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ガキィッ キィンッ!
激しい攻撃の応酬が続いている。
戦ってるのは蒼星石と、ローゼンメイデン第一ドールの水銀燈とかいう人形との事だ。
その舞台はnのフィールドではなく、俺の家の裏山となっている。
今、俺はアリスゲームの真っ只中にいた。


ちょっと前、家で蒼星石の家事を見ながら麦茶を啜ってると、どこからか黒い羽根がヒラヒラと舞って来た。
なんだこの羽根?・・とか思ってるとそれを見た蒼星石の顔が一変した。
洗濯物を放り投げ、俺に猛進してくる蒼星石。
ハハハ、昼間っから積極的だn・・
「マスター危ない!」
ドン、と俺を突き飛ばす蒼星石。
「ぐぇっ」
ぐぇっ。いきなりなにすんだろうかこの子は。
「ちょ、ちょっと落ち着k」
カカカカカカカッ
何かが風を切る音と共に、それまで俺が座っていた場所に次々と突き刺さる。
とりあえず当たったら俺は血だるまになりそうな気がした。
ってこれ羽根か?
「ふふ・・慌てちゃってみっともなぁい」
羽根が飛んできた方向を見ると、そこには黒い人形がいた。土足で。
「水銀燈・・・!」
俺にダイブした体勢のまま蒼星石が驚き混じりの声で言う。
これが水銀燈か。中々かわいいじゃないか。
 ・・とか思う余裕はあまり俺にはなかった。その崩れない微笑からは何か禍々しい物を感じる。
「おい、水銀燈。妹の家に来るにしては礼儀がなっていないんじゃないか?」
だってこいつ土足で家に入ってくるんだぜ!しかも攻撃してきたし!
なにより至福の一時の邪魔を・・・!
「どうした?何か答えr」
「あなたは黙ってなさい」
怖ぇ。・・ん?
「何の用だい、水銀燈?いくら君でもマスターを傷つけるのは許さないよ」
蒼星石は鋏を出して構えの体勢をとる。
 ・・そうか。今ここには二体のローゼンメイデン・・
「何の用ぅ?決まってるじゃない・・」
しかもその一方は、アリスの座を貪欲に求めているという水銀燈・・
「私は・・貴女のローザミスティカを貰いに来たの」
となると、その出会いが持つ意味は一つ・・・
「アリスゲーム、始めるわよ」
やっぱり。

初めは乗り気ではなさそうな蒼星石だったが、このままだったら水銀燈が俺を狙うのは必至ということを悟ったのだろう。
攻撃を仕掛ける水銀燈を鋏で家から弾き飛ばすと、
「マスター・・しばらく待ってて」
そういい残し、蒼星石は裏山へ消えた。
突如俺を包む静寂。俺の耳にはテレビの音も、家の前の道路を走る車のエンジン音も届いていなかった。
「待っててだって・・・」
俺は駆け出す。
「そんなこと・・できるわけ無いだろ!」

