を挑みたくなるものだよな。


雛:「むぅ~!」
マ:「俺の勝ちだね。あ~、危なかったなぁ。ヒヤヒヤしたよ。」
   本当は僅差で負けてやるつもりだったのだが、計算が狂って僅差で勝ってしまった。
   せっかく対局終盤、わざと逆転の手を用意してあげてるのに、ことごとく気付いてもらえなかった。
   まぁ、ルール覚えたてっぽいしなぁ。
翠:「大人げないですね~、アホ人間は。そういう時はわざと負けてやるのが『大人の対応』ってやつですよ?」
   横から俺と雛苺の対局を見ていた翠星石がやれやれといった表情で言ってきた。
マ:「ハハ。」
   俺は苦笑いする。
   いや~、負けるつもりだったんだよ、ほんと。
雛:「もういっかいなの~!」
翠:「チビ苺じゃいつまで経っても勝てないですよ。ここは翠星石がチビ苺の敵をとってやるです。」
雛:「むぅ~!」
   まったく、翠星石は勝手だなぁ。
マ:「大丈夫だ雛苺、すぐに勝負ついちゃうから。ちょっと待っててな。」
翠:「そうです、翠星石が瞬殺してやるですぅ。」
マ:「逆だよ。俺がだ。」
翠:「アホ人間の分際で小癪なですぅ~!」
   ふむ、少し本気を出して黙らしてやろう。


雛:「???」
翠:「そ、そんな・・・この翠星石が・・・。」
   本気を出した俺に瞬殺された翠星石。
   全てのマスが埋まる前に、すでに盤上のオセロは全て白くなっていた。
   あまりに速い展開に雛苺は何が起こったのかわかっていないようだ。
翠:「納得いかねぇですぅ!まだ全部埋まってねぇですぅ!!」
マ:「そう言ったって、もう置けるとこないだろ。」
翠:「キィイイ!」
   ちょっと大人げなかったかな。
マ:「さ、雛苺。オセロの続きしようか。」
雛:「は~いなの~!」
翠:「ちょっと待つです!」
マ:「おいおい、しつこいのは嫌われるぞ。」
翠:「うっせぇです。次は二対一でやるですよ。翠星石と雛苺で組むですぅ!
   それぐらいのハンデ認めやがれですぅ!」」
   なんだそりゃ。
   でもまぁ、それもいいかもな。仲良く二人で手を考えるってのも。
マ:「いいだろう。受けて立つよ。」


   先攻は黒の翠星石&雛苺チーム。
翠:「まず一枚いただきですぅ!」
   始まって早々翠星石が雛苺と相談することなく打ってきた。
   黒4 白1
マ:「おいおい、いきなり相方と相談無しかよ。」
   俺はやれやれと白を打とうと手を伸ばしたが、
翠:「さ、次は雛苺の番ですよ。」
   ん?
雛:「え~い!」
   雛苺が黒を置くと俺の白は引っくり返された。
   黒5 白0
   ???
翠:「瞬殺ですぅ!」
雛:「やったの~!」
   え、なに? なにが起きたの?
翠:「私達は無敵ですぅ! 無敵のコンビですぅ!」
雛:「なの~♪」
マ:「まさか二人で組むって、二人別々に打つのか?」
翠:「そうですよ?」
マ:「俺何もできねーじゃねーか!」
翠:「あ~あ、負け惜しみですか。ほんと大人げないですねぇ?」
   翠星石が雛苺に同意を求める。
雛:「ね~。」
   あ、雛苺まで!
   なにこの裏切られた感情!? 
   コンコンコン。
   そんな時、窓を叩く音がした。
   窓の方を向くと金糸雀がいる。
   俺と目が合うとなぜか金糸雀はギョっとし咄嗟に目を逸らした。
   ???
   俺は窓の錠を外し、中に入れてやる。
金:「こ、こんにちわ。ありがとかしら・・。」
   意図的なのか、金糸雀は俺の方をなぜか見ようとしない。
   何か変だなぁ。
金:「あ、翠星石と雛苺。ちょっと・・・。」
翠:「どうしたですぅ?」
雛:「どうしたの~?」
金:「あ、あっちの方で話すかしら。」
   そう言って三人は廊下の方へ行ってしまった。
   なんかよくわからんが、まぁいいか。


