ドーン

「きゃうっ!?」
雷の轟音に身を竦める蒼星石。
梅雨のこの天気、大雨に伴って先程からそこら辺で雷が落ちている。
ドザーッ、とバケツを引っくり返したような雨音を聞きながら、俺は居間で天気予報を見ていた。

『活発な梅雨前線は現在九州各地に雷を伴った強い雨を降らせ、そのため土砂崩れ、床下浸水など・・』
天気キャスターも真面目に予報を伝えている。
「どうやらこの雨は明日の朝まで降るらしいな」
蒼星石はソファの上で座布団を使って耳を塞いで縮こまっている。
そのせいか、俺の声が聞こえていないらしい。
ふふふ、隙だらけだ。
「わっ!!」
「うわぁっ!」
蒼星石の耳元で大声を上げる俺。
案の定、蒼星石はビクッ、と反応した。
「ハハハ、怖がりだなぁ蒼は」
「マ、マスターか・・って驚かさないでよ!僕、本当に怖いんだから!」
ムキになって俺をポカポカ叩く蒼星石。
心なしか涙目になっているようだ。
「ごめんごめん、悪かったよ」
「もう・・!次やったらマスターなんか、知らないからね!」
「ああ、それは困る。許してくれよ」
ふん、とそっぽを向いてまた耳を塞ぐ蒼星石。
 ・・ぶっちゃけ、俺も内心雷にビクビクしていた。
子供の頃から大の苦手である雷の音。大分年取った今でも怖い物は怖い。
今はなんとかテレビで気を紛らわせているが、蒼星石はそうはいかないみたいだ。
まったく、仕方のない子だ。
腰を上げ、蒼星石の横に座る俺。
「どうしたのマスター・・・?」
ビクついた目で俺を見上げる蒼星石。
「何、蒼があんまり怖がってるからさ、近くにいてやろうと思って」
「うん・・マスターが近くにいてくれると少し安心するよ・・」
蒼星石は座布団を耳につけたまま俺に寄り添って来た。
「俺は雷なんて怖くはないからな、大船に乗った気分でいなさいってことだ」
せめて、この子の前では強いマスターでいてやらなきゃな。


「ふう・・」
蒼星石は座布団を耳から外した。
「お、もう大丈夫なのか?」
「まだ少し怖いけど、マスターがそばにいてくれたから・・」
嬉しいこと言ってくれるね。
「何なら抱っこしてやってもいいんだよ?」
「う・・嬉しいけどっ・・!もう平気だから!」
飲み物とってくるね、と台所に消える蒼星石。
照れるなんて可愛い子だな。


ドドーン


バチッ!と家中の電気が消える。
「うわああああああっ!」
暗闇の中蒼星石の叫びが俺に伝わる。
「蒼星石!」
手探りで台所に向かう俺。
真っ暗闇で何も見えない。けど、
「マスターっ・・!どこにいるの・・?!」
悲痛な声が聞こえてくる。
やがて、俺の手にふにゃ、とした感覚が走る。
「蒼か?」
「ううっ・・ますたぁ・・」
ビンゴ。
てかこの家には俺と蒼星石しかいないが。
「もう大丈夫だから、大丈夫だから。な?」
蒼星石を引き寄せて抱きしめる俺。
「ひぐっ、ぐすっ・・怖い、怖いよぉ・・」
俺の腕の中でぐずりだす蒼星石。
「安心しろ、俺がここにいてやる。心配するな」
蒼星石は泣きながら俺を強く抱きしめ返してきた。


そのまましばらく、台所で俺達は抱きしめあったままでいた。
何回も外で轟く雷鳴。
そのたびに体を震わす蒼星石。
俺は黙ったまま、抱きしめるしかできなかった。


多分一時間くらい。
それくらい経って、電力が復旧した。
再びブゥーンと低い音をたて始める冷蔵庫。
「長い停電だったな・・」
蒼星石を抱きかかえたまま立ち上がる俺。
あ、まだ二十分しか経ってないじゃん。
「ほら、もう電気もついたし、大丈夫だからな」
俺に顔を埋めたままの蒼星石。
ゆっくりと頭を上げ、俺を見て顔を赤らめた。
「ありがとう、マスター。もう雷にも慣れたよ」
ヒョイっと腕から飛び降りた。
「雷って怖いけど、」
俺を見ないで話しかけてくる蒼星石。
「その・・ありがとう、ずっとそばにいてくれて」
「いや、実は俺も雷は苦手な方で・・」
「え?そうなの?さっき大船とか、大丈夫とか言ってたのにかい?」
あはは、と笑う蒼星石。
「とにかく僕はもう大丈夫だよ。さ、お風呂沸かすから入ってk」


ドガシャアアアアアアン!


「モルスァ!!!」
「わっ!」
今まで一番大きな雷じゃないだろうか。
『・・これから深夜にかけて雨は強さを増し、時々更に雷を伴う強い雨が・・』
居間から復活したテレビがまだ天気予報を伝えている。
「へえ、まだ雨降るんだって、マスター。・・・マスター?」
「そうだな!うん!この雨だからな!」
「・・・」
「まま、まだ雷は鳴るらしいから、今日は特別に蒼と一緒に寝てあげよう!な!」
「!!マスター、そんないきなり・・」
「大丈夫だ!さ、早くベッドに行こう!」
蒼星石を抱きかかえて部屋に向かう俺。


「もう、仕方のないマスターだなぁ・・」
クスッ、と蒼星石は俺を見て笑った。


END







(以下にEND-2:エロス注意)







「・・でも、お風呂は入ってよね?マスター?」
え?





その夜。
「あっ・・やだぁっ・・!こんな、こんなつもりじゃ・・・!ああっ!」
「はぁはぁ・・何言ってるのマスター?んんっ・・誘ってきたのは・・マスターの方じゃ、ないかっ・・んっ」
ベッドに潜り込むと何故か襲い掛かってきた蒼星石。
電気は消してあるので、明かりは路地の街頭からしか入ってこない。
薄ぼんやりしている部屋の中、完全に蒼星石上位で物事は進んでいた。
「大丈夫だよマスター・・・あっ・・今夜は・・今度は、僕が気を紛らわせてあげるからぁっ」
「アッー!」
そのうち、俺の意識もブラックアウトした。


END-2