木が鬱蒼と茂る山は、昼間だというのに薄暗い。
遠くで何かがぶつかる音がする。


※ここから冒頭に戻ります


低空で戦い続ける二体のドール。
その様は美しく、力強くも、どこか寂しさを纏っていた。
「・・っはぁ!いいわよぉ、蒼星石ぃ!その力を、水銀燈にちょうだぁい!」
背中の羽から繰り出される攻撃を鋏で防ぐ蒼いドール。素人目にも、明らかに劣勢なのがわかった。
「ぐっ・・うぅっ・・」
羽根の猛攻に耐えかね、蒼星石は木に叩き付けられた。
「蒼星石!」
ずるずるとずり落ちる蒼星石を受け止める俺。
あぁ・・服もボロボロになっている。
「マ、マスター?!ここに来ちゃ危ないよ!」
「バカ、俺の心配なんかするな。今は・・」
水銀燈が近づいてくる。
「この状況を切り抜けることだけ考えればいい」
俺は蒼星石を抱えて走り出す。少しでも時間を稼がねば。
「人間・・邪魔をしないで!」
急に体から力が抜けていった。
これも水銀燈の力なのだろうか?
「やめて水銀燈!マスターは・・マスターは関係ないっ!」
蒼星石は俺の腕から飛び出し、水銀燈に突っ込む。
予想はビンゴのようだ。
「あらぁ・・蒼星石ぃ、あなた、あんな人間のために出てくるなんてねぇ」
たやすくそれを水銀燈はかわし、俺を一瞥する。
力が入らない。
どうしようもなく、俺は木に体を預ける。
前にも一度体から力を搾り取られたことはあるけど(蒼星石に)、今回とは訳がちがうな。
万事休すか・・・
「しらけちゃったぁ・・今回は引かせてもらうわぁ」
ふん、と鼻で笑うと飛び去っていく水銀燈。
え?マジ?
蒼星石も水銀燈の姿が見えなくなると、鋏を仕舞って俺に駆け寄ってきた。
 ・・・終わったのか。

「マスター・・待っててって言ったのに・・」
蒼星石が泣きそうな顔で俺を見つめる。
ふふふ、俺には蒼星石への愛という予備電源があるんだぜ。
こんぐらいで歩けなくなることはないさ。多分。
「ごめんね・・僕が、僕がもう少し上手くやってれば・・マスターをこんな目に遭わせずにすんだのに・・」
「もういいよ、蒼」
蒼星石の頭をなでると、俺は予備電源で立ち上がる。
 ・・もう一度座り込んだら、動けなくなるなこりゃ。
水銀燈の奴、容赦なく吸い取りやがって。
「ほら、大丈夫だろ?」
腕を振っても、蒼星石は俯いたままだ。
アリスゲームは、やはり俺なんかがしゃりしゃり出ていい場ではない。
 ・・俺って奴は、ほんと、先読みってのが下手だ。
逆に蒼星石に迷惑を掛ける羽目になってしまう、のは十分予想できたのに。
「蒼星石・・」
いかんいかん、悲しい顔をしてちゃ、もっと蒼星石を悲しめてしまう。
せめてこの子の前では笑っていよう。
次、上手く対処できればいいさ。
「さ、家に帰ってカステラでも食おうか」
俺達は家へと戻り始めた。



「本当に、あなたたちって甘いわねぇ」
え?
「この私が・・そう簡単に引き下がるとでも思ったのぉ?」
いつの間にか水銀燈が俺達と間合いを詰めてきている。
奇襲戦法か!
「さあジャンクに・・なりなさいっ!」
剣で俺を断ち切ろうとする水銀燈。
蒼星石は突っ立っている俺を蹴飛ばしてかわした。
無様にこける俺。
「水銀燈っ!君、マスターを・・!」
激昂して再び鋏で水銀燈に立ち向かう蒼星石。
に・・逃げないとまた蒼星石に・・・
「う・・うああっ!」
大きなモーションで蒼星石は鋏を振るう。
それが仇となってしまった。
駄目だ・・立てねえっ・・!
「無駄よっ!」
剣で鋏を薙ぎ払う水銀燈。鋏は、蒼星石の手を離れた。
「あっ・・・」
ずしゃっ。


 ・・迷惑をかけてしまうって、わかってるのに


弾かれた鋏は、俺に刺さった。蒼星石の顔が恐怖みたいなので歪んでいくのが見える。
「あ・・モ、モルスァ」
腹を貫通した鋏は、俺と地面を縫いつけた。
痛いというよりは、熱い。
「ぐぶふっ」
血が腹から逆流し、口から溢れ出す。思わず両手で受け止めてしまう。
あんまり、綺麗な紅色じゃないんだな、血って。
「そ、そうせい・・せきぃ・・」
手を伸ばす。俺に駆け寄る蒼星石も、
残虐な笑みを浮かべる水銀燈も、俺の手から滴る血も、すべてスローモーションの世界だ。
「ごめんな・・ごめんな・・」
俺は、目を閉じた。



続く


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