   数分後、三人が戻ってきた。
翠:「アホにんげ~ん。」
マ:「ん?」
   なんだ、あのニヤニヤ笑いは?
金:「これからドラマごっこしようかしら~。」
   んん? ようするにママゴトか?
雛:「するの~。」
   金糸雀と雛苺も不敵な笑みを浮かべている・・・。
   なんか、悪い予感がする・・・。
マ:「ん~。」
金:「カナは美人姉妹の長女役かしら。」
翠:「翠星石は美人姉妹の次女役ですぅ。」
雛:「ヒナは美人姉妹の三女役なの~。」
翠:「アホ人間は美人姉妹のペットの犬役をやらせてやるですぅ。
   光栄に思うですぅ!」
マ:「おい、俺はまだやるとは言ってないぞ。」
   しかも何だ、ペットの犬役とは?
金:「あら~、拒否するのかしらぁ?」
   さっきのオセロの件もあるが気が乗らない。犬役なら尚更だ。
マ:「ああ、今回はパスな。」
翠:「それは残念ですぅ。ならこれを蒼星石に見せるしかないですね。」
   翠星石が一枚の写真を持っている。
マ:「ん、なんだそれ。」
翠:「アホ人間のあられもない姿が写ってるですよぉ~。」
   は?
金:「まさか蒼星石の見えないところであんなことをしていたなんて・・・。」
   !?
雛:「ヒナ、恥ずかしいの~!」
   !?
   ま、まさか・・・!
マ:「写ってるってまさか・・・。」
   うそうそうそ!? そんなまさか!そんなバカな! 
   今まで厳重な警戒の元行っていたはずだ!
金:「偶然写真に収めるのに成功したかしら!」
   嘘だぁ!
翠:「もし蒼星石にこれを見られたら・・・いったい蒼星石はなんて言うですかねぇ~。」
マ:「ちょ、ちょっとその写真見せろ!」
翠:「そんなこと言って奪い取ろうとしても無駄ですぅ!」
金:「何度でも焼き増しできるかしら!」
   この悪魔の子らめ!
   は、てことは・・・!?
マ:「まさか、みっちゃんも見たのか・・・?」
金:「みっちゃん、『あら、かわいいわね』って言ってたかしら。」
   ああああああああ。
   ドール達に加え、妙齢の女性のみっちゃんにまで見られた!
   しかも『かわいい』だと!?
   そ、そんな・・・俺のはかわいかったのか・・・・。
雛:「元気出すの~!」
   俺の落ち込みように、雛苺が励ましてくれた、が・・
   この無垢な子にもその写真を見られたことを思うと・・・。
   ぐ、ぐあああああああ!
翠:「じゃ、蒼星石にも見せてくるですぅ。」
マ:「あ、ま、待ってくれ! そ、それだけはご勘弁を!」
翠:「じゃ、犬役やるですか?」
   あああああ・・・。
マ:「はい、やらせて下さい・・・。」
   負けた・・・完全、敗北だ・・・・。


マ:「あの、これは?」
翠:「首輪ですぅ。」
   どこから持ってきたのか俺は犬の首輪を嵌められた。
雛:「お犬さんなの~。」
   ううううう。
翠:「ほら! 四つん這いになるですよ!
   あと、お前の名前は今から『ベス』ですぅ!」
ベ:「そ、そんなぁ!」
   ん? あああ! ベ:「 になってるぅ!
翠:「犬が喋るなですぅ!」
ベ:「うげ!」
   蹴られた。
金:「ちょ、ちょっと翠星石。やり過ぎかしら・・。」
翠:「うるさいですぅ! ここでどちらが上かハッキリさせてやるですぅ!」
   なんか翠星石が異様に興奮してる・・・。
雛:「翠星石、落ち着くの~!」
   金糸雀と雛苺が引いてるじゃないか。


蒼:「も~、うるさいよ。いったい何を騒いでるの?」
ベ:「あ。」
翠:「あ。」
金:「あ。」
雛:「うにゅ?」
   俺らが騒ぐあまり蒼星石が二階から降りてきてしまった。
真:「うるさくてゆっくり紅茶を飲むこともできないわね・・・。」
   真紅まで降りてきてる。
蒼:「!」
真:「!」
   蒼星石と真紅が俺らのただならぬ様子に気付く。
蒼:「マ、マスター、い、いったい何してるの・・・?」
   蒼星石の眼前には金糸雀、翠星石、雛苺に囲まれ首輪をされ四つん這いの俺の姿が・・・。
   あああああ!
翠:「丁度いいところに来たですぅ・・・蒼星石。」
   何を思いついたのか、翠星石がさも愉快そうな笑みを浮かべた・・・。